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番外編

アンネマリーの運命11

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「ご機嫌よう」
アンネマリーが寮から出ると本当にスティーブンが立っていた。
半分は冗談だと思っていたアンネマリーは目を見開いた。
「スティーブン様! 本当にいらしたのですか?」
「え? それはそうだよ。僕は約束は守る。では、約束通り手を貸してもらえるかい?」
「は、はい」
アンネマリーが手を差し出すとスティーブンはその手を取って額に当てた。
するとアンネマリーの体にスティーブンの力強い魔力が流れ込んできた。
「……はぁ」
スティーブンは少し顔色が悪くなったアンネマリーを見て手を止めた。
「す、すまない。なるべく体の表面を覆うようにしたつもりなんだが……。やはり体内にも影響がでてしまったか?」
「あ、いえ、大丈夫ですわ」
アンネマリーは少し呼吸を整えてからにっこりと笑う。
「でも、凄いですわ。スティーブン様が防御魔法を掛けたところから纏う魔力が違いますのね。わたくし、魔法は得意なんですが防御魔法はあまり上手くいかなくて……。教えていただけませんか? そうすればスティーブン様の手を煩わせずに自分で出来ますし」
アンネマリーがスティーブンにお願いすると一瞬沈黙が訪れた。
「……いや、ダメだ。これは自分以外の人に上掛けする方法なので自分自身の防御魔法を強化するものではない」
少し早口で答えたスティーブンにアンネマリーは「そうなのね」と頷いた。
「では、また、明日」
魔法を掛けるとスティーブンは直ぐにその場を去った。
早足で歩く後ろ姿を見てアンネマリーはため息を吐いた。
「それでも、毎朝来てもらうのは気が引けるし、少し気が重いのよね……」
だから、防御魔法が足りないのなら自分で出来る様にしたかったのだ。
スティーブンが思っていたよりも笑うし、今回のことで優しいところもあるとわかったが、やはり少し苦手なのだ。
「アンネマリーお嬢様、エレオノーラ様よりお手紙が届きました」
スティーブンを見送っていたアンネマリーに侍女が手紙を手渡す。
エレオノーラは王太子の婚約者となる予定の隣国の姫だ。
「まぁ、エレオノーラ様から?」
アンネマリーは手紙を受け取ると足早に寮の部屋に戻った。
「エレオノーラ様がサーナインにいらっしゃるようよ」
手紙を読み終わったアンネマリーは侍女に説明する。
「それではお屋敷に戻られますか?」
「そうね。エレオノーラ様がいらっしゃるのにわたくしがいない訳にはいかないわ。学校に家庭の事情ということでお休みの連絡をしておいてちょうだい」
「王太子殿下にはいかがいたしますか?」
「んー、そうねぇ。きっとエレオノーラ様からご連絡されているでしょう。大丈夫よ」
「ホースタイン様にはいかがいたしましょう?」
「そうね。スティーブン様には侯爵家に帰ると連絡して頂戴。明日も来てくださった時にいなかったら失礼だもの」
「かしこまりました」

侍女が頭を下げて部屋を退出したのを確認してからアンネマリーはもう一度手紙を確認する。
「それにしてもエレオノーラ様は大丈夫かしら? ストーカーだなんて……」
そこにはエレオノーラがとあるパーティで挨拶したウオレイクの王子に付き纏われて困っているという内容が書いてあった。
その王子はエレオノーラが出席する所に現れてしつこく求婚してくるらしい。
いくら婚約が内定していると説明しても信じてもらえず、とうとうサーナインにお忍びで避難してくるという内容だった。
相手が王子であることで中々注意もできず困り果てていると訴えていた。
エレオノーラが避難している間にサーナインと協議の上婚約を早急に発表する予定とのことだ。
「ウオレイクの王子というとアレクサン王子よね。確かに気が荒い方と聞いたことがあるわ」
アンネマリーは繊細で可愛らしいエレオノーラを思い浮かべため息を吐いたのだった。

「アンネマリー!!」
アンネマリーが実家である侯爵家に戻ると待ち構えていたようにエレオノーラが抱きついて来た。
「エレオノーラ様、ご到着に間に合わず申し訳ございませんでした。道中何事ありませんでしたか?」
「大丈夫よ。アンネマリーに会えて、とても嬉しいわ!! あの男の顔を見なくていいなんて本当に快適よ!」
エレオノーラにしては珍しく怒った顔で腕を腰に当てた。
「ふふふ、エレオノーラ様がそのように仰るなんて、アレクサン王子はお嫌いになられたんですか?」
「本当にしつこいのよ! わたくしが何度もジョナス様と婚約すると言っても聞いてくださらないのよ!」
興奮するエレオノーラの手を取ってアンネマリーはテラスに向かった。視線でお茶の支度を侍女に命じると侍女が頷いて動き出す。
「少しお茶をいただきませんか? わたくしエレオノーラ様とゆっくりお話ししたいですわ」
「え、ええ、そうね。わたくしったら、ごめんなさいね。アンネマリー、貴女はお元気だったの? 学校に行っていると聞いたわ。どんな所? わたくし、学校に行ったことなくて……ジョナス様もいらっしゃるのよね」
少し恥ずかしそうに聞いてきたエレオノーラはいつもの可愛らしい様子に戻って王太子の現状を聞きたがった。
「ゆっくりお話しいたしましょう」
アンネマリーはにっこりと微笑んでエレオノーラと共にテラスに向かったのだった。
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