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第四章 運命との決別
64、運命の森
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「ハァハァハァ、ここが、、森、、よね?」
サオリは肩で息をしながら森の中に続く道で立ち止まった。後ろを振り向くとローレンスとカーティスを先頭に追いかけてくるのが見えた。
「よし!!いくわよ!これで日本に帰れるんだわ!!」
サオリは森の中にその大きな一歩を踏み出した。
「ローレンス!!!止まれ!!」
カーティスに突然肩を掴まれたローレンスはやはり肩で息をしながらも不満そうに振り向いた。
「離せ!サオリが森に入ってしまったじゃないか!!」
「それでも待つんだ!!森には危険な動物も多いんだぞ!!もうすぐ騎士達も来るから待て!!」
ローレンスはカーティスを睨むと手を外してそのまま駆け出した。
「おい!!ローレンス!!」
カーティスは騎士を待ちたかったがカーティスにとってのローレンスは命より大切な未来への切符なのだ。もし万が一熊にでも襲われたらカーティスの宰相復帰は夢と消える。そこまで考えるとほぼ使ったことなどない剣を携えてローレンスに続いた。
「ローレンス?!どこだ!」
カーティスが森に立ち入ると途端に視界が遮られてローレンスどころかサオリの姿さえ見えない。
「おい!!ローレンス?」
「カ、、、、ス」
遠くから微かにローレンスの声が聞こえた。カーティスはその声を頼りに森の奥へと進んだのだった。
カーティスが暫く歩いてから振り返るともう森の入り口も見えず、どこを見ても同じ木に見えて方向感覚を失わせる。それでもなんとか声を頼りにローレンスを追いかけたのだった。
「ローレンス?」
すぐ前に影が見えてカーティスがガサリと木の枝を搔きわけるとそこには三メートル四方の空間が生まれていた。
「なんだ?ここは、、?」
その空間には木は生えておらず、何故かふんわりとした光源がその広場の中だけを照らしていた。木漏れ日とも違う不思議な光景にカーティスは暫し動けずにいた。その広場の真ん中にサオリとローレンスが呆然と佇んでいた。
「どうしたんだ?ローレンス?」
ローレンスは未だに呆然としている様だがそれでもなんとかカーティスの声に反応して頭を振った。
「サ、サオリ?大丈夫か?」
ローレンスはカーティスの方を一瞥するとサオリに一歩近づいて声をかけた。
するとサオリが呟いた。
「ここだわ、、、。ここよ、、、。そうここなの!!思い出したわ!確かにいつのまにか森だったけどここよ。気がついたらここにいたのよ!!!」
「サオリ?」
ローレンスがサオリの肩に手を置いた。
「え?ローレンス?、、本物?」
「ああ、、、。」
その時、雷のような閃光が走りカーティスは一瞬目を瞑った。そして再び開いた時には、、、、ローレンスもサオリも誰もいなかった。
「皆の者!!止まりなさい!!」
クローディア達が森の入り口に着いた時ローレンス達の姿は既になく、ローレンスの側近達も殆どが森に姿を消していた。辛うじてローレンスの近衛の騎士が困ったように森の入り口付近でウロウロしているところだった。
「クローディア王太子殿下?!」
「ローレンス王とサオリ王妃はどこですか?」
森に入るのを躊躇していたローレンスの側近数名が右往左往しながらも突然現れた王太子に皆驚きを隠せなかった。何故なら側近達は王太子の許可を受けずに勝手に王宮を出て来たのだ。職務を放棄して、、、。
その現実を理解した側近からその場で土下座して頭を地面に擦り付けた。
そんな側近を蔑むように見下すとクローディアは騎士に声をかける。
「近衛の者!!!報告しなさい!」
「は!」
「ローレンス王及びサオリ王妃以下既に二十名近くがここより森に足を踏み入れたようです。」
「遅かったか!!」
後ろでビクトル王子の悔しそうな声が出て響く。
