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番外編
エピローグ
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「どういう訳でアリシアちゃんがお父様とお母様のところに来てくれたのよ」
ママさんはそう言って私の手をテーブル越しに握りしめた。
「アリシアちゃん、貴女はわたくし達に沢山の幸せを運んでくれたわ。アリシアちゃんがいるだけでわたくし達は幸せだったの。今度はアリシアちゃんとカイル殿下が幸せを掴む番なのね」
「お母様……でも、私、少し不安ですの。目が見えないのに母親になれるのでしょうか?」
「まぁ、まぁ、まぁ、何を言っているのかしら、わたくしの可愛い娘は! 貴女が貴女の赤ちゃんにしてあげることは一つだけよ」
「何でしょうか?」
「心のままに愛してあげればいいのよ。アリシアちゃんがわたくし達やカイル殿下から受け取った愛情を注いであげればいいの。殿下からの騎士の誓いもアリシアちゃんの中の愛情を膨らませる材料にすればいいのよ。わたくしはそうして来たし、これからもそうするわ」
ママさんの言葉に私は胸がスッと軽くなった。実を言うとカイルの騎士の誓いを受けて、その責任や重みに負けそうになっていたのだ。
それをママさんは将来の子供のために遠慮なく愛情として受け取っていいのだと教えてくれた。
私はママさんに向かってにっこりと微笑んだ。
「はい! ありがとうございます、お母様。私はお母様やお父様のように有り余る愛情を注げるような女性になりたいですわ」
その時、テラスのドアが開いてパパさんとカイルの声が聞こえてきた。
「だから、カイル殿下! 騎士の誓いは早いです! 何故一言の相談もなくそのようなことを!」
「あ、いや、それは、しかし、相談しても公爵からの許可は難しいだろう?」
「それはそうです! まだ、婚約だって早いのに!」
「え? でも、婚約は認めてくれたんですよね? もう何年も前の話ですよ」
「カイル!」
「貴方!」
言い合いながらこちらにやってくる二人に私達は声をかける。
「アリシア!」
カイルは直ぐに私の側にやって来て手を取る。
「カイル! 来てくれたの?」
「当たり前だよ。君の顔を見ないと僕は一日が始まらないし、終わらないよ」
「もう! 私は大丈夫よ」
「それでも、僕は君がいないと安心できない。愛しているよ」
「カイル」
カイルはそう言って私をしっかりと抱きしめた。
「カ、カイル殿下!」
焦ったパパさんの声が聞こえたが、ママさんが止めに入った。
「貴方! もう二人は大人ですわ」
「アンネマリー、そうはいってもアリシアは、僕たちの天使はまだまだ子供だよ」
「まぁ、貴方がわたくしにプロポーズした時よりも年上よ」
「それは、そうだが……アリシアーー」
パパさんの泣きそうな声が少し可哀想で私はカイルの胸をトントンと叩く。
「カイル、もういいかしら?」
「もう少し君を補充させて、今の僕はアリシア不足だよ」
「もう!」
私達の後ろからママさんがパパさんに「孫を可愛がりましょう」といって慰めているのが聞こえた。
私は恥ずかしくて頬に熱が集まる。
「アリシア、可愛い」
そうカイルは呟くと更にギュッと抱きしめて来たのだった。
私はカイルの腕の中で胸の奥に溜まっていた不安が溶けていくのを感じた。これからの人生が幸せであることを、カイルと一緒に幸せになることを信じることができたのだった。
ママさんはそう言って私の手をテーブル越しに握りしめた。
「アリシアちゃん、貴女はわたくし達に沢山の幸せを運んでくれたわ。アリシアちゃんがいるだけでわたくし達は幸せだったの。今度はアリシアちゃんとカイル殿下が幸せを掴む番なのね」
「お母様……でも、私、少し不安ですの。目が見えないのに母親になれるのでしょうか?」
「まぁ、まぁ、まぁ、何を言っているのかしら、わたくしの可愛い娘は! 貴女が貴女の赤ちゃんにしてあげることは一つだけよ」
「何でしょうか?」
「心のままに愛してあげればいいのよ。アリシアちゃんがわたくし達やカイル殿下から受け取った愛情を注いであげればいいの。殿下からの騎士の誓いもアリシアちゃんの中の愛情を膨らませる材料にすればいいのよ。わたくしはそうして来たし、これからもそうするわ」
ママさんの言葉に私は胸がスッと軽くなった。実を言うとカイルの騎士の誓いを受けて、その責任や重みに負けそうになっていたのだ。
それをママさんは将来の子供のために遠慮なく愛情として受け取っていいのだと教えてくれた。
私はママさんに向かってにっこりと微笑んだ。
「はい! ありがとうございます、お母様。私はお母様やお父様のように有り余る愛情を注げるような女性になりたいですわ」
その時、テラスのドアが開いてパパさんとカイルの声が聞こえてきた。
「だから、カイル殿下! 騎士の誓いは早いです! 何故一言の相談もなくそのようなことを!」
「あ、いや、それは、しかし、相談しても公爵からの許可は難しいだろう?」
「それはそうです! まだ、婚約だって早いのに!」
「え? でも、婚約は認めてくれたんですよね? もう何年も前の話ですよ」
「カイル!」
「貴方!」
言い合いながらこちらにやってくる二人に私達は声をかける。
「アリシア!」
カイルは直ぐに私の側にやって来て手を取る。
「カイル! 来てくれたの?」
「当たり前だよ。君の顔を見ないと僕は一日が始まらないし、終わらないよ」
「もう! 私は大丈夫よ」
「それでも、僕は君がいないと安心できない。愛しているよ」
「カイル」
カイルはそう言って私をしっかりと抱きしめた。
「カ、カイル殿下!」
焦ったパパさんの声が聞こえたが、ママさんが止めに入った。
「貴方! もう二人は大人ですわ」
「アンネマリー、そうはいってもアリシアは、僕たちの天使はまだまだ子供だよ」
「まぁ、貴方がわたくしにプロポーズした時よりも年上よ」
「それは、そうだが……アリシアーー」
パパさんの泣きそうな声が少し可哀想で私はカイルの胸をトントンと叩く。
「カイル、もういいかしら?」
「もう少し君を補充させて、今の僕はアリシア不足だよ」
「もう!」
私達の後ろからママさんがパパさんに「孫を可愛がりましょう」といって慰めているのが聞こえた。
私は恥ずかしくて頬に熱が集まる。
「アリシア、可愛い」
そうカイルは呟くと更にギュッと抱きしめて来たのだった。
私はカイルの腕の中で胸の奥に溜まっていた不安が溶けていくのを感じた。これからの人生が幸せであることを、カイルと一緒に幸せになることを信じることができたのだった。
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