悪役令嬢のお母様……でしたの

波湖 真

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第二章 生まれながらの悪役令嬢

13、王子様との初対面……なの?

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「シモン王子をお連れ致しました」
わたくしたちはテーブルに着いてお茶を頂いていると執事から声がかかりました。
とうとう王子様との対面ですわ。
王子様もまだ三歳、絶対に可愛いはずですわ。
今から俺様で自己中という事は……ないはずです。
わたくし達家族が席を立って、軽く頭を下げて王子様を待ちました。
「おかーさまー。どうして、ぼくがこんなお茶会に来なくちゃいけないのですか?」
でましたー!! もう既に甘やかされた我が儘王子様でしたー!
「まぁまぁ、シモンちゃん、どうしたのですか? 御客様なんですからご挨拶なさい」
王妃様が優しく注意するとこの我が儘王子はわたくし達をわたくしだけではなくバルターク公爵であるレオポルト様をも一瞥してからプイッと顔を逸らしたのでございます。
わたくしはあまりの事にレオポルト様を見てしまいましたわ。
「ふん、シモンだ」
顔を横に向けたまま、名前だけを告げたシモン王子に開いた口が塞がりませんでした。
レオポルト様が顔を少し引きつらせて、国王様をじーっと見つめました。
すると、国王様は罰の悪い顔して慌てて口を挟んできました。
「バルターク公爵、すまないな。まだ、三歳故多少の事は許してやってくれ」
レオポルト様は国王様から目を逸らさずに答えます。
「王よ……。我が娘コーデリアも三歳なのですぞ?」
「ゔっ……。それは……そうだが……」
言葉に詰まった王から視線をシモン王子に移して優しく話しかけましたの。
「シモン王子殿下、お初にお目にかかります。私はバルターク公爵のレオポルトです。こちらから妻のアリアドネ、息子のアルバート、そして、貴方の婚約者であるコーデリアです」
シモン王子はえ?という顔で隣に立つ国王夫妻に顔を向けた。
「おとーさま、こんやくしゃとはなんですか?」
わたくしはこの王子の呼び名に馬鹿を追加することにいたしました。
「ああ、それは、お前のお嫁さんになるってことだよ。シモン」
「お嫁さん? ぼくの? この子が?」
そう言って無遠慮にコーデリアを指差しました。
もう、それだけでもマナー違反です。
「あ、ああ、そうだよ」
「えーー。嫌だなぁー。なんか意地悪そうだし」
アルバートの手がギュッと握られたのが見えました。
あんなに馬車の中では揶揄っていたのに実際に妹が馬鹿にされるのは嫌みたいです。
わたくしがアルバートを見ていると隣から何かが飛び出したのが見えました。
「え?」
パッチーン
大きな音と共に飛び出したコーデリアがシモン王子の頬を思いっきり叩くのが見えたのです。
「「「コーデリア!!」」」
流石に家族であるわたくしと、アルバートと更にはレオポルト様の声が重なりました。
その姿はまさに悪役令嬢コーデリアなのです。
「貴方!! とっても失礼だわ!! コーデリアはまだ何もしてないじゃない!! だから王子は嫌いなの!!」
その言葉に頬を押さえていたシモン王子の瞳に涙が溢れてきました。
「な、な、な、何するんだよー!! ぼくは王子だぞ!! えらいんだぞ!!」
「そんなのしらないわよ! えらくったって失礼な事はダメなのよ! そんなことも知らないの?」
更には、コーデリアの口調は完全に真理子さんになっていたので慌ててコーデリアを抱き上げると口を抑えました。
「コーデリア……悪役令嬢はダメだと。それに真理子さんになっていますわ」
わたくしが小声で注意するとハッとした顔でわたくしを見てから視線を落としました。
わたくしはコーデリアをそのまま抱きしめて、深く頭を下げました。
「も、申し訳ございません。国王様、王妃様」
「あー、いやー、気にするな。今回はシモンの方が悪かったのだ。コーデリア嬢が怒るのも無理はない。気にするな。」
国王様は手を前に出すとシモン王子の頭をグリグリしながら答えてくれました。
そして、王妃様も許してくれたのです。
「そうですわ。シモンも女性にあんな事を言ってはなりませんよ。しかも、自分の婚約者ですのよ? もう少しマナー学ばなければなりませんよ」
その言葉に多分初めて両親から怒られたらしく、涙を溢れさせてからコーデリアに向かって叫びました。
「なんだよー。おまえなんて大嫌いだ!!」
そして、そのままシモン王子は走って部屋に帰ってしまいました。
もちろん、謝罪も何もなくですわ。
すると今まで黙っていたレオポルト様が口火を切ったのです。
「王様、王妃様。今の事を踏まえてご相談があります」
「な、なんだ?」
「差し出がましい事は、重々承知しておりますが、シモン王子のご教育についてでございます。もちろん我が娘コーデリアも褒められた態度ではありませんでしたが、シモン王子は将来王家の庇護を離れるお立場です。更にはコーデリアを嫁に取り、新興公爵家を担わなければならないのです。もう三歳となりましたし、そろそろ外部のものに教育をお任せされた方が良いのではないでしょうか?」
レオポルト様の言葉に国王夫妻は顔を見合わせて少し話すと頷き合いました。
「ふむ、確かに末の王子故少し甘やかし過ぎたのかもしれん」
「は!」
「これから毎日公爵家に通わせる故、バルターク公爵家の教育を受けさせてはくれんか?」
「は?」
「将来シモンにはバルタークに負けずとも劣らない公爵になってほしいのだ。其方の息子アルバートと一緒に学べば、あの我が儘も治るであろう」
「は、はぁ」
「それに今のシモンとコーデリア嬢の相性は最悪の様だが、毎日会っていればそのうち仲良くなるかも知れん。そう思わんか?」
国王夫妻はさもいい案が浮かんだという顔をしてレオポルト様を見つめております。
レオポルト様はその視線を受けて暫く考えていたが、スッと頭を下げました。
「承知いたしました。公爵になる二人であれば良きライバルにもなりましょう。アルバートと学友となれば、将来的にもメリットが多いと考えます」
そうして、あの我が儘王子は我が公爵家に通って来ることになりました。
なんだか予想外の展開ですが、これで王子を真理子さん理想の王子に改造ですわ!!
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