悪役令嬢に転生しませんでした!

波湖 真

文字の大きさ
上 下
23 / 30
危険なルート

23.助けを呼ぶ手紙

しおりを挟む
「えっと、確かこの文字を抜かして、この文字とこの文字の組み合わせはこれに直してだったかな?」
私は帰宅すると早速の手紙を解読して新しい紙に正しい文章を書き出した。
出来上がった文章を、読んでゴクリと喉が鳴る。
揺らめく蝋燭の明かりに揺れる文字からは助けを求める叫びが聞こえてくる。
「たい……へん。行かないと!!」
手紙はキャリーからで誰かに、誘拐されて閉じ込められていると書かれていた。そして、私がくれば家に返してくれると言われたと書かれていた。
多分この手紙は誘拐犯が書かせたのだろう。そして、この暗号を知っているということはあの発表会に出ていた中の一人である可能性が高い。
私は私のことを悪く言っていた子達を思い浮かべる。それ程まで私は彼らを見下すようにしていたのかもしれない。
その為にキャリーが怖い目に遭っているのなら助けに行かなくてはならない。
キャリーだけだったのだ。半年前と変わらずに私に抱きついてくれたのは! それにもしかするとあの時キャリーが私を受け入れる様に抱きついたから閉じ込められているのかもしれない。
「いかなくちゃ!!」
私はこの前の町歩きて身につけたワンピースに着替えてから部屋から抜け出した。
もう既に真っ暗なのだ。流石にこの時間に出かけるなんてパパもママも、許してくれるはずがない。
なんとか誰にも見つからずに屋敷を出る。
「でも、どうやって町まで行けば良いのかな。歩くと危険かもしれないし」
私は途方に暮れたが、それでもこんな暗くなるまで閉じ込められているキャリーを思うと行くしかないのだ。
私は町に向かって歩き出す。
「フルールさん!」
突然呼ばれて振り向くとそこにはなんとアレクサンドラ様が立っていた。
「アレクサンドラ様!! あっ」
私は思わず叫んだ後、気不味いことを思い出す。
ただ、ここは外、時間は夜。私はアレクサンドラ様に駆け寄った。
「あの……」
私が近寄るとアレクサンドラ様は人差し指を顔の前に立ててシッとした。
「フルールさん、町に行かれるのでしょう? こちらに」
「え? どうしてそのことを……」
私は訳も分からずアレクサンドラ様について行く。
すると森の中に少し入ったところに馬車が止まっていた。
決して質素ではないが、裕福な商人ならば乗っている様な物だ。
「あの……これ……」
アレクサンドラ様はにっこりと微笑むとその馬車に乗り込んだ。
「どうぞ、フルールさん」
私は頭の中は疑問だらけだが、その馬車に乗り込む。
その馬車にはアレクサンドラ様一人だった。
「あの殿下とマルセル様は?」
てっきり二人と一緒だと思っていた私は思わず聞いてしまう。
するとアレクサンドラ様は御者に馬車を出すように命じると私に向かって頭を下げた。
「フルールさん、この前は本当に申し訳ありませんでした。わたくしはどうしても自分だけが知っているのだということを忘れてしまうのです」
「アレクサンドラ様だけが知っていること」
「そうですわね。その通りになるかどうかは定かではありませんの。それは今までわたくしが経験してまりいましたわ。沢山の失敗と成功もありましたの」
「一体なんのお話ですか?」
すると、アレクサンドラ様は過ごした考えてから私の目を見つめた。
「わたくしが予言者だといったら信じて頂けるかしら?」
「予言者ですか……」
「ええ、未来がわかるの。ただ、その未来はあくまで可能性。変えることも出来ますわ。わたくし達がお友達になった様に」
そう言ってアレクサンドラ様は私の手を取った。
「わたくし、フルールさんを守りたいの。今だけでいいの。わたくしの言うことを信じていただけないかしら?」
その真剣な顔と雰囲気に私はコクンと頷いた。
「わかりました。信じます。お話しください」
アレクサンドラ様の話は昨日のいやあの手紙を受け取る前なら信じなかった内容だった。
しかし、今なら信じられた。何故なら、あの手紙の内容をピタリと当てたのだ。
しかも、暗号の解読方法まで知っていた。
「どうして、そのことを……」
私は何度そういったかわからない。
「でも、わたくしはこの手紙を書かせたのは先生だということしかわかりませんの。そして、この助けを求める子のことも知りません。学園には該当する教師がいなかったから。だから予言は外れたのだと思っていたの。まさか学園の外に先生がいるなんて……」
アレクサンドラ様がそう言って悔しそうな顔をした。
「あの……アレクサンドラ様が予言者だということはわかりました。ただ、何故今ここに? これからどうするのでしょうか?」
「そうね。実はこの後のことはあまり知らないの。プレイしなかったルートだから。少しサイトで見て怖いルートがあると知っていたからやらずにやり直したのよ」
「えっと……」
「ああ、ごめんなさい。フルールさんは秘密の場所がどこにあるのかご存知?」
アレクサンドラ様が気を取り直して聞いてくる。
「これは多分発表会を行った町の教会だと思います。私達はこの教会に地下室があるのを見つけて秘密の場所と呼んでいたんです」
「……そう」
「このお手紙を書いた方は?」
「キャリーです。平民時代の学校の後輩です。まだ、七歳なんです。絶対に怖い思いをしているはずなんです。助けないと!!」
私はあのキャリーのことを考え、体を震わせる。
「先生のことは何でお呼びなの?」
「アレクサンドラ様の予言では先生が犯人なんですか?」
「残念だけど、そうよ」
「先生はマクミラン先生です。私は普段から先生と呼んでいます」
「そうなのね……」
アレクサンドラ様はそう言ってから何故か私の手に飴を差し出した。
「フルールさん、少し緊張されているのね。これを食べてちょうだい。落ち着きますわ」
確かに私は緊張していた。ふうっと息を吐くとその飴を受け取って口に含む。
「教会までまだ、かかるわ。少し休んでいいのよ」
飴を舐めていると急激に眠気が襲ってきた。
「な、なん……で…………」
私の視界が暗転したのだった。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

