68 / 71
第四章 運命との決別
68、地球の二人
しおりを挟む
ローレンスはサオリの肩に手を置いた体勢のまま雑踏の中に立っていた。周りを見回すと皆サオリが着ていたような変な服を着ている。森の中に居たはずなのに木など一本もない。その事実にただただ唖然とするしかなかった。
「あの~すみません。手を退けて頂けますか?日本語わかります?」
サオリの声に我に帰ったローレンスはその姿に驚愕した。サオリが若返っているのだ。着ている異世界の服は少しくたびれているし肌身離さず持っていたスマホと呼ばれる機械の画面も真っ暗なままなのにサオリ自身は初めてあった時と同じくらいの年齢に見えた。
「サ、サオリ?」
「え?私の名前知ってるの?やだ、気持ち悪い!ちょっと離して!」
すると今までこちらに注意を払わずに通り過ぎていた通行人が立ち止まり怪訝な顔をしている。ローレンスはハッとしてサオリの肩を離した。
「本当にキモい!カッコ良くても勝手に名前とか調べないで!!もう付いてこないでよ!!」
「サ、サオリ!!待ってくれ!!ここはどこなんだ?おい!!」
ローレンスがサオリの腕を掴もうと手を伸ばすとその手を振り払ってサオリは駆け出した。
「やだ?何語?全然わからないのに名前だけって最悪!あーあスマホの充電も切れちゃったじゃない!!」
ローレンスの姿が雑踏の中で見えなくなるとサオリはうんともすんとも言わないスマホを持って家に帰った。
「ただいま~。」
「お帰り、サオリちゃん。早かったのね。」
「うん、スマホの充電なくなっちゃって、、。そうそうママさっき変な外国人に声かけられたのよ!!」
「外国人?」
「うん。見た目はすご~く格好良かったけど私の肩を掴んで名前を呼んだの~。怖くない?」
「やだ!本当?パパに言って家の周りを見てきてもらわなくちゃ。」
そう言ってサオリの母はパタパタと家の中に戻っていった。サオリはそのまま階段を上り二階の自室に入るとベッドの上の荷物に目を止めた。ネット通販で買った本が届いたのだ。早速包みを開けると今日発売予定のライトノベルが入っていた。これは大好きなシリーズの続編だ。内容はまだ明らかになっていなかったが楽しみにしていた。
「きゃ~!もう届いた!!」
サオリが手に取った表紙の絵を見て首を傾げた。初めて見る表紙なのに何処かで見たことがあるのだ。
「どこでみたんだろ?」
少し考えてからサオリはポンッと手を叩いた。
「わかった!!これさっきの外国人に似てるんだ!!」
このシリーズのヒーローの王子様にそっくりだったのだ。
「ローレンスが現実にいたらあんな感じよね?逃げちゃったのはもったいなかったかな?でも結構おじさんだったよね。あ~やっぱり気持ち悪!」
サオリは制服から私服に着替えてハンガーに掛けた。その時制服のポケットから小さな指輪が転がりでた。
「ん?何?この指輪?」
拾って明かりにかざすとキラキラと輝いて見えた。
「でも、こんなにおおきなダイヤなんてあるわけないか?ガラスかな?でもどうして私の制服に?」
サオリの疑問は尽きないが、まぁいいかと指輪は机に置いてからバフンとベッドに横になって早速本を読み始めた。
その本のタイトルは『アッカルドに恋して』と書かれていた。
「サオリ!!」
人混みの中でサオリを見失いローレンスはパニックに陥っていた。一時立ち止まっていた人々も再び動き出した。そうなると誰一人としてローレンスに気を止める人はいなかった。
幸いなのか不幸なのかローレンスは二十八歳のままだった。そして、ここがサオリが言っていたニホンなら危険は少ないはずだ。ローレンスはサオリのニホン自慢を懸命に思い出していた。ある意味サオリの苦労を身をもって思い知るローレンスだった。
「やだ?、コスプレ?」
「コミケの場所知らないのかしら?」
「ちょーカッコよくない?声かける?」
ローレンスの姿は中世風の貴族だ。旅装だからまだ目立たないがやはりこのビル街では浮きまくる。周りからヒソヒソとはささやかれるが誰一人として話しかけるものはなくローレンスは途方に暮れた。
「助けてくれ!!」
ローレンスの叫びは雑踏の中に消えた。
「あの~すみません。手を退けて頂けますか?日本語わかります?」
サオリの声に我に帰ったローレンスはその姿に驚愕した。サオリが若返っているのだ。着ている異世界の服は少しくたびれているし肌身離さず持っていたスマホと呼ばれる機械の画面も真っ暗なままなのにサオリ自身は初めてあった時と同じくらいの年齢に見えた。
「サ、サオリ?」
「え?私の名前知ってるの?やだ、気持ち悪い!ちょっと離して!」
すると今までこちらに注意を払わずに通り過ぎていた通行人が立ち止まり怪訝な顔をしている。ローレンスはハッとしてサオリの肩を離した。
「本当にキモい!カッコ良くても勝手に名前とか調べないで!!もう付いてこないでよ!!」
「サ、サオリ!!待ってくれ!!ここはどこなんだ?おい!!」
ローレンスがサオリの腕を掴もうと手を伸ばすとその手を振り払ってサオリは駆け出した。
「やだ?何語?全然わからないのに名前だけって最悪!あーあスマホの充電も切れちゃったじゃない!!」
ローレンスの姿が雑踏の中で見えなくなるとサオリはうんともすんとも言わないスマホを持って家に帰った。
「ただいま~。」
「お帰り、サオリちゃん。早かったのね。」
「うん、スマホの充電なくなっちゃって、、。そうそうママさっき変な外国人に声かけられたのよ!!」
「外国人?」
「うん。見た目はすご~く格好良かったけど私の肩を掴んで名前を呼んだの~。怖くない?」
「やだ!本当?パパに言って家の周りを見てきてもらわなくちゃ。」
そう言ってサオリの母はパタパタと家の中に戻っていった。サオリはそのまま階段を上り二階の自室に入るとベッドの上の荷物に目を止めた。ネット通販で買った本が届いたのだ。早速包みを開けると今日発売予定のライトノベルが入っていた。これは大好きなシリーズの続編だ。内容はまだ明らかになっていなかったが楽しみにしていた。
「きゃ~!もう届いた!!」
サオリが手に取った表紙の絵を見て首を傾げた。初めて見る表紙なのに何処かで見たことがあるのだ。
「どこでみたんだろ?」
