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第六章 婚約破棄にむかって
51、悪役令嬢コーデリア(コーデリア視点)
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「じゃまよ! おどきなさい!」
コーデリアは、目の前にたむろしている生徒達に向かって怒鳴り声をあげた。
コーデリアの声に驚いたように固まった生徒に容赦の無い声が響く。
「邪魔だといっているのよ! 耳もお悪いの!」
コーデリアの馬鹿にしたような声にズコズコと脇に避けた生徒の間をスタスタと通り抜けた。
コーデリアの後ろからは生徒達の不満気な声が聞こえてきた。
「ちょっと! 何よ! あれ! あんな方だった?」
「本当!! 失礼ね!」
「シモン様と上手くいってないらしいもの。あれが本性なのよ!」
「今までが演技でしたのね。王子の前だけの!」
コーデリアはその声を聞いて、自分の悪役令嬢としての演技は完璧なのだと安堵のため息を吐いた。
物語を、元に戻す。いえ、それ以上の悪役になって、家に同情が集まるようにするのだ。
コーデリアは決意を込めた目を空に向かって細めた。
その時、周りから声が上がる。
「まぁ! シモン王子だわ!」
その声にコーデリアはその声の方を振り向いた。
シモン様には今会っておかなければならない。あの魔法がいつ切れてしまうかわからないのだ。なるべくシモン様がコーデリアを罵る場面を皆んなに見せなければ!
コーデリアはそう考えてくるりと踵返す。
「……コーデリア……」
まだ、遠くからシモン様がコーデリアの名を呼んだ。その言葉に嫌悪感はない。
「距離が、遠すぎるわね」
コーデリアは早足でシモン様に近づく。
すると、シモン様の顔が段々と歪んでいくのがはっきりとわかる。
まだ、魔法の副作用が効いている!
コーデリアはグイッと近寄るとシモン様の目の前に立った。
「これはこれは、シモン様。ご機嫌麗しゅう。お早いお迎えですこと」
コーデリアは嫌味っぽく声をかけた。
シモン様の手が握られたのが見えた。
(後一押し)
「先程、迎えに来ていただくように言い付けましたのに! 本当に役に立たないものばかりですわ」
すると、シモン様の顔が真っ赤になった。
「お前が脅したのはクラスメイトではないか! お、お前の顔などみたくない! 早々に立ち去れ!」
そう言ったシモン様はハッとしたようだが、私は言い合いを見せつけるように受けて立つ。
「まぁ! 久しぶりにあった婚約者になんて失礼なお言葉なの! 本当に王子なのかしら?」
私は持っていた扇で口元を隠して目を眇めた。こうすると意地悪度が増すのだ。
「な! 不愉快だ! もう話しかけるな!!」
シモン様は、そういうと何かを私に投げつけて立ち去った。
私は投げつけられた紙を拾い上げるとガサゴソと広げる。
その紙は学園祭で披露される劇のチラシだった。見ると私のクラスの出し物のようだ。
主役はあの女、ヒロインで、相手役はシモン様。題材はお母様とお父様の馴れ初めをモチーフにした恋物語。
私はそのチラシを再び丸めるとポイッと放り投げた。
そして、シンと静まり返ったその場所からゆっくりと歩いて立ち去った。
足は震えている。顔の表情も崩れそうだし、今話しかけられたら泣きそうだった。
何故ならクラスの劇には私の名前がちゃんと載っていたのだ。小道具としてだったが、きっとシモン様が手配してくれたのだ。私の事を、気遣ってくれたのだ。
その事実に、私の胸が熱くなる。でも、それは無視しなければならない。踏みにじって嫌われなければならない。
私はそうして顔を真っ直ぐに前に向けて教室に向かって歩き出した。
そこにはミアもシモン様もクラスメイトいるはずだ。
もう、ここでは止まれない。
悪役としての行動を図らなければ!
