22 / 30
危険なルート
22.気不味い空気
しおりを挟む
私は家に帰るとパパとママに挨拶もせずに部屋に駆け込んだ。
アレクサンドラ様の決めつける様な口調が、頭の中に響く。
(先生はそんなこと絶対にしない!!)
バフンっとベッドに飛び込むと涙が滲む。
(悔しい!! なんで私はちゃんと説明しなかったんだろう。先生が素晴らしい先生だって! ちゃんと……)
気がつけばそのまま朝になっていた。
今日は学園だ。私は初めて学園に行きたくないと思っていた。
トントン
「フルール、大丈夫かい?」
心配そうなパパの声が聞こえてきた。
「……パパ」
私はノロノロと起き上がりドアを薄く開いた。
「パパ……」
私が顔を見せるとホッとしてそれでも心配そうな顔でパパが話しかけてくる。
「大丈夫かい? 昨日部屋から出てこないから心配したよ。町で何かあったのかい?」
優しいパパの言葉に私は思わず抱きついた。
「パパ!」
「ははは、どうしたんだい? やっぱり何かあったのかい?」
私は一瞬話すべきか悩んだが、これ以上心配はかけられない。
「心配かけてごめんなさい。昨日は疲れてしまったの」
「そうかい? でも、もし何かあったのならちゃんと言うんだよ」
「はい。そういえば昨日町でマクミラン先生に会ったのよ」
「ああ、あの先生かい? 良い先生だったね」
「……うん」
私はパパの胸から顔を上げるとにっこりと微笑んだ。
「あっ学園に行かないと!」
「もうそんな時間だね。じゃあモーニングルームで待っているよ。昨日は夕食を食べていないんだ。朝はきちんと食べなさい。いいね?」
「はい」
私は気を取り直して準備を始めた。
パパのように実際に会ってみれば先生のことは直ぐにわかるのにともどかしい。
でも、気持ちは少しは冷静になれた気がする。
(でも、何故アレクサンドラ様はあんなことをいったのかしら?)
それが一番の疑問だ。今まで一緒にいたアレクサンドラ様は少し変わってはいるが他人を見下したりしたことは見たことがないし、そういう噂も聞いたことがない。もしかしたら、何かを誤解しているのかも。きっと間違った情報か人間違いかもしれない。
「うん、そうよ! 今日はちゃんと話を聞いてみよう」
私はパパとママといつも通り朝食を食べていつも通り学園に向かった。
「え? お休み?」
朝生徒会室に向かうとダニエル様がプンプンしながら書類と格闘していた。
「そうなんですよ。しかも、三人ともお休みです。この忙しい時に!」
ダニエル様が言うにはアレクサンドラ様だけではなく、殿下もマルセルくんも学園をお休みしているらしい。
「フルール、申し訳ないがこっちの書類を確認してください」
机から顔も上げずにダニエル様が私に書類の束を手渡した。
私はそれを受け取ると「はい」と返事をしてから仕事にかかった。
「終わったーーー!!」
朝から授業を挟んで放課後まで丸々と使ってやっと今日の仕事が終わった。やはり三人が抜けた穴は大きい。
「終わりましたか? 私もあと少しで終わります」
「お疲れ様でした。ダニエル様」
「君こそ大変だっただろう?」
「いえ、でももう暗くなりましたね」
「ああ、よっと。終わりました。じゃあ、帰りましょうか? 本当にフルールがいてくれてよかったですよ」
「あの、アレクサンドラ様達はなんでお休みなんですか?」
「私も良く知らないんですよ。突然しばらく休むという手紙をもらったんです」
「え? しばらくですか?」
「そうなんです。きっと王宮にだれか要人か来たのかもしれません。一応第一王子ですし、その婚約者ですからね」
「マルセル様は……」
「まだ殿下達は婚約者ですからね。こういう時は大体アレクサンドラ様の護衛に就くことが多いんですよ。近くにいても当然と思われるので」
「前にも?」
「そうですね。年に数回ありますよ。私達は過労死しそうになりますが」
「ははは、確かに……」
私はダニエル様と話しながらも昨日のことを考えていた。まさか、アレクサンドラ様が昨日のことを気にしてとは思わないがかなり気不味かったのでお休みは有り難かったのが本当のところだ。
その日から一週間、相変わらずアレクサンドラ様達はお休み中だった。
ダニエルさんと仕事を片付けているが流石に慣れてきて効率が上がってきている。そして今は優雅にお茶を飲みながらの休憩中だった。
「フルール、毎日頑張ってくれて本当にありがとうございます」
「いえ、でも、こんなことが年に何回もあると大変ですよね」
「……ああ、そうです」
最近はダニエル様もお疲れなのか仕事の合間合間にこうしてお茶することが増えたのだ。
仕事は効率よくこなせる様になったが、結局帰る時間はいつも日が暮れてからとなっている一因でもある。
今日もどっぷりと日が暮れてからのお茶だった。
「ああ、今日も遅くなってしまいましたね。すみませんでした」
「いえ、これも生徒会のお仕事ですから」
私達はお茶を片付けると馬車の待つ正門までゆっくりと歩いていた。
「そういえば、昨日変な手紙を受け取ったんですよ」
「変な手紙ですか?」
「ええ、まぁ私宛というよりもこの学園に投げ込まれた怪文書が生徒会に届けられたんですが」
「殿下が来るまでは保留としますが、なんだか妙な内容なんです」
「妙ですか?」
「ええ、言葉の羅列なんですが読めない。意味をなさない言葉が適当に並んでいるんです」
「?」
するとダニエル様が歩きながら胸ポケットからその手紙を取り出した。
「これなんです」
私はその手紙を受け取ると広げてみる。
確かにそこには言葉が並んでいるが意味をなさない羅列だ。
「本当ですね。意味が……!!!」
「どうしましたか?」
私の手は震えていたが、それをなんとか押しとどめると言葉を発した。
「ダニエル様、この手紙を預かってもよろしいでしょうか?」
「構いませんよ。同じ内容の物があと十通は届いたますから」
私はゴクンと唾を飲み込むとその手紙を鞄に仕舞う、
「ありがとうございます」
それぞれの家からきた馬車が見えてくると私達はお互いに頭を下げると別れた。
私は足早に馬車に乗り込んでから先程の手紙を震える手で取り出した。
そこに書かれている意味のない言葉の羅列。
私はこの暗号めいた手紙を読むことができるのだ。
これはあの平民時代の学校でクラス内で流行っていた手紙のやり取りに使ったものだったのだ。
