悪役令嬢だったわたくしが王太子になりました

波湖 真

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第3章 破滅への足音

47、救援部隊がやってきた

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「クローディアお姉様!!!」

翌朝早く王都に着いたのはマキオラ王国のシャルロッテ王女率いる救援部隊だった。

「シャルロッテ様!」

シャルロッテはクローディアに、飛びつくとぎゅーっと抱きしめた。

「お姉様がご無事でよかったですわ!!大災害と聞いていてもたってもいられずお父様にお願いしてきてしまいましたの!!」

クローディアもシャルロッテを抱きしめ返して耳元で囁いた。

「まぁ、嬉しいわ。またお会いできるなんて、、、可愛いお方ね。」

「お姉様、、、。そうですわ。マキオラ王国から医者や看護師を連れてきましたの。後は日持ちするパンや干し肉も沢山ありますわ!!」

シャルロッテが顔を赤らめて早口で説明する。

「まぁ、ありがとうございます。シャルロッテ様。わたくし、とても嬉しいわ。」

「本当ですか!!わたくしクローディアお姉様のお役にたてまして?」

「もちろんよ!一生懸命なシャルロッテ様は本当に素晴らしい王女なのね。」

クローディアがそう言ってシャルロッテの頬に親愛のキスを落とすとシャルロッテは顔を真っ赤にして頬を手で押さえた。

「そ、そ、そ、そ、それでは、、、わたくし、救護所の設営に、、いきますわ!!」

そう言ってアタフタと執務室から出て行ったのだった。その様子にクローディアはふふふっと笑った。

その後の一週間は怒涛の様に過ぎ去った。幸いにもその後は地面が揺れる事はなく、着実に一歩ずつ復興に向かっていた。シダールの騎士団にマキオラ王国の救護隊、そして遅れる事三日目にはセドア共和国王太子ベルンハルト王太子からも食料が届きなんとか国民生活も落ち着きつつあった。
そんな中で落ち着かない者が二人存在していた。シャルロッテとサオリだ。
シャルロッテは未だにビクトル王子が滞在している事が気に入らないとこのままアッカルドに留まる宣言をした。クローディアはもしシャルロッテに、婚約の話をしたらなんと言われるか戦々恐々としている。


サオリは正気は保ったままだがやはり部屋に引きこもってこれからの事を考えていた。

「もう本当に駄目だわ。こんな所から早く日本に帰らなくちゃ、、、。」

今までは他人任せに帰りたいと思っていたが地震後サオリは自分でなんとかしなければと考えていた。何故なら地震の時のクローディアの態度からして転生者とは思えなかった。日本人の記憶があるのに地震も津波も知らないなど考えられない。

「もう、人に頼るのは終わりよ!」

サオリは何とか自分で帰る方法を考えていたのだった。




ローレンスとカーティスは今日もクローディアに会う事ができずにローレンスの執務室で二人で顔を付き合わせていた。地震からこの二人の言う事は誰もきいてくれず、クローディアに会いに行こうとするとお邪魔になりますと言われてこの執務室に連れてこられてしまうのだった。その間に地震の傷跡も段々と収まっている様に感じていた。

「カーティス!!一体どう言う事なのだ!!!この国の王は誰なのだ!!私ではないのか!!」

ローレンスがイライラと机を叩く。

「それはこちらが聞きたい!!今まで散世話してやったのに自分の失敗を私のせいにしないでください!!」

「世話だと!!お前が大丈夫といった事で大丈夫だった事など一度もないではないか!」

「私が国を回してしなければヒューバード王が亡くなられてからこの国は無くなってます!!」

カーティスも負けじと言い返す。カーティスにもこの扱いが我慢ならなかったのだ。クローディアに会いに行こうとするとカーティスだけでは止められる。ローレンスを連れて行っても止められる。しかし、クローディアに会わねば自分達の現状の改善などあり得ない事はわかるのだ。

「「この役立たずが!!」」

二人がお互いに罵るとプイッと顔を背けてそれぞれ別の場所に座ったのだった。

トントン

「誰だ!」

「私よ、ローレンス。」

執務室のドアから入ってきたのはサオリだった。

「どうしたんだ?サオリ。珍しいな。」

「ローレンスにお願いがあるの。」

「お願い?」

「うん。ほら?ローレンスなら知ってるでしょ?私が故郷に帰りたいと思ってるって。」

「ああ、ニホンという場所の事か?」

「うん。そうなの。今までは自然に帰れる事をずっと願ってたの。でも、やっぱり自分で帰り方を探してみようかなと思って。」

「そうか。」

「それで、、、ローレンスにも一緒に考えて欲しいの!」

「、、、、?なんでだ?」

「えーだって、、、。わたしあんまり考えるのが得意ではないし、、、。出来ればカーティス様にも手伝って欲しいなと思ってるの。」

突然話を振られたカーティスも立ち上がった。

「サオリ王妃、、私もですか?」

「ええ、いつもローレンスがカーティス様の事をとても頭が良いって言うんだもの。ダメかしら?」

サオリが可愛らしく首をかしげる。二十八歳だが、、。

「サオリ王妃、、もしも帰る方法がわかったらどうするんですか?」

「え?帰るわよ。」

「な!其方は私と結婚しているぞ?」

ローレンスが慌てて口を挟むがサオリからの返答は冷めたものだった。

「えー、、。ローレンスとは十年も一緒にいてあげたじゃない?それに私の役割はやっぱり終わってると思うし、津波とかマジ怖いし、、。帰るわよー。」

「十年だと?結婚とは一生ではないのか?」

「えーやだ~。ローレンスってはそんな風に思ってたの?そんなに好きじゃないし、、帰り方がわかったらちゃんと別れて欲しいけど?」

「な、、、!」

ローレンスは子供が出来なくても我慢して、サオリに義理立てまでして結婚生活を続けていたのにその返答が好きじゃないとはどういう事なのだと絶句した。
その時カーティスの頭の中である希望が生まれた。
もし、サオリが故郷に帰ったらローレンスは誰からも非難させずに再婚するだろう。何と言っても王妃がいなくなってしまったのだ。再婚して貰わねばならない。そしてもしローレンスに世継ぎが生まれたら、、、王太子はローレンスの子供となるのだ。王の子供は王位継承権第一位となる。そして、クローディアは王太子ではいられない。
クローディアを貶める唯一の手だ!!
あんなに王太子という地位にしがみついているのだ。もし、その地位を奪われたら、、、。クローディアの苦悶する顔が眼に浮かぶ。そして、失意のクローディアを優しく慰めるのだ、、。
カーティスの目にやる気が灯った。

「わかりました。サオリ王妃。一緒に考えましょう。」

「本当?ありがとう!カーティス様。」

「サオリ王妃、私は臣下ですので呼び捨てにしてください。それでは、まずはサオリ王妃のお考えをお話しください。」

「お、おい!!カーティス!!」

まだ、不満そうなローレンスはそのままにカーティスとサオリは今までの経緯を共有したのだった。
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