少し考えてからサオリはポンッと手を叩いた。
「わかった!!これさっきの外国人に似てるんだ!!」
このシリーズのヒーローの王子様にそっくりだったのだ。
「ローレンスが現実にいたらあんな感じよね?逃げちゃったのはもったいなかったかな?でも結構おじさんだったよね。あ~やっぱり気持ち悪!」
サオリは制服から私服に着替えてハンガーに掛けた。その時制服のポケットから小さな指輪が転がりでた。
「ん?何?この指輪?」
拾って明かりにかざすとキラキラと輝いて見えた。
「でも、こんなにおおきなダイヤなんてあるわけないか?ガラスかな?でもどうして私の制服に?」
サオリの疑問は尽きないが、まぁいいかと指輪は机に置いてからバフンとベッドに横になって早速本を読み始めた。
その本のタイトルは『アッカルドに恋して』と書かれていた。
「サオリ!!」
人混みの中でサオリを見失いローレンスはパニックに陥っていた。一時立ち止まっていた人々も再び動き出した。そうなると誰一人としてローレンスに気を止める人はいなかった。
幸いなのか不幸なのかローレンスは二十八歳のままだった。そして、ここがサオリが言っていたニホンなら危険は少ないはずだ。ローレンスはサオリのニホン自慢を懸命に思い出していた。ある意味サオリの苦労を身をもって思い知るローレンスだった。
「やだ?、コスプレ?」
「コミケの場所知らないのかしら?」
「ちょーカッコよくない?声かける?」
ローレンスの姿は中世風の貴族だ。旅装だからまだ目立たないがやはりこのビル街では浮きまくる。周りからヒソヒソとはささやかれるが誰一人として話しかけるものはなくローレンスは途方に暮れた。
「助けてくれ!!」
ローレンスの叫びは雑踏の中に消えた。
20
お気に入りに追加
2,427
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。
ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。
ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も……
※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。
また、一応転生者も出ます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄は踊り続ける
お好み焼き
恋愛
聖女が現れたことによりルベデルカ公爵令嬢はルーベルバッハ王太子殿下との婚約を白紙にされた。だがその半年後、ルーベルバッハが訪れてきてこう言った。
「聖女は王太子妃じゃなく神の花嫁となる道を選んだよ。頼むから結婚しておくれよ」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
人生の全てを捨てた王太子妃
八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。
傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。
だけど本当は・・・
受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。
※※※幸せな話とは言い難いです※※※
タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。
※本編六話+番外編六話の全十二話。
※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
[完]僕の前から、君が消えた
小葉石
恋愛
『あなたの残りの時間、全てください』
余命宣告を受けた僕に殊勝にもそんな事を言っていた彼女が突然消えた…それは事故で一瞬で終わってしまったと後から聞いた。
残りの人生彼女とはどう向き合おうかと、悩みに悩んでいた僕にとっては彼女が消えた事実さえ上手く処理出来ないでいる。
そんな彼女が、僕を迎えにくるなんて……
*ホラーではありません。現代が舞台ですが、ファンタジー色強めだと思います。
根暗令嬢の華麗なる転身
しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」
ミューズは茶会が嫌いだった。
茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。
公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。
何不自由なく、暮らしていた。
家族からも愛されて育った。
それを壊したのは悪意ある言葉。
「あんな不細工な令嬢見たことない」
それなのに今回の茶会だけは断れなかった。
父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。
婚約者選びのものとして。
国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず…
応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*)
ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。
同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。
立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。
一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。
描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。
ゆるりとお楽しみください。
こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる