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第3章 破滅への足音
46、津波の心配はありません
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「おい!サオリもうそろそろ下に降りてもいいのではないか!」
既に屋上に来てから数時間が経過していた。侍女達が用意したお茶もお菓子も食べ尽くし、日も暮れて肌寒くなってきた。
「うーん、そうね。こういう時に地震速報とかあればいいのに。そうすればこの地震で津波の心配はありませんとかすぐわかるのに、、、。」
サオリがブツブツ言っているとローレンスが確認した。
「そういえば、その津波とは何なんだ?」
「えっと、津波っていうのは地震の後に凄~く大きな波が来て街やお城や人もみんな流されちゃうのよ。」
「波が?ふむ、聞いたことないな。カーティスなら何か知っているかもしれないな。そんな波が怖かったのか?」
「もう!!本当に恐ろしいのよ!!私テレビで見たもの!!」
「テレビ?」
「ああ、もう!!嫌!!こんな地震なんかある海辺の街なんか怖くてたまらないの!!」
サオリが癇癪を起こすとローレンスは呆れたようにその様子を見ていたが今度は正気を失うことなく文句を言っているだけだった。
「まあ、いいではないか。折角正気に戻ったのだ。楽しく過ごそうではないか。」
「そうね、、、。わかったわ。」
そういってサオリとローレンスは階下に降りたのだった。
二人が階下に降りても未だに片付けが続いていて其処彼処で落ちたり倒れたりした置物などを起こしていた。皆二人が通ると一旦手を止めるものの特に頭を下げるわけでもなく作業を続けていた。
「おい!!王と王妃が通っておるのだ!控えよ!!」
ローレンスが痺れを切らせて注意するも作業しているもの達はその声が聞こえていないかのような態度だった。
「おい!!」
「ちょっとローレンスいいじゃない!私お腹が空いちゃったわ!早く来てよ!」
「あ、ああ、全く、しょうがない奴等だ。明日カーティスにいって辞めさせよう。」
ローレンスとサオリはその場に漂う不穏な雰囲気にも気付かずに自室に戻ったのだった。
「そう、二人が戻ったの。」
「はい。それが地面が揺れたことでの被害を確認するでもなく、片付けを指示するでもなく、お部屋に戻られたそうです。クローディア様がいらっしゃらなかったらこの国は大変なことになっているところです。」
クローディアは被害状況の確認と明日からの復興計画についてビクトル王子と話し合っていた。あのバルコニーからビクトル王子とは自然に様々な事を話せるようになったのだった。それがあの地面が揺れた事によって起こった唯一の良い事だった。
「そうかもしれん。あの王であの宰相ではこの国もたんな。」
「ビクトル様。」
「事実だ。それより明日の炊き出しは此処で行った方がいいかもしれないな。人が集まりやすいだろう。それに明日の午後にはシダールからも救援物資が届く予定だ。」
「ありがとうございます。本当にビクトル様がいてくださって良かったです。」
「いやクローディアが呼びかけた事でパニック状態からいち早く抜け出したんだ。そのおかげで被害が最小限に済んだと思う。」
「あれは本当に咄嗟に言葉がでてしまっただけなのです。」
クローディアは少し照れたように笑った。
「そ、そ、それでは私はシダール騎士団に明日の事をは、は、話してくる。」
そう言ってビクトル王子は慌てたように部屋を出た。
「ふぅ、、あぶなかった。」
ビクトル王子がクローディアに対して普通に接する事が出来るようになったのは性別を超越した尊敬の念を抱いたからだと自己分析していた。
あのバルコニーでの演説を聞いて心の底から素晴らしいと思ったのだ。
そうすると女性である、好みであるという事が全く気にならなくなって逆に気にする自分が恥ずかしいと感じていた。
しかしながら先程の様にふとした瞬間に見せる笑顔などが急に女性だと意識してしまうと動揺が走るのだ。
「よし!!」
ビクトル王子は自らの頬をパンと叩くと緩んだ顔を王子の顔に戻すと今日大活躍した自国の騎士団を労うために歩き出した。
「後は、サオリ王妃の行動ね。」
ビクトル王子が出て行ったドアを見つめながらクローディアはふぅとため息を着くとソファに深く沈み込んだ。
やはりファティマの予言通り地面が揺れた。予言書にはそのまま地面が揺れると書いてあったので実際に揺れた時はかなり驚いたが逆に冷静に受け止める事が出来た。ビクトル王子は流石大国の王子だけあって終始落ち着いていたように感じる。まだまだ後片付けが必要だが、取り敢えずこの出来事は何とか乗り切れたように感じていた。そうすると残り二つの王妃の事と隣国の事が頭をよぎる。
「隣国はシダールではないのかしら?」
クローディアはこのアッカルドを滅ぼすのはシダールだと勝手に思っていた。実際そうなりかけたのも事実だ。
更に呼べば数時間で王都に百人単位の騎士団が駆けつける事が出来るのだから万が一ビクトル王子の身に何かあればシダールにとっては赤子の手をひねるより簡単だ。
「でも、その騎士団は今は怪我人の救出や瓦礫の片付け、炊き出しなどの食料の配布をしてくれているのよね。」
滅ぼそうと思っている国をこんな風に助けるだろうか?
