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1巻
1-2
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「お前の言った通りだな。帰るぞ!」
そう言って向きを変えたらしい男の子に、私はカチンときてきゅっと眉根を寄せた。
「ちょっと待って! 帰る前にさっきの失礼な物言いを謝るべきよ。だって、間違えたのはあなたじゃない!」
「なんだと! 僕を誰だと思ってるんだ!」
「知らないよ。自分で名乗りなよ!」
「生意気な女だな! ちゃんとこっちを見て話せ!」
「見えないんだから、仕方がないでしょ!」
「え⁉」
驚いた声をあげる男の子に、隣に控えているお付きの人が言う。
「殿下! こちらはホースタイン公爵家のご令嬢かと思われます」
「……ああ、そう言えば聞いたことがあるな。お前が公爵家の優良物件か⁉」
「優良物件?」
「なんだ? 知らないのか? 城では皆が話しているぞ? 目が見えない跡取り娘はお買い得だと。なんのことかはわからないがな」
ふふんと威張る男の子のことを、お付きの人が急いで止めに入る。
きっと、この子はなんのことかわからずに言ったんだろうけれど、私は自分が外からどう見られているのかをその時初めて知った。
「なるほどね。確かにそうかもね」
少し考えるように呟くと、男の子のお付きの人が慌ててフォローを入れた。
「大変申し訳ございませんでした。ホースタイン公爵令嬢アリシア様とお見受けいたします。私は第五王子カイル・サーナイン殿下の側近をしております、クラウドと申します。殿下の度重なる失言、殿下に代わりまして、お詫び申し上げます」
見えないけれど、なんとなく土下座してるみたい。後ろの殿下はそのままかな?
「ふん、盲目なら仕方がない。お前の無礼も許してやる」
「殿下!」
あまりにも上からの物言いに、私は逆におかしくなってきた。
だって前世で本で読んだ王子様とはかけ離れた態度で、負けず嫌いの威張りんぼなんだもの。
「もういいよ。私はアリシア・ホースタイン。五歳よ。あなたは?」
「……カイルだ。同じ年だな」
気まずげに自分の名前を言う王子様に、私はニカッと歯を見せて笑いかける。
「折角だから一緒に遊ばない?」
「お前は目が見えないのだろう? なにができるんだ?」
「駆けっことか? ほら、いっくよーー」
そう言って紐を手探りで探すと走り出した。
すると、後ろから「ずるいぞ」という声が聞こえて、追いかけてくる気配がする。
「早くこのロープの端についたほうが勝ちだよ‼」
「おまっ⁉ 待て!」
「あはは、やっだよーー!」
そうして、私は王子様と何度も駆けっこをして遊んだ。
初めて同じ年の子供と遊ぶのは、楽しくて仕方がなかった。
しかも、私はかなり足が速いらしく、王子様に全勝したから気分もいい。
「はぁはぁ。また、勝った!」
「はぁはぁ。お前速すぎだぞ!」
芝生に座りこみ、笑みを浮かべる私の隣に、息を切らした王子様がドサリと勢いよく腰を下ろす。
「だって毎日ここで走ってるもん。王子様は?」
「カイルでいい。僕は剣の稽古で走るくらいだな」
「じゃあ、カイルって呼ぶね。ねぇ、カイルはどうしてこんな森の奥まで来たの? お父様からは、王家の敷地からここまで、子供の足ではかなり距離があるって聞いたよ」
「…………」
私が尋ねると、カイルはボソボソとなにやら呟いた。しかし、その声はあまりにも小さく、きちんと聞き取れない。
「なに?」
「……勉強さぼってきたんだよ!」
少しの沈黙の後、自棄になって叫ぶカイルに、私は小首を傾げた。
「勉強?」
「ああ。歴史とかちょーつまんないぞ。僕は剣の稽古のほうが好きだ」
「でもさ、いいじゃん。私なんて目が見えないから、本とか読めないよ。歴史の本が読めるなんて、すっごく羨ましい‼」
「そ、そうか?」
「そうだよ! 私もこれからマナーの勉強が始まるけど、そういうことも勉強したいな」
両手を組んでキラキラと目を輝かせる私の横で、カイルが小さな声で言う。
「お……お前が知りたいなら、僕が教えてやってもいいぞ」
「え⁉」
「お前が知りたいことを僕が勉強して、ここでお前に話して聞かせてやってもいいと言ってるんだ!」
「ほんと?」
「ああ。だって、お前は本を読んだりできないんだろ。しょうがないなっ」
妙に早口で言うカイルを不思議に思いつつも、私は嬉しくなって微笑んだ。
「アリシアでいいよ。カイル、ありがと。ほんとに嬉しい!」
私がお礼を言うと、カイルが少し言いにくそうに聞いた。
「ア、アリシア。一ついいか?」
「ん?」
