悪役令嬢のお母様……でしたの

波湖 真

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第八章 不穏な繋がり

66、いざ学校へ!!(コーデリア視点)

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「さあ、コーデリア。手を」
久しぶりに家から出るとそこには満面の笑みを浮かべたシモン様がいた。
私はなぜかアタフタとしてしまい持っていた鞄がガチャンと下に落ちる。
「お、おはようございます!! シモン様」
「おはよう。コーデリア。今日もとても可愛らしいね」
シモン様は私の方に駆け寄るとガチガチになっている私の足元から鞄を拾い上げた。
「さあ、行こう」
そして、私の手を引いて歩きだした。
「は、はい」
私は緊張で真っ赤になったまま足と手が同時に出るままに後をついて歩く。
「気をつけて乗るんだよ。可愛いコーデリア」
「はひ!」
思わず下を噛んでしまう。
「大丈夫かい? ほら、見せてごらん」
シモン様はそう言って私の頬に手を当てた。
「だ、だ、だ、大丈夫れす!」
私は首をブンブン振ってそのまま馬車に乗り込んだ。後ろではシモン様のクックっという笑い声が聞こえてくる。
「はい、もうやめてください。私も同乗しますね」
お兄様が呆れたようにやってくると馬車に乗って私の隣に腰を下ろした。
「お、おい! アルバート、そこは僕の……」
「まだ、婚約者です。身内が付き添って何か問題でも?」
「あ、いや、その、わかった」
シモン様は残念そうに顔を歪めるとそのまま私の前の席に腰を下ろした。
なんだか、魔法の特訓以来お兄様とシモン様の関係に変化があったようだ。お兄様はシモン様に遠慮しなくなり、シモン様もそれを受け入れている。
今日はシモン様の魔法が解けて初めての登校となる。学校は未だに私達の婚約破棄と次の婚約者の噂で持ちきりらしい。
そんな中でミアはやはりというか予想通りというかもう婚約者になったかのように行動しているらしい。
そんな中での私とシモン様の同伴登校となる。どんな騒ぎになるのか想像もできない。あっ、お兄様もいるが……
「コーデリア」
シモン様が、私の手を取った。
「は、はい!」
「君は僕の隣で笑っていればいいからね。元々僕が悪いんだ。君は何もしなくていいよ」
「でも、それでは……」
「コーデリア、シモン王子のいう通りだ。何もするな」
「お、お兄様まで、そんな」
「シモン王子は幸せなのですからこれくらいの試練はものともしませんよね」
お兄様がそういうとシモン様の手がビクッと跳ねる。
「も、もちろんだ」
私は二人の顔を見比べて頷いた。二人がそういうのならそうしよう。
「わかりました。よろしくお願いします。シモン様」
「ああ、任せてくれ」
ガタンという衝撃と共に馬車が止まると早速ザワザワした人々の声が聞こえる。
「着いたね。僕とコーデリアが先に出るからアルバートは、後から来てくれ」
「わかりました」
「じゃあ行こうか、コーデリア」
「はい。シモン様」
シモン様がドアを内側からノックするとゆっくりと開かれる。
シモン様が先に出ると私に手を差し出してくれる。私はその手を取るとゆっくりと馬車の外に出た。
久しぶりに見る学校の景色と、人々の好奇の目。私はグッと顔を上げる。何も悪いことはしていないのだ。下を向く必要はない。
「コーデリア、さぁ、行こう」
「はい」
シモン様が私の手をしっかりと掴んでエスコートしてくれる。
私とシモン様が仲良く、にこやかにゆっくりと歩いている姿に周りの生徒が騒めきだす。それはそうだ。ついこの間婚約破棄と言っていた二人なのだから。
「これは一体!?」
「お二人は婚約を破棄されたのでは?」
「でも仲睦まじいわよ」
「仲直りされたってこと? でもミアさんは自分が婚約者になると言っていたわ」
「そうそうシモン王子の恩人だからとかなんとか……」
「嘘だったんじゃないか?」
人々勝手に理解して勝手に推論して勝手に納得していく様を私は目の端に捉えて笑みを深くする。
「コーデリア、髪に花びらが着いてるよ」
シモン様の言葉に私は手を髪に伸ばす。がシモン様の手がその手を止めた。
「シモン様?」
するとシモン様の顔がぐんぐんと近づいてきた。
「僕が取ってあげよう」
「え?」
シモン様の顔が耳元によって一房の髪に口づけを落とす。
周りから悲鳴のような叫び声が上がる。
「シ、シ、シ、シモン様!!」
「取れたよ。コーデリア」
そう言ったシモン様の唇はピンク色の花びらを咥えている。シモン様の唇に乗った花びらはなんとも言えない色気があり、私の頬がカッと熱くなる。
「真っ赤だね。可愛いよ。コーデリア」
色気ダダ漏れのシモン様に私の心臓が跳ね上がる。
「な、な、な、な、な」
その時私とシモン様の間にスッと手が割り込んできた。
「はい、もういいかな? コーデリア、こちらにおいで」
お兄様がサッと私の肩を掴むとシモン様から引き離す。
「アルバート、まだ足りないだろう」
「一気にやる必要はない。コーデリアの頭が爆発するぞ」
その時ようやくシモン様は私が息の吸えない魚のように口をパクパクしているのに気がついたようだ。
「コーデリア!! 大丈夫かい?」
私はなんとか笑顔を作って頷くが、刺激が強すぎて頭が回らない。
「まあ、とりあえずコーデリアは連れて行くよ。シモン王子はあの方のお相手をした方がいいよ」
お兄様が指差した方からミアが走ってくるのが見えた。
私はビクッと体を震わせる。それほどミアは私を睨みつけているのだ。
するとシモン様が私の前に立ってミアの視線を遮った。
「そうだな。アルバート、コーデリアを連れて行ってくれ」
「わかった」
「シモン様、あの……」
「コーデリア、自分の不始末は自分でなんとかするよ。心配しないで待っていてほしい」
私はどんどん近づいてくるミアとシモン様を見比べると頷いた。
「お待ちしておりますわ。シモン様」
そうして私はお兄様に抱えられるようにその場を離れたのだった。
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