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第2章 クローディアとサオリ
40、わたくしとビクトル王子
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「そうか、わかった。ご苦労だったな。」
ビクトル王子は部下からの報告を受け取るとドカリとソファに腰を下ろした。そのタイミングでアーベルが侍女達にお茶のセットをさせるとビクトル王子に話しかけた。
「ビクトル王子、その包帯はもう取ったらどうですか?ほんの少しかすり傷があるだけでしょう?」
「ああ、そうだな。しかし、ローレンス王があれではこの国は危ないぞ。簡単に騙されて乗っ取られるな。」
「ハハハ、そうですね。でも、この小国がこの場所にある事が一番周辺国にとって平和なんですからね。アッカルドがシダールの王子を捕縛くらいしないと攻める口実になりませんよ。」
そう言ってアーベルは笑った。
ビクトル王子も包帯を取りながら確かになと頷いた。そして、先程クローディアの護衛をしている者から受け取った報告書をパラパラとめくり始めた。
その姿を見てアーベルは静かに部屋から退出していった。その事にも気付かないようにビクトル王子は報告書に夢中になっていたのだ。
そこにはクローディアとサオリ王妃がお茶会でどんな話をして、どんな行動をとったのが事細かに書かれていた。何処で聞いていたのかサオリが話していた意味のわからない内容もそのまま忠実に会話形式で書かれている。
「サオリも私と同じ記憶持ちなのか?いや、元々この世界の者ではないから経験として知っているのか?それにこの違和感はなんと言えばいいのだ、、、、。」
ビクトル王子は自分が記憶の中で知っているサオリと今現実にいるサオリを頭の中で並べてみる。その二人には何ら重なる部分が見つけられなかった。そして一つの可能性にたどり着いたのだ。
「!!!中身が違う!!!」
そう考えるとしっくりくる事にビクトル王子は気がついた。そうだ。そうなのだ。サオリはサオリなのだが記憶にあるサオリにはクローディアに話したような未来を見る力はなかったはずだ。
サオリが言っていた転生者?という者も出て来なかったし、記憶ではこの国の王妃として認められるくらいにはこの世界に馴染んでいたはずなのだ。
それがどうだ?クローディアに対してここにはいたくないとこのように騒ぐとは、、、ビクトル王子の中のサオリのイメージが根底から崩れた。
確かに記憶の中のサオリもある出来事がきっかけでホームシックになるのだが、まだその出来事は起こっていない。なのにもう帰りたいと思っているらしい。
これはもう中身が違うかサオリという名前だけが同じ別人と考えた方が良いかもしれない。そして、そのサオリは既にホームシックで帰り方を探しているという事なのだ。
「まずいな、、、。」
ビクトル王子はこのサオリを語る女がある帰り方の方法に気づいた時にこの国が滅亡に向かう事を知っていた。
「もう帰りたいんじゃ私の記憶よりも早くその事に気づく可能性もあるわけだな。」
ビクトル王子は特殊組織の者にサオリ王妃の監視の強化を命じた。
そして、この事を知らせるべくファティマとしてペンをとったのだった。
カタリ
クローディアが部屋で仕事をしていると窓の外で物音がした。
クローディアは自分の願いがファティマに通じた事を悟って急いで窓を開けると思った通りそこには見覚えのある封筒が置いてあった。そして、それを手に取った。裏を返すとやはりファティマとあり、クローディアはそのまま寝室に向かい、ベッドに腰掛けるとはやる気持ちを抑えて便箋を開いた。
そして、やはり今回もかなりの分量の手紙を読み進めていた。
「え?!」
思わず声を出してしまったが、そこにはこれから滅亡までの重要な分岐点が丁寧に書かれていた。
重要な分岐点は三つ。
一つは半年後に起こるある出来事
一つはサオリ王妃の行動
一つは隣国への備え
そして、それぞれについて細かな説明がついていた。しかし、ファティマが予言書の中で何度も強調していたのは二番目のサオリの行動についてだった。不確定要素が多く確実にいつなのかがわからないらしい。
「やっぱりファティマも異世界人なのね。異世界から来るとこの国の未来がわかるのかしら?サオリとの未来の見え方が違うのは何故なのかしら?」
クローディアの中にファティマに聞きたい質問が溢れ出す。
「会いたいわ。会って色々確認したいわ。ファティマ。」
クローディアは何度も繰り返しファティマの予言書を読んでそれぞれの状況を頭に叩き込んだ。
そして、そのままベッドにバフンと横になると天蓋に向かって今の悩みを吐露した。
「わたくしは、、、この国の滅亡を阻止したいのかしら?
復讐を忘れたわけではないわ!
わたくしが受けた屈辱と同じ思いを制裁リストの者たちに味あわせてやりたいという気持ちも高いままよ!
