悪役令嬢のお母様……でしたの

波湖 真

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第八章 不穏な繋がり

79、コーデリアはどこ、、、なの?

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「アルバート、どっちに行けばいいんだ?」
地下室から脱出して直ぐにシモン王子がアルバートを振り返って聞いてきました。
アルバートは直ぐに追跡魔法を確認していると顔を曇らせました。
「どうしたの?」
わたくしがアルバートに顔を向けるとアルバートはその場で立ち止まり再度魔法を確認しています。
アルバートの言っていた追跡魔法とはその人物の生命エネルギーに印をつけるような古代魔法ですの。追跡している人物が生きていれば問題ないはずなのです。
「母上、コーデリアはこの建物の三階にいるようなのですが、生命力が弱まっているようなんです」
「え? でも、シールドの反応はないのでしょう?」
「はい、危険には晒されていないのに……。どういうことでしょうか?」
「確かにおかしいですわね」
わたくしとアルバートが話していると痺れを切らしたシモン王子が割り込んでくる。
「おば様、僕にもわかるように説明して下さい」
「シモン王子、アルバートが使った追跡魔法は追跡される人物の状態もわかるようになっておりますの」
「そ、それでコーデリアは!!」
「それがおかしいのですわ。アルバートのシールドは、わたくしと同等の効果があるのです。ですからコーデリアには指一本触れていないはずなのです。それなのにコーデリアの生命エネルギーが弱まっているようですの」
「それは、どういう状況なんですか?」
「物理的な危害は加えられていないが精神的、もしくは人体内部になんらかの影響を与えられた可能性が高いです」
アルバートは悔しそうに口を結んだ。
「アルバート、大丈夫ですわ。さぁ、急ぎますわよ」
アルバートの言葉を聞いて呆然としていたシモン王子の腕を叩くとハッとして顔を上げてわたくしを不安そうに見てきます。
「おば様、コーデリアは、まさか……」
「シモン王子、今は急ぎましょう」
わたくしの言葉にシモン王子は背筋を伸ばすと頷きました。
「コーデリア、待っていてくれ」
先頭を切って歩くシモン王子の背中を見つめながら足速に歩きます。その間にわたくしは廊下の窓からは夕日が眩しいほどに差し込んで来ています。
もうすぐ夜なのです。こんな廃墟では夜は灯りをとれないですし、ここは暗くなる前になんとかしなければならないでしょう。
そう思っていたときにアルバートが爆弾発言をかましたのです。
「母上、もしかすると辺境伯の狙いはコーデリアを傷物にすることでは?」
「アルバート、黙って!!」
わたくしがその可能性を考えなかったと言えば嘘になりますが、考えたくありませんでした。
この世界では女性の価値を下げるのは本当に簡単なのです。
知らない男性と一晩でも一緒にいたら、何もなかったとしても、その女性はもう二度と結婚はできません。
だからこそ、わたくし達はここにいるんですもの。
「今救い出せば問題ない」
シモン王子がとても低い声でつぶやきました。
わたくしでもゾッとする声でした。
「アルバート! どっちだ!」
シモン王子のあの端正なお顔も般若のようです。
わたくしとアルバートはただただ方向を示してついていくのみでした。
途中何人もの男達に出くわしたのですがシモン王子が瞬殺してますわ。
「次はどっちだ!」
目の前の男を切り捨てて、返り血を浴びたシモン王子をもう誰も止められません。
アルバートもびっくりしているようです。
「あそこの部屋から反応があります」
とうとうアルバートがある一室を指差しました。
このエリアはかつては主寝室があったのか豪華な設の部屋が並んでいるようでした。
そんな朽ち果てた装備品には目もくれずシモン王子はその部屋のノブに手をかけます。
ガチャ
開かないようです。
ガチャガチャガチャ
見かねたわたくしが魔法で開けようとしたその時、シモン王子が頑丈そうなドアを蹴破ったのです。
きゃーーーー
わたくしは目の前の光景に声にならない声を上げるしかございません。
飛び込んだシモン王子を尻目にわたくしはアルバートと顔を見合わせます。
「母上、私たちは必要ないのでは?」
「そ、そうですわね。ここはシモン王子にお任せしましょう」
二人で頷き合うとわたくし達はその場から留まることにしたのでした。
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