アレクサンドラ様の決めつける様な口調が、頭の中に響く。
(先生はそんなこと絶対にしない!!)
バフンっとベッドに飛び込むと涙が滲む。
(悔しい!! なんで私はちゃんと説明しなかったんだろう。先生が素晴らしい先生だって! ちゃんと……)
気がつけばそのまま朝になっていた。
今日は学園だ。私は初めて学園に行きたくないと思っていた。
トントン
「フルール、大丈夫かい?」
心配そうなパパの声が聞こえてきた。
「……パパ」
私はノロノロと起き上がりドアを薄く開いた。
「パパ……」
私が顔を見せるとホッとしてそれでも心配そうな顔でパパが話しかけてくる。
「大丈夫かい? 昨日部屋から出てこないから心配したよ。町で何かあったのかい?」
優しいパパの言葉に私は思わず抱きついた。
「パパ!」
「ははは、どうしたんだい? やっぱり何かあったのかい?」
私は一瞬話すべきか悩んだが、これ以上心配はかけられない。
「心配かけてごめんなさい。昨日は疲れてしまったの」
「そうかい? でも、もし何かあったのならちゃんと言うんだよ」
「はい。そういえば昨日町でマクミラン先生に会ったのよ」
「ああ、あの先生かい? 良い先生だったね」
「……うん」
私はパパの胸から顔を上げるとにっこりと微笑んだ。
「あっ学園に行かないと!」
「もうそんな時間だね。じゃあモーニングルームで待っているよ。昨日は夕食を食べていないんだ。朝はきちんと食べなさい。いいね?」
「はい」
私は気を取り直して準備を始めた。
パパのように実際に会ってみれば先生のことは直ぐにわかるのにともどかしい。
でも、気持ちは少しは冷静になれた気がする。
(でも、何故アレクサンドラ様はあんなことをいったのかしら?)
それが一番の疑問だ。今まで一緒にいたアレクサンドラ様は少し変わってはいるが他人を見下したりしたことは見たことがないし、そういう噂も聞いたことがない。もしかしたら、何かを誤解しているのかも。きっと間違った情報か人間違いかもしれない。
「うん、そうよ! 今日はちゃんと話を聞いてみよう」
私はパパとママといつも通り朝食を食べていつも通り学園に向かった。
「え? お休み?」
朝生徒会室に向かうとダニエル様がプンプンしながら書類と格闘していた。
「そうなんですよ。しかも、三人ともお休みです。この忙しい時に!」
ダニエル様が言うにはアレクサンドラ様だけではなく、殿下もマルセルくんも学園をお休みしているらしい。
「フルール、申し訳ないがこっちの書類を確認してください」
机から顔も上げずにダニエル様が私に書類の束を手渡した。
私はそれを受け取ると「はい」と返事をしてから仕事にかかった。
「終わったーーー!!」
朝から授業を挟んで放課後まで丸々と使ってやっと今日の仕事が終わった。やはり三人が抜けた穴は大きい。
「終わりましたか? 私もあと少しで終わります」
「お疲れ様でした。ダニエル様」
「君こそ大変だっただろう?」
「いえ、でももう暗くなりましたね」
「ああ、よっと。終わりました。じゃあ、帰りましょうか? 本当にフルールがいてくれてよかったですよ」
「あの、アレクサンドラ様達はなんでお休みなんですか?」
「私も良く知らないんですよ。突然しばらく休むという手紙をもらったんです」
「え? しばらくですか?」
「そうなんです。きっと王宮にだれか要人か来たのかもしれません。一応第一王子ですし、その婚約者ですからね」
「マルセル様は……」
「まだ殿下達は婚約者ですからね。こういう時は大体アレクサンドラ様の護衛に就くことが多いんですよ。近くにいても当然と思われるので」
「前にも?」
「そうですね。年に数回ありますよ。私達は過労死しそうになりますが」
「ははは、確かに……」
私はダニエル様と話しながらも昨日のことを考えていた。まさか、アレクサンドラ様が昨日のことを気にしてとは思わないがかなり気不味かったのでお休みは有り難かったのが本当のところだ。
その日から一週間、相変わらずアレクサンドラ様達はお休み中だった。
ダニエルさんと仕事を片付けているが流石に慣れてきて効率が上がってきている。そして今は優雅にお茶を飲みながらの休憩中だった。
「フルール、毎日頑張ってくれて本当にありがとうございます」
「いえ、でも、こんなことが年に何回もあると大変ですよね」
「……ああ、そうです」
最近はダニエル様もお疲れなのか仕事の合間合間にこうしてお茶することが増えたのだ。
仕事は効率よくこなせる様になったが、結局帰る時間はいつも日が暮れてからとなっている一因でもある。
今日もどっぷりと日が暮れてからのお茶だった。
「ああ、今日も遅くなってしまいましたね。すみませんでした」
「いえ、これも生徒会のお仕事ですから」
私達はお茶を片付けると馬車の待つ正門までゆっくりと歩いていた。
「そういえば、昨日変な手紙を受け取ったんですよ」
「変な手紙ですか?」
「ええ、まぁ私宛というよりもこの学園に投げ込まれた怪文書が生徒会に届けられたんですが」
「殿下が来るまでは保留としますが、なんだか妙な内容なんです」
「妙ですか?」
「ええ、言葉の羅列なんですが読めない。意味をなさない言葉が適当に並んでいるんです」
「?」
するとダニエル様が歩きながら胸ポケットからその手紙を取り出した。
「これなんです」
私はその手紙を受け取ると広げてみる。
確かにそこには言葉が並んでいるが意味をなさない羅列だ。
「本当ですね。意味が……!!!」
「どうしましたか?」
私の手は震えていたが、それをなんとか押しとどめると言葉を発した。
「ダニエル様、この手紙を預かってもよろしいでしょうか?」
「構いませんよ。同じ内容の物があと十通は届いたますから」
私はゴクンと唾を飲み込むとその手紙を鞄に仕舞う、
「ありがとうございます」
それぞれの家からきた馬車が見えてくると私達はお互いに頭を下げると別れた。
私は足早に馬車に乗り込んでから先程の手紙を震える手で取り出した。
そこに書かれている意味のない言葉の羅列。
私はこの暗号めいた手紙を読むことができるのだ。
これはあの平民時代の学校でクラス内で流行っていた手紙のやり取りに使ったものだったのだ。
1
お気に入りに追加
163
あなたにおすすめの小説

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。

婚約破棄されなかった者たち
ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。
令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。
第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。
公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。
一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。
その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。
ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。

【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない
曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが──
「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」
戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。
そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……?
──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。
★小説家になろうさまでも公開中
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

あなたを忘れる魔法があれば
美緒
恋愛
乙女ゲームの攻略対象の婚約者として転生した私、ディアナ・クリストハルト。
ただ、ゲームの舞台は他国の為、ゲームには婚約者がいるという事でしか登場しない名前のないモブ。
私は、ゲームの強制力により、好きになった方を奪われるしかないのでしょうか――?
これは、「あなたを忘れる魔法があれば」をテーマに書いてみたものです――が、何か違うような??
R15、残酷描写ありは保険。乙女ゲーム要素も空気に近いです。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載してます

【完結】異世界転生した先は断罪イベント五秒前!
春風悠里
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したと思ったら、まさかの悪役令嬢で断罪イベント直前!
さて、どうやって切り抜けようか?
(全6話で完結)
※一般的なざまぁではありません
※他サイト様にも掲載中

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

88回の前世で婚約破棄され続けて男性不信になった令嬢〜今世は絶対に婚約しないと誓ったが、なぜか周囲から溺愛されてしまう
冬月光輝
恋愛
ハウルメルク公爵家の令嬢、クリスティーナには88回分の人生の記憶がある。
前世の88回は全てが男に婚約破棄され、近しい人間に婚約者を掠め取られ、悲惨な最期を遂げていた。
彼女は88回の人生は全て自分磨きに費やしていた。美容から、勉学に運動、果てには剣術や魔術までを最高レベルにまで極めたりした。
それは全て無駄に終わり、クリスは悟った。
“男は必ず裏切る”それなら、いっそ絶対に婚約しないほうが幸せだと。
89回目の人生を婚約しないように努力した彼女は、前世の88回分の経験値が覚醒し、無駄にハイスペックになっていたおかげで、今更モテ期が到来して、周囲から溺愛されるのであった。しかし、男に懲りたクリスはただひたすら迷惑な顔をしていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる