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第四章 学校生活
35、作戦変更……なの?
しおりを挟む「無理よ!」
わたくしがコーデリアの部屋を訪ねて、今のシモン王子の言動を話すと、コーデリアが立ち上がって叫びました。
「コーデリア……」
「お母様もこれで分かったでしょう? やっぱり私はミアにシモン王子を奪われて、最後には婚約破棄される運命なのよ!!」
「い、今はそうかも知れないけれど、まだ、物語は始まったばかりじゃない!! な、何とかなるわよ!」
「お母様にはわからないのよ!! シモン王子になんと言われたと思う? お兄様に叱られて拗ねて泣いていると言われたのよ? 全然違うのに……。お兄様はいつもあんな感じだもの。シモン王子の前で言われたのが恥ずかしかったの! それなのに……」
コーデリアはそう言うと座っていたソファにもたれ掛かって顔を伏せてしまったのです。
わたくしはコーデリアの隣に座るとその艶やかな黒髪を懐かしげに撫でました。
わたくしの髪はブラウンなので、コーデリアの髪は前世を思い出させて、いつもいい知れない望郷の気持ちが湧き上がるのです。
「そうね……。わたくしは貴女に無理を言い過ぎたのかも知れないわね。元々貴女は婚約を破棄して自由に生きたかったのですものね。それを国の為、公爵家の為と言ってきたのは、わたくしですもの。」
わたくしは中々思うようにストーリーが変わらない事に疲れてしまったようです。
「おかあさま?」
「もし、コーデリアがもう物語に逆らいたくない、変えたくないというのなら、わたくしは何も言わないわ。だって、元を正せば貴方達アーノルドとコーデリアに幸せになって欲しいだけなんですもの」
わたくしは俯いたコーデリアの髪を最後にひと撫ですると立ち上がりました。
「コーデリアがもう嫌なら、わたくしもう何も言わないわ」
わたくしがそれだけ言ってドアに向かって歩き出しました。
わたくしがドアに手をかけた時、コーデリアの小さな声が聞こえたのです。
「お、おかあさま……」
わたくしはその場で振り返って、こちらに目を向けたコーデリアの瞳を見返しました。
「なあに?」
「お母様は、本当にそれでいいの?」
「いいのよ」
「公爵家が無くなってしまうかもしれないわよ?」
「貴女が苦しむ方がよっぽど嫌だわ。一つ約束してくれれば構わないの」
「え?」
「絶対に自ら死を選ばない事よ。もし、婚約破棄されても、修道院に送られても絶対に命を大切にして頂戴!! そうすればわたくしは物語がハッピーエンドになった後、絶対に貴女を助けに行くわ! 強制力も物語の後には働かないと思うの。約束してもらえるかしら?」
わたくしがコーデリアに尋ねると、コーデリアはソファから立ち上がってわたくし方に走り出したのです。
その勢いのまま、わたくしの可愛いコーデリアはわたくしに抱きついて来ました。
「コ、コーデリア?」
いつもコーデリアを抱きしめるのも、髪を撫でるのも、背中をトントンするのもわたくしからでした。
それが、初めてコーデリアからわたくしに抱きついてくれたのです。
わたくしはびっくりしてしまいました。
「お母様!! お母様!! お母様!! お母様!!」
「コーデリア?」
「私、今本当にお母様をお母様として受け入れられたわ!! 今まではお母様という名の友達感覚だったの。実際前世では私の方が年上だし……。でも、お母様はちゃんと私を娘だと、口だけではない本当の娘だと思ってくれているのね! 私、今理解したわ! ずっと、お母様は私より国や家が大切なんだと思ってたの。私なんて私が転生者だと分かった時点で子供じゃなくて協力者としてしか見ていないと思っていたの」
わたくしはギューっと抱きついてくるコーデリアの背中をいつものようにトントンと叩きながら声をかけました。
「そんなの、当たり前よ。貴女が転生者でも、中身が真理子さんでも、悪役令嬢コーデリアでも、わたくしとレオポルト様との大切な子供である事は変わらないし、貴女にはまだわからないけれど、お腹を痛めて産んだ子供なの。それは何にも変えがたい事実なのよ」
「お母様……」
「確かに貴女の中に真理子さんがいる事に悩んだ時期もあったわ。でも、コーデリアはコーデリアですもの。わたくしの可愛いコーデリアは今の貴女なのよ」
わたくしが言い聞かせるように話すとコーデリアがわたくしの首元から顔を上げて決意の浮かんだ瞳を見せました。
「お母様、今やっと私は覚悟を決めたわ。今までは仕方なく、言われたから、戦争とか嫌だし位の気持ちだったの。だから物語は変わらなかったし、強制力も働いたんだわ。でも、これからは違うわ! 私は私の意思で物語を変えて見せる! お母様を守ってみせるわ!!」
「コーデリア、でも、またシモン王子に厳しい事を言われたり、嫌な思いをしたりするかもしれないわよ?」
「いいの! シモン王子にいくら嫌われてたって、シモン王子とミアが上手くいかなければ、婚約破棄はされないもの!」
「どうするつもりなの?」
「イベントを乗っ取るのはやめるわ! でも、シモン王子とミアのイベントをトコトン邪魔してやるの! ミアを好きにならなければ、いくら私が嫌いでも婚約したままだと思うの。もう、シモン王子に好かれようと思わない! どうかしら?」
いつになく瞳を爛々と輝かせているコーデリアの雰囲気に呑まれて、わたくしは只々頷くことしかできませんでした。
そうして、わたくしとコーデリアのイベント乗っ取り大作戦はイベントお邪魔大作戦に変更されたのでした。
わたくしがコーデリアの部屋を訪ねて、今のシモン王子の言動を話すと、コーデリアが立ち上がって叫びました。
「コーデリア……」
「お母様もこれで分かったでしょう? やっぱり私はミアにシモン王子を奪われて、最後には婚約破棄される運命なのよ!!」
「い、今はそうかも知れないけれど、まだ、物語は始まったばかりじゃない!! な、何とかなるわよ!」
「お母様にはわからないのよ!! シモン王子になんと言われたと思う? お兄様に叱られて拗ねて泣いていると言われたのよ? 全然違うのに……。お兄様はいつもあんな感じだもの。シモン王子の前で言われたのが恥ずかしかったの! それなのに……」
コーデリアはそう言うと座っていたソファにもたれ掛かって顔を伏せてしまったのです。
わたくしはコーデリアの隣に座るとその艶やかな黒髪を懐かしげに撫でました。
わたくしの髪はブラウンなので、コーデリアの髪は前世を思い出させて、いつもいい知れない望郷の気持ちが湧き上がるのです。
「そうね……。わたくしは貴女に無理を言い過ぎたのかも知れないわね。元々貴女は婚約を破棄して自由に生きたかったのですものね。それを国の為、公爵家の為と言ってきたのは、わたくしですもの。」
わたくしは中々思うようにストーリーが変わらない事に疲れてしまったようです。
「おかあさま?」
「もし、コーデリアがもう物語に逆らいたくない、変えたくないというのなら、わたくしは何も言わないわ。だって、元を正せば貴方達アーノルドとコーデリアに幸せになって欲しいだけなんですもの」
わたくしは俯いたコーデリアの髪を最後にひと撫ですると立ち上がりました。
「コーデリアがもう嫌なら、わたくしもう何も言わないわ」
わたくしがそれだけ言ってドアに向かって歩き出しました。
わたくしがドアに手をかけた時、コーデリアの小さな声が聞こえたのです。
「お、おかあさま……」
わたくしはその場で振り返って、こちらに目を向けたコーデリアの瞳を見返しました。
「なあに?」
「お母様は、本当にそれでいいの?」
「いいのよ」
「公爵家が無くなってしまうかもしれないわよ?」
「貴女が苦しむ方がよっぽど嫌だわ。一つ約束してくれれば構わないの」
「え?」
「絶対に自ら死を選ばない事よ。もし、婚約破棄されても、修道院に送られても絶対に命を大切にして頂戴!! そうすればわたくしは物語がハッピーエンドになった後、絶対に貴女を助けに行くわ! 強制力も物語の後には働かないと思うの。約束してもらえるかしら?」
わたくしがコーデリアに尋ねると、コーデリアはソファから立ち上がってわたくし方に走り出したのです。
その勢いのまま、わたくしの可愛いコーデリアはわたくしに抱きついて来ました。
「コ、コーデリア?」
いつもコーデリアを抱きしめるのも、髪を撫でるのも、背中をトントンするのもわたくしからでした。
それが、初めてコーデリアからわたくしに抱きついてくれたのです。
わたくしはびっくりしてしまいました。
「お母様!! お母様!! お母様!! お母様!!」
「コーデリア?」
「私、今本当にお母様をお母様として受け入れられたわ!! 今まではお母様という名の友達感覚だったの。実際前世では私の方が年上だし……。でも、お母様はちゃんと私を娘だと、口だけではない本当の娘だと思ってくれているのね! 私、今理解したわ! ずっと、お母様は私より国や家が大切なんだと思ってたの。私なんて私が転生者だと分かった時点で子供じゃなくて協力者としてしか見ていないと思っていたの」
わたくしはギューっと抱きついてくるコーデリアの背中をいつものようにトントンと叩きながら声をかけました。
「そんなの、当たり前よ。貴女が転生者でも、中身が真理子さんでも、悪役令嬢コーデリアでも、わたくしとレオポルト様との大切な子供である事は変わらないし、貴女にはまだわからないけれど、お腹を痛めて産んだ子供なの。それは何にも変えがたい事実なのよ」
「お母様……」
「確かに貴女の中に真理子さんがいる事に悩んだ時期もあったわ。でも、コーデリアはコーデリアですもの。わたくしの可愛いコーデリアは今の貴女なのよ」
わたくしが言い聞かせるように話すとコーデリアがわたくしの首元から顔を上げて決意の浮かんだ瞳を見せました。
「お母様、今やっと私は覚悟を決めたわ。今までは仕方なく、言われたから、戦争とか嫌だし位の気持ちだったの。だから物語は変わらなかったし、強制力も働いたんだわ。でも、これからは違うわ! 私は私の意思で物語を変えて見せる! お母様を守ってみせるわ!!」
「コーデリア、でも、またシモン王子に厳しい事を言われたり、嫌な思いをしたりするかもしれないわよ?」
「いいの! シモン王子にいくら嫌われてたって、シモン王子とミアが上手くいかなければ、婚約破棄はされないもの!」
「どうするつもりなの?」
「イベントを乗っ取るのはやめるわ! でも、シモン王子とミアのイベントをトコトン邪魔してやるの! ミアを好きにならなければ、いくら私が嫌いでも婚約したままだと思うの。もう、シモン王子に好かれようと思わない! どうかしら?」
いつになく瞳を爛々と輝かせているコーデリアの雰囲気に呑まれて、わたくしは只々頷くことしかできませんでした。
そうして、わたくしとコーデリアのイベント乗っ取り大作戦はイベントお邪魔大作戦に変更されたのでした。
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