悪役令嬢だったわたくしが王太子になりました

波湖 真

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第3章 破滅への足音

45、災害救助とお茶会

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「え?もう一度言って頂戴。」

クローディアは多方面に指示を出しながらも王宮の侍女からの報告を聞き直した。

「はい。ローレンス王とサオリ王妃が屋上でのお茶会をご所望です。」

「え?お茶会?今お茶の用意が出来るなら図書館の本の下敷きになっている者を救えるわよ!何で部屋にいてくれないのかしら?あの方達は!!」

クローディアは部屋に閉じこもって何もしないローレンス達には見切りをつけて陣頭指揮を執っていた。まだ、部屋にいる分には手がかからず安全を確保できるのによりによって未だに安全確認出来ていない屋上でのしかもお茶会、、、、。馬鹿げているとしか言えなかった。
そんなの無理!と言おうとした時、隣でシダールの騎士団に王都の倒壊した建物からの救出活動や炊き出しを支持していたビクトル王子が口を挟んだ。

「いいではないか?その屋上のお茶会の準備を現在救助活動している者から数人向かわせれはいい。」

「ビクトル様?」

「抜けた穴は私の護衛を向かわせよう。」

「でも、、。」

「クローディア、私を信じてやってくれ。」

ビクトル王子の真剣な瞳にクローディアは渋々頷くと数人の侍女をお茶会の用意に向かわせた。ビクトル王子はその侍女に向かっていくつか指示を出していた。

「ビクトル様、侍女に何を?」

「なぁに、その用意に向かう時は一番目に付く廊下を使うように指示しただけだ。気にするな。それよりも、クローディアが建設した備蓄倉庫周辺に野営出来るテントを設置したいのだがいいだろうか?」

クローディアはビクトル王子の一言で現実に戻りまた陣頭指揮に戻ったのだった。そんなクローディアを横目にビクトル王子は常に三歩先を読んでいた。
確かにクローディアの言う通り人出は足りないが、あの大地の揺れ以来部屋から出てこなかった王と王妃がやっと出てきたと思ったら屋上で優雅にお茶をする。その用意にこの非常事態に対応している人手が取られる事を皆が見るのだ。
その効果を考えてビクトル王子はアッカルドの王位をクローディアが継承するのが思ったよりも早くなるかもしれないなと考えていた。


「ローレンス!!」

屋上で優雅にお茶を飲んでいた王と王妃を見てカーティスが慌てて駆け寄った。

「どうしたんだ?カーティス。お前も片付いていない場内よりもこの屋上の方が気分がいいぞ!」

「それはそうなんですが、、、。王と王妃の噂が王宮内で大変なことになっているんです!!」

「噂?何のだ?」

「王は怪我人を放置して逃げたとか無理矢理お茶の準備をさせたとか言われています!」

「なんだと!いったい誰がそんな事を言ってるんだ!!」

「しかも、地震の後ローレンス王を差し置いてクローディア様が色々指示を出しているらしく、ローレンス王は王に相応しくないとまでいわれています。」

「クローディアか!また!クローディアか!!!私に捨てられたから憐れに思って自由にさせてやったのになんなんだ!!」

ローレンスが立ち上がってクローディアに文句を言いに行こうとすると今度はサオリがその腕を引いた。

「だから!!ダメなの!!津波がくるから此処から動いたらダメなのよ!!ローレンスがいなくなったら私は此処で暮らせなくなるわ!!絶対に屋上から動かないで!!!」

「サオリ、、、そんな事を言っても此処にいる間にクローディアが好き勝手にしてるんだ!そんなの許せるはずもない。」

「いいじゃない!!どうせみんな死んじゃうわよ!ね?お願いローレンス、此処にいて!!」

あまりのサオリの剣幕にローレンスは再び腰を下ろしてしまった。
その事がローレンスから王としての信頼も尊敬も全てをなくす結果になるとはまだ気づいていなかった。
カーティスはそんなローレンスを見下ろすと何も言わずに背を向けて屋上から出て行った。

「邪魔です!!どいて下さい!!」

カーティスが屋上から下りると横から声がかかり、脇にずれると担架に乗せられた怪我人が通り過ぎた。

「おい!大丈夫なのか!」

カーティスが話しかけたが、その者たちは何も聞こえなかったかのように通り過ぎる。

「なんだ?あいつらは!」

カーティスが今度は廊下で割れた花瓶を片付けている侍女に話しかけた。

「おい、お前!クローディア様はどこだ!!」

侍女達はチラリとカーティスを見だのだがカーティスの事は無視して片付けを続けた。

「なんだ!聞こえないのか!!」

カーティスが声を荒げるとその中の一人が冷たく答える。

「私の主人は図書室で本に埋もれていたところをクローディア王太子殿下の指示により救い出されました。でも、主人は地面が揺れてから3時間も閉じ込められたんです。その主人が地面が揺れた直後にカーティス様がいらしたのに助けもせずに行ってしまったと言っていました。」

それだけ言うとプイッと顔を背けると作業に戻った。
カーティスは顔がカッと赤くなったが、何も言わずに通り過ぎた。それから何人もの部下や侍女に話しかけたが誰一人としてまともな返事を返したものはいなかった。そう、もうカーティスの居場所がなかった。
あの地面の揺れから既に五時間、只でさえ最近は閑職に追いやられていたのにこの五時間で透明人間になったようだった。
カーティスは結局諦めて唯一の居場所である執務室に閉じこもる事になったのだった。

「どうしてこんな事になったのだ!!」

執務室からはカーティスの無駄な叫び声が響いたがその声に興味を示すものは誰もいなかった。


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