悪役令嬢のお母様……でしたの

波湖 真

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第六章 婚約破棄にむかって

52、意地悪します!(コーデリア視点)

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ガラリ
クラスのドアを開けるとコーデリアはそのまま中に入った。
クラス内では劇の真っ最中で、何人かは衣装らしき物を身につけていた。
「まあ、何これ? 変な格好ねぇ」
私は貴族の服を模した様なドレスを身につけているミアを見つけると話しかけた。
「もしかして、ドレス? ふふふ、ドレスなんて身につけた事ないものね。知らなくて当然ね。でも、こんなみっともない格好……よく恥ずかしくないわねぇ」
するとミアが顔を真っ赤に染めて恥ずかしそうに下を向く。
「似合わないから脱ぎなさいよ。それなら、私のお古でも差し上げるわ。もう流行遅れだけど、貴女にはちょうどいいわね」
「ひ、ひどい……」
「酷い? 私は親切に言ってるの! そんな格好で、あの物語だなんて! 私の両親を馬鹿にしているわよ。恥ずかしくて私なら耐えられないわ」
コーデリアの声に周りから非難の声が上がる。ミアも目に涙を溜めてコーデリアを見つめていた。
「そこをどきなさい。貴女では役不足よ。私がやるわ!」
コーデリアはそういうとミアの手を掴んで舞台から下ろした。その時に躓いたのかミアがバランスを崩して倒れ込んだ。
「おい! 何をしている!」
その時何処かに行っていたシモン様が教室に戻ってきた。
そして、ミアの手を掴んでいるコーデリアとその前に倒れ込んでいるミアを見比べるとツカツカと歩いてきた。
「コーデリア!! 一体何をしている! 貴族としての心得を忘れたのか! ミアを離せ!!」
シモン様はそう言ってコーデリアの手を掴んでミアから引き剥がした。
「乱暴しないで頂戴!!」
コーデリアが反論してキッとシモン様を睨むとシモン様の顔が更に歪む。
「コーデリア!! お前には幻滅した。多少の我が儘なら耐えられるかと思っていたが、今のお前は私の視界に入レることすら嫌悪感しか抱かない。もう私の視界から消えてくれ!!」
シモン様はそう言ってコーデリアの手を振り払った。
コーデリアは泣きそうな顔を隠して一旦下を向くと表情を作って真っ直ぐにシモン様を睨みつけた。
「ふん!! 私の方から貴方なんて願い下げね。もうこんな愚かな人間しかいない学校なんて来る必要もないわ!!」
コーデリアはそういうと教室のドアに向かって歩き出す。そしてドアの前で止まるとクルリと振り向いた。
「シモン様、婚約は破棄してください。貴方となんか一緒にいられないわ!!我慢して婚約してたけど、もう限界よ!」
それだけ言うとコーデリアは足早に馬車に向かった。
そして、そのまま馬車に乗り込んだのだ。
「お、終わったわ」
馬車の座席に座るとコーデリアはやっと体から力を抜いた。
「これで、婚約は破棄されるわ」
そして、顔を天井に向ける。
「平民に暴力を振るう。貴族として最低だわ。この理由ならお父様も納得するはずよ! お父様は貴族の誇りを大切にしてるもの」
コーデリアは寂しそうに笑うと窓の外に目を向けた。
そこにはいつもと変わらない街並みが広がり、人々が楽しそうに笑っている。
「ハァ、私だけね。運命が変わったのは……」
コーデリアはそっと目を閉じて母の顔を思い浮かべた。
「お母様は……私を見捨てないわね。そういう人だってずっと前から知ってるもの。でも、今は私の事は見捨ててもらわないと家も国も守れないわ! ストーリー通りにそして、エピソードは私の望み通りにするのよ!」
コーデリアはいつも自分を心配している母の顔を思い、ため息を吐いたのだった。
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