悪役令嬢だったわたくしが王太子になりました

波湖 真

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第3章 破滅への足音

50、わたくし、謝りました

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「クローディア王太子殿下がお越しです。」 

ビクトル王子があてがわれている部屋に護衛から声がかかった。

「クローディアが?一人でか?」

「は!」

「わかった。お通ししろ!」

「は!」

そうして入ってきたのは顔色を悪くしたクローディアだった。

「クローディア!!一体何があったのだ?顔色が悪すぎるぞ!!」

するとクローディアのか細い声が聞こえた。

「あ、あの、ビクトル様、。全てアーベル様からお聞きしました。もちろんアーベル様のご身分とあの、、わたくしの誤解についても、、、。」

「お、おう!そうか?」

クローディアは頭を下げた。

「本当に!!数々のご無礼申し訳ございませんでした!!!」

「い、いや、私も誤解される様な言動をしてしまったのだ。いい機会だからもう一つ話してもいいだろうか?」

「はい!なんでしょうか?」

ビクトル王子は神妙な顔で深呼吸すると今までの言動についての説明を始めた。

「私は病気なのだ、、、。」

「え?」

ビクトル王子は女性と意識するとどうしても緊張してしまう事、それは自分の好意が大きくなる程酷くなってしまう事、お見合いしても満足に話しもできなかった事、そして、その態度が大国シダールの王子だからと皆が納得してしまった事を話した。

「それで、、そなたと会った時も緊張してぶっきら棒に話してしまったのだ。」

「そうだったんですね。それで納得がいきましたわ。シャルロッテ様がそのお見合いの時のビクトル様の様子を教えてくれたのです。わたくしはてっきり、、その、女性が苦手だからだと思っておりましたわ。では、好意を持たれた方もいらしたのですね。」

「無論だ!しかし、上手く行ったことはない!!」

「まぁ、、。あ!でしたら、、その、、わたくしのことを遠くから睨んだり、その冷たい態度を取られたりなさったのは、、、その、、、、。」

「あ、ああ、クローディアをこ、こ、好ましいと、お、思っていたからだ!!」

ビクトル王子の顔が赤くなり、それを見たクローディアの顔を真っ赤に染まる。
周りの空気さえも桃色に変わっている様だった。

「あ、あの、でも、この災害の後はごく普通にお話しできているのは、、その、、わたくしに幻滅されたとか、その、好きではなくなった?とか?」

クローディアが少し不安そうに確認した。

「ち、違うのだ!なんというか、あのバルコニーでのクローディアを見て、女性というより人間として尊敬したのだ。そうするとだな。なんというか、、緊張しなくなったのだ。ただ、その、ハッと気づいて、その、、可愛いと思うと、、今でも、、逃げたくなる、、、。」

大きな体を縮こまらせて顔を真っ赤にして懸命に説明するビクトル王子を見て、クローディアの胸は高鳴った。不覚にも『可愛い』と思ってしまった。

「あの、ビクトル様、わたくしもビクトル様を好ましいと思っておりますの。でも、ビクトル様がアーベルと幸せになるのでしたら全力で応援するつもりでした。」

「それは、誤解だと、、」

「はい。ビクトル様が少しでもわたくしに好意を持って頂けるのでましたら、わたくしは負けませんわ!」

「え?」

「わたくし、情けないことに恋愛でも受け身で負けてばかりですの!でも、ビクトル様の恋愛対象が、女性であるのでしたらわたくしは全力でビクトル様を落としますわ!恋愛も勝ち取りたいのです!」

「あ、ああ。」

「ですから、ビクトル様もわたくしを恋に落としてくださいませ!!二人で勝負ですわ!!」

クローディアが拳を振り上げてやる気を出しているのを見て、ビクトル王子は、なんか違うと首を傾げた。

「クローディア、もし、お互いに好意を持っているのなら別に勝負しなくても良いのではないか?」

「いいえ!やっとわたくしもビクトル様も忌憚無く話せるようになったのです。これからより好きになれる様にお互い高め合いましょう!!」

「、、、ああ、、、。」

折角病気の事が話せたのに何かが違うとは思ってもやはり何も言えないビクトル王子は相変わらずのヘタレ王子だった。



クローディアはビクトル王子からの告白に俄然やる気を出していた。一旦は諦めた恋だが、それは誤解だった。これからも気持ちを深めていけるのだと考えると不安と共に高揚を感じていた。
クローディアにとって恋は鬼門だ。
でも、流されず自ら掴んだ恋ならば溺れずにいられるかもしれないと思ったのだ。それが勝負という言葉になったが、それでももう二度と恋には振り回されずしっかりと自分自身でコントールしたかったのだ。
目の前で未だに納得できないという顔をしたビクトル王子には少し可哀想だが、そう考えなければ恋など怖くて出来ないし、一歩を踏み出せない。

(今度の恋は攻める恋にしますわ!)

クローディアは決意を固めたのだった。
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