15 / 36
それぞれの事情
15
しおりを挟む
不敵に笑うシャール兄様と不満爆発寸前のユアンを目の前に私の顔は引きつるばかり。
「あの、シャール兄様、それはどういうこと?」
「五歳の子に話すのは気が引けるけど、もう話せるようになったしいいかな?」
一人納得するとシャール兄様は私とユアンを抱き上げるとソファに腰を下ろした。いつものように私達は膝の上だ。
「いいかい。君達は強い後ろ盾がない第三王妃の子供だ。知ってる?」
「強い後ろ盾?」
そういえば誰も私達の母親については教えてくれなかった。それに母方の親戚の話もないし……
「ああ、まぁ、何というか彼女はとても美しかったけれど没落した子爵家の令嬢だったんだ」
「没落した? 今はってことですか?」
ユアンが尋ねる。
「いや、父上と出会った時にはもう没落していた。父親は借金を苦に亡くなり、母親と彼女は親戚の家に身を寄せていた。まぁ、身の置き場のない身の上だったんだ。僕もまだその頃は社交界にデビューしていなかったからそう聞いてるだけだけど」
なんと! 母親は、めちゃくちゃ玉の輿だったってこと?
「父上の強い希望で第三王妃になるんだけど、その時その子爵家も断絶して母親とも縁を切ることが条件だった。第一王妃と第二王妃が出した条件だったんだけどね」
シャール兄様はそう言って頭を掻いた。兄様のお母さんだもんね。第一王妃様って。
「それでも二人は全ての条件を飲んで一緒になったんだ。かなり話題になったよ。世紀の恋とか言われて」
まぁそうだよね。貧乏没落貴族の令嬢と国王の恋だもんねぇ。でも、それなら……
「それなら何故陛下は僕達を嫌っているんですか?」
「ハハハ、ユアンは率直だね。まぁ二人のことだから僕にもわからないけれど、ある時からお二人は仲違いされて、そのまま君達が生まれて第三王妃は亡くなったということが事実かな。理由は誰も知らない」
喧嘩してそのままってこと? 怒りをぶつける相手がいなくなったから私達に怒りをぶつけてるの!! 心が狭すぎる!!!
私がぷぅと頬を膨らませて不満を表した。
「ユーデットは可愛いねぇ」
兄様は私の膨らんだ頬を掴んて微笑んだ。
「僕が初めてここに来た時はギリギリだったんだ。第二王妃は君達をかなり敵視していてね。もう実行部隊を組織しかけていたよ」
組織って何ーーー!!
「それで、僕はまぁ自分にメリットがないわけでもないし、彼女のことは気に入っていたから君達が殺される前に会ってみたいと思ったんだ。まさか、金髪だとは思わなかったよ」
また、金髪だ……
「兄様、金髪ってそんなに珍しいですか?」
「ん?」
「兄様も双子のお兄様たちも私の金髪について話していたので……。確かに他の兄弟は皆黒髪だけど」
「そうだなぁ。それは一度パーティに出席したほうがわかるかなぁ」
「え?」
「金髪というのがどんなことなのか身を持って知ったほうがいい」
「兄様?」
「うん。ジェイクの現状も把握できるし、いい手かもしれない。うん、そうだな。よし!」
シャール兄様は一人納得すると私達の疑問を全てそのままに部屋から出ていってしまった。
「なんだよ!! あいつ!! やっぱり胡散臭いんだよ!!」
ユアンがスッキリしない疑問を抱えたまま地団太を踏む。
「結局、私達は兄様に助けられたの? それとも危険に投げ込まれたの?」
「知るか!! なんだよ!!!」
私達はシャール兄様が消えたドアに向かって手近にあったクッションを投げつけた。
兄様の発言から一ヶ月、私達は今王宮内のティーパーティに向かっていた。
「ねぇ、本当にこれ着ていくの?」
「しょうがないだろ。僕達は双子でまだ可愛い子供なんだから……」
ユアンが諦めたようにため息を吐いた。
そう私達は今日も双子コーデで固められた服を着せられていた。
しかも今日はデザインが同じの色違いだ。私がブルーでユアンがピンク。ユアンは色が逆じゃないかとさっきからプンプンしている。よく似合ってるけどね。ただ、私もそろそろこのおそろいから抜け出したいとは思っている。
「お二人とも本当によくお似合いです!!!」
相変わらずのメイドさん達に見送られて部屋を後にしたのは十分前のことだ。そして、私達の部屋のあるエリアからでる直前に見知った子供が立っていた。
「ジェイク!!!」
私はジェイクに走り寄った。今日はジェイクもおしゃれしている。子供なのにネクタイ結んで膝くらいまであるジャケットまで羽織っているのた。そして、これはきっとシャール兄様の指示だろうけど、ポケットチーフやネクタイの色は私のドレスの色に合わせているようだ。
これではユアンとは双子コーデで、ジェイクとはペアルックだ。
「ユーデット姫様、ユアン王子様、お待ちしておりました」
そう言ってジェイクが腕を胸に当てて頭を下げる。様になっている。
私もドレスを摘んで少し広げると腰を落とした。
「ジェイク・ウスマール公子、御機嫌よう」
お姫様みたいでしょう? お姫様だけど。
隣でユアンが呆れていたが、そんなの気にしないもん。礼儀ってものよ!!
「ほら! ユアンも!」
「はいはい、よ!」
ユアンはそう言って軽く手をあげた。どっちが年下なのかわからないよ。でもジェイクはそんなユアンを見て少し微笑んでいたからいいのかな?
「ユーデット姫、お手を」
そういってジェイクは私に手を差し出してくれる。エスコートってやつ! 私が喜々としてその手を取ろうとしたら目の前にもう一本の手が現れる。ユアンだ。
「これは家族の仕事だ。ほら!」
私は目の前の手に一瞬逡巡した。そして、よしっと心を決めて手を取ったのだった。
「あの、シャール兄様、それはどういうこと?」
「五歳の子に話すのは気が引けるけど、もう話せるようになったしいいかな?」
一人納得するとシャール兄様は私とユアンを抱き上げるとソファに腰を下ろした。いつものように私達は膝の上だ。
「いいかい。君達は強い後ろ盾がない第三王妃の子供だ。知ってる?」
「強い後ろ盾?」
そういえば誰も私達の母親については教えてくれなかった。それに母方の親戚の話もないし……
「ああ、まぁ、何というか彼女はとても美しかったけれど没落した子爵家の令嬢だったんだ」
「没落した? 今はってことですか?」
ユアンが尋ねる。
「いや、父上と出会った時にはもう没落していた。父親は借金を苦に亡くなり、母親と彼女は親戚の家に身を寄せていた。まぁ、身の置き場のない身の上だったんだ。僕もまだその頃は社交界にデビューしていなかったからそう聞いてるだけだけど」
なんと! 母親は、めちゃくちゃ玉の輿だったってこと?
「父上の強い希望で第三王妃になるんだけど、その時その子爵家も断絶して母親とも縁を切ることが条件だった。第一王妃と第二王妃が出した条件だったんだけどね」
シャール兄様はそう言って頭を掻いた。兄様のお母さんだもんね。第一王妃様って。
「それでも二人は全ての条件を飲んで一緒になったんだ。かなり話題になったよ。世紀の恋とか言われて」
まぁそうだよね。貧乏没落貴族の令嬢と国王の恋だもんねぇ。でも、それなら……
「それなら何故陛下は僕達を嫌っているんですか?」
「ハハハ、ユアンは率直だね。まぁ二人のことだから僕にもわからないけれど、ある時からお二人は仲違いされて、そのまま君達が生まれて第三王妃は亡くなったということが事実かな。理由は誰も知らない」
喧嘩してそのままってこと? 怒りをぶつける相手がいなくなったから私達に怒りをぶつけてるの!! 心が狭すぎる!!!
私がぷぅと頬を膨らませて不満を表した。
「ユーデットは可愛いねぇ」
兄様は私の膨らんだ頬を掴んて微笑んだ。
「僕が初めてここに来た時はギリギリだったんだ。第二王妃は君達をかなり敵視していてね。もう実行部隊を組織しかけていたよ」
組織って何ーーー!!
