悪役令嬢のお母様……でしたの

波湖 真

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第四章 学校生活

34、また、失敗……なの?

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「コーデリア!!」
たった一人でトボトボと戻ってきたコーデリアにわたくしの胸は掻き毟られる様でした。
なんやかんやいってもわたくしの目標は子供達の幸せなのです。
こんな顔をさせる為ではないのですわ。
「コーデリア、大丈夫? シモン王子にはお会いしなかったの? 貴女をお迎えに行かれたのよ?」
わたくしはコーデリアを抱きしめながら、優しく確認した。
いくら公爵家の庭が広いといっても、二人の人間が出会わないほど広くはない。
「会ったわ……。でも、シモン王子にも怒られてしまったわ……」
その会話を聞いたアルバートがほらなと言って、呆れた様にコーデリアを見た。
「だから我が儘はいい加減にしろと言っただろう? お前を慰めに行かなくちゃならないシモン王子の気持ちを考えろよ」
「アーノルド!! その言い方は酷いわよ」
わたくしはアーノルドを注意している間にコーデリアはわたくしから離れて部屋に行ってしまった。
「アーノルド……。貴方はもう少しコーデリアに優しく出来ないのかしら? コーデリアが可哀想だわ」
わたくしがため息を吐くとアーノルドは罰の悪そうな顔をして窓の外に顔を向けた。
「ねえ? アーノルド、聞いていて?」
「あ!! 母上、シモン王子が戻ってきますよ」
「アーノルド!!」
わたくしは仕方なくシモン王子を迎える為にドアに向かった。
何故アーノルドはあんなにコーデリアに厳しいのかしら?
何か……原因があったかしら?
そうしているうちに執事がシモン王子を連れてやってきた。
「遅くなって申し訳ありません」
入ってくるなり頭を下げたシモン王子に近づくと、わたくしは早速コーデリアの事を確認しました。
「シモン王子、あの、コーデリアとは、どんなやり取りを?」
わたくしが聴くとシモン王子は頬を人差し指でポリポリと書くと誤魔化す様にソファに腰を下ろした。
「シモン王子!」
「わかっています。今話しますので、おば様もお座り下さい」
わたくしは足早に手近なソファに腰かけると目線で新しいティーセットを用意する様に指示を出しました。
侍女達がカチャカチャとカップやお菓子を用意する音だけが暫く響いておりました。
「ありがとう。下がっていいわ」
わたくしが人払いをすると、シモン王子はまだ、湯気が立っているお茶を一口飲むとわたくしの方を見て話し始めました。
「まだ、誰にも話していないのですが……」
そう言って話し始めた内容は驚愕のものでした。
あの誘拐事件にそんな犯人が隠れていただなんて!
シモン王子が我が家と距離をとっていたのは理由があるあったのね
まあまあ、コーデリアを陰から警護していたの?
婚約発表のときの少し上の空だったのはそういうことだったのね!
わたくしはシモン王子の話す内容にかなり納得してうんうんと頷きながら相槌を打ちました。
「そして、今日なんですが……」
誘拐されたときの恩人が具合が悪かったこと、講堂まで連れて行って欲しいと頼まれたこと、すぐに教師に預けたことを話してくれました。
その話をするときのシモン王子の顔は少し迷惑そうだったのが印象的でした。
「あの、シモン王子はそのご恩人の方が気になっていらっしゃるの?」
「気になっていると言えば、気になります。(何を話されるのか不安でしかない)」
「……そうなのね」
「まあ、これからも動向は確認する予定です。(約束を守って他言無用を実行するか見張らなければ)」
わたくしはシモン王子のこれからもミアを見守る発言にやっぱりコーデリアとの庭園イベントは失敗したのだと確信した。
もう既にシモン王子はコーデリアではなく、ミアを守る対象にしてしまっているのだ。
「残念だわ」
わたくしの口から小さな独り言が発せられた。
「はい? 何でしょうか?」
「いいのですわ。シモン王子はコーデリアの事はどうお思いですの? 婚約者ですもの。それに、これからは学校でも嫌が応にも毎日顔を合わせますでしょう? わたくし、心配ですの」
「コーデリアを、どう思うかですか……」
そう言うとシモン王子は何故かハンカチを取り出して口元に当てると立ち上がりました。
「す、すみません……。今日はこれで失礼します」
「え? シモン王子?」
わたくしの質問に答える前に足早に部屋から出て行ってしまったシモン王子に呆然としつつも追いかけました。
わたくしがエントランスホールに着くと既にシモン王子は馬車に乗り込んでおり、窓から会釈だけするとそのまま走り去ってしまいました。
「シモン王子……」
やはりコーデリアはあまり好かれてはいないらしい。
「母上……シモン王子は……その……コーデリアの事は……」
アーノルドが言い難そうにしているのを遮りました。
「そうですね……。残念ながらまだまだ二人の間には大きな溝があるみたいね。アーノルド、お願いよ。貴方なりにコーデリアをフォローしてやって頂戴ね?」
「……わかりましたが、コーデリアもあの癇癪を何とかしないと嫌な噂ばかりが蔓延します」
「それでも、貴方はお兄様なんですもの。婚約者同士は仲が良い方がいいに決まっていますもの。コーデリアに協力してあげて頂戴」
「わかりました。母上がどうしてもと仰るなら」
アーノルドが不満そうに答えました。
「どうしてもですわ。お願いね?」
アーノルドはため息をついてから小さくはいと答えてくれましたわ。
そうして、わたくしはアーノルドをその場に残してコーデリアの部屋に向かったのです。
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