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新しい世界

9.生徒会

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ザワザワザワザワ
朝登校するとあちらこちらから視線が突き刺さる。
(何かおかしいかしら?)
私は自分の格好を確認するがどこもおかしくなさそうだ。
すると前から超絶美形殿下が歩いて来て私の前で立ち止まった。
「え? あの」
すると超絶美形殿下が手を差し出してにっこりと微笑んだ。
「フルール・カントループ嬢、生徒会へようこそ」
「え? あの、私が?」
「ああ、そうだ。全問正解は君だけだ。おめでとう」
私は恐る恐るその手を取った。
「ありがとうございます!! あの、よろしくお願いします!!」
バッと手を離すと深々と頭を下げる。
(やった! やったわ! お父様に報告しなくちゃ! 喜んでくれるかしら?)
私はお父様の喜ぶ顔を思い浮かべてにっこり微笑んだ。
「とっても嬉しいです。一生懸命頑張ります!」
「……なるほど、これが強制力か」
「は?」
「いや、君は可愛いのだな」
「え? いや、あの」
「昨日は断られてしまったが今日は生徒会室までエスコートさせてもらう。いいね」
私は周りを見渡した。かなりの生徒が私達を見つめている。こんなところで超絶美形殿下を無碍には出来そうにない。
「はい、よろしくお願いします」
そうして私は生徒の視線を集めて超絶美形殿下にエスコートされて生徒会に向かった。

「新メンバーを連れて来た」
超絶美形殿下が生徒会のドアを開けると拍手が起こる。
もちろん、そこにいるのはあの壇上に登壇したメンバーだ。
クール系美形のビビエ様、優しげ美形のマルセルくん、そして素敵美女のマルセルくんのお姉さんだ。
まずはマルセルくんが一歩前にでる。
「本当に合格したんだね。おめでとう。会計のマルセル・シャノワーヌです」
「おめでとう。仕事は山程ありますよ。ダニエル・ヒビエです」
カツン
ヒールの音が響く。そして、バサリっと髪を掻き上げて素敵美女が微笑んだ。
(は、は、は、迫力が半端ない!!)
「おめでとうごさいます、カントループさん。わたくし、アレクサンドラ・シャノワーヌですわ。よしなに」
私は緊張で強張った体をビシッと気をつけをしてから九十度に頭を下げた。
「よ、よろしくお願いいたします!!!」
「アレクサンドラ、圧が凄い」
私の後ろから超絶美形殿下が呆れたように注意する。
「まぁ、失礼ですわ。わたくしは悪役令嬢として正式にご挨拶しただけですの」
「えっと、悪役?」
「ああ、姉のことはあまり気にしないで。あの人は常識の外で生きているから」
殿下と遠慮のない言い合いを見て呆然としていると優しげ美形マルセルくんが私の背中を押した。
「とりあえず、君の机はここだよ。仕事は基本ダニエルさんに聞いてくれれば間違いない。君と同じ書記だからね。それでいいんですよね? ダニエルさん」
「ああ、構わない。マルセル」
「でも、本当に受かっちゃうんだから君は凄いよ」
「いえ、本当にラッキーで……。勉強したところばかりが問題に出たんです」
「成る程、これが強制力か」
「え?」
「いや、あと生徒会のメンバーではないんだけど、殿下の護衛を兼ねているエドガー・コルベールという騎士団に内定している人がここには出入りするよ」
「わかりました」
「殿下! 姉さん。そろそろ説明をお願いします」
マルセルくんの声に二人の言い合いは終わり同時に私を見た。
「すまない」
「ごめんなさいね」
同時に話しだす。
「ちょっと、今わたくしが話しているのですわ。今後の運命に関わるんです。殿下はお待ちください」
「お前こそひかえろ。運命度なら僕の方が上だ」
「うるさい。黙れ」
ビビエ様の地を這うような声に二人はビクッとすると口を閉じた。
「馬鹿王子と奔放美女は気にしないように。黙れと言えば黙ります」
そう言ってにっこりと笑ったのはビビエ様でした。
ビビエ様の後ろでは未だに殿下と美女が何かを小声で話している。
私はその様子がなんだか楽しそうで思わずクスッと笑ってしまった。
「殿下とシャノワーヌ様はとても仲良しなんですね」
「そうかもしれない。本人達は腐れ縁と言っているが」
ビビエ様は二人に凍えるような視線を送ると頷いた。
コホン
「申し訳ない。カントループ嬢。改めて生徒会として君の参加を歓迎する。これから共に学園の為に尽くそう」
「はい! 皆さま、よろしくお願いします!!」
「きゃーー! やっぱりヒロインは可愛いわねーー」
「ちょっと姉さん!」
「カントループさん、わたくしのことはアレクサンドラと呼んでちょうだいね。それよりもサンドラとか愛称の方が仲良くなれるかしら? わたくしもフルールさんとお呼びしてもいいかしら?」
「はい! もちろんです! あの、アレクサンドラ様!」
「なんて可愛らしいの! わたくしヒロインは大好きでしたのよ!」
ガバリと抱きついてきた美女に私の体は固まった。
「ちょっと姉さん! ごめんよ。カントループ嬢」
何とか私を救い出してくれたマルセルくんに引き攣ってお礼を言った。
「……ありがとうございます」
「ごめんよ。姉は少しおかしいんだ」
「少しじゃないがな」
尽かさず殿下が否定する。
「まぁ、失礼ね。フルールさんも酷いと思いませんこと?」
「はぁ、まぁ」
「そうですわ! フルールさんは殿下から生徒会について色々教えて頂くとよろしいわ」
そう言ってアレクサンドラ様は私を殿下の方に押し出した。
「殿下! こういうイベントですの。よろしくて?」
「う……ああ、わかった。カントループ嬢、では説明しよう。そこのソファに座ってくれ」
「はい、よろしくお願いします」
そうして私の生徒会生活が始まった。
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