68 / 82
第八章 不穏な繋がり
67、厄介な恩人(シモン視点)
しおりを挟む
「シモン様!!!!!」
アルバートがコーデリアを連れて行ってから数秒後ミアが僕に向かって大声で叫んだ。
人前で更には公の場でこの国の王子を大声で呼びつけるなんて本来ならば許されるものではない。僕は顔が引き攣るのを止めることができなかった。
「何か?」
不機嫌さを、隠すつもりもなくミアの顔を睨むように見つめる。
流石のミアも気づいたのかハッとした顔をして下を向いた。
「あの、今コーデリア様と一緒にいたって聞いたんですが!」
まるで責めるような口調。婚約者でもないくせに!!
「ああ、そうだ。僕が僕の愛しい婚約者と共にいて何か問題でもあるのか?」
ミアが困ったようにヘラヘラと笑う。僕はこういう笑いが嫌いだ。コーデリアは絶対にこういう風には笑わない。
「え? だってお二人はもう婚約者じゃありませんよね? 変な噂になっちゃいますよ?」
僕は頭痛を感じて目を閉じた。駄目だ。これはいくら平民であっても許容できる内容ではない。
手の平をギュッと握って考えをまとめる。避難するのではなく事実を淡々と伝えるのだ。
深く息を吐くと目を開けた。少し視線を下にずらすと期待をこもった目がこちらを見ていた。湧き上がる不快感を抑えつけて笑顔を作る。
「君は大きな勘違いをしている」
「へ? 何をですか?」
「僕はコーデリアとの婚約を解消していないし、するつもりもない」
「でも、この間……」
「愛する者同士、誤解から痴話喧嘩くらいはするだろう? あまり事を荒立たせないで欲しかった」
「そ、そんな、シモンは私と……」
敬称まで止めるか、普通……
それでも、僕は笑顔を絶やすことはなかった。きっちり言うには強すぎる言葉も笑顔と共になら伝えることも可能だろう。
「そして、ミア、君は確かに恩人だが、その事は他言無用となっていたはずだ」
「でも!」
「もう君に会うこともないだろう。あの約束が破棄された以上、君への支援は打ち切るしかない。明日からは平民の学校に行くといい」
それだけを伝えると僕は踵を返してコーデリアの後を追った。
先に約束を違えたのはミアだ。そのことに異議は認めない。そして、僕のコーデリアを傷つけた罪もある。軽すぎるくらいだ。
全く胸が痛まないことが逆に清々しい。
呆然とするミアを遠巻きに人々が集まり出した。
自らが広めた噂だ。自分で解決するがいい。
僕はそのまま背を向けて歩き去った。
アルバートがコーデリアを連れて行ってから数秒後ミアが僕に向かって大声で叫んだ。
人前で更には公の場でこの国の王子を大声で呼びつけるなんて本来ならば許されるものではない。僕は顔が引き攣るのを止めることができなかった。
「何か?」
不機嫌さを、隠すつもりもなくミアの顔を睨むように見つめる。
流石のミアも気づいたのかハッとした顔をして下を向いた。
「あの、今コーデリア様と一緒にいたって聞いたんですが!」
まるで責めるような口調。婚約者でもないくせに!!
「ああ、そうだ。僕が僕の愛しい婚約者と共にいて何か問題でもあるのか?」
ミアが困ったようにヘラヘラと笑う。僕はこういう笑いが嫌いだ。コーデリアは絶対にこういう風には笑わない。
「え? だってお二人はもう婚約者じゃありませんよね? 変な噂になっちゃいますよ?」
僕は頭痛を感じて目を閉じた。駄目だ。これはいくら平民であっても許容できる内容ではない。
手の平をギュッと握って考えをまとめる。避難するのではなく事実を淡々と伝えるのだ。
深く息を吐くと目を開けた。少し視線を下にずらすと期待をこもった目がこちらを見ていた。湧き上がる不快感を抑えつけて笑顔を作る。
「君は大きな勘違いをしている」
「へ? 何をですか?」
「僕はコーデリアとの婚約を解消していないし、するつもりもない」
「でも、この間……」
「愛する者同士、誤解から痴話喧嘩くらいはするだろう? あまり事を荒立たせないで欲しかった」
「そ、そんな、シモンは私と……」
敬称まで止めるか、普通……
それでも、僕は笑顔を絶やすことはなかった。きっちり言うには強すぎる言葉も笑顔と共になら伝えることも可能だろう。
「そして、ミア、君は確かに恩人だが、その事は他言無用となっていたはずだ」
「でも!」
「もう君に会うこともないだろう。あの約束が破棄された以上、君への支援は打ち切るしかない。明日からは平民の学校に行くといい」
それだけを伝えると僕は踵を返してコーデリアの後を追った。
先に約束を違えたのはミアだ。そのことに異議は認めない。そして、僕のコーデリアを傷つけた罪もある。軽すぎるくらいだ。
全く胸が痛まないことが逆に清々しい。
呆然とするミアを遠巻きに人々が集まり出した。
自らが広めた噂だ。自分で解決するがいい。
僕はそのまま背を向けて歩き去った。
0
お気に入りに追加
413
あなたにおすすめの小説

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。
樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」
大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。
はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!!
私の必死の努力を返してー!!
乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。
気付けば物語が始まる学園への入学式の日。
私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!!
私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ!
所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。
でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!!
攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢!
必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!!
やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!!
必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。
※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。
※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

「そうだ、結婚しよう!」悪役令嬢は断罪を回避した。
ミズメ
恋愛
ブラック企業で過労死(?)して目覚めると、そこはかつて熱中した乙女ゲームの世界だった。
しかも、自分は断罪エンドまっしぐらの悪役令嬢ロズニーヌ。そしてゲームもややこしい。
こんな謎運命、回避するしかない!
「そうだ、結婚しよう」
断罪回避のために動き出す悪役令嬢ロズニーヌと兄の友人である幼なじみの筋肉騎士のあれやこれや

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

魔性の悪役令嬢らしいですが、男性が苦手なのでご期待にそえません!
蒼乃ロゼ
恋愛
「リュミネーヴァ様は、いろんな殿方とご経験のある、魔性の女でいらっしゃいますから!」
「「……は?」」
どうやら原作では魔性の女だったらしい、リュミネーヴァ。
しかし彼女の中身は、前世でストーカーに命を絶たれ、乙女ゲーム『光が世界を満たすまで』通称ヒカミタの世界に転生してきた人物。
前世での最期の記憶から、男性が苦手。
初めは男性を目にするだけでも体が震えるありさま。
リュミネーヴァが具体的にどんな悪行をするのか分からず、ただ自分として、在るがままを生きてきた。
当然、物語が原作どおりにいくはずもなく。
おまけに実は、本編前にあたる時期からフラグを折っていて……?
攻略キャラを全力回避していたら、魔性違いで謎のキャラから溺愛モードが始まるお話。
ファンタジー要素も多めです。
※なろう様にも掲載中
※短編【転生先は『乙女ゲーでしょ』~】の元ネタです。どちらを先に読んでもお話は分かりますので、ご安心ください。

深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~
白金ひよこ
恋愛
熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!
しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!
物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?

悪役令嬢は皇帝の溺愛を受けて宮入りする~夜も放さないなんて言わないで~
sweetheart
恋愛
公爵令嬢のリラ・スフィンクスは、婚約者である第一王子セトから婚約破棄を言い渡される。
ショックを受けたリラだったが、彼女はある夜会に出席した際、皇帝陛下である、に見初められてしまう。
そのまま後宮へと入ることになったリラは、皇帝の寵愛を受けるようになるが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる