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第六章 婚約破棄にむかって
50、悪役令嬢の誕生(コーデリア視点)
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「大丈夫なの? コーデリア」
心配そうに話しかけてくるお母様を軽く無視して、無言で馬車乗り込んだ。
私の反抗期はまだ終わっていない。あれから三ヶ月間、部屋に引きこもって考えた。
今までの事、これからの事、前世の物語……。
考えることは山ほどあった。
そして、私が出した結論は物語通りの悪役令嬢になることだった。
始めの一ヶ月はお母様を恨んだ。次の一ヶ月は我が身の不幸を悲しんだ。
そして、最後の一ヶ月に私は諦めたのだ。
どんなに抗っても物語の強制力には敵わない。
少しくらい抵抗できても、結局それはエピソードが変わるだけでストーリーは変わらない。
それならば、ストーリーに乗るしかないのだ。
私は悪役令嬢コーデリアになるわ!
物語通りに行動して、みんなに嫌われて、シモン様にも嫌われて……婚約破棄されるのよ!
そして、その時に少し、ほんの少しエピソードを変えてみせるわ!
私は頭の中で描いたエピソードを思い浮かべて決意を固めた。
ストーリーは変えられないがエピソードは変えられる。それを逆手にとって立ち回るのだ。
そうして、私は三ヶ月ぶりに学校に行く事に決めた。
お母様の心配そうな顔を忘れられないが、今は心を鬼にする時だ。
私はお母様とは目も合わせずに馬車に乗り込んで学校に向かった。
私は稀代の悪役令嬢になる。
物語が生温いと思える程の悪役になる。
周りからも身内からも徹底的に嫌われるように行動する。
特にシモン様とお兄様には本気で嫌な女になるのだ。
その姿を周りにみせて、私の悪評を高めることが大切だ。
そして、私は婚約破棄されて、修道院に入れられる。
ここまではストーリー通りでいい。
でも、余りの悪役振りに周りからの同情を集めてなんとか公爵家の没落だけは回避したい。それくらいのエピソードなら変えられるのではないか?
お母様を恨んでみたが、やっぱり見捨てることはできない。
今までの人生で、やっぱりお父様もお母様もお兄様も大切になっていたことに気付いてしまった。
だから、私は私という娘がいることが公爵家の不幸だと周りに思わせるのだ。
もちろん、お父様にも嫌われてみせる。
そうすれば、ストーリーを変えずに公爵家の没落やクーデターというエピソードは変わるはずだ。
私はそう考えた。
お母様と話した前世のことや沢山の作戦会議は楽しかった。
ひとりぼっちの転生に仲間がいる心強さもあって、とても楽しかったのだ。
だから、私はお母様を家族を公爵家を守ることに決めた。
ガタン
馬車が停まった。
私はキュッと唇を噛み締めてから、顔をグイッと上げた。
そして、キツイ印象が与えられるように練習した表情を作ると馬車からおりた。
そして、悪役令嬢としての最初の言葉を発したのだった。
「ちょっとそこのあなた! シモン王子を連れてきて頂戴」
手に持っていた扇子で口元を覆い隠し、横柄に命じた。
「え?」
きょとんとした生徒に畳み掛けるように発言する。
「聞こえないのかしら? いやねぇ、身分が低いものは耳まで悪くなるのかしら?」
私が目を眇めると、その生徒は慌てたように走り去った。
周りからも突き刺さるような視線を感じたが、それは無視して歩き出した。
固唾を呑んで見守っていた生徒たちが、自然と左右に分かれて道を作る。
私はその出来た道の真ん中を堂々と歩いて校舎に向かった。
顔を下げず、意地悪そうに、高飛車に見えるように!
私は震える手をグッと抑えて、早足になりそうな足を殊更ゆっくりと動かした。
それは周りから見ると三ヶ月前のコーデリアとは全てが違って見えたはずだ。
そうして、コーデリアの悪役令嬢生活が始まったのだった。
心配そうに話しかけてくるお母様を軽く無視して、無言で馬車乗り込んだ。
私の反抗期はまだ終わっていない。あれから三ヶ月間、部屋に引きこもって考えた。
今までの事、これからの事、前世の物語……。
考えることは山ほどあった。
そして、私が出した結論は物語通りの悪役令嬢になることだった。
始めの一ヶ月はお母様を恨んだ。次の一ヶ月は我が身の不幸を悲しんだ。
そして、最後の一ヶ月に私は諦めたのだ。
どんなに抗っても物語の強制力には敵わない。
少しくらい抵抗できても、結局それはエピソードが変わるだけでストーリーは変わらない。
それならば、ストーリーに乗るしかないのだ。
私は悪役令嬢コーデリアになるわ!
物語通りに行動して、みんなに嫌われて、シモン様にも嫌われて……婚約破棄されるのよ!
そして、その時に少し、ほんの少しエピソードを変えてみせるわ!
私は頭の中で描いたエピソードを思い浮かべて決意を固めた。
ストーリーは変えられないがエピソードは変えられる。それを逆手にとって立ち回るのだ。
そうして、私は三ヶ月ぶりに学校に行く事に決めた。
お母様の心配そうな顔を忘れられないが、今は心を鬼にする時だ。
私はお母様とは目も合わせずに馬車に乗り込んで学校に向かった。
私は稀代の悪役令嬢になる。
物語が生温いと思える程の悪役になる。
周りからも身内からも徹底的に嫌われるように行動する。
特にシモン様とお兄様には本気で嫌な女になるのだ。
その姿を周りにみせて、私の悪評を高めることが大切だ。
そして、私は婚約破棄されて、修道院に入れられる。
ここまではストーリー通りでいい。
でも、余りの悪役振りに周りからの同情を集めてなんとか公爵家の没落だけは回避したい。それくらいのエピソードなら変えられるのではないか?
お母様を恨んでみたが、やっぱり見捨てることはできない。
今までの人生で、やっぱりお父様もお母様もお兄様も大切になっていたことに気付いてしまった。
だから、私は私という娘がいることが公爵家の不幸だと周りに思わせるのだ。
もちろん、お父様にも嫌われてみせる。
そうすれば、ストーリーを変えずに公爵家の没落やクーデターというエピソードは変わるはずだ。
私はそう考えた。
お母様と話した前世のことや沢山の作戦会議は楽しかった。
ひとりぼっちの転生に仲間がいる心強さもあって、とても楽しかったのだ。
だから、私はお母様を家族を公爵家を守ることに決めた。
ガタン
馬車が停まった。
私はキュッと唇を噛み締めてから、顔をグイッと上げた。
そして、キツイ印象が与えられるように練習した表情を作ると馬車からおりた。
そして、悪役令嬢としての最初の言葉を発したのだった。
「ちょっとそこのあなた! シモン王子を連れてきて頂戴」
手に持っていた扇子で口元を覆い隠し、横柄に命じた。
「え?」
きょとんとした生徒に畳み掛けるように発言する。
「聞こえないのかしら? いやねぇ、身分が低いものは耳まで悪くなるのかしら?」
私が目を眇めると、その生徒は慌てたように走り去った。
周りからも突き刺さるような視線を感じたが、それは無視して歩き出した。
固唾を呑んで見守っていた生徒たちが、自然と左右に分かれて道を作る。
私はその出来た道の真ん中を堂々と歩いて校舎に向かった。
顔を下げず、意地悪そうに、高飛車に見えるように!
私は震える手をグッと抑えて、早足になりそうな足を殊更ゆっくりと動かした。
それは周りから見ると三ヶ月前のコーデリアとは全てが違って見えたはずだ。
そうして、コーデリアの悪役令嬢生活が始まったのだった。
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