悪役令嬢のお母様……でしたの

波湖 真

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第五章 物語の始まり

43、ミアの夢(ミア視点)

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ミア・グランデには夢がある。
ミアは友人達と話をしながら先程の魔法について考えずにはいられなかった。
確かにミアが望んだ事は叶うことが多いのだ。
いつもはラッキーだわで済ましていだが、それが魔法かもと言われるとそうかもしれないと思うくらいは不思議な事も経験した。
そんな感じで上の空で授業を受けてから、家に帰ると自室に篭ってノートを広げた。
そのノートは日記のようなものだった。
ただ異なるのは実際にあった事を書き込むのではなく、ああしたかった、こうしたかったという希望や夢を書き込んでいる夢ノートなのだ。
既に何年も書き続けているミアの習慣だった。
きっかけは何かのスローガンだった気がする。
『願えば夢はかなう』
そんなフレーズが流行った時期があったのだ。
多分一番始めのノートの宣伝文句だった。
その一言を気に入って書き始めたのがこの日記だった。
ミアは本箱に並ぶ何十冊ものノートから一番古いものを取り出すとペラペラとめくり始めた。
「確か、この辺りかな?」
ミアが開いたページには、家のことが書かれていた。
「お金持ちになりたいか……」
ミアがこの日記を書き始めた頃はあまり裕福ではなかった。
自分の部屋に憧れて、書いたと思う。
その後、父親の仕事が上手くいって今は国内に数店舗を持つ宝石店を経営しているのだ。
身分は平民だが、ミアはお嬢様と言われる身分になった。
その前のページをペラペラめくると、また別の記述があった。
「王子様にに会いたい」
これも叶った。
ミア達が遊んでいると突然本物の王子様が現れたのだ。
あれにはびっくりした。
そして、一番初めのページにはある一言が書かれている。
「お姫様になりたい」
子供の他愛のない夢だ。
そう思っていた。
誰でも夢見ることだし、これを書いたのは本当にまだ子供の頃なのだ。
でも、今日聞いた夢実の魔法ならあり得ることなのかもしれない。
ミアはノートを机に広げるとベットに倒れ込んだ。
「本当に私は夢実の魔法が使えるのかしら?」
友達に聞いたこの魔法は最高ランクの魔法らしい。
平民なのに魔力が強いとは小さな頃から言われていたが、魔法の勉強は貴族のものという風習があり、魔法についての勉強を始めたのは一年前に学校に入ってからなのだ。
「あ! 魔法の本に乗っているかもしれないわ!!」
入学に合わせて両親からプレゼントされた本の中に魔法の本があった事を思い出し、ミアは起き上がると本棚をガサゴソと探した。
「あったわ!!」
未だに一度も開いたことのない本パラパラとめくると御目当てのページを開いた。
「えっと、夢実の魔法とは……」
数ページにわたる説明を読んでミアは、色々と納得した。
「やっぱり、私はこの魔法が使えるのかもしれないわ!! ううん、無意識に使っているのかもしれない……」
説明の最後にはこの魔法は制御出来ないと大変危険だとも書かれていたが、ミアには関係ないと思った。
だって、もう数年単位で使っているようなのだ。
今更危険だからと報告して、封印でもされたら勿体ない。
ただ、この魔法の事はこれからしっかりと調べなくてはと心に決めた。
そして、今日の日記にミアはある一文をサラサラと書き込んだ。

王子様と仲良くなれますように!!

ノートに書き込んだ事は現実になる。
それが明日なのか、一年後なのかはわからない。
ミアはとりあえず、早くかなうといいなと思いながらその日はベッドに潜り込んで眠ったのだった。
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