「わかりました。近衛騎士団の者は?」
「全員ここにおります。流石に国境を越えることは出来ずにおりました。」
「良い判断です。貴方達はその職務放棄及び逃亡の罪の者達を捕縛して少し森から離れなさい。」
「は!」
そういうと騎士達はその場で土下座している側近数名を捕らえると少し後ろの広場まで移動した。
「クローディア?どうするんだ?」
「わたくしが入る訳には参りません。迷った者が戻るのを少し待ってから帰るしかないわ。」
「そうだな、、。」
クローディアが悔しそうな顔で森を睨みつけた。但し、自分が来たことでやはり運命は変わったのだ。何故なら騎士団はここにいる。軍は国境を越えなかった。
ただあれだけウロウロしていたのだ。クローディアが来ずに指示を出さなかったらローレンス達を捜索する為に森に入っていたかもしれない、、。そうなったら、、戦争だ。セドア共和国から侵攻と捉えられても文句をいえなかった。
それだけは本当によかった。
クローディアはふぅーと息を吐いた。
「クローディア?」
ビクトル王子が心配そうにクローディアの肩を抱いた。
「大丈夫です。最悪からは何とか脱したのですからそれで良しとせねばなりませんね。」
「ああ、貴族が数名森に迷い込んだだけだ。たまたまその中に元国王夫妻がいたというだけだ。」
ビクトル王子は空を見上げて、周りの景色を確認した。
「ピクニックでもしていたのだろう?元王達は。」
その言葉にクローディアは少し考えて頷いた。
「そうですね、、、。ローレンス王達は森近くでピクニックしていて森に迷い込んだようです。」
そういうとクローディアとビクトル王子は騎士達の待つ広場まで下がることにした。
ガザ、ガザガザ
森に背を向けて歩き出した二人の背後で何かが動いた。直ぐにシダール護衛が二人を取り囲む。クローディアとビクトル王子が振り向いたその時、森の草むらから一人の男が転がり出てきた。
「カーティス!!」
全身草だらけ、泥だらけでいつもの不遜な態度など想像できないほどみすぼらしくなっているがその男はカーティスだった。
サオリは肩で息をしながら森の中に続く道で立ち止まった。後ろを振り向くとローレンスとカーティスを先頭に追いかけてくるのが見えた。
「よし!!いくわよ!これで日本に帰れるんだわ!!」
サオリは森の中にその大きな一歩を踏み出した。
「ローレンス!!!止まれ!!」
カーティスに突然肩を掴まれたローレンスはやはり肩で息をしながらも不満そうに振り向いた。
「離せ!サオリが森に入ってしまったじゃないか!!」
「それでも待つんだ!!森には危険な動物も多いんだぞ!!もうすぐ騎士達も来るから待て!!」
ローレンスはカーティスを睨むと手を外してそのまま駆け出した。
「おい!!ローレンス!!」
カーティスは騎士を待ちたかったがカーティスにとってのローレンスは命より大切な未来への切符なのだ。もし万が一熊にでも襲われたらカーティスの宰相復帰は夢と消える。そこまで考えるとほぼ使ったことなどない剣を携えてローレンスに続いた。
「ローレンス?!どこだ!」
カーティスが森に立ち入ると途端に視界が遮られてローレンスどころかサオリの姿さえ見えない。
「おい!!ローレンス?」
「カ、、、、ス」
遠くから微かにローレンスの声が聞こえた。カーティスはその声を頼りに森の奥へと進んだのだった。
カーティスが暫く歩いてから振り返るともう森の入り口も見えず、どこを見ても同じ木に見えて方向感覚を失わせる。それでもなんとか声を頼りにローレンスを追いかけたのだった。
「ローレンス?」
すぐ前に影が見えてカーティスがガサリと木の枝を搔きわけるとそこには三メートル四方の空間が生まれていた。
「なんだ?ここは、、?」
その空間には木は生えておらず、何故かふんわりとした光源がその広場の中だけを照らしていた。木漏れ日とも違う不思議な光景にカーティスは暫し動けずにいた。その広場の真ん中にサオリとローレンスが呆然と佇んでいた。