「お前……本当に見えないのか?」
「うん。見えないよ」
「ちょっと、いいか?」
そう言うと、カイルは私の顔に両手を添えて、少し上を向かせる。
私は見えない目を、目一杯広げてみた。
「こんなに澄んだ紫なのにな……」
残念そうなカイルに明るい声で返す。
「そんな声出さないで。結構楽しいんだよ? 屋敷の中ではいつでも冒険気分だし、色々な物を想像してみると、とっても楽しいの!」
私はカイルのいるほうに向かって、満面の笑みを浮かべる。
「っ‼」
カイルの息を呑む音が聞こえた後、彼は慌てて立ち上がった。
「どうしたの?」
「か、帰る。明日も来られるのか?」
「うーん、多分今くらいの時間なら大丈夫かな」
「わかった。知りたいのは歴史だけか?」
「うん。今のところね」
「そうか。じゃあまた明日な」
それだけ言うと、カイルはクラウドさんを連れて王家側の森の中に帰っていった。
私がカイルが歩いて行ったほうに顔を向けていると、後ろから声がかかる。
「お嬢様、お言葉遣いをもう少しお勉強されたほうがよろしいですね」
ケイトは呆れたようにそう言いながら、手を引いて立たせてくれた。
「やっぱり王子様には失礼だった?」
「さようでございますよ。カイル殿下がお許しくださったのでよかったですが、厳しい方でしたら不敬罪に問われます」
「えー。私はまだ五歳だよ」
「それでもです」
「はーい」
私は、帰り道にケイトからお小言を言われながらも、明日もカイルと遊べることにワクワクしていた。
やっぱり子供は、子供同士で遊ぶのが一番楽しい。
それから私とカイルは、毎日のように広場で遊んだり、話したり、本の内容を聞いたりして過ごしたのだった。
~・~♦ アリシア七歳 ♦~・~
そんなこんなで、私は七歳になりました。
相変わらず、カイルとは週三回くらいは広場で会って遊んでいるが、午前中は家庭教師の先生と勉強することが多くなった。
「――となっております。お嬢様? アリシアお嬢様!」
「あ! ごめんなさい。あまりにいい香りがしてきたので……」
私は、外からふわりと漂ってきた花の香りに、顔を綻ばせた。
あの極寒のお散歩から数ヶ月後にやってきた春、念願のお花畑で走るという夢を叶えて以来、庭に咲く花の香りが大好きなのだ。
「まぁ、いいでしょう。今日の授業はここまでにいたしますので、明日までにきちんと復習をなさってください」
「はい」
そう言うと先生は部屋を出ていった。
私は前世でいうボイスレコーダーに向かって「録音停止」と呟くと、それをテーブルの上から手探りで見つけて手に取った。
この世界はやはり、前世の世界と同等、もしくはそれ以上の文明を有しているらしい。
多分機械なのだとは思うが、手に取ったボイスレコーダーには一つもボタンがない。触り心地もツルツルで、言うなればそこら辺に落ちている石のようだ。
でも、私が録音と言えば声を録音してくれるし、再生と言えば流れるし、昨日の数学と言えばその授業が再生される。
今のところ、全ての授業のノート代わりに録音しているけれど、容量不足になることもない。
凄いよね。技術の進歩? それともこれが魔法なのかしら?
私の両親は赤ちゃんの頃に話していた通り、私に魔法の存在を明かしていない。完璧に秘密を守り通している。
それでも彼らの話をちゃんと聞いていた私は、これが魔法? それともこれ? と考えていたが、疑わしくても結果としては全くわからなかった。
誰かに聞いてみようかと考えもしたが、両親が私のために隠しているなら、話してくれるまで待つべきだろう。
それまでは、便利な道具として使うだけでいい。
「誰か来て」
私が部屋で呟くと、あっという間に侍女がやってきた。
これも凄く不思議なのだ。
その部屋に誰もいなくても、呼ぶだけですぐに来てくれるから、防犯カメラ的なものがあると踏んでいる。
監視されているようだが、自分ではできないことも多い私にはありがたい。
「なにか御用でしょうか? お嬢様」
「あっ、ケイトなの? よかった。お母様にお勉強が終わったと伝えてくれるかしら? ランチをご一緒したいの」
声を聞いてやってきたのが、昔からお世話をしてくれているケイトだとわかり、伝言をお願いした。
こんな花のいい香りが漂っている時に、一人で部屋の中で食事など取りたくない。
普段、朝食は家族全員で取るが、ランチやディナーは各々取ることも珍しくない。これは私がまだ子供であっても、この世界の貴族社会では普通のことらしい。
「かしこまりました。ランチはどちらで召し上がりますか?」
「うーん。お花のいい香りがしてるから、テラスがいいわ」
「かしこまりました」
そう言うとパタンと音がしたので、ケイトが退出したことがわかった。
