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第五章 物語の始まり
47、物語通りになった(コーデリア視点)
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「僕に近寄るな! 気持ち悪い!!」
シモンの声が耳に残る。
コーデリアは、魔法の副作用だとはわかっていても悲しくて堪らなかった。
お母様からコーデリアに対する嫌悪感が残るとは言われたが、ここまでとは思わなかった。
覚悟していても、ズドンと心に響く。
そして、その言葉はコーデリアが何度も思い出してきた前世の物語の言葉なのだ。
婚約破棄の前はあんな感じで悪役令嬢コーデリアを嫌悪していたのだ。
「きっと、物語のコーデリアもあんな風に言われたら傷ついていたはずよね……。それなのに私は悪役令嬢ザマアミロくらいにしか思わなかったわ」
そう独り言を言ってから、馬車を降りた。
今日の事をお母様に話さなければならないとは思いながら、それはしたくないと感じてしまう。
気持ちが、気力がついていかないのだ。
「コーデリア……」
エントランスホールに入ると早速お母様が話しかけてきたが、私はそのまま走って部屋に入り鍵をかけた。
部屋の鍵をかけたのは多分初めてのことだ。
それでも、今は話したくないのだ。
「こんなことなら、シモン様を好きにならなければ良かった……。物語通りにしていれば、ただの利害が一致したドライな二人でいられたのに……」
コーデリアはトボトボとベッドまで歩くとポスンと倒れ込んだ。
お母様さえ口を出さなければ、私はシモン様に、近づかなかった。
物語通りの悪役令嬢になって、シモン様に、嫌われて、婚約を破棄されて修道院に送られる途中で逃げ出す計画だった。
それなのに、国が混乱するとか、逃げ出すのは無理とか、色々言われたからシモン様と、仲良くなろうとしたのよ。
それなのに、計画が上手くいかないどころか逆戻りだわ。
それにプラスして、失恋までついてくるなんて……。
その時ドアが遠慮がちに叩かれた。
トントン
私は返事を返せなかった。
「コーデリア……。大丈夫なのかしら?」
お母様の心配そうな声が聞こえる。
「話さなくちゃ……。でも、今は今は……嫌」
コーデリアは、そのままノックには答えずにベッドに潜り込んでしまった。
今母親と話すと酷い言葉を話してしまいそうなのだ。
何をやってもかわらないのよ!
恋なんてしなければこんなに辛くなかった!
結局強制力には敵わないよの!!
お母様があんな事を言わなければ……。
コーデリアの頭の中は言ってはいけない事で一杯だった。
だって、事実は一つなのだ。
コーデリアはシモン王子に嫌われた。
物語通りに、物語に決められた丁度いい時期に、気持ちなんて関係なくだ。
お母様は一時的と言っていたけれど、あんな生ゴミでも見る目で見られたら、もう怖くて話しかけることなんて出来ない。
好きになってしまったからこそ、無理なのだ。
コーデリアはその日から遅い反抗期に陥った。
母親であるアリアドネと話もせず、学校にも行かず、一日のほとんどの時間を部屋で過ごすようになった。
初めのうちは心配そうに、話しかけてきた母親も、そのうち話しかけて来なくなった。
兄や父もコーデリアに理由を聞いたがコーデリアは何も語らなかった。
ただし、シモン王子に嫌われたその時の状況を見ていた兄から両親へ話があったようだとは思っている。
そうしてコーデリアの引きこもり生活は三か月を迎えていたのだった。
その頃学校では悩めるシモン王子が悶々としていた。
どうしてもコーデリアへの嫌悪感が拭えなかったのだ。
頭ではコーデリアの事が今でも大好きなのだが、コーデリアの事を考えると怒りやイライラが湧き上がる。
そんな時にシモン王子に近づいてきた人間がいた。
優しい言葉でシモン王子の気持ちに寄り添い、理解して、一緒に原因を探しましょうと言ってくる。
初めはシモン王子も突っぱねていたが、だんだんとその人物に相談するようになっていったのだ。
その人物こそがミア・グランデその人だった。
シモンの声が耳に残る。
コーデリアは、魔法の副作用だとはわかっていても悲しくて堪らなかった。
お母様からコーデリアに対する嫌悪感が残るとは言われたが、ここまでとは思わなかった。
覚悟していても、ズドンと心に響く。
そして、その言葉はコーデリアが何度も思い出してきた前世の物語の言葉なのだ。
婚約破棄の前はあんな感じで悪役令嬢コーデリアを嫌悪していたのだ。
「きっと、物語のコーデリアもあんな風に言われたら傷ついていたはずよね……。それなのに私は悪役令嬢ザマアミロくらいにしか思わなかったわ」
そう独り言を言ってから、馬車を降りた。
今日の事をお母様に話さなければならないとは思いながら、それはしたくないと感じてしまう。
気持ちが、気力がついていかないのだ。
「コーデリア……」
エントランスホールに入ると早速お母様が話しかけてきたが、私はそのまま走って部屋に入り鍵をかけた。
部屋の鍵をかけたのは多分初めてのことだ。
それでも、今は話したくないのだ。
「こんなことなら、シモン様を好きにならなければ良かった……。物語通りにしていれば、ただの利害が一致したドライな二人でいられたのに……」
コーデリアはトボトボとベッドまで歩くとポスンと倒れ込んだ。
お母様さえ口を出さなければ、私はシモン様に、近づかなかった。
物語通りの悪役令嬢になって、シモン様に、嫌われて、婚約を破棄されて修道院に送られる途中で逃げ出す計画だった。
それなのに、国が混乱するとか、逃げ出すのは無理とか、色々言われたからシモン様と、仲良くなろうとしたのよ。
それなのに、計画が上手くいかないどころか逆戻りだわ。
それにプラスして、失恋までついてくるなんて……。
その時ドアが遠慮がちに叩かれた。
トントン
私は返事を返せなかった。
「コーデリア……。大丈夫なのかしら?」
お母様の心配そうな声が聞こえる。
「話さなくちゃ……。でも、今は今は……嫌」
コーデリアは、そのままノックには答えずにベッドに潜り込んでしまった。
今母親と話すと酷い言葉を話してしまいそうなのだ。
何をやってもかわらないのよ!
恋なんてしなければこんなに辛くなかった!
結局強制力には敵わないよの!!
お母様があんな事を言わなければ……。
コーデリアの頭の中は言ってはいけない事で一杯だった。
だって、事実は一つなのだ。
コーデリアはシモン王子に嫌われた。
物語通りに、物語に決められた丁度いい時期に、気持ちなんて関係なくだ。
お母様は一時的と言っていたけれど、あんな生ゴミでも見る目で見られたら、もう怖くて話しかけることなんて出来ない。
好きになってしまったからこそ、無理なのだ。
コーデリアはその日から遅い反抗期に陥った。
母親であるアリアドネと話もせず、学校にも行かず、一日のほとんどの時間を部屋で過ごすようになった。
初めのうちは心配そうに、話しかけてきた母親も、そのうち話しかけて来なくなった。
兄や父もコーデリアに理由を聞いたがコーデリアは何も語らなかった。
ただし、シモン王子に嫌われたその時の状況を見ていた兄から両親へ話があったようだとは思っている。
そうしてコーデリアの引きこもり生活は三か月を迎えていたのだった。
その頃学校では悩めるシモン王子が悶々としていた。
どうしてもコーデリアへの嫌悪感が拭えなかったのだ。
頭ではコーデリアの事が今でも大好きなのだが、コーデリアの事を考えると怒りやイライラが湧き上がる。
そんな時にシモン王子に近づいてきた人間がいた。
優しい言葉でシモン王子の気持ちに寄り添い、理解して、一緒に原因を探しましょうと言ってくる。
初めはシモン王子も突っぱねていたが、だんだんとその人物に相談するようになっていったのだ。
その人物こそがミア・グランデその人だった。
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