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第五章 物語の始まり
44、夢実の魔法(ミア視点)
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夢実の魔法とは、夢や希望を叶えることが出来る魔法である。
ただし、それは全てではないし、いつ実現するのかを指定する事はできない。
魔法を使うものによって、夢や希望をどの様にまとめるのかは異なる。
あるものは話すことによって、あるものは祈ることによって、あるものは書き記すことによって魔法が発現する。
このような曖昧な作用から、魔法というよりも気まぐれな神の仕業だというものも多い。
ただ、注意しなくてはならないのは一度願った事は取り消すことが出来ないのだ。
願ったもの全てが叶うはずではないにも関わらず、取り消せない為呪いの魔法とも言われる。
夢の実現に必要と思われる場合は必要な者達の潜在意識に働きかけて、それとはわからないように無意識下で行動させる。
これも、呪いの魔法と言われる所以である。
ミアはもう何度も読み直した夢実の魔法についての記述を見直していた。
そして、その本を、パタンと閉じて今度は自分が書きためた夢ノートを開く。
「本当にこれに書いた事は実現するのかしら?」
子供の頃から書きためた他愛のない夢。
そんなものも実現する?
ミアの手はあるページを開いた。
「空を飛びたい……。これも? 取り消せないし、いつ実現できるかわからないけど本当になる?」
この一週間でミアは少し冷静になった。
そんな馬鹿なと思い始めていたのだ。
あの日に書いた夢はまだまだ実現していないし、空なんか飛べない。
やっぱり偶々運が良かっただけなのかもしれないわ。
そう考えてミアは夢ノートを閉じて本棚にしまった。
「でも、少し怖いわよね……。暫くは夢ノートを書くのはやめておこうっと!」
そう独り言をいってミアはそのまま宿題に取り組んだ。
暫くはカリカリというぺンを動かす音だけが響く。
「終わったー」
宿題が終わったミアはこの一週間を、思い出していた。
初めて王子様から話しかけられた時は本当に興奮したわ。
第三王子のシモン殿下は男子なのにとても美しいのだ。
女子のミアでもドキドキしてしまう。
明るい金髪は光を透けてキラキラと輝いて、青く吸い込まれるような瞳は少し暗い色合いで男らしさと強さを秘めている。
あんなに格好いい男子はこの辺りには絶対にいない。
初めて会った時は子供で王子様という存在と女の子のような可愛らしさにびっくりしたが、学校で会うと可愛らしい印象は消えていた。
「魔法じゃなくても、仲良くなりたいなぁ」
あの日以来シモン殿下が、話しかけてくる事はなかった。
それに、あの日になぜ話しかけてきたのかもわからない。
何故なら王子の婚約者の公爵令嬢が怒ってシモン殿下を叩いから、なんとなく有耶無耶になってしまった。
「まったく! あの令嬢は、我が儘よね! あんなにシモン殿下を独り占めしてるのに話すことも許さないだなんて!」
あの後戻ってきた二人は少しよそよそしい感じがしたが、それもそうだ。
なんと言っても王族を叩いたのだからあの令嬢はもっと反省すべきだわとミアは思ったくらいだ。
「それに、あの令嬢はあんまり好きじゃないのよ!」
シモン殿下の婚約者の令嬢はコーデリアと言ってシモン殿下に輪をかけるかのように美しい。
二人が並ぶとシモン殿下が霞むくらいだ。
それでも、対照的な容姿の二人が並んでいるだけてため息がでる。
今までの一年間は皆んなが遠巻きに二人を見ていた。
なんと言ってもあの美しさだ。男女含めて話しかける事はできなかった。
それが、この一週間周りの空気が変わったのだ。
二人の関係が少し違う? と思ったものが令嬢に話しかけるようになった。
それに伴って女子生徒も王子様に話しかけようとする。
今クラスでは二人を取り囲む輪ができていると言っていい状態だった。
「でも、それじゃあシモン殿下とは仲良くなれないよね。だってこの一年でシモン殿下は女の子に話しかけられると凄く嫌そうにしていたもの。今だって令嬢ばかりを気にして話しかけてくる女の子の事は全然見てないわ」
ミアはこういう時は人と別のことをする事が目立つということをよく知っていた。
「そうだ!! 私は令嬢の方に話しかけるわ! シモン殿下は令嬢ばかりを見ているんだもの。私が令嬢と先に仲良くなればきっと注目してくれるし、他の女子とは別になるはずよ!!」
ミアは魔法に頼らずに、王子様と仲良くなる方法を考えた。
だって、いつ、実現するのか本当に実現するのかもわからない魔法になんて頼れないと思ったのだった。
ただし、それは全てではないし、いつ実現するのかを指定する事はできない。
魔法を使うものによって、夢や希望をどの様にまとめるのかは異なる。
あるものは話すことによって、あるものは祈ることによって、あるものは書き記すことによって魔法が発現する。
このような曖昧な作用から、魔法というよりも気まぐれな神の仕業だというものも多い。
ただ、注意しなくてはならないのは一度願った事は取り消すことが出来ないのだ。
願ったもの全てが叶うはずではないにも関わらず、取り消せない為呪いの魔法とも言われる。
夢の実現に必要と思われる場合は必要な者達の潜在意識に働きかけて、それとはわからないように無意識下で行動させる。
これも、呪いの魔法と言われる所以である。
ミアはもう何度も読み直した夢実の魔法についての記述を見直していた。
そして、その本を、パタンと閉じて今度は自分が書きためた夢ノートを開く。
「本当にこれに書いた事は実現するのかしら?」
子供の頃から書きためた他愛のない夢。
そんなものも実現する?
ミアの手はあるページを開いた。
「空を飛びたい……。これも? 取り消せないし、いつ実現できるかわからないけど本当になる?」
この一週間でミアは少し冷静になった。
そんな馬鹿なと思い始めていたのだ。
あの日に書いた夢はまだまだ実現していないし、空なんか飛べない。
やっぱり偶々運が良かっただけなのかもしれないわ。
そう考えてミアは夢ノートを閉じて本棚にしまった。
「でも、少し怖いわよね……。暫くは夢ノートを書くのはやめておこうっと!」
そう独り言をいってミアはそのまま宿題に取り組んだ。
暫くはカリカリというぺンを動かす音だけが響く。
「終わったー」
宿題が終わったミアはこの一週間を、思い出していた。
初めて王子様から話しかけられた時は本当に興奮したわ。
第三王子のシモン殿下は男子なのにとても美しいのだ。
女子のミアでもドキドキしてしまう。
明るい金髪は光を透けてキラキラと輝いて、青く吸い込まれるような瞳は少し暗い色合いで男らしさと強さを秘めている。
あんなに格好いい男子はこの辺りには絶対にいない。
初めて会った時は子供で王子様という存在と女の子のような可愛らしさにびっくりしたが、学校で会うと可愛らしい印象は消えていた。
「魔法じゃなくても、仲良くなりたいなぁ」
あの日以来シモン殿下が、話しかけてくる事はなかった。
それに、あの日になぜ話しかけてきたのかもわからない。
何故なら王子の婚約者の公爵令嬢が怒ってシモン殿下を叩いから、なんとなく有耶無耶になってしまった。
「まったく! あの令嬢は、我が儘よね! あんなにシモン殿下を独り占めしてるのに話すことも許さないだなんて!」
あの後戻ってきた二人は少しよそよそしい感じがしたが、それもそうだ。
なんと言っても王族を叩いたのだからあの令嬢はもっと反省すべきだわとミアは思ったくらいだ。
「それに、あの令嬢はあんまり好きじゃないのよ!」
シモン殿下の婚約者の令嬢はコーデリアと言ってシモン殿下に輪をかけるかのように美しい。
二人が並ぶとシモン殿下が霞むくらいだ。
それでも、対照的な容姿の二人が並んでいるだけてため息がでる。
今までの一年間は皆んなが遠巻きに二人を見ていた。
なんと言ってもあの美しさだ。男女含めて話しかける事はできなかった。
それが、この一週間周りの空気が変わったのだ。
二人の関係が少し違う? と思ったものが令嬢に話しかけるようになった。
それに伴って女子生徒も王子様に話しかけようとする。
今クラスでは二人を取り囲む輪ができていると言っていい状態だった。
「でも、それじゃあシモン殿下とは仲良くなれないよね。だってこの一年でシモン殿下は女の子に話しかけられると凄く嫌そうにしていたもの。今だって令嬢ばかりを気にして話しかけてくる女の子の事は全然見てないわ」
ミアはこういう時は人と別のことをする事が目立つということをよく知っていた。
「そうだ!! 私は令嬢の方に話しかけるわ! シモン殿下は令嬢ばかりを見ているんだもの。私が令嬢と先に仲良くなればきっと注目してくれるし、他の女子とは別になるはずよ!!」
ミアは魔法に頼らずに、王子様と仲良くなる方法を考えた。
だって、いつ、実現するのか本当に実現するのかもわからない魔法になんて頼れないと思ったのだった。
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