悪役令嬢のお母様……でしたの

波湖 真

文字の大きさ
上 下
61 / 82
第七章 王族の力

60、魔法レッスン、、、なの?

しおりを挟む
わたくしは今日の授業を終えたシモン王子にお茶をお出ししております。
思ったよりは魔法はお出来になるとわかりましたが、王族としてはまだまだなのだと思いますの。この国の王族は魔法で国を守るのだと幼い頃から教え込まれているわたくしは首を傾げました。
現国王陛下である従兄が方針を変えたのかもしれませんわ。一度確認してみましょう。
カチャリ
カップをテーブルに戻したシモン王子が胸元から大切そうに何かを取り出してわたくしの目の前に置きました。
「アリアドネおば様、これをコーデリアに」
「まぁ! お手紙ですわね! 喜びますわ」
わたくしは手紙にしては分厚い封筒を手に取った。
「……なかなか上手くまとめられず……長い手紙になりました」
コホンと、咳払いをするシモン王子が幼い頃のシモン王子と重なり笑みが溢れます。
「ふふふ、そうですか。この調子で特訓すればあと二週間程で古代魔法の影響を跳ね飛ばせると思いますわ」
「本当ですか!!」
身を乗り出すシモン王子にわたくしはにっこりとら頷いた。
「はい」
「あと二週間……」
ほんわかとした雰囲気に突然アルバートが飛び込んで参りました。
「母上!!」
わたくしはびっくりして振り返りました。
「まぁ、アルバートお行儀が悪いわ」
「申し訳ありません。シモン王子もいたんですね。ちょうど良かった」
アルバートはそういうとわたくし達の前のテーブルに一枚の紙をドンと置いてシモン王子を見つめました。
アルバートにはもちろん事情を説明済みです。そして、シモン王子の言動は本心ではなく、コーデリアと仲良くなるために学校をお休みしてわたくしと特訓していることも知っています。
そんなアルバートが、シモン王子を睨みつけているのです。
「アルバート、一体どうしたの?」
「母上、この紙を見て下さい」
わたくしはびっくりしているシモン王子を横目にテーブルから紙を取り内容を確認しました。これは学校で発行されているニュースのようです。確か生徒の中の有志が自主制作して配布しているものです。
その見出しに踊る文字にシモン王子を見つめてしまいました。
「……シモン王子……」
わたくしの顔を見てシモン王子はわたくしからニュースを奪うように受け取ると食い入るように読み始めました。
「なんだこれは!」
シモン王子が立ち上がりアルバートに説明を求めます。わたくしも説明して欲しいですわ。
わたくし達の視線を受けてアルバートはソファに腰を下ろすと今日学校であったことを話し始めました。
シモン王子の手元にあるニュース紙にはこんな見出しが書かれている。
『シモン王子の新婚約者は平民!!』
いつの間にかシモン王子とコーデリアの婚約は破棄されており、ミアが新たな婚約者の最有力だと書かれているのです。
いったいどういうことなのでしょうか?
アルバートは早速話し始めました。
「これは目撃者も多く、間違いないことだと確認しました」
そう言って語られたのは衝撃の事実でした。
あのコーデリアが婚約破棄を言って立ち去った後、ミアからの問いにシモン王子自ら頷いたと言うことでした。
「その問いとは?」
呆然としたシモン王子にアルバートが冷静に答えました。
「次の婚約者は優しい人がいいか?」
「次の婚約者は民の気持ちがわかる人がいいか?」
「いっそ平民から選んだら?」
アルバートが聞いてきた質問はこれで、この問いに全てシモン王子は頷いたというのです。そしてその姿は多くの生徒が目撃していたことが確認されています。
「シモン王子!!! 本当なんですの?」
わたくしが詰め寄ると真っ青になったシモン王子がアルバートの胸元を掴んで壁に押し付けました。
「本当か?! アルバート!!!」
「ああ、本当だ。覚えていないのか?」
シモン王子が頭を抱えて座り込みました。
そして、自信なく答えたのです。
「確かにコーデリアが立ち去った時隣でミアが何かを言っていたのは、事実だ」
そして頭を振り払うように横に振る。
「僕はコーデリアの言葉と自分の振る舞いにショックを受けていて……。聞いていなかった。でも、確かに頷いていたかもしれない……」
「なんてことを!!!」
わたくしは口に手を当てて衝撃を押さえる。
「アルバート、この記事はどれくらい広まっているのですか!」
「学校内には、全て……です。私はコーデリアの為に魔法特訓していると聞いていたのにミアにまで上手く言ったのかと怒りが抑えられず帰宅しました」
アルバートが頭痛を抑えるようにこめかみに手を当てた。
「あの時は本当に何も考えることが出来なくて……。僕は何ということを……」
カタリ
物音に振り返るとコーデリアの後ろ姿が見えました。
きっとシモン王子が気になって覗いていたのでしょう。でも、今の話を聞いたのなら……。
わたくしはシモン王子とアルバートに今後の対策を考えるように伝えてコーデリアの後を追ったのでした。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか〜

ひろのひまり
恋愛
生まれ変わったらそこは異世界だった。 沢山の魔力に助けられ生まれてこれた主人公リリィ。彼女がこれから生きる世界は所謂乙女ゲームと呼ばれるファンタジーな世界である。 だが、彼女はそんな情報を知るよしもなく、ただ普通に過ごしているだけだった。が、何故か無関係なはずなのに乙女ゲーム関係者達、攻略対象者、悪役令嬢等を無自覚に誑かせて関わってしまうというお話です。 モブなのに魔法チート。 転生者なのにモブのド素人。 ゲームの始まりまでに時間がかかると思います。 異世界転生書いてみたくて書いてみました。 投稿はゆっくりになると思います。 本当のタイトルは 乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙女ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか?〜 文字数オーバーで少しだけ変えています。 なろう様、ツギクル様にも掲載しています。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました

みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
第一王子と妹が並んでいる姿を見て前世を思い出したリリーナ。 ここは小説の世界だ。 乙女ゲームの悪役令嬢が主役で、悪役にならず幸せを掴む、そんな内容の話で私はその主人公の姉。しかもゲーム内で妹が悪役令嬢になってしまう原因の1つが姉である私だったはず。 とはいえ私は所謂モブ。 この世界のルールから逸脱しないように無難に生きていこうと決意するも、なぜか第一王子に執着されている。 そういえば、元々姉の婚約者を奪っていたとか設定されていたような…?

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでのこと。 ……やっぱり、ダメだったんだ。 周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間でもあった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表する。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放。そして、国外へと運ばれている途中に魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※毎週土曜日の18時+気ままに投稿中 ※プロットなしで書いているので辻褄合わせの為に後から修正することがあります。 ※諸事情により3月いっぱいまで更新停止中です。すみません。

処理中です...