その為に王太子として戻ったんじゃないの!」
クローディアは王太子としてこの国の仕事をするうちに知らず知らずに国に愛着を感じていることに気づいていた。
今クローディアの胸の中ではこの二つの心がせめぎ合っているのだ。
「考えなさい!クローディア!復讐もこの国も諦めない方法を!!もう大切な物を失うのも他人からの屈辱を享受するのも終わりよ!!」
クローディアはそのまま最善の方法を考え続けたのだった。
ビクトル王子は部下からの報告を受け取るとドカリとソファに腰を下ろした。そのタイミングでアーベルが侍女達にお茶のセットをさせるとビクトル王子に話しかけた。
「ビクトル王子、その包帯はもう取ったらどうですか?ほんの少しかすり傷があるだけでしょう?」
「ああ、そうだな。しかし、ローレンス王があれではこの国は危ないぞ。簡単に騙されて乗っ取られるな。」
「ハハハ、そうですね。でも、この小国がこの場所にある事が一番周辺国にとって平和なんですからね。アッカルドがシダールの王子を捕縛くらいしないと攻める口実になりませんよ。」
そう言ってアーベルは笑った。
ビクトル王子も包帯を取りながら確かになと頷いた。そして、先程クローディアの護衛をしている者から受け取った報告書をパラパラとめくり始めた。
その姿を見てアーベルは静かに部屋から退出していった。その事にも気付かないようにビクトル王子は報告書に夢中になっていたのだ。
そこにはクローディアとサオリ王妃がお茶会でどんな話をして、どんな行動をとったのが事細かに書かれていた。何処で聞いていたのかサオリが話していた意味のわからない内容もそのまま忠実に会話形式で書かれている。
「サオリも私と同じ記憶持ちなのか?いや、元々この世界の者ではないから経験として知っているのか?それにこの違和感はなんと言えばいいのだ、、、、。」
ビクトル王子は自分が記憶の中で知っているサオリと今現実にいるサオリを頭の中で並べてみる。その二人には何ら重なる部分が見つけられなかった。そして一つの可能性にたどり着いたのだ。
「!!!中身が違う!!!」
そう考えるとしっくりくる事にビクトル王子は気がついた。そうだ。そうなのだ。サオリはサオリなのだが記憶にあるサオリにはクローディアに話したような未来を見る力はなかったはずだ。
サオリが言っていた転生者?という者も出て来なかったし、記憶ではこの国の王妃として認められるくらいにはこの世界に馴染んでいたはずなのだ。
それがどうだ?クローディアに対してここにはいたくないとこのように騒ぐとは、、、ビクトル王子の中のサオリのイメージが根底から崩れた。
確かに記憶の中のサオリもある出来事がきっかけでホームシックになるのだが、まだその出来事は起こっていない。なのにもう帰りたいと思っているらしい。
これはもう中身が違うかサオリという名前だけが同じ別人と考えた方が良いかもしれない。そして、そのサオリは既にホームシックで帰り方を探しているという事なのだ。
「まずいな、、、。」
ビクトル王子はこのサオリを語る女がある帰り方の方法に気づいた時にこの国が滅亡に向かう事を知っていた。
「もう帰りたいんじゃ私の記憶よりも早くその事に気づく可能性もあるわけだな。」
ビクトル王子は特殊組織の者にサオリ王妃の監視の強化を命じた。
そして、この事を知らせるべくファティマとしてペンをとったのだった。
カタリ
クローディアが部屋で仕事をしていると窓の外で物音がした。
クローディアは自分の願いがファティマに通じた事を悟って急いで窓を開けると思った通りそこには見覚えのある封筒が置いてあった。そして、それを手に取った。裏を返すとやはりファティマとあり、クローディアはそのまま寝室に向かい、ベッドに腰掛けるとはやる気持ちを抑えて便箋を開いた。
そして、やはり今回もかなりの分量の手紙を読み進めていた。
「え?!」
思わず声を出してしまったが、そこにはこれから滅亡までの重要な分岐点が丁寧に書かれていた。
重要な分岐点は三つ。
一つは半年後に起こるある出来事
一つはサオリ王妃の行動
一つは隣国への備え
そして、それぞれについて細かな説明がついていた。しかし、ファティマが予言書の中で何度も強調していたのは二番目のサオリの行動についてだった。不確定要素が多く確実にいつなのかがわからないらしい。
「やっぱりファティマも異世界人なのね。異世界から来るとこの国の未来がわかるのかしら?サオリとの未来の見え方が違うのは何故なのかしら?」
クローディアの中にファティマに聞きたい質問が溢れ出す。
「会いたいわ。会って色々確認したいわ。ファティマ。」
クローディアは何度も繰り返しファティマの予言書を読んでそれぞれの状況を頭に叩き込んだ。
そして、そのままベッドにバフンと横になると天蓋に向かって今の悩みを吐露した。
「わたくしは、、、この国の滅亡を阻止したいのかしら?
復讐を忘れたわけではないわ!
わたくしが受けた屈辱と同じ思いを制裁リストの者たちに味あわせてやりたいという気持ちも高いままよ!
その為に王太子として戻ったんじゃないの!」
クローディアは王太子としてこの国の仕事をするうちに知らず知らずに国に愛着を感じていることに気づいていた。
今クローディアの胸の中ではこの二つの心がせめぎ合っているのだ。
「考えなさい!クローディア!復讐もこの国も諦めない方法を!!もう大切な物を失うのも他人からの屈辱を享受するのも終わりよ!!」
クローディアはそのまま最善の方法を考え続けたのだった。
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