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第七章 王族の力

60、魔法レッスン、、、なの?

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わたくしは今日の授業を終えたシモン王子にお茶をお出ししております。
思ったよりは魔法はお出来になるとわかりましたが、王族としてはまだまだなのだと思いますの。この国の王族は魔法で国を守るのだと幼い頃から教え込まれているわたくしは首を傾げました。
現国王陛下である従兄が方針を変えたのかもしれませんわ。一度確認してみましょう。
カチャリ
カップをテーブルに戻したシモン王子が胸元から大切そうに何かを取り出してわたくしの目の前に置きました。
「アリアドネおば様、これをコーデリアに」
「まぁ! お手紙ですわね! 喜びますわ」
わたくしは手紙にしては分厚い封筒を手に取った。
「……なかなか上手くまとめられず……長い手紙になりました」
コホンと、咳払いをするシモン王子が幼い頃のシモン王子と重なり笑みが溢れます。
「ふふふ、そうですか。この調子で特訓すればあと二週間程で古代魔法の影響を跳ね飛ばせると思いますわ」
「本当ですか!!」
身を乗り出すシモン王子にわたくしはにっこりとら頷いた。
「はい」
「あと二週間……」
ほんわかとした雰囲気に突然アルバートが飛び込んで参りました。
「母上!!」
わたくしはびっくりして振り返りました。
「まぁ、アルバートお行儀が悪いわ」
「申し訳ありません。シモン王子もいたんですね。ちょうど良かった」
アルバートはそういうとわたくし達の前のテーブルに一枚の紙をドンと置いてシモン王子を見つめました。
アルバートにはもちろん事情を説明済みです。そして、シモン王子の言動は本心ではなく、コーデリアと仲良くなるために学校をお休みしてわたくしと特訓していることも知っています。
そんなアルバートが、シモン王子を睨みつけているのです。
「アルバート、一体どうしたの?」
「母上、この紙を見て下さい」
わたくしはびっくりしているシモン王子を横目にテーブルから紙を取り内容を確認しました。これは学校で発行されているニュースのようです。確か生徒の中の有志が自主制作して配布しているものです。
その見出しに踊る文字にシモン王子を見つめてしまいました。
「……シモン王子……」
わたくしの顔を見てシモン王子はわたくしからニュースを奪うように受け取ると食い入るように読み始めました。
「なんだこれは!」
シモン王子が立ち上がりアルバートに説明を求めます。わたくしも説明して欲しいですわ。
わたくし達の視線を受けてアルバートはソファに腰を下ろすと今日学校であったことを話し始めました。
シモン王子の手元にあるニュース紙にはこんな見出しが書かれている。
『シモン王子の新婚約者は平民!!』
いつの間にかシモン王子とコーデリアの婚約は破棄されており、ミアが新たな婚約者の最有力だと書かれているのです。
いったいどういうことなのでしょうか?
アルバートは早速話し始めました。
「これは目撃者も多く、間違いないことだと確認しました」
そう言って語られたのは衝撃の事実でした。
あのコーデリアが婚約破棄を言って立ち去った後、ミアからの問いにシモン王子自ら頷いたと言うことでした。
「その問いとは?」
呆然としたシモン王子にアルバートが冷静に答えました。
「次の婚約者は優しい人がいいか?」
「次の婚約者は民の気持ちがわかる人がいいか?」
「いっそ平民から選んだら?」
アルバートが聞いてきた質問はこれで、この問いに全てシモン王子は頷いたというのです。そしてその姿は多くの生徒が目撃していたことが確認されています。
「シモン王子!!! 本当なんですの?」
わたくしが詰め寄ると真っ青になったシモン王子がアルバートの胸元を掴んで壁に押し付けました。
「本当か?! アルバート!!!」
「ああ、本当だ。覚えていないのか?」
シモン王子が頭を抱えて座り込みました。
そして、自信なく答えたのです。
「確かにコーデリアが立ち去った時隣でミアが何かを言っていたのは、事実だ」
そして頭を振り払うように横に振る。
「僕はコーデリアの言葉と自分の振る舞いにショックを受けていて……。聞いていなかった。でも、確かに頷いていたかもしれない……」
「なんてことを!!!」
わたくしは口に手を当てて衝撃を押さえる。
「アルバート、この記事はどれくらい広まっているのですか!」
「学校内には、全て……です。私はコーデリアの為に魔法特訓していると聞いていたのにミアにまで上手く言ったのかと怒りが抑えられず帰宅しました」
アルバートが頭痛を抑えるようにこめかみに手を当てた。
「あの時は本当に何も考えることが出来なくて……。僕は何ということを……」
カタリ
物音に振り返るとコーデリアの後ろ姿が見えました。
きっとシモン王子が気になって覗いていたのでしょう。でも、今の話を聞いたのなら……。
わたくしはシモン王子とアルバートに今後の対策を考えるように伝えてコーデリアの後を追ったのでした。

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