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第七章 王族の力
61、強制力には敵わない(コーデリア視点)
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「次の婚約者……」
コーデリアはたった今見聞きしたことを頭の中で反芻しながら自室に向かっていた。
シモン王子がバルターク公爵家に昔のようにやって来るようになったことでコーデリアは幼い頃をよく思い出していた。
昔も今のように遠くからシモン王子を見つめていた。その時のドキドキが少しだけコーデリアを素直にさせていったのだ。
お母様から魔法を教わって古代魔法を跳ね返したら私に会いたいって言ってくれている。
私はその言葉を胸に毎日シモン王子を見つめていた。
そんなある日お母様とシモン王子が庭から消えて長く戻らなかったのだ。いつもは訓練が終わると直ぐにお母様がやってきて今日のシモン王子の様子を聞かせてくれるはずだった。
「何かあったのかも……」
カーテンの陰から外を見ていたコーデリアは少し不安になった。
「怒ってしまったとか? もしかして怪我でも……」
コーデリアはいてもたってもいられずに部屋を飛び出した。
応接室の前に行くと中からシモン王子、アルバートお兄様とお母様の声が聞こえてきた。
なんだ。お兄様がお戻りになったのね。
コーデリアはそう胸を撫で下ろして踵を返そうとした時に『婚約者』という言葉に足を止めた。
ドアの隙間から聞こえてきたのはシモン王子の新しい婚約者について……
私が言い出したことだけど大変なことになってしまっていた。
学校中に噂が飛び交っているのならもしシモン王子の古代魔法が解けたとしても元に戻るのは難しいのかもしれない。
私は居た堪れなくなって部屋に向かって走った。
コンコン
部屋がノックされた。きっとお母様ね。
私はベッドに突っ伏したまま返事をしなかった。
「…………」
これが甘えだと言われればその通りだが、どうしてもお母様には感情をそのまま伝えてしまうのだ。
「コーデリア?」
しかし、聞こえた声はお母様ではなかった。
「シモン王子!!!」
私はベッドから飛び降りるとドアに向かった。そして、ドアノブを掴んだ時再びシモン王子の声が聞こえてきた。
「開けないで」
私の手はドアノブを掴んだまま止まる。
「シモン王子、あの……」
「すまない。まだ君の顔を見て暴言を吐かない自信はないんだ」
「……はい」
「今の話を聞いていたね?」
「……はい」
ドアの向こうからため息が聞こえる。盗み聞きなんてはしたないと思われたかも
「あ、あの、申し訳ありませんでした」
「ん? どうして君が謝るんだい?」
「え? でも……」
「君は何も悪くない。今までのことも全てだ」
「シモン王子」
「面と向かって言えるようになるまで我慢するつもりだったけど、今伝えないとダメだと思うから言うね」
「はい」
「僕は君ことが好きだ」
「!!!!!!!」
「君の意地っ張りなところも天邪鬼のところも可愛らしいところも美しいところも全部好きだ」
シモン王子の言葉を聞いて私の頬がカッと熱くなる。
「君には情けない姿を見せたくはなかったのに古代魔法に影響されて随分傷つけてしまったね。本当にごめん。おば様から後二週間だと言われているよ。そうしたら今度は君の前で跪いて今の言葉を言わせて欲しい」
「……」
「……コーデリア?」
私は失神寸前だった。あんな態度をとったのにシモン王子は許してくれている。しかも、謝ってくれるなんて……。
嬉しくて……死にそう
私はその場でへたり込んだ。
「コーデリア? まだ不甲斐ない僕に怒っているのか?」
シモン王子の不安そうな声に私は顔を上げだ。
「いえ……嬉しくて」
顔だけではなく全身が熱くなってきた。
「コーデ……リア!!!」
ドアの外から聞こえていた声が突然目の前から聞こえてきた。
「シモン王子!!!!」
ガシッと逞しい腕に抱きしめられて私はパニックに陥った。
「コーデリア! コーデリア!」
ギューギューと抱きしめてくるシモン王子に私の混乱度が限度を越える。