私はドアから窓のほうに顔を向けて、もう一人の気配に向かって声をかけた。
「えっと、あなたはだーれ?」
すると、明るい笑い声と共によく知っている声が答える。
「なんだ、気付いていたのかい? お父様はアリシアを驚かせたかったのに」
足音の癖でパパさんだとは思っていたので、声のしたほうに笑顔を向ける。
「やっぱりお父様だったのね?」
ふふふと笑って手を前に出すと、大きくて温かい腕に包まれた。
「僕のお姫様をテラスまでエスコートしてもよろしいですか?」
戯けた調子で言うパパさんに声を立てて笑うと、私はその腕にギュッと抱きついた。
「抱っこしてくれるなら喜んで‼」
七歳になって、色々なことを勉強してきたけれど、変わらないものが二つある。
それは見えない目と、両親の愛情。
流石の私も、真っ暗な世界に何度か心が折れそうになったが、その度にこの優しい両親は私を支えて応援してくれたのだ。
だから、私は今世の両親のことが大好きだ。
ガッシリとした腕に抱かれてテラスに出ると、ふわりと花の香りに混ざって、優しい安心する匂いがした。
「お母様!」
パパさんに下ろしてもらい、その香りのほうに向かって手を伸ばして歩いた。
すると、数歩歩いたところで柔らかな腕に抱きしめられる。
「あらあら、わたくしの可愛い娘は元気かしら?」
「ええ! お父様に抱っこしてもらいましたの!」
「ふふ、もう貴女はレディなのよ。きちんとエスコートされて歩かなくてはダメじゃない。スティーブン、あなたもよ!」
「「はーい」」
パパさんと私の声に、ママさんの笑い声が重なる。
ほんとに幸せだなぁ。
盲目であることを差し引いても、私は今の人生に心から感謝している。
両親との楽しいランチの後は、恒例の広場遊びの時間だ。
五歳のあの日から、私とカイルは結構な頻度で会っていた。
カイルは来るたびに珍しい話や美味しいお菓子、面白い本なんかを持ってきてくれる。相変わらずの駆けっこの後に、二人で芝生に座って色々な話をしていることも多い。
カイルの側近であるクラウドさん曰く、私に教えるために、カイルは授業をサボらなくなり、真面目に勉強するようになったんだって。
とても感謝されました。
広場に着くと、ケイトは一旦立ち止まり様子を窺ってから状況を説明してくれた。
「お嬢様。カイル殿下がいらっしゃってますよ」
ケイトが言うやいなや、少し先からカイルの声が響く。
「あ! アリシア!」
カイルが駆け寄ってくる気配がしたので、私はケイトから手を離し、腕を前に出した。
するとすぐに私の手は、カイルの温かい手に包まれた。
「こんにちは。カイル」
「ああ、こんにちは。今日は少し遅かったね」
カイルが少し不満そうに話したので、私は結構待たせてしまったかと申し訳なくなる。
「待たせてしまったのね? ごめんなさい。お父様とお母様とランチをいただいていたの」
私は両手を胸の前で組んで頭を下げる。
すると、カイルは私の肩をトントンと叩き、コホンと咳払いしてから話しだした。
「いや、僕が早く来すぎたんだな。気にしないで」
そうしてカイルは、慣れた手つきで私をエスコートすると、いつものように木と木の間に結んである紐を掴ませる。
「さあ、今日は負けないぞ!」
「私だって‼」
その声を合図に、今日も二人で駆けっこを始めた。
最近はカイルが勝つことも多くなってきて、五分五分の勝敗となっている。今日は私が、カイルより早くゴールした。
「やったわ! 私の勝――」
「ア、アリシア! 動くな‼」
いつものように勝利宣言しようとしたら、カイルが切羽詰まったように大声をあげた。
「え?」
突然のカイルの声に私はビクッと止まる。
「クラウド! 狼だ‼ 剣を‼」
「カイル殿下! 間に合いません!」
「仕方がない! 攻撃魔法を使うぞ‼」
「はい! ご助力いたします‼」
カイル達のただならぬ様子に、私は訳もわからずキョロキョロしていた。
「え⁉ なに?」
「アリシア! 走れと言ったら僕のほうに来られるか?」
真剣に聞かれて、私も力強く頷いた。
「うん!」
「殿下! 今です!」
「よし、走れ! アリシア!」
私は走った。
まっすぐカイルの声がするほうに。
紐も持たずに全力疾走するのは初めてだったけど、この先にカイルがいると思うと、迷うことなく走れる。
その途端、後ろでなにかが弾ける音がして、獣の断末魔の叫びが響いた。
私がそのまま走ってカイルの側まで行くと、いつもよりも数倍強く手を引かれて、痛いくらいに抱きしめられた。
「アリシア‼ 大丈夫か?」
