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第四章 運命との決別
67、わたくし、復讐しました
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クローディアは森の近くに数日滞在後に王宮に戻る事にした。
結局ローレンスとサオリは現れず、数名のローレンスの側近が戻っただけだった。カーティスは全ての罪を背負ってこれから厳罰に処せられるだろう。だが、クローディアはその事を止める事はしないし、したくはない。確かに制裁リストの上位にいたが森で蹴り上げた事で個人的な復讐は済んだと思っている。
もう関わりたくないというのが本音だった。
「クローディア!準備は出来たか?」
「はい。ビクトル様。」
「じゃあ行くか。帰りはローレンス王達が乗っていた馬車もあるがどうする?」
「早く帰りたいのでご迷惑で無ければ馬に同乗させて頂けますか?」
「ああ、わかった。」
そう言ってビクトル王子は当然のようにクローディアの手を掴むと愛馬の方に歩き出した。クローディアも今ではビクトル王子の手に馴染みすぎて違和感は感じなかった。
「ビクトル様、カーティスは?」
クローディアの問いかけにビクトル王子の頬がピクリとした。
「あいつは、、、やばい奴だな。いや、そうだとは思っていたのだ。前々からクローディアに向ける視線が異常だったからな。今は箍が外れた感じだ。」
「え?」
「なんというか、、、クローディアが相手にしていない事を、、、その、、、喜んでいる。」
「喜ぶ?」
「ああ、なんだかクローディアに無視される快感に浸っているらしい。」
クローディアは怪訝な顔をしたが自己防衛本能が働いたのか話題を変えた。
「そ、そうですか、、。それよりビクトル様はローレンス王とサオリ王妃についてどう思われますか?」
クローディアの質問にビクトル王子は手を顎に当てて答えた。
「ふむ、難しいがカーティスが暗殺していないのならば本当に森の中で迷子なのか、はたまた人知れずセドアに渡ったか、それか本当に異世界に帰ったかだな。」
「ローレンス王もですか?」
「それ以外はないだろう。」
「ビクトル様の記憶ではどうなのですか?」
「王妃は帰れない。セドアに捕まって殺される。それが発端で戦争になるのだ。セドアからはなんと?」
「数名の貴族があちら側の出口から出て来たようです。全員亡命を希望しているそうなのでそのままセドアの国民となるはずですわ。」
「そうか、、、では、王夫妻が不幸にも行方不明になった事件ということか。」
「はい。その責任はカーティスとこちらに残った貴族が負います。」
「カーティスが厳罰、貴族達は蟄居という所だな。」
「ええ、ローレンス王達が未だに現王ですから責任は重いですわ。」
二人は馬まで歩いて先にビクトル王子が跨るとクローディアに手を差し出す。クローディアはその手を当然のように掴んでビクトル王子の前に跨った。
「では、暫くは事後処理で忙しくなりそうだな。」
「ええ。でも、戦争よりはずっと良いですわ。」
「ああ、私もそう思うよ。」
そうして二人はそのまま馬を走らせて王宮に戻ったのだった。
王宮に着くと通用門を行きと同じ目立たない時間に潜り直ぐにバーナードと合流して自室に戻った。なんといってもクローディアは体調を崩して寝込んでいるはずなのだ。誰にも見つかるわけにいかなかった。クローディアは自室でしっかりと寝巻きに着替えるとやっとホゥと息を吐いて落ち着いた。
「改めまして、おかえりなさいませ。」
「ありがとう、バーナード。こちらはどうでしたか?」
「何とかバレずに済みました。何度かシャルロッテ様かお見舞いいらっしゃいましたがうつると大変だといってお引き取りいただいております。」
「わかったわ。シャルロッテにはわたくしが後でお礼をいうわ。」
「後は?」
「クローディア様が行ってらした辺りの宿屋から損失補填の申込書が届きましたので、手紙の指示通り支払っておきました。」
「ありがとう。」
クローディアはその間に侍女達が用意してくれたお茶を手に取ってゆっくりと飲んだ。やっと帰ってきたと実感した。
「あちらではローレンス王達には一歩及びませんでした。」
「そうでございますか。」
「ローレンス王とサオリ王妃は護衛も連れずに森に入り行方不明です。」
「そうでございますか。」
「王を守れなかった責任でカーティス以下の貴族は捕縛されました。」
「はい。」
「バーナード、わたくし、カーティスを蹴り飛ばしたわ!」
「、、、、そうでございますか、、、。それは、良うございました。」
やっとバーナードの顔に笑顔が浮かんでクローディアと微笑みあった。
「暴力はいけないけれど、あれはあれでスッキリするのね。初めて知ったわ。ふふふ。」
「、、、、そうですね。」
「さぁ、明日から忙しくなるわよ。何と言っても王夫妻が行方不明なんですもの。今日は休みます。」
「はい。」
クローディアは寝室のドアを開けるとそのままベッドに潜り込みそのまま深い眠りについた。馬に乗っての移動は思った以上に疲れるのだ。
バーナードは寝室に消えたクローディアの背中を見つめていた。
そしてドアが閉まると同時にバーナードの口から嗚咽が漏れる。バーナードはクローディアの話を聞いてある種の復讐は終わったのだと涙が滲む。クローディア自身は気付いていないがその顔からは背負っていた影が消えたように感じられたのだ。そのことが何より嬉しいバーナードなのだった。