プシューという音が脳内響くのを聞いた時、強張っていた体から一気に力が抜けてそのまま突然の闇に落ちてしまったのだった。
……刺激が強すぎる……わ。
コーデリアはたった今見聞きしたことを頭の中で反芻しながら自室に向かっていた。
シモン王子がバルターク公爵家に昔のようにやって来るようになったことでコーデリアは幼い頃をよく思い出していた。
昔も今のように遠くからシモン王子を見つめていた。その時のドキドキが少しだけコーデリアを素直にさせていったのだ。
お母様から魔法を教わって古代魔法を跳ね返したら私に会いたいって言ってくれている。
私はその言葉を胸に毎日シモン王子を見つめていた。
そんなある日お母様とシモン王子が庭から消えて長く戻らなかったのだ。いつもは訓練が終わると直ぐにお母様がやってきて今日のシモン王子の様子を聞かせてくれるはずだった。
「何かあったのかも……」
カーテンの陰から外を見ていたコーデリアは少し不安になった。
「怒ってしまったとか? もしかして怪我でも……」
コーデリアはいてもたってもいられずに部屋を飛び出した。
応接室の前に行くと中からシモン王子、アルバートお兄様とお母様の声が聞こえてきた。
なんだ。お兄様がお戻りになったのね。
コーデリアはそう胸を撫で下ろして踵を返そうとした時に『婚約者』という言葉に足を止めた。
ドアの隙間から聞こえてきたのはシモン王子の新しい婚約者について……
私が言い出したことだけど大変なことになってしまっていた。
学校中に噂が飛び交っているのならもしシモン王子の古代魔法が解けたとしても元に戻るのは難しいのかもしれない。
私は居た堪れなくなって部屋に向かって走った。
コンコン
部屋がノックされた。きっとお母様ね。
私はベッドに突っ伏したまま返事をしなかった。
「…………」
これが甘えだと言われればその通りだが、どうしてもお母様には感情をそのまま伝えてしまうのだ。
「コーデリア?」
しかし、聞こえた声はお母様ではなかった。
「シモン王子!!!」
私はベッドから飛び降りるとドアに向かった。そして、ドアノブを掴んだ時再びシモン王子の声が聞こえてきた。
「開けないで」
私の手はドアノブを掴んだまま止まる。
「シモン王子、あの……」
「すまない。まだ君の顔を見て暴言を吐かない自信はないんだ」
「……はい」
「今の話を聞いていたね?」
「……はい」
ドアの向こうからため息が聞こえる。盗み聞きなんてはしたないと思われたかも
「あ、あの、申し訳ありませんでした」
「ん? どうして君が謝るんだい?」
「え? でも……」
「君は何も悪くない。今までのことも全てだ」
「シモン王子」
「面と向かって言えるようになるまで我慢するつもりだったけど、今伝えないとダメだと思うから言うね」
「はい」
「僕は君ことが好きだ」
「!!!!!!!」
「君の意地っ張りなところも天邪鬼のところも可愛らしいところも美しいところも全部好きだ」
シモン王子の言葉を聞いて私の頬がカッと熱くなる。
「君には情けない姿を見せたくはなかったのに古代魔法に影響されて随分傷つけてしまったね。本当にごめん。おば様から後二週間だと言われているよ。そうしたら今度は君の前で跪いて今の言葉を言わせて欲しい」
「……」
「……コーデリア?」
私は失神寸前だった。あんな態度をとったのにシモン王子は許してくれている。しかも、謝ってくれるなんて……。
嬉しくて……死にそう
私はその場でへたり込んだ。
「コーデリア? まだ不甲斐ない僕に怒っているのか?」
シモン王子の不安そうな声に私は顔を上げだ。
「いえ……嬉しくて」
顔だけではなく全身が熱くなってきた。
「コーデ……リア!!!」
ドアの外から聞こえていた声が突然目の前から聞こえてきた。
「シモン王子!!!!」
ガシッと逞しい腕に抱きしめられて私はパニックに陥った。
「コーデリア! コーデリア!」
ギューギューと抱きしめてくるシモン王子に私の混乱度が限度を越える。
プシューという音が脳内響くのを聞いた時、強張っていた体から一気に力が抜けてそのまま突然の闇に落ちてしまったのだった。
……刺激が強すぎる……わ。
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