「はぁはぁ、私は大丈夫! カイルは? ケイトは? クラウドは? 皆、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。狼は攻撃魔法で仕留めたから安心しろ」
「よかった」
安堵した私を更に強く抱きしめながら、カイルは少し震えているようだった。
二人で抱きしめ合って、しばらく息が整うのを待つ。私は、一向に緩まないカイルの腕をトントンと優しく叩いて話しかけた。
「カイル? もう大丈夫だよ?」
「ああ、ああ、わかってる。わかっているんだ。でも、アリシアが……アリシアが……」
「カイル?」
私はカイルの顔に手を当ててみて、その頬に涙が伝っているのを感じた。
「泣いているの? カイル」
「な、泣いてなんかいない! でも……心臓が止まりそうだよ」
「どうして?」
私が首を傾げると、カイルは自分の頬に触れる私の手をギュッと握った。
「アリシア! 僕は、君の目が見えないことを、よくわかっているつもりだった。でも、君は……君はさっき笑いながら狼に向かって走っていったんだよ!」
「え? そ、そうなの?」
「君にはわからないかもしれないけれど、その時の恐怖は言葉にできない……! まだ、手の震えが止まらないよ。攻撃魔法も初めて実際に使った。初めて……動物を殺めたんだ……」
「カ、カイル……」
カイルは震える体で再び私を力一杯抱きしめる。
私は自分の目が見えないことで、こんなにも傷つく人がいるのだと初めて知った。
そして、私を抱きしめながら震えているカイルに、ギュッと胸が締めつけられ、彼の背中を慰めるようにゆっくりと撫でた。
私が暗闇に囚われそうになると、お母様が必ずこうして落ち着かせてくれるのだ。
「カイル……ごめんね。心配かけてごめんね。怖い思いさせてごめんね。本当にごめんね。だから、もう泣かないで……」
「アリシア……」
今度は私の見えない瞳から涙が溢れた。
なにもできない私に。
無力な私に。
カイルを傷つけた私に、腹が立って堪らなかった。
「カ、カイル……」
「どうした?」
「悔しいの。なにもできない私がとても悔しいの」
「……うん」
私は自分に言い聞かせるように言うと、小さく頷くカイルの顔をガバッと両手で掴んだ。
「カイル、お願いがあるの! さっき使ってた魔法を私にも教えて頂戴!」
「え?」
「私だって自分の身くらい自分で守りたいわ! 大切な人達に私のために泣いて欲しくない。強くなりたいの‼」
もう、私は両親が話してくれるまで待ってなんていられなかった。
カイルは同じ歳なのに魔法で自分だけではなく、私のことまでも守ってくれた。
カイルみたいに他人までは守れないかもしれないけれど、自分くらいは自分自身の力で守りたい!
「カイル‼」
私は瞳から溢れ出る涙を手の甲でゴシゴシと拭い、カイルの胸元を掴んで迫る。カイルはビックリしたようだったが、私の肩をしっかりと掴むと力強い声音で話した。
「わかったよ。アリシアが攻撃魔法までいかなくても、防御魔法を身につけてくれたら僕も安心だ。一緒に練習してみよう!」
「――っ、うん! カイル、ありがとう!」
そうして、私とカイルは広場遊びの時間に、魔法の練習をすることになった。
私はカイルに、小さな頃に魔法を使うのは難しいと言われたこと、それで両親は魔法の存在自体を秘密にしていることを話した。
カイルはうんうんと相槌を打ちながら、私の話を聞いてくれた。
「じゃあ、僕たちの練習は公爵達に秘密ということかい?」
カイルが心配そうに確認する。
「そうね、そのほうがいいかもしれないわ。ケイトはどう思う?」
「……確かに旦那様や奥様にお話しになると、ご心配をおかけするかと思います」
私の脳裏に、心配のあまりカイルと会うことを禁止するパパさんの姿が思い浮かんだ。
「た、たしかに。じゃあ、ケイトも黙っていてね?」
「……かしこまりました」
言い出したら聞かないことを重々承知しているのだろう。ケイトは渋々認めてくれた。
「よし! じゃあ、明日からの魔法の練習は秘密にしてやろう」
「今からじゃないの?」
「それは無理だよ。魔法練習のことは秘密にするとしても、狼に襲われたことは、きちんと公爵に報告しないといけないからね」
「わかったわ」
私が素直に頷くと、カイルは私を公爵家まで送ってくれた。
二人が遊んでいることは、王家と公爵家では既に公認となっている。両親は、カイルから狼事件を聞いた途端、私を強く抱きしめた。
「カイル殿下、ありがとうございました! 本当にありがとうございました!」
パパさんは、私をしっかりと抱きしめながらも、カイルに何回もお礼を伝えた。ママさんはずっと「よかったわ。よかったわ」と涙ながらに繰り返す。
二人にとっても、ショックな出来事であるのがよくわかった。
私は、明日からの魔法練習を頑張ろうと、改めて気合を入れたのだった。
そう言って向きを変えたらしい男の子に、私はカチンときてきゅっと眉根を寄せた。
「ちょっと待って! 帰る前にさっきの失礼な物言いを謝るべきよ。だって、間違えたのはあなたじゃない!」
「なんだと! 僕を誰だと思ってるんだ!」
「知らないよ。自分で名乗りなよ!」
「生意気な女だな! ちゃんとこっちを見て話せ!」
「見えないんだから、仕方がないでしょ!」
「え⁉」
驚いた声をあげる男の子に、隣に控えているお付きの人が言う。
「殿下! こちらはホースタイン公爵家のご令嬢かと思われます」
「……ああ、そう言えば聞いたことがあるな。お前が公爵家の優良物件か⁉」
「優良物件?」
「なんだ? 知らないのか? 城では皆が話しているぞ? 目が見えない跡取り娘はお買い得だと。なんのことかはわからないがな」
ふふんと威張る男の子のことを、お付きの人が急いで止めに入る。
きっと、この子はなんのことかわからずに言ったんだろうけれど、私は自分が外からどう見られているのかをその時初めて知った。
「なるほどね。確かにそうかもね」
少し考えるように呟くと、男の子のお付きの人が慌ててフォローを入れた。
「大変申し訳ございませんでした。ホースタイン公爵令嬢アリシア様とお見受けいたします。私は第五王子カイル・サーナイン殿下の側近をしております、クラウドと申します。殿下の度重なる失言、殿下に代わりまして、お詫び申し上げます」
見えないけれど、なんとなく土下座してるみたい。後ろの殿下はそのままかな?
「ふん、盲目なら仕方がない。お前の無礼も許してやる」
「殿下!」
あまりにも上からの物言いに、私は逆におかしくなってきた。
だって前世で本で読んだ王子様とはかけ離れた態度で、負けず嫌いの威張りんぼなんだもの。
「もういいよ。私はアリシア・ホースタイン。五歳よ。あなたは?」
「……カイルだ。同じ年だな」
気まずげに自分の名前を言う王子様に、私はニカッと歯を見せて笑いかける。
「折角だから一緒に遊ばない?」
「お前は目が見えないのだろう? なにができるんだ?」
「駆けっことか? ほら、いっくよーー」
そう言って紐を手探りで探すと走り出した。
すると、後ろから「ずるいぞ」という声が聞こえて、追いかけてくる気配がする。
「早くこのロープの端についたほうが勝ちだよ‼」
「おまっ⁉ 待て!」
「あはは、やっだよーー!」
そうして、私は王子様と何度も駆けっこをして遊んだ。
初めて同じ年の子供と遊ぶのは、楽しくて仕方がなかった。
しかも、私はかなり足が速いらしく、王子様に全勝したから気分もいい。
「はぁはぁ。また、勝った!」
「はぁはぁ。お前速すぎだぞ!」
芝生に座りこみ、笑みを浮かべる私の隣に、息を切らした王子様がドサリと勢いよく腰を下ろす。
「だって毎日ここで走ってるもん。王子様は?」
「カイルでいい。僕は剣の稽古で走るくらいだな」
「じゃあ、カイルって呼ぶね。ねぇ、カイルはどうしてこんな森の奥まで来たの? お父様からは、王家の敷地からここまで、子供の足ではかなり距離があるって聞いたよ」
「…………」
私が尋ねると、カイルはボソボソとなにやら呟いた。しかし、その声はあまりにも小さく、きちんと聞き取れない。
「なに?」
「……勉強さぼってきたんだよ!」
少しの沈黙の後、自棄になって叫ぶカイルに、私は小首を傾げた。
「勉強?」
「ああ。歴史とかちょーつまんないぞ。僕は剣の稽古のほうが好きだ」
「でもさ、いいじゃん。私なんて目が見えないから、本とか読めないよ。歴史の本が読めるなんて、すっごく羨ましい‼」
「そ、そうか?」
「そうだよ! 私もこれからマナーの勉強が始まるけど、そういうことも勉強したいな」
両手を組んでキラキラと目を輝かせる私の横で、カイルが小さな声で言う。
「お……お前が知りたいなら、僕が教えてやってもいいぞ」
「え⁉」
「お前が知りたいことを僕が勉強して、ここでお前に話して聞かせてやってもいいと言ってるんだ!」
「ほんと?」
「ああ。だって、お前は本を読んだりできないんだろ。しょうがないなっ」
妙に早口で言うカイルを不思議に思いつつも、私は嬉しくなって微笑んだ。
「アリシアでいいよ。カイル、ありがと。ほんとに嬉しい!」
私がお礼を言うと、カイルが少し言いにくそうに聞いた。
「ア、アリシア。一ついいか?」
「ん?」
「お前……本当に見えないのか?」
「うん。見えないよ」
「ちょっと、いいか?」
そう言うと、カイルは私の顔に両手を添えて、少し上を向かせる。
私は見えない目を、目一杯広げてみた。
