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第八章 不穏な繋がり

67、厄介な恩人(シモン視点)

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「シモン様!!!!!」
アルバートがコーデリアを連れて行ってから数秒後ミアが僕に向かって大声で叫んだ。
人前で更には公の場でこの国の王子を大声で呼びつけるなんて本来ならば許されるものではない。僕は顔が引き攣るのを止めることができなかった。
「何か?」
不機嫌さを、隠すつもりもなくミアの顔を睨むように見つめる。
流石のミアも気づいたのかハッとした顔をして下を向いた。
「あの、今コーデリア様と一緒にいたって聞いたんですが!」
まるで責めるような口調。婚約者でもないくせに!!
「ああ、そうだ。僕が僕の愛しい婚約者と共にいて何か問題でもあるのか?」
ミアが困ったようにヘラヘラと笑う。僕はこういう笑いが嫌いだ。コーデリアは絶対にこういう風には笑わない。
「え? だってお二人はもう婚約者じゃありませんよね? 変な噂になっちゃいますよ?」
僕は頭痛を感じて目を閉じた。駄目だ。これはいくら平民であっても許容できる内容ではない。
手の平をギュッと握って考えをまとめる。避難するのではなく事実を淡々と伝えるのだ。
深く息を吐くと目を開けた。少し視線を下にずらすと期待をこもった目がこちらを見ていた。湧き上がる不快感を抑えつけて笑顔を作る。
「君は大きな勘違いをしている」
「へ? 何をですか?」
「僕はコーデリアとの婚約を解消していないし、するつもりもない」
「でも、この間……」
「愛する者同士、誤解から痴話喧嘩くらいはするだろう? あまり事を荒立たせないで欲しかった」
「そ、そんな、シモンは私と……」
敬称まで止めるか、普通……
それでも、僕は笑顔を絶やすことはなかった。きっちり言うには強すぎる言葉も笑顔と共になら伝えることも可能だろう。
「そして、ミア、君は確かに恩人だが、その事は他言無用となっていたはずだ」
「でも!」
「もう君に会うこともないだろう。あの約束が破棄された以上、君への支援は打ち切るしかない。明日からは平民の学校に行くといい」
それだけを伝えると僕は踵を返してコーデリアの後を追った。
先に約束を違えたのはミアだ。そのことに異議は認めない。そして、僕のコーデリアを傷つけた罪もある。軽すぎるくらいだ。
全く胸が痛まないことが逆に清々しい。
呆然とするミアを遠巻きに人々が集まり出した。
自らが広めた噂だ。自分で解決するがいい。
僕はそのまま背を向けて歩き去った。
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