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危険なルート
23.助けを呼ぶ手紙
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「えっと、確かこの文字を抜かして、この文字とこの文字の組み合わせはこれに直してだったかな?」
私は帰宅すると早速の手紙を解読して新しい紙に正しい文章を書き出した。
出来上がった文章を、読んでゴクリと喉が鳴る。
揺らめく蝋燭の明かりに揺れる文字からは助けを求める叫びが聞こえてくる。
「たい……へん。行かないと!!」
手紙はキャリーからで誰かに、誘拐されて閉じ込められていると書かれていた。そして、私がくれば家に返してくれると言われたと書かれていた。
多分この手紙は誘拐犯が書かせたのだろう。そして、この暗号を知っているということはあの発表会に出ていた中の一人である可能性が高い。
私は私のことを悪く言っていた子達を思い浮かべる。それ程まで私は彼らを見下すようにしていたのかもしれない。
その為にキャリーが怖い目に遭っているのなら助けに行かなくてはならない。
キャリーだけだったのだ。半年前と変わらずに私に抱きついてくれたのは! それにもしかするとあの時キャリーが私を受け入れる様に抱きついたから閉じ込められているのかもしれない。
「いかなくちゃ!!」
私はこの前の町歩きて身につけたワンピースに着替えてから部屋から抜け出した。
もう既に真っ暗なのだ。流石にこの時間に出かけるなんてパパもママも、許してくれるはずがない。
なんとか誰にも見つからずに屋敷を出る。
「でも、どうやって町まで行けば良いのかな。歩くと危険かもしれないし」
私は途方に暮れたが、それでもこんな暗くなるまで閉じ込められているキャリーを思うと行くしかないのだ。
私は町に向かって歩き出す。
「フルールさん!」
突然呼ばれて振り向くとそこにはなんとアレクサンドラ様が立っていた。
「アレクサンドラ様!! あっ」
私は思わず叫んだ後、気不味いことを思い出す。
ただ、ここは外、時間は夜。私はアレクサンドラ様に駆け寄った。
「あの……」
私が近寄るとアレクサンドラ様は人差し指を顔の前に立ててシッとした。
「フルールさん、町に行かれるのでしょう? こちらに」
「え? どうしてそのことを……」
私は訳も分からずアレクサンドラ様について行く。
すると森の中に少し入ったところに馬車が止まっていた。
決して質素ではないが、裕福な商人ならば乗っている様な物だ。
「あの……これ……」
アレクサンドラ様はにっこりと微笑むとその馬車に乗り込んだ。
「どうぞ、フルールさん」
私は頭の中は疑問だらけだが、その馬車に乗り込む。
その馬車にはアレクサンドラ様一人だった。
「あの殿下とマルセル様は?」
てっきり二人と一緒だと思っていた私は思わず聞いてしまう。
するとアレクサンドラ様は御者に馬車を出すように命じると私に向かって頭を下げた。
「フルールさん、この前は本当に申し訳ありませんでした。わたくしはどうしても自分だけが知っているのだということを忘れてしまうのです」
「アレクサンドラ様だけが知っていること」
「そうですわね。その通りになるかどうかは定かではありませんの。それは今までわたくしが経験してまりいましたわ。沢山の失敗と成功もありましたの」
「一体なんのお話ですか?」
すると、アレクサンドラ様は過ごした考えてから私の目を見つめた。
「わたくしが予言者だといったら信じて頂けるかしら?」
「予言者ですか……」
「ええ、未来がわかるの。ただ、その未来はあくまで可能性。変えることも出来ますわ。わたくし達がお友達になった様に」
そう言ってアレクサンドラ様は私の手を取った。
「わたくし、フルールさんを守りたいの。今だけでいいの。わたくしの言うことを信じていただけないかしら?」
その真剣な顔と雰囲気に私はコクンと頷いた。
「わかりました。信じます。お話しください」
アレクサンドラ様の話は昨日のいやあの手紙を受け取る前なら信じなかった内容だった。
しかし、今なら信じられた。何故なら、あの手紙の内容をピタリと当てたのだ。
しかも、暗号の解読方法まで知っていた。
「どうして、そのことを……」
私は何度そういったかわからない。
「でも、わたくしはこの手紙を書かせたのは先生だということしかわかりませんの。そして、この助けを求める子のことも知りません。学園には該当する教師がいなかったから。だから予言は外れたのだと思っていたの。まさか学園の外に先生がいるなんて……」
アレクサンドラ様がそう言って悔しそうな顔をした。
「あの……アレクサンドラ様が予言者だということはわかりました。ただ、何故今ここに? これからどうするのでしょうか?」
「そうね。実はこの後のことはあまり知らないの。プレイしなかったルートだから。少しサイトで見て怖いルートがあると知っていたからやらずにやり直したのよ」
「えっと……」
「ああ、ごめんなさい。フルールさんは秘密の場所がどこにあるのかご存知?」
アレクサンドラ様が気を取り直して聞いてくる。
「これは多分発表会を行った町の教会だと思います。私達はこの教会に地下室があるのを見つけて秘密の場所と呼んでいたんです」
「……そう」
「このお手紙を書いた方は?」
「キャリーです。平民時代の学校の後輩です。まだ、七歳なんです。絶対に怖い思いをしているはずなんです。助けないと!!」
私はあのキャリーのことを考え、体を震わせる。
「先生のことは何でお呼びなの?」
「アレクサンドラ様の予言では先生が犯人なんですか?」
「残念だけど、そうよ」
「先生はマクミラン先生です。私は普段から先生と呼んでいます」
「そうなのね……」
アレクサンドラ様はそう言ってから何故か私の手に飴を差し出した。
「フルールさん、少し緊張されているのね。これを食べてちょうだい。落ち着きますわ」
確かに私は緊張していた。ふうっと息を吐くとその飴を受け取って口に含む。
「教会までまだ、かかるわ。少し休んでいいのよ」
飴を舐めていると急激に眠気が襲ってきた。
「な、なん……で…………」
私の視界が暗転したのだった。
私は帰宅すると早速の手紙を解読して新しい紙に正しい文章を書き出した。
出来上がった文章を、読んでゴクリと喉が鳴る。
揺らめく蝋燭の明かりに揺れる文字からは助けを求める叫びが聞こえてくる。
「たい……へん。行かないと!!」
手紙はキャリーからで誰かに、誘拐されて閉じ込められていると書かれていた。そして、私がくれば家に返してくれると言われたと書かれていた。
多分この手紙は誘拐犯が書かせたのだろう。そして、この暗号を知っているということはあの発表会に出ていた中の一人である可能性が高い。
私は私のことを悪く言っていた子達を思い浮かべる。それ程まで私は彼らを見下すようにしていたのかもしれない。
その為にキャリーが怖い目に遭っているのなら助けに行かなくてはならない。
キャリーだけだったのだ。半年前と変わらずに私に抱きついてくれたのは! それにもしかするとあの時キャリーが私を受け入れる様に抱きついたから閉じ込められているのかもしれない。
「いかなくちゃ!!」
私はこの前の町歩きて身につけたワンピースに着替えてから部屋から抜け出した。
もう既に真っ暗なのだ。流石にこの時間に出かけるなんてパパもママも、許してくれるはずがない。
なんとか誰にも見つからずに屋敷を出る。
「でも、どうやって町まで行けば良いのかな。歩くと危険かもしれないし」
私は途方に暮れたが、それでもこんな暗くなるまで閉じ込められているキャリーを思うと行くしかないのだ。
私は町に向かって歩き出す。
「フルールさん!」
突然呼ばれて振り向くとそこにはなんとアレクサンドラ様が立っていた。
「アレクサンドラ様!! あっ」
私は思わず叫んだ後、気不味いことを思い出す。
ただ、ここは外、時間は夜。私はアレクサンドラ様に駆け寄った。
「あの……」
私が近寄るとアレクサンドラ様は人差し指を顔の前に立ててシッとした。
「フルールさん、町に行かれるのでしょう? こちらに」
「え? どうしてそのことを……」
私は訳も分からずアレクサンドラ様について行く。
すると森の中に少し入ったところに馬車が止まっていた。
決して質素ではないが、裕福な商人ならば乗っている様な物だ。
「あの……これ……」
アレクサンドラ様はにっこりと微笑むとその馬車に乗り込んだ。
「どうぞ、フルールさん」
私は頭の中は疑問だらけだが、その馬車に乗り込む。
その馬車にはアレクサンドラ様一人だった。
「あの殿下とマルセル様は?」
てっきり二人と一緒だと思っていた私は思わず聞いてしまう。
するとアレクサンドラ様は御者に馬車を出すように命じると私に向かって頭を下げた。
「フルールさん、この前は本当に申し訳ありませんでした。わたくしはどうしても自分だけが知っているのだということを忘れてしまうのです」
「アレクサンドラ様だけが知っていること」
「そうですわね。その通りになるかどうかは定かではありませんの。それは今までわたくしが経験してまりいましたわ。沢山の失敗と成功もありましたの」
「一体なんのお話ですか?」
すると、アレクサンドラ様は過ごした考えてから私の目を見つめた。
「わたくしが予言者だといったら信じて頂けるかしら?」
「予言者ですか……」
「ええ、未来がわかるの。ただ、その未来はあくまで可能性。変えることも出来ますわ。わたくし達がお友達になった様に」
そう言ってアレクサンドラ様は私の手を取った。
「わたくし、フルールさんを守りたいの。今だけでいいの。わたくしの言うことを信じていただけないかしら?」
その真剣な顔と雰囲気に私はコクンと頷いた。
「わかりました。信じます。お話しください」
アレクサンドラ様の話は昨日のいやあの手紙を受け取る前なら信じなかった内容だった。
しかし、今なら信じられた。何故なら、あの手紙の内容をピタリと当てたのだ。
しかも、暗号の解読方法まで知っていた。
「どうして、そのことを……」
私は何度そういったかわからない。
「でも、わたくしはこの手紙を書かせたのは先生だということしかわかりませんの。そして、この助けを求める子のことも知りません。学園には該当する教師がいなかったから。だから予言は外れたのだと思っていたの。まさか学園の外に先生がいるなんて……」
アレクサンドラ様がそう言って悔しそうな顔をした。
「あの……アレクサンドラ様が予言者だということはわかりました。ただ、何故今ここに? これからどうするのでしょうか?」
「そうね。実はこの後のことはあまり知らないの。プレイしなかったルートだから。少しサイトで見て怖いルートがあると知っていたからやらずにやり直したのよ」
「えっと……」
「ああ、ごめんなさい。フルールさんは秘密の場所がどこにあるのかご存知?」
アレクサンドラ様が気を取り直して聞いてくる。
「これは多分発表会を行った町の教会だと思います。私達はこの教会に地下室があるのを見つけて秘密の場所と呼んでいたんです」
「……そう」
「このお手紙を書いた方は?」
「キャリーです。平民時代の学校の後輩です。まだ、七歳なんです。絶対に怖い思いをしているはずなんです。助けないと!!」
私はあのキャリーのことを考え、体を震わせる。
「先生のことは何でお呼びなの?」
「アレクサンドラ様の予言では先生が犯人なんですか?」
「残念だけど、そうよ」
「先生はマクミラン先生です。私は普段から先生と呼んでいます」
「そうなのね……」
アレクサンドラ様はそう言ってから何故か私の手に飴を差し出した。
「フルールさん、少し緊張されているのね。これを食べてちょうだい。落ち着きますわ」
確かに私は緊張していた。ふうっと息を吐くとその飴を受け取って口に含む。
「教会までまだ、かかるわ。少し休んでいいのよ」
飴を舐めていると急激に眠気が襲ってきた。
「な、なん……で…………」
私の視界が暗転したのだった。
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