結局ローレンスとサオリは現れず、数名のローレンスの側近が戻っただけだった。カーティスは全ての罪を背負ってこれから厳罰に処せられるだろう。だが、クローディアはその事を止める事はしないし、したくはない。確かに制裁リストの上位にいたが森で蹴り上げた事で個人的な復讐は済んだと思っている。
もう関わりたくないというのが本音だった。
「クローディア!準備は出来たか?」
「はい。ビクトル様。」
「じゃあ行くか。帰りはローレンス王達が乗っていた馬車もあるがどうする?」
「早く帰りたいのでご迷惑で無ければ馬に同乗させて頂けますか?」
「ああ、わかった。」
そう言ってビクトル王子は当然のようにクローディアの手を掴むと愛馬の方に歩き出した。クローディアも今ではビクトル王子の手に馴染みすぎて違和感は感じなかった。
「ビクトル様、カーティスは?」
クローディアの問いかけにビクトル王子の頬がピクリとした。
「あいつは、、、やばい奴だな。いや、そうだとは思っていたのだ。前々からクローディアに向ける視線が異常だったからな。今は箍が外れた感じだ。」
「え?」
「なんというか、、、クローディアが相手にしていない事を、、、その、、、喜んでいる。」
「喜ぶ?」
「ああ、なんだかクローディアに無視される快感に浸っているらしい。」
クローディアは怪訝な顔をしたが自己防衛本能が働いたのか話題を変えた。
「そ、そうですか、、。それよりビクトル様はローレンス王とサオリ王妃についてどう思われますか?」
クローディアの質問にビクトル王子は手を顎に当てて答えた。
「ふむ、難しいがカーティスが暗殺していないのならば本当に森の中で迷子なのか、はたまた人知れずセドアに渡ったか、それか本当に異世界に帰ったかだな。」
「ローレンス王もですか?」
「それ以外はないだろう。」
「ビクトル様の記憶ではどうなのですか?」
「王妃は帰れない。セドアに捕まって殺される。それが発端で戦争になるのだ。セドアからはなんと?」
「数名の貴族があちら側の出口から出て来たようです。全員亡命を希望しているそうなのでそのままセドアの国民となるはずですわ。」
「そうか、、、では、王夫妻が不幸にも行方不明になった事件ということか。」
「はい。その責任はカーティスとこちらに残った貴族が負います。」
「カーティスが厳罰、貴族達は蟄居という所だな。」
「ええ、ローレンス王達が未だに現王ですから責任は重いですわ。」
二人は馬まで歩いて先にビクトル王子が跨るとクローディアに手を差し出す。クローディアはその手を当然のように掴んでビクトル王子の前に跨った。
「では、暫くは事後処理で忙しくなりそうだな。」
「ええ。でも、戦争よりはずっと良いですわ。」
「ああ、私もそう思うよ。」
そうして二人はそのまま馬を走らせて王宮に戻ったのだった。
王宮に着くと通用門を行きと同じ目立たない時間に潜り直ぐにバーナードと合流して自室に戻った。なんといってもクローディアは体調を崩して寝込んでいるはずなのだ。誰にも見つかるわけにいかなかった。クローディアは自室でしっかりと寝巻きに着替えるとやっとホゥと息を吐いて落ち着いた。
「改めまして、おかえりなさいませ。」
「ありがとう、バーナード。こちらはどうでしたか?」
「何とかバレずに済みました。何度かシャルロッテ様かお見舞いいらっしゃいましたがうつると大変だといってお引き取りいただいております。」
「わかったわ。シャルロッテにはわたくしが後でお礼をいうわ。」
「後は?」
「クローディア様が行ってらした辺りの宿屋から損失補填の申込書が届きましたので、手紙の指示通り支払っておきました。」
「ありがとう。」
クローディアはその間に侍女達が用意してくれたお茶を手に取ってゆっくりと飲んだ。やっと帰ってきたと実感した。
「あちらではローレンス王達には一歩及びませんでした。」
「そうでございますか。」
「ローレンス王とサオリ王妃は護衛も連れずに森に入り行方不明です。」
「そうでございますか。」
「王を守れなかった責任でカーティス以下の貴族は捕縛されました。」
「はい。」
「バーナード、わたくし、カーティスを蹴り飛ばしたわ!」
「、、、、そうでございますか、、、。それは、良うございました。」
やっとバーナードの顔に笑顔が浮かんでクローディアと微笑みあった。
「暴力はいけないけれど、あれはあれでスッキリするのね。初めて知ったわ。ふふふ。」
「、、、、そうですね。」
「さぁ、明日から忙しくなるわよ。何と言っても王夫妻が行方不明なんですもの。今日は休みます。」
「はい。」
クローディアは寝室のドアを開けるとそのままベッドに潜り込みそのまま深い眠りについた。馬に乗っての移動は思った以上に疲れるのだ。
バーナードは寝室に消えたクローディアの背中を見つめていた。
そしてドアが閉まると同時にバーナードの口から嗚咽が漏れる。バーナードはクローディアの話を聞いてある種の復讐は終わったのだと涙が滲む。クローディア自身は気付いていないがその顔からは背負っていた影が消えたように感じられたのだ。そのことが何より嬉しいバーナードなのだった。
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