「それで、僕はまぁ自分にメリットがないわけでもないし、彼女のことは気に入っていたから君達が殺される前に会ってみたいと思ったんだ。まさか、金髪だとは思わなかったよ」
また、金髪だ……
「兄様、金髪ってそんなに珍しいですか?」
「ん?」
「兄様も双子のお兄様たちも私の金髪について話していたので……。確かに他の兄弟は皆黒髪だけど」
「そうだなぁ。それは一度パーティに出席したほうがわかるかなぁ」
「え?」
「金髪というのがどんなことなのか身を持って知ったほうがいい」
「兄様?」
「うん。ジェイクの現状も把握できるし、いい手かもしれない。うん、そうだな。よし!」
シャール兄様は一人納得すると私達の疑問を全てそのままに部屋から出ていってしまった。
「なんだよ!! あいつ!! やっぱり胡散臭いんだよ!!」
ユアンがスッキリしない疑問を抱えたまま地団太を踏む。
「結局、私達は兄様に助けられたの? それとも危険に投げ込まれたの?」
「知るか!! なんだよ!!!」
私達はシャール兄様が消えたドアに向かって手近にあったクッションを投げつけた。
兄様の発言から一ヶ月、私達は今王宮内のティーパーティに向かっていた。
「ねぇ、本当にこれ着ていくの?」
「しょうがないだろ。僕達は双子でまだ可愛い子供なんだから……」
ユアンが諦めたようにため息を吐いた。
そう私達は今日も双子コーデで固められた服を着せられていた。
しかも今日はデザインが同じの色違いだ。私がブルーでユアンがピンク。ユアンは色が逆じゃないかとさっきからプンプンしている。よく似合ってるけどね。ただ、私もそろそろこのおそろいから抜け出したいとは思っている。
「お二人とも本当によくお似合いです!!!」
相変わらずのメイドさん達に見送られて部屋を後にしたのは十分前のことだ。そして、私達の部屋のあるエリアからでる直前に見知った子供が立っていた。
「ジェイク!!!」
私はジェイクに走り寄った。今日はジェイクもおしゃれしている。子供なのにネクタイ結んで膝くらいまであるジャケットまで羽織っているのた。そして、これはきっとシャール兄様の指示だろうけど、ポケットチーフやネクタイの色は私のドレスの色に合わせているようだ。
これではユアンとは双子コーデで、ジェイクとはペアルックだ。
「ユーデット姫様、ユアン王子様、お待ちしておりました」
そう言ってジェイクが腕を胸に当てて頭を下げる。様になっている。
私もドレスを摘んで少し広げると腰を落とした。
「ジェイク・ウスマール公子、御機嫌よう」
お姫様みたいでしょう? お姫様だけど。
隣でユアンが呆れていたが、そんなの気にしないもん。礼儀ってものよ!!
「ほら! ユアンも!」
「はいはい、よ!」
ユアンはそう言って軽く手をあげた。どっちが年下なのかわからないよ。でもジェイクはそんなユアンを見て少し微笑んでいたからいいのかな?
「ユーデット姫、お手を」
そういってジェイクは私に手を差し出してくれる。エスコートってやつ! 私が喜々としてその手を取ろうとしたら目の前にもう一本の手が現れる。ユアンだ。
「これは家族の仕事だ。ほら!」
私は目の前の手に一瞬逡巡した。そして、よしっと心を決めて手を取ったのだった。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?
⚠️好みが非常に分かれる作品となっております。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

初恋の人と再会したら、妹の取り巻きになっていました
山科ひさき
恋愛
物心ついた頃から美しい双子の妹の陰に隠れ、実の両親にすら愛されることのなかったエミリー。彼女は妹のみの誕生日会を開いている最中の家から抜け出し、その先で出会った少年に恋をする。
だが再会した彼は美しい妹の言葉を信じ、エミリーを「妹を執拗にいじめる最低な姉」だと思い込んでいた。
なろうにも投稿しています。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~
saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。
前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。
国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。
自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。
幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。
自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。
前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。
※小説家になろう様でも公開しています

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる