悪役令嬢に転生しませんでした!

波湖 真

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新しい世界

11.ベルナールの秘密

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「なんですって! 間に合わなかったんですの!」
生徒会室にアレクサンドラの声が響く。
「仕方がないだろう。もうダニエルがカントループ嬢を連れて行ってしまっていたんだ」
「なんてこと!! このイベントはとても重要なものですのよ! ビビエ様がそのイベントをこなしてしまうなんて!!」
ベルナールは騒いでいるアレクサンドラを呆れて見ていた。
「大体お前の作戦には無理があるんだ。僕がダニエルやエドガーがやるはずのイベントを全て横取りするなんてできるわけがない。僕は一人なんだぞ」
ベルナールはふんっと横を向くと腕を組んで聞かない姿勢を取る。
するとアレクサンドラが机越しにその胸ぐらを掴んだ。
「殿下はすぐそうやって拗ねてしまわれるんですから!! ちゃんとやってください! わたくしたち、きちんと話してこの作戦を決めましたわよね? マルセル?」
「あーー、そうですね。確かに姉さんの記憶を元に殿下がそのイベントやらを全てこなすことでラブラブになるという作戦は立てましたし、殿下も同意していますよ。フルール嬢は、知らないですけど」
するとアレクサンドラは手を話すと腕を組んだ。
「そう、フルールさんだわ。ちゃんとゲーム通りに生徒会に入ってきたし、イベントは殿下とこなしているのになんでビビエ様のルートに入っているのかしら?」
「お前の記憶とやらに不備があるんじゃないか? 僕はいつになったら愛だの恋だのを経験できるんだ?」
ベルナールが不貞腐れてアレクサンドラに尋ねる。
「まぁ、殿下。わたくしはちゃんと聞いてましてよ。殿下がフルールさんを可愛いって仰ってたのを。ふふふ」
ベルナールの頬がカッと熱くなる。
「おまっ。そ、それは人の美醜くらいはわかるからだ! カントループ嬢は、可愛らしい。そうだろ? マルセル!」
にったりと笑ったアレクサンドラの視線を避けるようにマルセルに声をかける。
「そうですね。本人はあまり気にしていないようですがフルール嬢は可愛らしいですよ。なかなかあそこまで透き通った金髪はないし、あの空のような青い瞳も吸い込まれそうです」
「なーに? マルセルもヒロインにハマり始めたの? やっぱりフルールさんの可愛さらしさは侮れないわね。それにマルセル」
「はい」
「貴方、わたくしがフルールさんの名前が分からなかった時金髪に青い目なんてありふれているといっていてよ!」
「ははは、そんなこともありましたねぇ」
「もう! 兎に角、殿下はフルールさんをルートに戻すように今後のイベントは落とさないようにしてくださいませ!」
ベルナールは両手を上げて詰め寄るアレクサンドラを見つめる。
「ああ、わかった。それよりアレクサンドラはどうするんだ? そのゲームではお前は彼女をいじめるんだろう?」
するとアレクサンドラはベルナールから視線を外して手のひらをパタパタとあおぐ。
「……だって、わたくし、ヒロインが好きでしたの。とっても素直で頑張り屋で。だから何度もそのゲームをやりましたのよ。そんなヒロインをいじめるなんて……できませんわ」
ベルナールはアレクサンドラの性格をよく知っている。見た目は傲慢で我儘そうだが、それはあくまで見た目のみ。もちろんキツイ言い方はするがその根底には叱咤激励がある。
ベルナールの瞳がふっと優しくなる。
「まぁ、しょうがないな。でも、それがフルール嬢の行動に影響してるかもしれないな」
「確かにそうですね。姉さんのいじめ関連のイベントは起きていないんですから、そのストーリーと変わってしまうんじゃないですか?」
「ゔ、やっぱりいじめないとダメかしら?」
アレクサンドラは嫌だなぁという顔で二人を見た。
「特にこの閉じ込めイベントは大事って言ってましたよね?」
マルセルが近寄ってきてリスト化されたイベント一覧の一点を指さした。
「ええ、ヒロインが悪役令嬢に嵌められて誰も来ない夜の生徒会室に閉じ込められるのよ。そこにヒーロー、まあ、その時に一番恋愛メーターが高い方が助けに来て一気に恋に発展するのよー。素敵よねぇ」
うっとりとしているアレクサンドラにマルセルとベルナールは呆れて目を見合わせた。
「そのイベントは起きませんよね。絶対」
「そうだな。アレクサンドラが閉じ込めないと、ダメなんだろう?」
ハッとしてアレクサンドラが二人を見た。
「な、なんとかしますわ!」
顔を真っ赤にして叫ぶアレクサンドラは普段の大人っぽい美女からかけ離れて見えた。
マルセルはしょうがないなぁと肩をすくめる。
そんなアレクサンドラを少し可愛いと思ったのはベルナールの秘密だった。
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