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第一章 完璧な悪役令嬢
4 ハロルドside
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俺はハロルド・キングストーン、キングストーン王国の第一王子だ。
幼い頃から俺には悩みがある。それは誰にも言ってはいけない事だし、俺自身も言いたくても言えない事だ。
現在十四歳の俺でも信じられないが、俺は幽霊に取り憑かれているらしい。
始めは俺が物心着いた頃だが、部屋の隅がいつもどんより暗い感じがして気になっていた。
その内ブツブツ言う男の声が聞こえてきて、最後には何を言っているのかがわかるようになった。この間二年くらいかかった。そのどんよりは日増しに人型を取るようになり、そしてとうとう俺が8歳の頃には完璧な人間に形が変わっていた。
初めは気味悪がっていたが、流石に見た目が普通の男に見えると恐怖はなくなり、逆に興味が湧いてきた。
そうして俺はその男セイジと話すようになった。セイジはここでは無い世界の人間でバスという大きな馬車に乗っている所で事故にあって亡くなったらしい。
そして気がつくと俺の部屋の隅から動けずそのまま悶々と過ごしていたそうだ。
可哀想な事だが人型となった今でもそこから動くことは出来ないという。
普通なら部屋に帰ると男の幽霊が常にいるという状態はかなり精神的負荷になりそうだが、俺とセイジは性格的良く合うのか気にならなかった。
考え方も似ているようで冷静で明確な判断をして俺が何かに悩んでいたら的確にアドバイスくれたりするのだ。
俺はお礼にその日に会ったことや人、そしてどんな話をしたのかを話して聞かせた。
セイジが生きてきた世界はこの世界とは全く違うところで色々と便利な道具があったと言う。
人の姿を移すカメラという機械や遠くの人と話ができる電話という機械などなど毎日のように聞いても飽きる事がない。
そして、俺がもっとも興味が惹かれたのが民主主義というものだった。セイジの国では貴族がおらず皆が同じように金持ちになる機会があるらしい。そして王は選べないが政治を行う者たちは平民達も選ぶ事ができるという。それで国が回るのだから不思議だ。
俺は将来国王になるのでセイジの忌憚ない意見や助言は是非とも身につけたいと思っている。
一方でセイジには婚約者がいて、一緒にバスに乗っていて事故にあったというので女の幽霊を見なかったか聞かれたが残念ながら俺にはセイジの幽霊しか見えなかった。そういうとセイジは波長があったのかといっていた。
そうして俺はここにはない知識を身につけた一風変わった王子になっていった。
十ニ歳のお披露目パーティーの後、学友として又従兄弟にあたるバイオレットストーン家のルーカスがやって来るようになった。俺はセイジから友達なる存在について聞いていたので是非ともこのルーカスと友達になりたかった。
ルーカスはとても穏やかで優しくいつもニコニコ笑っているが頭の回転が速いので、話していて楽しい奴だった。
その整った顔立ちから冷徹に見られそうだが妹の話をする時などかなり熱く語るのできっと中身は熱い男なんだろう。
俺がもしこの国の王子としての教育だけを受けていたら、このルーカスとも主従の関係しか結べなかったな。
俺がルーカスと対等に話してお互いに意見できるそして助け合える関係を築けたのはセイジのお陰だと感謝していた。
ルーカスは普段は冷静沈着であまり感情を表に出さないのだが、妹の話をする時はテンションが変わる。
それが面白くてよく妹の話を振っていたのだが、話を聞いているととても変わった女の子のようだった。
貴族にしては家族との関わりも深く、普通貴族の兄妹なんて顔を合わせれば挨拶する位が普通だ、ルーカスとも毎日の様に一緒に食事を取っているらしい。
俺にも妹姫が二人もいるが会ったのも両親誕生パーティーでくらいで話したことは皆無と言ってもいい。
そう話すとルーカスは妹と年に数回しか会えないなんて王子はなんて可哀想なんだと言われてしまった。
いやいや、お前の所が変わってるからと言い返したが。
ルーカスは言い返されるとうんうんと頷いてやっぱり僕のクリスティーナは最高ですね。とのたまった。
本当に面白い奴だ。
またある時など、俺との剣の稽古で鍛錬場に行く途中でルーカスは父親で宰相のバイオレットストーン公爵に会ったのか廊下で二人で立ち話をしていた。
俺はまだ遠くて話の内容は聞こえなかったが二人で声に出して笑っているのを見て、変わっているのはルーカスではなくバイオレットストーン公爵家なのだと確信した。
俺もそうだが貴族の親子が立ち話など見た事もなかったし、ましてや親子が笑い合うなど生まれた時から乳母達に育てられるこの国ではあり得ないことだった。
俺は父上と会うときはいつも緊張して決まりきった挨拶しかした事がない。
お互い楽しそうに笑い合う親子がとても羨ましく感じたのだった。
そんなある日のことルーカスが珍しく不機嫌そうに一通の手紙を差し出してきた。中を確認するとルーカスの妹クリスティーナ嬢の十ニ歳のお披露目パーティーの招待状だった。何故不機嫌なんだと聞いたら
「王子にもクリスティーナは見せたくないのですが、学友ですので仕方なく誘っているのです」
と更に不機嫌そうに呟いた。
ルーカスは本当に面白い。
ルーカスが言うには可愛くて可愛くて懸想したくなるかもしれませんが誰にも俺にさえまだ渡す気はないから肝に命じてくれとの事だった。
おいおい、どんだけなんだよ。と逆に興味が湧いてきたのはルーカスには内緒だ。
但し、ルーカスに言われなくても今はまだ色々な知識を身につける時期だと考えているので女にうつつを抜かす暇はないので、まぁ見てみるか?くらいの気持ちしかないがな。
俺は早速父上にパーティー参加の許可を取り出席の返事を送った。
色々な意味で楽しみなパーティーだな。
幼い頃から俺には悩みがある。それは誰にも言ってはいけない事だし、俺自身も言いたくても言えない事だ。
現在十四歳の俺でも信じられないが、俺は幽霊に取り憑かれているらしい。
始めは俺が物心着いた頃だが、部屋の隅がいつもどんより暗い感じがして気になっていた。
その内ブツブツ言う男の声が聞こえてきて、最後には何を言っているのかがわかるようになった。この間二年くらいかかった。そのどんよりは日増しに人型を取るようになり、そしてとうとう俺が8歳の頃には完璧な人間に形が変わっていた。
初めは気味悪がっていたが、流石に見た目が普通の男に見えると恐怖はなくなり、逆に興味が湧いてきた。
そうして俺はその男セイジと話すようになった。セイジはここでは無い世界の人間でバスという大きな馬車に乗っている所で事故にあって亡くなったらしい。
そして気がつくと俺の部屋の隅から動けずそのまま悶々と過ごしていたそうだ。
可哀想な事だが人型となった今でもそこから動くことは出来ないという。
普通なら部屋に帰ると男の幽霊が常にいるという状態はかなり精神的負荷になりそうだが、俺とセイジは性格的良く合うのか気にならなかった。
考え方も似ているようで冷静で明確な判断をして俺が何かに悩んでいたら的確にアドバイスくれたりするのだ。
俺はお礼にその日に会ったことや人、そしてどんな話をしたのかを話して聞かせた。
セイジが生きてきた世界はこの世界とは全く違うところで色々と便利な道具があったと言う。
人の姿を移すカメラという機械や遠くの人と話ができる電話という機械などなど毎日のように聞いても飽きる事がない。
そして、俺がもっとも興味が惹かれたのが民主主義というものだった。セイジの国では貴族がおらず皆が同じように金持ちになる機会があるらしい。そして王は選べないが政治を行う者たちは平民達も選ぶ事ができるという。それで国が回るのだから不思議だ。
俺は将来国王になるのでセイジの忌憚ない意見や助言は是非とも身につけたいと思っている。
一方でセイジには婚約者がいて、一緒にバスに乗っていて事故にあったというので女の幽霊を見なかったか聞かれたが残念ながら俺にはセイジの幽霊しか見えなかった。そういうとセイジは波長があったのかといっていた。
そうして俺はここにはない知識を身につけた一風変わった王子になっていった。
十ニ歳のお披露目パーティーの後、学友として又従兄弟にあたるバイオレットストーン家のルーカスがやって来るようになった。俺はセイジから友達なる存在について聞いていたので是非ともこのルーカスと友達になりたかった。
ルーカスはとても穏やかで優しくいつもニコニコ笑っているが頭の回転が速いので、話していて楽しい奴だった。
その整った顔立ちから冷徹に見られそうだが妹の話をする時などかなり熱く語るのできっと中身は熱い男なんだろう。
俺がもしこの国の王子としての教育だけを受けていたら、このルーカスとも主従の関係しか結べなかったな。
俺がルーカスと対等に話してお互いに意見できるそして助け合える関係を築けたのはセイジのお陰だと感謝していた。
ルーカスは普段は冷静沈着であまり感情を表に出さないのだが、妹の話をする時はテンションが変わる。
それが面白くてよく妹の話を振っていたのだが、話を聞いているととても変わった女の子のようだった。
貴族にしては家族との関わりも深く、普通貴族の兄妹なんて顔を合わせれば挨拶する位が普通だ、ルーカスとも毎日の様に一緒に食事を取っているらしい。
俺にも妹姫が二人もいるが会ったのも両親誕生パーティーでくらいで話したことは皆無と言ってもいい。
そう話すとルーカスは妹と年に数回しか会えないなんて王子はなんて可哀想なんだと言われてしまった。
いやいや、お前の所が変わってるからと言い返したが。
ルーカスは言い返されるとうんうんと頷いてやっぱり僕のクリスティーナは最高ですね。とのたまった。
本当に面白い奴だ。
またある時など、俺との剣の稽古で鍛錬場に行く途中でルーカスは父親で宰相のバイオレットストーン公爵に会ったのか廊下で二人で立ち話をしていた。
俺はまだ遠くて話の内容は聞こえなかったが二人で声に出して笑っているのを見て、変わっているのはルーカスではなくバイオレットストーン公爵家なのだと確信した。
俺もそうだが貴族の親子が立ち話など見た事もなかったし、ましてや親子が笑い合うなど生まれた時から乳母達に育てられるこの国ではあり得ないことだった。
俺は父上と会うときはいつも緊張して決まりきった挨拶しかした事がない。
お互い楽しそうに笑い合う親子がとても羨ましく感じたのだった。
そんなある日のことルーカスが珍しく不機嫌そうに一通の手紙を差し出してきた。中を確認するとルーカスの妹クリスティーナ嬢の十ニ歳のお披露目パーティーの招待状だった。何故不機嫌なんだと聞いたら
「王子にもクリスティーナは見せたくないのですが、学友ですので仕方なく誘っているのです」
と更に不機嫌そうに呟いた。
ルーカスは本当に面白い。
ルーカスが言うには可愛くて可愛くて懸想したくなるかもしれませんが誰にも俺にさえまだ渡す気はないから肝に命じてくれとの事だった。
おいおい、どんだけなんだよ。と逆に興味が湧いてきたのはルーカスには内緒だ。
但し、ルーカスに言われなくても今はまだ色々な知識を身につける時期だと考えているので女にうつつを抜かす暇はないので、まぁ見てみるか?くらいの気持ちしかないがな。
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