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第四章 運命との決別
66、ベルンハルトの誤算
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「どうだ?見つかったか?」
セドア共和国王太子ベルンハルトはアッカルド王国との国境の森の前で報告を待っていた。数名のアッカルド貴族は森から迷い出て来たが名も知らない一貴族ばかりだった。
「ローレンス王か王妃、、最低でもあの宰相のカーティス殿くらいは見つけてくれ!!」
ベルンハルトの声が森に響く。
何も持たないボロボロなった貴族など何人いても何の役にも立ちはしない。ベルンハルトの心中は穏やかではなかった。
ただ一つの希望はその貴族たち全員が王夫妻と宰相の後を追って森に入ったと証言していることだ。それならば、まだ、出てくる可能性も高い。
「ベルンハルト殿下!ご報告致します。」
「なんだ?」
「あの貴族達が言うには森に入ったのは王以外だと一般の貴族のみで騎士団の侵入はなかったそうです。」
「、、、わかった。」
報告に来た騎士を見送ってからベルンハルトは足元の小石を蹴った。
「畜生!!騎士が森に入らなければ侵攻にもできないではないか!!更に王達が見つからなければ亡命にも、祖国奪還という大義名分の戦争にも出来ん!!なんなんだ?!」
ベルンハルトがどんなに待ってもそれ以上の人間は現れずセドアの騎士団は撤退を決めた。
「これではただの人命救助ではないか!」
十数名の疲れ切ったアッカルド貴族達を一旦保護してベルンハルトはため息をついたのだった。
城に戻ったベルンハルトは父王に森での出来事を報告していた。
「というわけで、迷子の貴族を保護して終了しました。全く何だったのでしょうか?馬鹿にするにも程があります。王夫妻でも出てくればアッカルドを手に入れる事も可能だったのです!!」
怒りを隠さない息子に父王は呆れたように言い放つ。
「そう怒るな。其方はどうしようと考えていたのだ?」
「もちろんローレンス王に亡命していただき、祖国奪還の旗印になって頂こうと思っていました。」
「、、、戦争を、、仕掛けるつもりだったのか?」
「もちろんです!!今のアッカルドは攻め時ですよ。」
そう言ってベルンハルトは心底残念そうに訴えた。しかし、それを聞いた父王はベルンハルトに厳しい目を向ける。
「其方は少し偏狭な考え方をしているのではないか?クローディア王太子から手紙でも『もしかすると』と書いてある。それに戦争にならなかったのだ。お前は民の事を考えて喜ぶべきだぞ。」
思いがけない父王からの叱責にベルンハルトの目が見開かれる。そして、不満そうに謝罪の言葉を繋いだ。
「はぁ、、。申し訳ありません。」
ベルンハルトは心とは裏腹に謝るとその様子を見ていた父王が少し考えてからベルンハルトに提案した。
「其方には少し民の生活を学ぶ必要があるな。」
「え?」
「其方を王太子から一旦廃嫡する。その上で民が通う大学で数年学んでくるがいい。」
「え?父上!」
「戦争が無くなって残念そうな其方には国は任せられん。一から勉強し直してくるがいい。わかったか?」
「そんな、、、。」
「その後、シダールに行って王族とは何かを学んでくるのだ。その後再度王太子として相応しいか判断する。いいな。」
「そんな、、父上!!」
「そうだ。其方の王太子としての最後の仕事だ。アッカルドの貴族達に確認して国に帰りたいものは送り返せ。亡命を希望するものは市民権と当座の金を渡して解放しろ。いいな?」
ベルンハルトは悔しそうな顔をしつつも頭を下げて父王の言葉に返事を返した。
「はい。」
そうしてベルンハルトは父王の信頼を取り戻す為の日々が始まったのだった。
セドア共和国王太子ベルンハルトはアッカルド王国との国境の森の前で報告を待っていた。数名のアッカルド貴族は森から迷い出て来たが名も知らない一貴族ばかりだった。
「ローレンス王か王妃、、最低でもあの宰相のカーティス殿くらいは見つけてくれ!!」
ベルンハルトの声が森に響く。
何も持たないボロボロなった貴族など何人いても何の役にも立ちはしない。ベルンハルトの心中は穏やかではなかった。
ただ一つの希望はその貴族たち全員が王夫妻と宰相の後を追って森に入ったと証言していることだ。それならば、まだ、出てくる可能性も高い。
「ベルンハルト殿下!ご報告致します。」
「なんだ?」
「あの貴族達が言うには森に入ったのは王以外だと一般の貴族のみで騎士団の侵入はなかったそうです。」
「、、、わかった。」
報告に来た騎士を見送ってからベルンハルトは足元の小石を蹴った。
「畜生!!騎士が森に入らなければ侵攻にもできないではないか!!更に王達が見つからなければ亡命にも、祖国奪還という大義名分の戦争にも出来ん!!なんなんだ?!」
ベルンハルトがどんなに待ってもそれ以上の人間は現れずセドアの騎士団は撤退を決めた。
「これではただの人命救助ではないか!」
十数名の疲れ切ったアッカルド貴族達を一旦保護してベルンハルトはため息をついたのだった。
城に戻ったベルンハルトは父王に森での出来事を報告していた。
「というわけで、迷子の貴族を保護して終了しました。全く何だったのでしょうか?馬鹿にするにも程があります。王夫妻でも出てくればアッカルドを手に入れる事も可能だったのです!!」
怒りを隠さない息子に父王は呆れたように言い放つ。
「そう怒るな。其方はどうしようと考えていたのだ?」
「もちろんローレンス王に亡命していただき、祖国奪還の旗印になって頂こうと思っていました。」
「、、、戦争を、、仕掛けるつもりだったのか?」
「もちろんです!!今のアッカルドは攻め時ですよ。」
そう言ってベルンハルトは心底残念そうに訴えた。しかし、それを聞いた父王はベルンハルトに厳しい目を向ける。
「其方は少し偏狭な考え方をしているのではないか?クローディア王太子から手紙でも『もしかすると』と書いてある。それに戦争にならなかったのだ。お前は民の事を考えて喜ぶべきだぞ。」
思いがけない父王からの叱責にベルンハルトの目が見開かれる。そして、不満そうに謝罪の言葉を繋いだ。
「はぁ、、。申し訳ありません。」
ベルンハルトは心とは裏腹に謝るとその様子を見ていた父王が少し考えてからベルンハルトに提案した。
「其方には少し民の生活を学ぶ必要があるな。」
「え?」
「其方を王太子から一旦廃嫡する。その上で民が通う大学で数年学んでくるがいい。」
「え?父上!」
「戦争が無くなって残念そうな其方には国は任せられん。一から勉強し直してくるがいい。わかったか?」
「そんな、、、。」
「その後、シダールに行って王族とは何かを学んでくるのだ。その後再度王太子として相応しいか判断する。いいな。」
「そんな、、父上!!」
「そうだ。其方の王太子としての最後の仕事だ。アッカルドの貴族達に確認して国に帰りたいものは送り返せ。亡命を希望するものは市民権と当座の金を渡して解放しろ。いいな?」
ベルンハルトは悔しそうな顔をしつつも頭を下げて父王の言葉に返事を返した。
「はい。」
そうしてベルンハルトは父王の信頼を取り戻す為の日々が始まったのだった。
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