【完結】あなたの思い違いではありませんの?

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
複数の物語の登場人物が、一つの世界に混在しているなんて?! 「カレンデュラ・デルフィニューム! 貴様との婚約を破棄する」 お決まりの婚約破棄を叫ぶ王太子ローランドは、その晩、ただの王子に降格された。聖女ビオラの腰を抱き寄せるが、彼女は隙を見て逃げ出す。 婚約者ではないカレンデュラに一刀両断され、ローランド王子はうろたえた。近くにいたご令嬢に「お前か」と叫ぶも人違い、目立つ赤いドレスのご令嬢に絡むも、またもや否定される。呆れ返る周囲の貴族の冷たい視線の中で、当事者四人はお互いを認識した。  転生組と転移組、四人はそれぞれに前世の知識を持っている。全員が違う物語の世界だと思い込んだリクニス国の命運はいかに?!  ハッピーエンド確定、すれ違いと勘違い、複数の物語が交錯する。 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/11/19……完結 2024/08/13……エブリスタ ファンタジー 1位 2024/08/13……アルファポリス 女性向けHOT 36位 2024/08/12……連載開始

【完結】異世界転生した先は断罪イベント五秒前!

春風悠里
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したと思ったら、まさかの悪役令嬢で断罪イベント直前! さて、どうやって切り抜けようか? (全6話で完結) ※一般的なざまぁではありません ※他サイト様にも掲載中

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

えっ、これってバッドエンドですか!?

黄昏くれの
恋愛
ここはプラッツェン王立学園。 卒業パーティというめでたい日に突然王子による婚約破棄が宣言される。 あれ、なんだかこれ見覚えがあるような。もしかしてオレ、乙女ゲームの攻略対象の一人になってる!? しかし悪役令嬢も後ろで庇われている少女もなんだが様子がおかしくて・・・? よくある転生、婚約破棄モノ、単発です。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

悪役令嬢と転生ヒロイン

みおな
恋愛
「こ、これは・・・!」  鏡の中の自分の顔に、言葉をなくした。 そこに映っていたのは、青紫色の髪に瞳をした、年齢でいえば十三歳ほどの少女。  乙女ゲーム『タンザナイトの乙女』に出てくるヒロイン、そのものの姿だった。  乙女ゲーム『タンザナイトの乙女』は、平民の娘であるヒロインが、攻略対象である王太子や宰相の息子たちと交流を深め、彼らと結ばれるのを目指すという極々ありがちな乙女ゲームである。  ありふれた乙女ゲームは、キャラ画に人気が高まり、続編として小説やアニメとなった。  その小説版では、ヒロインは伯爵家の令嬢となり、攻略対象たちには婚約者が現れた。  この時点で、すでに乙女ゲームの枠を超えていると、ファンの間で騒然となった。  改めて、鏡の中の姿を見る。 どう見ても、ヒロインの見た目だ。アニメでもゲームでも見たから間違いない。  問題は、そこではない。 着ているのがどう見ても平民の服ではなく、ドレスだということ。  これはもしかして、小説版に転生?  

【完結】乙女ゲームのヒロインに転生したけどゲームが始まらないんですけど

七地潮
恋愛
薄ら思い出したのだけど、どうやら乙女ゲームのヒロインに転生した様だ。 あるあるなピンクの髪、男爵家の庶子、光魔法に目覚めて、学園生活へ。 そこで出会う攻略対象にチヤホヤされたい!と思うのに、ゲームが始まってくれないんですけど? 毎回視点が変わります。 一話の長さもそれぞれです。 なろうにも掲載していて、最終話だけ別バージョンとなります。 最終話以外は全く同じ話です。

処理中です...