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第二章 生まれながらの悪役令嬢
8、作戦会議……なの?
しおりを挟む「コーデリア、今からお母様はあるお話をします。いいですね?」
コーデリアは不思議そうに頷きました。わたくしはコーデリアの瞳を見つめて精一杯の気持ちを込めて話し始めました。
「コーデリア、これはここではないような、あるようなそんな世界のお話なの」
「……はい、おかあさま」
「貴女はまだ小さいから理解できるかわかりません。でも、わたくしは貴女の幸せだけを願っているのよ? それだけは信じて頂戴」
「……はい、おかあさま」
そうして、わたくしはある悪役令嬢の物語を話して聞かせました。
自分のプライドと身分を傘にして生きて、意地悪になり、王子に嫌われて、死を選ぶ。可哀想な女の子のお話です。
「……そうして、その令嬢は自ら死を選んでしまうのよ」
わたくしは話終わるとほうっと息を吐きました。
三歳のコーデリアには難しく長い話だったのに、しっかりと聞いてくれたことにわたくしは感動してしまいました。
「コーデリアはこの令嬢をどう思う?」
わたくしはコーデリアの顔を覗き込んで話しかけました。
「馬鹿ですわ! おかあさま」
「え?」
コーデリアは三歳とは思えない聡明な瞳でわたくしを見つめました。
「だから、馬鹿なんです。悪役令嬢コーデリアは!!」
「は?」
「あそこで死を選ばすに修道院に行く振りをして逃げ出せば良かったんです! 私はそうするつもりです。そして、この魔法の世界で魔導士として生きていくんです!」
「コ、コーデリア?」
「まだ、わからないの? 私も転生してるの! まさかおかあさまも転生者とは思わなかったけど、まぁいいわ。協力者になってもらうわね」
突然ペラペラと話し出したコーデリアはもうわたくしの娘のコーデリアではありませんでした。
「あ、あの、貴女は……誰?」
コーデリアはニヤリと笑うとわたくしを見て親指をたてました。
「私は日本という場所から転生して来た真理子でーす。記憶は三十歳までありまーす。もちろんおかあさまが話してくれた物語もちゃんと知ってるし、悪役令嬢も、王子もミアも知ってるわ! でも、ミアに転生しなくて本当に良かったわよ。私あの子嫌いだったのよね。いい子過ぎ? それなら、自分の信念で意地悪して、覚悟を持って死を選ぶコーデリアの方が何倍も好きだわ! あの王子は頂けないけどね」
「そ、そんな……では、なんであのような行動を? 死んでしまうのですよ?」
わたくしは必死に訴えました。
わたくしが前世では、二十歳前、コーデリアは三十歳。
完璧に、力関係は逆転してしまいましたわ。
「だから、私は悪役令嬢を演じきって最後の最後に脱出しようと考えているのよ! だから、生まれてからずっと悪役令嬢を心がけて行動して来たの!! わかるでしょう?」
わたくしの目の前は真っ暗になりました。
まさか、まさか、コーデリアの生まれながらの悪役令嬢が全て演技だっただなんて!
そんな、まさか……。
「あのコーデリア……では、貴女はあの物語の通りに行動するつもりなのですか?」
「ええ、そうよ。王子には嫌われて、ミアには意地悪して、お兄様には逆らって、両親には呆れられて修道院送りにしてもらうのよ! それで、逃げ出してただのコーデリアとして生きていくのよ! 折角魔法の世界が目の前に広がっているんだもの」
コーデリアはそう言って両手を前で組んで瞳をキラキラと輝かせたのです。
「それに見たでしょう? お兄様の魔法よ!! やっぱり凄いわ! そうよ。お母様にはもう演技する必要がないんだもの。私にも魔法の先生をつけて欲しいの! ね? お願い!!」
そう言ってわたくしに縋り付くコーデリアの見た目は三歳の娘なのです。
「あ、あの、ごめんなさい。わたくし、少し一人で現状を把握したいですわ。いいかしら?」
わたくしが今の気持ちを素直に伝えるとコーデリアが小さな腕を組んでウンウンと頷いた。
「そうね。確かに情報過多だわ。また、明日、作戦会議をしましょう? うーん、そうね。寝る前に絵本でも読みに来て頂戴。これからの作戦を話しましょう? お・か・あ・さ・ま」
コーデリアの顔を見て、わたくしはぎこちなく頷くと逃げるように自室に戻ったのでございます。
コーデリアは不思議そうに頷きました。わたくしはコーデリアの瞳を見つめて精一杯の気持ちを込めて話し始めました。
「コーデリア、これはここではないような、あるようなそんな世界のお話なの」
「……はい、おかあさま」
「貴女はまだ小さいから理解できるかわかりません。でも、わたくしは貴女の幸せだけを願っているのよ? それだけは信じて頂戴」
「……はい、おかあさま」
そうして、わたくしはある悪役令嬢の物語を話して聞かせました。
自分のプライドと身分を傘にして生きて、意地悪になり、王子に嫌われて、死を選ぶ。可哀想な女の子のお話です。
「……そうして、その令嬢は自ら死を選んでしまうのよ」
わたくしは話終わるとほうっと息を吐きました。
三歳のコーデリアには難しく長い話だったのに、しっかりと聞いてくれたことにわたくしは感動してしまいました。
「コーデリアはこの令嬢をどう思う?」
わたくしはコーデリアの顔を覗き込んで話しかけました。
「馬鹿ですわ! おかあさま」
「え?」
コーデリアは三歳とは思えない聡明な瞳でわたくしを見つめました。
「だから、馬鹿なんです。悪役令嬢コーデリアは!!」
「は?」
「あそこで死を選ばすに修道院に行く振りをして逃げ出せば良かったんです! 私はそうするつもりです。そして、この魔法の世界で魔導士として生きていくんです!」
「コ、コーデリア?」
「まだ、わからないの? 私も転生してるの! まさかおかあさまも転生者とは思わなかったけど、まぁいいわ。協力者になってもらうわね」
突然ペラペラと話し出したコーデリアはもうわたくしの娘のコーデリアではありませんでした。
「あ、あの、貴女は……誰?」
コーデリアはニヤリと笑うとわたくしを見て親指をたてました。
「私は日本という場所から転生して来た真理子でーす。記憶は三十歳までありまーす。もちろんおかあさまが話してくれた物語もちゃんと知ってるし、悪役令嬢も、王子もミアも知ってるわ! でも、ミアに転生しなくて本当に良かったわよ。私あの子嫌いだったのよね。いい子過ぎ? それなら、自分の信念で意地悪して、覚悟を持って死を選ぶコーデリアの方が何倍も好きだわ! あの王子は頂けないけどね」
「そ、そんな……では、なんであのような行動を? 死んでしまうのですよ?」
わたくしは必死に訴えました。
わたくしが前世では、二十歳前、コーデリアは三十歳。
完璧に、力関係は逆転してしまいましたわ。
「だから、私は悪役令嬢を演じきって最後の最後に脱出しようと考えているのよ! だから、生まれてからずっと悪役令嬢を心がけて行動して来たの!! わかるでしょう?」
わたくしの目の前は真っ暗になりました。
まさか、まさか、コーデリアの生まれながらの悪役令嬢が全て演技だっただなんて!
そんな、まさか……。
「あのコーデリア……では、貴女はあの物語の通りに行動するつもりなのですか?」
「ええ、そうよ。王子には嫌われて、ミアには意地悪して、お兄様には逆らって、両親には呆れられて修道院送りにしてもらうのよ! それで、逃げ出してただのコーデリアとして生きていくのよ! 折角魔法の世界が目の前に広がっているんだもの」
コーデリアはそう言って両手を前で組んで瞳をキラキラと輝かせたのです。
「それに見たでしょう? お兄様の魔法よ!! やっぱり凄いわ! そうよ。お母様にはもう演技する必要がないんだもの。私にも魔法の先生をつけて欲しいの! ね? お願い!!」
そう言ってわたくしに縋り付くコーデリアの見た目は三歳の娘なのです。
「あ、あの、ごめんなさい。わたくし、少し一人で現状を把握したいですわ。いいかしら?」
わたくしが今の気持ちを素直に伝えるとコーデリアが小さな腕を組んでウンウンと頷いた。
「そうね。確かに情報過多だわ。また、明日、作戦会議をしましょう? うーん、そうね。寝る前に絵本でも読みに来て頂戴。これからの作戦を話しましょう? お・か・あ・さ・ま」
コーデリアの顔を見て、わたくしはぎこちなく頷くと逃げるように自室に戻ったのでございます。
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