クローディアは今日一日で感じた疑問をもう一度考えてみたのだった。
そして残りの一つ王妃の事だ。
今まで正気に戻っていなかったので、特に気にしていなかったが明日からはそうも言っていられない。サオリへの監視も強化しなければ、、、。
クローディアはあまりに多いやる事リストを確認して先ずは王都の復興に力を入れようと心に決めたのだった。
既に屋上に来てから数時間が経過していた。侍女達が用意したお茶もお菓子も食べ尽くし、日も暮れて肌寒くなってきた。
「うーん、そうね。こういう時に地震速報とかあればいいのに。そうすればこの地震で津波の心配はありませんとかすぐわかるのに、、、。」
サオリがブツブツ言っているとローレンスが確認した。
「そういえば、その津波とは何なんだ?」
「えっと、津波っていうのは地震の後に凄~く大きな波が来て街やお城や人もみんな流されちゃうのよ。」
「波が?ふむ、聞いたことないな。カーティスなら何か知っているかもしれないな。そんな波が怖かったのか?」
「もう!!本当に恐ろしいのよ!!私テレビで見たもの!!」
「テレビ?」
「ああ、もう!!嫌!!こんな地震なんかある海辺の街なんか怖くてたまらないの!!」
サオリが癇癪を起こすとローレンスは呆れたようにその様子を見ていたが今度は正気を失うことなく文句を言っているだけだった。
「まあ、いいではないか。折角正気に戻ったのだ。楽しく過ごそうではないか。」
「そうね、、、。わかったわ。」
そういってサオリとローレンスは階下に降りたのだった。
二人が階下に降りても未だに片付けが続いていて其処彼処で落ちたり倒れたりした置物などを起こしていた。皆二人が通ると一旦手を止めるものの特に頭を下げるわけでもなく作業を続けていた。
「おい!!王と王妃が通っておるのだ!控えよ!!」
ローレンスが痺れを切らせて注意するも作業しているもの達はその声が聞こえていないかのような態度だった。
「おい!!」
「ちょっとローレンスいいじゃない!私お腹が空いちゃったわ!早く来てよ!」
「あ、ああ、全く、しょうがない奴等だ。明日カーティスにいって辞めさせよう。」
ローレンスとサオリはその場に漂う不穏な雰囲気にも気付かずに自室に戻ったのだった。
「そう、二人が戻ったの。」
「はい。それが地面が揺れたことでの被害を確認するでもなく、片付けを指示するでもなく、お部屋に戻られたそうです。クローディア様がいらっしゃらなかったらこの国は大変なことになっているところです。」
クローディアは被害状況の確認と明日からの復興計画についてビクトル王子と話し合っていた。あのバルコニーからビクトル王子とは自然に様々な事を話せるようになったのだった。それがあの地面が揺れた事によって起こった唯一の良い事だった。
「そうかもしれん。あの王であの宰相ではこの国もたんな。」
「ビクトル様。」
「事実だ。それより明日の炊き出しは此処で行った方がいいかもしれないな。人が集まりやすいだろう。それに明日の午後にはシダールからも救援物資が届く予定だ。」
「ありがとうございます。本当にビクトル様がいてくださって良かったです。」
「いやクローディアが呼びかけた事でパニック状態からいち早く抜け出したんだ。そのおかげで被害が最小限に済んだと思う。」
「あれは本当に咄嗟に言葉がでてしまっただけなのです。」
クローディアは少し照れたように笑った。
「そ、そ、それでは私はシダール騎士団に明日の事をは、は、話してくる。」
そう言ってビクトル王子は慌てたように部屋を出た。
「ふぅ、、あぶなかった。」
ビクトル王子がクローディアに対して普通に接する事が出来るようになったのは性別を超越した尊敬の念を抱いたからだと自己分析していた。
あのバルコニーでの演説を聞いて心の底から素晴らしいと思ったのだ。
そうすると女性である、好みであるという事が全く気にならなくなって逆に気にする自分が恥ずかしいと感じていた。
しかしながら先程の様にふとした瞬間に見せる笑顔などが急に女性だと意識してしまうと動揺が走るのだ。
「よし!!」
ビクトル王子は自らの頬をパンと叩くと緩んだ顔を王子の顔に戻すと今日大活躍した自国の騎士団を労うために歩き出した。
「後は、サオリ王妃の行動ね。」
ビクトル王子が出て行ったドアを見つめながらクローディアはふぅとため息を着くとソファに深く沈み込んだ。
やはりファティマの予言通り地面が揺れた。予言書にはそのまま地面が揺れると書いてあったので実際に揺れた時はかなり驚いたが逆に冷静に受け止める事が出来た。ビクトル王子は流石大国の王子だけあって終始落ち着いていたように感じる。まだまだ後片付けが必要だが、取り敢えずこの出来事は何とか乗り切れたように感じていた。そうすると残り二つの王妃の事と隣国の事が頭をよぎる。
「隣国はシダールではないのかしら?」
クローディアはこのアッカルドを滅ぼすのはシダールだと勝手に思っていた。実際そうなりかけたのも事実だ。
更に呼べば数時間で王都に百人単位の騎士団が駆けつける事が出来るのだから万が一ビクトル王子の身に何かあればシダールにとっては赤子の手をひねるより簡単だ。
「でも、その騎士団は今は怪我人の救出や瓦礫の片付け、炊き出しなどの食料の配布をしてくれているのよね。」
滅ぼそうと思っている国をこんな風に助けるだろうか?
クローディアは今日一日で感じた疑問をもう一度考えてみたのだった。
そして残りの一つ王妃の事だ。
今まで正気に戻っていなかったので、特に気にしていなかったが明日からはそうも言っていられない。サオリへの監視も強化しなければ、、、。
クローディアはあまりに多いやる事リストを確認して先ずは王都の復興に力を入れようと心に決めたのだった。
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