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記念SS
もう我慢できない
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文庫版発売記念SS
ちょっとびっくりな番外編を書き下ろしてますのでよろしくお願いします
===================
カイルはいつものガゼボで婚約者であるアリシアを眩しそうに見つめている。
色々あった事件も解決し、問題となったエミリアやフレトケヒト男爵はその罪を償っている。そんな中カイル達は再び学校に戻り日常に戻りつつあった。アリシアの周りには今までエミリアと一緒になって彼女を批判していた者たちがひっきりなしにやってきて謝罪している。そんな中でもアリシアは笑顔でその者達を許してしまっているらしい。
更にお友達が増えたと喜んでしまう始末なのだ。カイルは持っていたティーカップをギュッと握りしめる。
「君は優しすぎるよ」
カイルの呟きは耳の良いアリシアには聞こえてしまったようだ。
「カイル? どうしたの?」
少し首を傾げたアリシアの美しさにカイルは息を呑んだ。今まではエミリアの心無い噂で隠れていたアリシアの素晴らしさが学校内に広まるのは時間の問題だろう。
「アリシア、これからは謝罪に来た者を許す必要はないよ」
カイルの心は複雑だ。アリシアにはこのままでいて欲しいけれど、彼女に付け入る隙きは作ってほしくない。何よりアリシアの素晴らしさは自分だけが知っていればいいのだ。
「でも、エミリアさんだって前世の記憶に翻弄されていただけみたいだし、その彼女に先導されてしまった方々なんだもの。しようがないわ」
そういってため息を吐いたアリシアは天女のごとく慈悲深い。
ああ、その笑顔は誰にも見せないでほしい!
カイルはカップをテーブルに置くとその手を伸ばして目の前に座るアリシアのそのほっそりとした手に重ねる。
「カイル?」
突然手を触れられてアリシアは少しだけ戸惑いを感じているようだ。普段は盲目のアリシアを驚かせないように体に触れるときは前もって声をかけいるのた。
カイルは何も言わずに立ち上がるとアリシアの手を引いて彼女も椅子から立たせた。
「カイル? 何かあったの? 雨でも振りそう?」
完全に安心しきってカイルに手を引かれるままに立ち上がったアリシアはそのままカイルの腕に体を寄せる。
カイルはその様子に自分が今イライラしている原因は不特定多数の自称友人達に嫉妬しているのだと自覚する。
僕だけのアリシアだったのに。今は皆に知られてしまった。婚約者という立場だけではなんとも心もとない。いつか君の素晴らしさに皆が引き寄せられるかもしれない……
「もうその時は我慢できない」
「え?」
「その時は君を閉じ込めて僕だけのアリシアに戻してしまいたい!!」
アリシアは漸くカイルの様子がおかしいことに気がついた。
「カイル? どうしたの? 何かあったの? 大丈夫?」
アリシアは手を伸ばしてカイルの頬に触れる。これがアリシアにとって他人表情を知る手段だとは分かっていても今のカイルにはどうしようもない。
「アリシア!!」
カイルはグイッとアリシアを抱き寄せるとそのほっそりとした体を何者からも隠すように抱きすくめる。
「カイル、何かあったのなら話して」
カイルの胸に押し付けられながらもアリシアの優しい声が耳朶に響く。
「アリシア、僕は君が大好きなんだ。誰にも取られたくないし、誰にも見せたくないくらい好きなんだよ」
するとアリシアの柔らかな笑い声に包まれる。
「アリシア?」
「ふふふ、カイルも私と一緒ね。私だって王都でカイルの噂話を聞いたときはとても悲しかったし、心配だったもの。私だけのカイルじゃないんだって。私だけが取り残された気分だったのよ」
「そうなのかい?」
「ええ、私達は同じこと考えているのね」
そう言ってにっこりと微笑んたアリシアは今まで見た中でも飛び抜けて美しかった。
「私だってカイルが、あの、その……女の子に囲まれていたら……嫌だわ」
そう言って顔を真っ赤にして俯いた彼女の可愛らしさは凶悪なほどだ。
「ああああぁ。アリシア……はぁ。もう……僕は……」
「ん? カイル?」
「我慢できないよ!!」
カイルはそう叫ぶとまだ見ぬアリシアの崇拝者達から隠すように強く抱きしめた。
ちょっとびっくりな番外編を書き下ろしてますのでよろしくお願いします
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カイルはいつものガゼボで婚約者であるアリシアを眩しそうに見つめている。
色々あった事件も解決し、問題となったエミリアやフレトケヒト男爵はその罪を償っている。そんな中カイル達は再び学校に戻り日常に戻りつつあった。アリシアの周りには今までエミリアと一緒になって彼女を批判していた者たちがひっきりなしにやってきて謝罪している。そんな中でもアリシアは笑顔でその者達を許してしまっているらしい。
更にお友達が増えたと喜んでしまう始末なのだ。カイルは持っていたティーカップをギュッと握りしめる。
「君は優しすぎるよ」
カイルの呟きは耳の良いアリシアには聞こえてしまったようだ。
「カイル? どうしたの?」
少し首を傾げたアリシアの美しさにカイルは息を呑んだ。今まではエミリアの心無い噂で隠れていたアリシアの素晴らしさが学校内に広まるのは時間の問題だろう。
「アリシア、これからは謝罪に来た者を許す必要はないよ」
カイルの心は複雑だ。アリシアにはこのままでいて欲しいけれど、彼女に付け入る隙きは作ってほしくない。何よりアリシアの素晴らしさは自分だけが知っていればいいのだ。
「でも、エミリアさんだって前世の記憶に翻弄されていただけみたいだし、その彼女に先導されてしまった方々なんだもの。しようがないわ」
そういってため息を吐いたアリシアは天女のごとく慈悲深い。
ああ、その笑顔は誰にも見せないでほしい!
カイルはカップをテーブルに置くとその手を伸ばして目の前に座るアリシアのそのほっそりとした手に重ねる。
「カイル?」
突然手を触れられてアリシアは少しだけ戸惑いを感じているようだ。普段は盲目のアリシアを驚かせないように体に触れるときは前もって声をかけいるのた。
カイルは何も言わずに立ち上がるとアリシアの手を引いて彼女も椅子から立たせた。
「カイル? 何かあったの? 雨でも振りそう?」
完全に安心しきってカイルに手を引かれるままに立ち上がったアリシアはそのままカイルの腕に体を寄せる。
カイルはその様子に自分が今イライラしている原因は不特定多数の自称友人達に嫉妬しているのだと自覚する。
僕だけのアリシアだったのに。今は皆に知られてしまった。婚約者という立場だけではなんとも心もとない。いつか君の素晴らしさに皆が引き寄せられるかもしれない……
「もうその時は我慢できない」
「え?」
「その時は君を閉じ込めて僕だけのアリシアに戻してしまいたい!!」
アリシアは漸くカイルの様子がおかしいことに気がついた。
「カイル? どうしたの? 何かあったの? 大丈夫?」
アリシアは手を伸ばしてカイルの頬に触れる。これがアリシアにとって他人表情を知る手段だとは分かっていても今のカイルにはどうしようもない。
「アリシア!!」
カイルはグイッとアリシアを抱き寄せるとそのほっそりとした体を何者からも隠すように抱きすくめる。
「カイル、何かあったのなら話して」
カイルの胸に押し付けられながらもアリシアの優しい声が耳朶に響く。
「アリシア、僕は君が大好きなんだ。誰にも取られたくないし、誰にも見せたくないくらい好きなんだよ」
するとアリシアの柔らかな笑い声に包まれる。
「アリシア?」
「ふふふ、カイルも私と一緒ね。私だって王都でカイルの噂話を聞いたときはとても悲しかったし、心配だったもの。私だけのカイルじゃないんだって。私だけが取り残された気分だったのよ」
「そうなのかい?」
「ええ、私達は同じこと考えているのね」
そう言ってにっこりと微笑んたアリシアは今まで見た中でも飛び抜けて美しかった。
「私だってカイルが、あの、その……女の子に囲まれていたら……嫌だわ」
そう言って顔を真っ赤にして俯いた彼女の可愛らしさは凶悪なほどだ。
「ああああぁ。アリシア……はぁ。もう……僕は……」
「ん? カイル?」
「我慢できないよ!!」
カイルはそう叫ぶとまだ見ぬアリシアの崇拝者達から隠すように強く抱きしめた。
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