「どうしたんだ?ローレンス?」
ローレンスは未だに呆然としている様だがそれでもなんとかカーティスの声に反応して頭を振った。
「サ、サオリ?大丈夫か?」
ローレンスはカーティスの方を一瞥するとサオリに一歩近づいて声をかけた。
するとサオリが呟いた。
「ここだわ、、、。ここよ、、、。そうここなの!!思い出したわ!確かにいつのまにか森だったけどここよ。気がついたらここにいたのよ!!!」
「サオリ?」
ローレンスがサオリの肩に手を置いた。
「え?ローレンス?、、本物?」
「ああ、、、。」
その時、雷のような閃光が走りカーティスは一瞬目を瞑った。そして再び開いた時には、、、、ローレンスもサオリも誰もいなかった。
「皆の者!!止まりなさい!!」
クローディア達が森の入り口に着いた時ローレンス達の姿は既になく、ローレンスの側近達も殆どが森に姿を消していた。辛うじてローレンスの近衛の騎士が困ったように森の入り口付近でウロウロしているところだった。
「クローディア王太子殿下?!」
「ローレンス王とサオリ王妃はどこですか?」
森に入るのを躊躇していたローレンスの側近数名が右往左往しながらも突然現れた王太子に皆驚きを隠せなかった。何故なら側近達は王太子の許可を受けずに勝手に王宮を出て来たのだ。職務を放棄して、、、。
その現実を理解した側近からその場で土下座して頭を地面に擦り付けた。
そんな側近を蔑むように見下すとクローディアは騎士に声をかける。
「近衛の者!!!報告しなさい!」
「は!」
「ローレンス王及びサオリ王妃以下既に二十名近くがここより森に足を踏み入れたようです。」
「遅かったか!!」
後ろでビクトル王子の悔しそうな声が出て響く。
「わかりました。近衛騎士団の者は?」
「全員ここにおります。流石に国境を越えることは出来ずにおりました。」
「良い判断です。貴方達はその職務放棄及び逃亡の罪の者達を捕縛して少し森から離れなさい。」
「は!」
そういうと騎士達はその場で土下座している側近数名を捕らえると少し後ろの広場まで移動した。
「クローディア?どうするんだ?」
「わたくしが入る訳には参りません。迷った者が戻るのを少し待ってから帰るしかないわ。」
「そうだな、、。」
クローディアが悔しそうな顔で森を睨みつけた。但し、自分が来たことでやはり運命は変わったのだ。何故なら騎士団はここにいる。軍は国境を越えなかった。
ただあれだけウロウロしていたのだ。クローディアが来ずに指示を出さなかったらローレンス達を捜索する為に森に入っていたかもしれない、、。そうなったら、、戦争だ。セドア共和国から侵攻と捉えられても文句をいえなかった。
それだけは本当によかった。
クローディアはふぅーと息を吐いた。
「クローディア?」
ビクトル王子が心配そうにクローディアの肩を抱いた。
「大丈夫です。最悪からは何とか脱したのですからそれで良しとせねばなりませんね。」
「ああ、貴族が数名森に迷い込んだだけだ。たまたまその中に元国王夫妻がいたというだけだ。」
ビクトル王子は空を見上げて、周りの景色を確認した。
「ピクニックでもしていたのだろう?元王達は。」
その言葉にクローディアは少し考えて頷いた。
「そうですね、、、。ローレンス王達は森近くでピクニックしていて森に迷い込んだようです。」
そういうとクローディアとビクトル王子は騎士達の待つ広場まで下がることにした。
ガザ、ガザガザ
森に背を向けて歩き出した二人の背後で何かが動いた。直ぐにシダール護衛が二人を取り囲む。クローディアとビクトル王子が振り向いたその時、森の草むらから一人の男が転がり出てきた。
「カーティス!!」
全身草だらけ、泥だらけでいつもの不遜な態度など想像できないほどみすぼらしくなっているがその男はカーティスだった。
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