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番外編

アンネマリーの運命17

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「キ、キャロライン……」
スティーブンは顔を引き攣らせた。
キャロラインが怒ると逃げ場がなくなる。全てを把握して追い込むのだ。
「詳しくはわかりませんが、お兄様はアンネマリー様に防御魔法を毎日かけていたと。往復一時間もかかるのに。そして、そこまで大切に思っているアンネマリー様をアンネマリー様ご自身が危険に晒したというのですわね。それが嫌で嫌で手を上げてしまわれたと」
「……ああ、そういうことだ」
キャロラインはテーブルをバシンと叩いて立ち上がる。
「お兄様!! 今すぐにアンネマリー様に謝りに行くのです! そして、ご自分の気持ちをきちんと伝えて下さいませ!」
「自分の気持ちだと?」
「ああ、もう! どうして他人のことはよくお分かりなのにご自分のことはわからないのですか?」
「そんなこと言われても……」
「お兄様は未だかつてわたくしに防御魔法を上掛けしてくれたことはありませんわ!」
「そうだね」
キャロラインはグイッとスティーブンに顔を寄せると眉をキュッとあげる。
「可愛い妹のわたくしよりも大切に思っている女性なのですよ! そのような方のことはなんとお呼びするのですか?」
「え?」
「家族より大切なのです! それは愛しかありません」
「愛……僕はアンネマリーを」
「もちろんです!!」
「だから、早くアンネマリー様の元に向かってください。あんな素晴らしいお姉様はいらっしゃいませんわ!」
キャロラインがにっこりと微笑むとスティーブンばスッと立ち上がった。
「そうだな。これは愛だ。感謝するよ、キャロライン」
そう言ってスティーブンは応接室を飛び出していった。
その場に残されたキャロラインはハッとしてヘンリーの方を見つめた。
スティーブンのあまりの不甲斐なさに夢中になってしまった。
「……ヘンリー様」
キャロラインは今更ながら可愛らしく微笑んだがヘンリーの顔は引き攣っていた。
「まぁ、いいんだ。確かにスティーブンにはハッキリ言ってやった方が良かったと思う」
キャロラインはバツの悪い顔で下を向いた。
「キャロライン、君はもう小さな女の子じゃなかったんだね。君から愛という言葉が出てくるなんて……」
「ヘンリー様」
「兎に角、戻ろうか? スティーブン達のことも気になるしね」
そう言ってヘンリーは片手をキャロラインに差し出した。
いつもは兄弟のような親密さで肘を差し出すのにだ。
そして、キャロラインがその手を取るとその手にキスを落としたのだった。
「キャロライン嬢、僕に君をエスコートする栄誉を与えて下さい」
正式なエスコートの申込みにキャロラインの胸は高鳴った。
そして、泣き笑いになりながらも頷いた。
「はい! よろしくお願いします」
ヘンリーとキャロラインが幼馴染から卒業した瞬間だった。
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