悪役令嬢だったわたくしが王太子になりました

波湖 真

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第3章 破滅への足音

49、わたくし、間違っていたのでしょうか

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クローディアが復興事業の会議が終わって気分転換に庭園を歩いているといつもの二人に出くわした。
最近は休憩の度にアーベルとシャルロッテという組み合わせに出会うのだ。
しかも、二人は、、なんというか、、、仲睦まじく見えた。ビクトル王子とアーベルの事を知っているクローディアとしては人の浮気現場を見てしまったような居た堪れない気持ちになるのだが無視するわけにもいかず、今日も二人に話しかけた。

「シャルロッテ様、アーベル、御機嫌よう。」

するとシャルロッテがクローディアに駆け寄ってきた。

「まぁ!お姉様!またお会いできて嬉しいですわ!ほら!アーベル様もお姉様にご挨拶なさる?」

するとアーベルもクローディアに近寄り頭を下げた。

「クローディア様、ご機嫌麗しゅう。」

「あ、あの、、アーベルは、その、この事は、、ビクトル様は、ご存知なの?」

「この事とは?」

「あの、貴方達が、、その、仲良くしていることよ!」

クローディアが言いにくそうに返事を返す。

「もちろん、ビクトル王子もご存知ですよ。なんといっても私達は只の上司と部下ですから!!」

「只の部下、、、、。」

「それでもシャルロッテ様は王女ですわ。身分差の恋は辛いと聞きましたわ。わたくし、シャルロッテ様には幸せになって欲しいのですわ。」

「、、お姉様!!!嬉しいですわ!!」

シャルロッテはその言葉に感動したのかヒシッとクローディアに抱きついてきた。

「あ、ありがとうございます!!お、お姉様、、。で、でも、心配なさらないで!!アーベル様との身分差は、無いに等しいのですわ!!も、も、もしあっても、、愛の力で乗り越え、、ますわ?」

シャルロッテのセリフ棒読みに慌てたアーベルが続きを話し始めた。

「クローディア様、僭越ながら私の両親はシダールにて公爵を賜っております。母は現王の妹で、ビクトル王子とは従兄弟なのです。」

「え?公爵?従兄弟?」

クローディアの頭の中が一気に動き始めた。シダール王国の公爵といえばはっきりいって周辺国の王より身分が上かもしれない、、。アッカルド王でさえシダールの伯爵相当なのだ、、、。
やっと状況が飲み込めたクローディアは慌ててアーベルに頭を下げた。

「アーベル様、数々のご無礼、お許し下さい。」

「やめて下さい。クローディア様。クローディア様はビクトル王子の御婚約者なのです。私のことは今まで通りに呼び捨てにしてください。」

「い、いえ、、そんな、、。」

「それに、クローディア様は、誤解されているようですがビクトル王子とは従兄弟という事でかなり親密にしていますが、それはあくまでも従兄弟として、もしくは臣下としてです。」

「は、はぁ。」

まだ納得していないクローディアにアーベルはシャルロッテの手を取ってその甲にキスを落とす。

「どうせ噂になるのならシャルロッテ様の様な可愛らしい方がいいに決まっています。因みにビクトル王子も恋愛対象は女性です!神に誓ってもいい。」

「そんな、大げさな、、。」

アーベルの宣言とシャルロッテとの仲睦まじい様子、ビクトル王子とは従兄弟という関係、、、。全てを考えてクローディアが出した結論は、、、自らの誤解だという事だった。

「あの、、アーベル様、、。では、アーベル様とビクトル様は、、」

「ただの従兄弟で臣下です!」

「ビクトル様にとっても?」

「もちろんです!!」

するとクローディアの顔色がサーっと青くなった。

「わ、わたくしはなんと失礼な事を!!こんなに復興事業に協力していただきながら大変な誤解を、、、、。申し訳ございませんでした!!」

するとアーベルはヒラヒラと手を振ってにっこりと笑った。

「誤解だとお解りいただければそれで十分です!もし、謝罪というのでしたらビクトル王子にお願いします。」

そう言われたクローディアはハッとして踵を返して駆け出したのだった。

「お姉様はどちらに行かれたのかしら?」

「そりゃ、もちろんビクトル王子の所ですよ。とんだキューピットですね。私達は。」

シャルロッテはふふふっと笑ってからアーベルに向かって提案した。

「では、折角ですもの。もう少しお散歩しません?」

アーベルはシャルロッテの手を取ってから膝を折った。

「こちらこそ、喜んでお供いたします。」

そして、二人は仲睦まじく庭園の奥に消えていった。
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