「こんなに澄んだ紫なのにな……」
残念そうなカイルに明るい声で返す。
「そんな声出さないで。結構楽しいんだよ? 屋敷の中ではいつでも冒険気分だし、色々な物を想像してみると、とっても楽しいの!」
私はカイルのいるほうに向かって、満面の笑みを浮かべる。
「っ‼」
カイルの息を呑む音が聞こえた後、彼は慌てて立ち上がった。
「どうしたの?」
「か、帰る。明日も来られるのか?」
「うーん、多分今くらいの時間なら大丈夫かな」
「わかった。知りたいのは歴史だけか?」
「うん。今のところね」
「そうか。じゃあまた明日な」
それだけ言うと、カイルはクラウドさんを連れて王家側の森の中に帰っていった。
私がカイルが歩いて行ったほうに顔を向けていると、後ろから声がかかる。
「お嬢様、お言葉遣いをもう少しお勉強されたほうがよろしいですね」
ケイトは呆れたようにそう言いながら、手を引いて立たせてくれた。
「やっぱり王子様には失礼だった?」
「さようでございますよ。カイル殿下がお許しくださったのでよかったですが、厳しい方でしたら不敬罪に問われます」
「えー。私はまだ五歳だよ」
「それでもです」
「はーい」
私は、帰り道にケイトからお小言を言われながらも、明日もカイルと遊べることにワクワクしていた。
やっぱり子供は、子供同士で遊ぶのが一番楽しい。
それから私とカイルは、毎日のように広場で遊んだり、話したり、本の内容を聞いたりして過ごしたのだった。
~・~♦ アリシア七歳 ♦~・~
そんなこんなで、私は七歳になりました。
相変わらず、カイルとは週三回くらいは広場で会って遊んでいるが、午前中は家庭教師の先生と勉強することが多くなった。
「――となっております。お嬢様? アリシアお嬢様!」
「あ! ごめんなさい。あまりにいい香りがしてきたので……」
私は、外からふわりと漂ってきた花の香りに、顔を綻ばせた。
あの極寒のお散歩から数ヶ月後にやってきた春、念願のお花畑で走るという夢を叶えて以来、庭に咲く花の香りが大好きなのだ。
「まぁ、いいでしょう。今日の授業はここまでにいたしますので、明日までにきちんと復習をなさってください」
「はい」
そう言うと先生は部屋を出ていった。
私は前世でいうボイスレコーダーに向かって「録音停止」と呟くと、それをテーブルの上から手探りで見つけて手に取った。
この世界はやはり、前世の世界と同等、もしくはそれ以上の文明を有しているらしい。
多分機械なのだとは思うが、手に取ったボイスレコーダーには一つもボタンがない。触り心地もツルツルで、言うなればそこら辺に落ちている石のようだ。
でも、私が録音と言えば声を録音してくれるし、再生と言えば流れるし、昨日の数学と言えばその授業が再生される。
今のところ、全ての授業のノート代わりに録音しているけれど、容量不足になることもない。
凄いよね。技術の進歩? それともこれが魔法なのかしら?
私の両親は赤ちゃんの頃に話していた通り、私に魔法の存在を明かしていない。完璧に秘密を守り通している。
それでも彼らの話をちゃんと聞いていた私は、これが魔法? それともこれ? と考えていたが、疑わしくても結果としては全くわからなかった。
誰かに聞いてみようかと考えもしたが、両親が私のために隠しているなら、話してくれるまで待つべきだろう。
それまでは、便利な道具として使うだけでいい。
「誰か来て」
私が部屋で呟くと、あっという間に侍女がやってきた。
これも凄く不思議なのだ。
その部屋に誰もいなくても、呼ぶだけですぐに来てくれるから、防犯カメラ的なものがあると踏んでいる。
監視されているようだが、自分ではできないことも多い私にはありがたい。
「なにか御用でしょうか? お嬢様」
「あっ、ケイトなの? よかった。お母様にお勉強が終わったと伝えてくれるかしら? ランチをご一緒したいの」
声を聞いてやってきたのが、昔からお世話をしてくれているケイトだとわかり、伝言をお願いした。
こんな花のいい香りが漂っている時に、一人で部屋の中で食事など取りたくない。
普段、朝食は家族全員で取るが、ランチやディナーは各々取ることも珍しくない。これは私がまだ子供であっても、この世界の貴族社会では普通のことらしい。
「かしこまりました。ランチはどちらで召し上がりますか?」
「うーん。お花のいい香りがしてるから、テラスがいいわ」
「かしこまりました」
そう言うとパタンと音がしたので、ケイトが退出したことがわかった。
私はドアから窓のほうに顔を向けて、もう一人の気配に向かって声をかけた。
「えっと、あなたはだーれ?」
すると、明るい笑い声と共によく知っている声が答える。