私は意地悪な言葉を思いつく限り頭に浮かべて、足を進めたのだった。
コーデリアは、目の前にたむろしている生徒達に向かって怒鳴り声をあげた。
コーデリアの声に驚いたように固まった生徒に容赦の無い声が響く。
「邪魔だといっているのよ! 耳もお悪いの!」
コーデリアの馬鹿にしたような声にズコズコと脇に避けた生徒の間をスタスタと通り抜けた。
コーデリアの後ろからは生徒達の不満気な声が聞こえてきた。
「ちょっと! 何よ! あれ! あんな方だった?」
「本当!! 失礼ね!」
「シモン様と上手くいってないらしいもの。あれが本性なのよ!」
「今までが演技でしたのね。王子の前だけの!」
コーデリアはその声を聞いて、自分の悪役令嬢としての演技は完璧なのだと安堵のため息を吐いた。
物語を、元に戻す。いえ、それ以上の悪役になって、家に同情が集まるようにするのだ。
コーデリアは決意を込めた目を空に向かって細めた。
その時、周りから声が上がる。
「まぁ! シモン王子だわ!」
その声にコーデリアはその声の方を振り向いた。
シモン様には今会っておかなければならない。あの魔法がいつ切れてしまうかわからないのだ。なるべくシモン様がコーデリアを罵る場面を皆んなに見せなければ!
コーデリアはそう考えてくるりと踵返す。
「……コーデリア……」
まだ、遠くからシモン様がコーデリアの名を呼んだ。その言葉に嫌悪感はない。
「距離が、遠すぎるわね」
コーデリアは早足でシモン様に近づく。
すると、シモン様の顔が段々と歪んでいくのがはっきりとわかる。
まだ、魔法の副作用が効いている!
コーデリアはグイッと近寄るとシモン様の目の前に立った。
「これはこれは、シモン様。ご機嫌麗しゅう。お早いお迎えですこと」
コーデリアは嫌味っぽく声をかけた。
シモン様の手が握られたのが見えた。
(後一押し)
「先程、迎えに来ていただくように言い付けましたのに! 本当に役に立たないものばかりですわ」
すると、シモン様の顔が真っ赤になった。
「お前が脅したのはクラスメイトではないか! お、お前の顔などみたくない! 早々に立ち去れ!」
そう言ったシモン様はハッとしたようだが、私は言い合いを見せつけるように受けて立つ。
「まぁ! 久しぶりにあった婚約者になんて失礼なお言葉なの! 本当に王子なのかしら?」
私は持っていた扇で口元を隠して目を眇めた。こうすると意地悪度が増すのだ。
「な! 不愉快だ! もう話しかけるな!!」
シモン様は、そういうと何かを私に投げつけて立ち去った。
私は投げつけられた紙を拾い上げるとガサゴソと広げる。
その紙は学園祭で披露される劇のチラシだった。見ると私のクラスの出し物のようだ。
主役はあの女、ヒロインで、相手役はシモン様。題材はお母様とお父様の馴れ初めをモチーフにした恋物語。
私はそのチラシを再び丸めるとポイッと放り投げた。
そして、シンと静まり返ったその場所からゆっくりと歩いて立ち去った。
足は震えている。顔の表情も崩れそうだし、今話しかけられたら泣きそうだった。
何故ならクラスの劇には私の名前がちゃんと載っていたのだ。小道具としてだったが、きっとシモン様が手配してくれたのだ。私の事を、気遣ってくれたのだ。
その事実に、私の胸が熱くなる。でも、それは無視しなければならない。踏みにじって嫌われなければならない。
私はそうして顔を真っ直ぐに前に向けて教室に向かって歩き出した。
そこにはミアもシモン様もクラスメイトいるはずだ。
もう、ここでは止まれない。
悪役としての行動を図らなければ!
私は意地悪な言葉を思いつく限り頭に浮かべて、足を進めたのだった。
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