「なんだ、気付いていたのかい? お父様はアリシアを驚かせたかったのに」
足音の癖でパパさんだとは思っていたので、声のしたほうに笑顔を向ける。
「やっぱりお父様だったのね?」
ふふふと笑って手を前に出すと、大きくて温かい腕に包まれた。
「僕のお姫様をテラスまでエスコートしてもよろしいですか?」
戯けた調子で言うパパさんに声を立てて笑うと、私はその腕にギュッと抱きついた。
「抱っこしてくれるなら喜んで‼」
七歳になって、色々なことを勉強してきたけれど、変わらないものが二つある。
それは見えない目と、両親の愛情。
流石の私も、真っ暗な世界に何度か心が折れそうになったが、その度にこの優しい両親は私を支えて応援してくれたのだ。
だから、私は今世の両親のことが大好きだ。
ガッシリとした腕に抱かれてテラスに出ると、ふわりと花の香りに混ざって、優しい安心する匂いがした。
「お母様!」
パパさんに下ろしてもらい、その香りのほうに向かって手を伸ばして歩いた。
すると、数歩歩いたところで柔らかな腕に抱きしめられる。
「あらあら、わたくしの可愛い娘は元気かしら?」
「ええ! お父様に抱っこしてもらいましたの!」
「ふふ、もう貴女はレディなのよ。きちんとエスコートされて歩かなくてはダメじゃない。スティーブン、あなたもよ!」
「「はーい」」
パパさんと私の声に、ママさんの笑い声が重なる。
ほんとに幸せだなぁ。
盲目であることを差し引いても、私は今の人生に心から感謝している。
両親との楽しいランチの後は、恒例の広場遊びの時間だ。
五歳のあの日から、私とカイルは結構な頻度で会っていた。
カイルは来るたびに珍しい話や美味しいお菓子、面白い本なんかを持ってきてくれる。相変わらずの駆けっこの後に、二人で芝生に座って色々な話をしていることも多い。
カイルの側近であるクラウドさん曰く、私に教えるために、カイルは授業をサボらなくなり、真面目に勉強するようになったんだって。
とても感謝されました。
広場に着くと、ケイトは一旦立ち止まり様子を窺ってから状況を説明してくれた。
「お嬢様。カイル殿下がいらっしゃってますよ」
ケイトが言うやいなや、少し先からカイルの声が響く。
「あ! アリシア!」
カイルが駆け寄ってくる気配がしたので、私はケイトから手を離し、腕を前に出した。
するとすぐに私の手は、カイルの温かい手に包まれた。
「こんにちは。カイル」
「ああ、こんにちは。今日は少し遅かったね」
カイルが少し不満そうに話したので、私は結構待たせてしまったかと申し訳なくなる。
「待たせてしまったのね? ごめんなさい。お父様とお母様とランチをいただいていたの」
私は両手を胸の前で組んで頭を下げる。
すると、カイルは私の肩をトントンと叩き、コホンと咳払いしてから話しだした。
「いや、僕が早く来すぎたんだな。気にしないで」
そうしてカイルは、慣れた手つきで私をエスコートすると、いつものように木と木の間に結んである紐を掴ませる。
「さあ、今日は負けないぞ!」
「私だって‼」
その声を合図に、今日も二人で駆けっこを始めた。
最近はカイルが勝つことも多くなってきて、五分五分の勝敗となっている。今日は私が、カイルより早くゴールした。
「やったわ! 私の勝――」
「ア、アリシア! 動くな‼」
いつものように勝利宣言しようとしたら、カイルが切羽詰まったように大声をあげた。
「え?」
突然のカイルの声に私はビクッと止まる。
「クラウド! 狼だ‼ 剣を‼」
「カイル殿下! 間に合いません!」
「仕方がない! 攻撃魔法を使うぞ‼」
「はい! ご助力いたします‼」
カイル達のただならぬ様子に、私は訳もわからずキョロキョロしていた。
「え⁉ なに?」
「アリシア! 走れと言ったら僕のほうに来られるか?」
真剣に聞かれて、私も力強く頷いた。
「うん!」
「殿下! 今です!」
「よし、走れ! アリシア!」
私は走った。
まっすぐカイルの声がするほうに。
紐も持たずに全力疾走するのは初めてだったけど、この先にカイルがいると思うと、迷うことなく走れる。
その途端、後ろでなにかが弾ける音がして、獣の断末魔の叫びが響いた。
私がそのまま走ってカイルの側まで行くと、いつもよりも数倍強く手を引かれて、痛いくらいに抱きしめられた。
「アリシア‼ 大丈夫か?」
「はぁはぁ、私は大丈夫! カイルは? ケイトは? クラウドは? 皆、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。狼は攻撃魔法で仕留めたから安心しろ」
「よかった」
安堵した私を更に強く抱きしめながら、カイルは少し震えているようだった。
二人で抱きしめ合って、しばらく息が整うのを待つ。私は、一向に緩まないカイルの腕をトントンと優しく叩いて話しかけた。
「カイル? もう大丈夫だよ?」
「ああ、ああ、わかってる。わかっているんだ。でも、アリシアが……アリシアが……」
「カイル?」
私はカイルの顔に手を当ててみて、その頬に涙が伝っているのを感じた。
「泣いているの? カイル」
「な、泣いてなんかいない! でも……心臓が止まりそうだよ」
「どうして?」
私が首を傾げると、カイルは自分の頬に触れる私の手をギュッと握った。
「アリシア! 僕は、君の目が見えないことを、よくわかっているつもりだった。でも、君は……君はさっき笑いながら狼に向かって走っていったんだよ!」
「え? そ、そうなの?」
「君にはわからないかもしれないけれど、その時の恐怖は言葉にできない……! まだ、手の震えが止まらないよ。攻撃魔法も初めて実際に使った。初めて……動物を殺めたんだ……」
「カ、カイル……」
カイルは震える体で再び私を力一杯抱きしめる。
私は自分の目が見えないことで、こんなにも傷つく人がいるのだと初めて知った。
そして、私を抱きしめながら震えているカイルに、ギュッと胸が締めつけられ、彼の背中を慰めるようにゆっくりと撫でた。
私が暗闇に囚われそうになると、お母様が必ずこうして落ち着かせてくれるのだ。
「カイル……ごめんね。心配かけてごめんね。怖い思いさせてごめんね。本当にごめんね。だから、もう泣かないで……」
「アリシア……」
今度は私の見えない瞳から涙が溢れた。
なにもできない私に。
無力な私に。
カイルを傷つけた私に、腹が立って堪らなかった。
「カ、カイル……」
「どうした?」
「悔しいの。なにもできない私がとても悔しいの」
「……うん」
私は自分に言い聞かせるように言うと、小さく頷くカイルの顔をガバッと両手で掴んだ。
「カイル、お願いがあるの! さっき使ってた魔法を私にも教えて頂戴!」
「え?」
「私だって自分の身くらい自分で守りたいわ! 大切な人達に私のために泣いて欲しくない。強くなりたいの‼」
もう、私は両親が話してくれるまで待ってなんていられなかった。
カイルは同じ歳なのに魔法で自分だけではなく、私のことまでも守ってくれた。
カイルみたいに他人までは守れないかもしれないけれど、自分くらいは自分自身の力で守りたい!
「カイル‼」
私は瞳から溢れ出る涙を手の甲でゴシゴシと拭い、カイルの胸元を掴んで迫る。カイルはビックリしたようだったが、私の肩をしっかりと掴むと力強い声音で話した。
「わかったよ。アリシアが攻撃魔法までいかなくても、防御魔法を身につけてくれたら僕も安心だ。一緒に練習してみよう!」
「――っ、うん! カイル、ありがとう!」
そうして、私とカイルは広場遊びの時間に、魔法の練習をすることになった。
私はカイルに、小さな頃に魔法を使うのは難しいと言われたこと、それで両親は魔法の存在自体を秘密にしていることを話した。
カイルはうんうんと相槌を打ちながら、私の話を聞いてくれた。
「じゃあ、僕たちの練習は公爵達に秘密ということかい?」
カイルが心配そうに確認する。
「そうね、そのほうがいいかもしれないわ。ケイトはどう思う?」
「……確かに旦那様や奥様にお話しになると、ご心配をおかけするかと思います」
私の脳裏に、心配のあまりカイルと会うことを禁止するパパさんの姿が思い浮かんだ。
「た、たしかに。じゃあ、ケイトも黙っていてね?」
「……かしこまりました」
言い出したら聞かないことを重々承知しているのだろう。ケイトは渋々認めてくれた。
「よし! じゃあ、明日からの魔法の練習は秘密にしてやろう」
「今からじゃないの?」
「それは無理だよ。魔法練習のことは秘密にするとしても、狼に襲われたことは、きちんと公爵に報告しないといけないからね」
「わかったわ」
私が素直に頷くと、カイルは私を公爵家まで送ってくれた。
二人が遊んでいることは、王家と公爵家では既に公認となっている。両親は、カイルから狼事件を聞いた途端、私を強く抱きしめた。
「カイル殿下、ありがとうございました! 本当にありがとうございました!」
パパさんは、私をしっかりと抱きしめながらも、カイルに何回もお礼を伝えた。ママさんはずっと「よかったわ。よかったわ」と涙ながらに繰り返す。
二人にとっても、ショックな出来事であるのがよくわかった。
私は、明日からの魔法練習を頑張ろうと、改めて気合を入れたのだった。
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