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第2章 クローディアとサオリ
35、わたくし、、誤解していました
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「クローディア様!!!」
暫くビクトル王子の胸に顔を埋めていたクローディアはバーナードの声に我に帰ったのか顔を上げビクトル王子から少し距離をとった。ビクトル王子の腕もスルリと解かれクローディアの目の前に真っ白なハンカチが差し出された。
クローディアは恐縮しながらもそのハンカチを受け取り、涙を拭う。
「ビクトル王子、、みっともない所をお見せ致しました。申し訳ございません。あの、その、、、、、、失礼いたします!!!」
居たたまれなくなったクローディアはそのまま慌てたようにビクトル王子にぴょこんと頭を下げるとハンカチを握りしめて走り去ったのだった。
クローディアはある程度の距離を走り抜けると立ち止まり後ろを振り返って今現実に起こった事を考える。
「わ、わたくしは、、、なんと、いう事を、、、。」
いくら安心したからと言って泣いてしまうとは、、、、、。恥ずかしくて顔から火が出そうだ。それにビクトル王子が何と思ったのか、、、考えたくもなかった。
「クローディア様?」
クローディアがブツブツ話しているとバーナードと護衛がやってきた。皆一様に目を見張ったが何も言わなかった。
目を真っ赤にしたクローディアはそれでも顔を上げて静かに話した。
「先程、黒尽くめの男達に襲われました。」
「え!!大丈夫でございますか?!」
「ええ、たまたま居合わせたシダールの王子に助けて頂きました。大事ありません。わたくしはわたくし自身を守る事を疎かにしました。反省します。皆にも、迷惑をかけました。」
そう言って多くは語らずクローディアは、目線だけで謝罪するとそのまま歩き出した。
バーナードは護衛とお互い顔を見合すと頷いた。すると護衛が慌ててクローディアの後を追ったのだった。
残されたバーナードはクローディアの発言を確認すべく薔薇園の奥へと入っていったのだった。
ビクトル王子は未だに手を少し掲げながらクローディアを抱きしめた格好のまま固まっていた。
「あの、ビクトル王子?もうクローディア様は行っちゃいましたよ?ビクトル王子?」
アーベルが申し訳なさそうにビクトル王子の肩をポンポンと叩いた。
すると、ビクトル王子がガバリとアーベルの肩を掴むとユサユサと揺らした。
「み、見たか?私はクローディアをだ、抱きしめたぞ!!しかも、曲者から守ったし、こ、この胸で涙を受け止めた!!!これこそ婚約者との逢瀬だぞ!!」
「ああ、良かったですね?でも、なんというか吊り橋効果って奴なんじゃないですか?」
アーベルが淡々と答えるとビクトル王子は少しだけ背の低いアーベルの目を覗き込んで訴える。
「そんなわけあるか!俺は全身全霊で守ったんだ!!」
カサリ
「え!?」
「あ?!」
「は!し、失礼いたしました!!」
バーナードは襲撃現場を確認すべく歩いてきたのだ。ビクトル王子とアーベルは少し顔を赤らめているクローディアの側近を見つめてから自分達を見下ろした。
客観的に見ると、ビクトル王子は両腕をアーベルの肩において、少し屈んでアーベルの顔を覗き込んでいる。
その格好を自覚すると二人はパッと離れてからコホンと咳払いをしてクローディアの側近に話しかけた。
「いや、その、、なんでもないのだ!この男は私の側近のアーベルといって、、今、その、やましい事など何も無いのだ!」
バーナードは努めて落ち着いた声で答える。
「わかっております。決して口外致しません。私は口は硬い方でございます。成る程、ビクトル王子殿下は女性が苦手なのですね。やっと今までのすれ違いの理由がわかりました。そうか、そうだったのですね。」
一人納得してウンウンと頷いてからバーナードは焦るビクトル王子に向かって深々と頭を下げた。
「改めまして、私はアッカルド王国王太子クローディア殿下の側近をしております。バーナード・ブラウンでございます。先程はクローディア殿下をお守り頂き誠にありがとうございます。クローディア殿下の警護に不備がありました事、誠に申し訳ございませんでした。」
「あ、ああ、そうだな。クローディア殿は王太子なのだ。その自覚を持ってた守られるようせねばならん。」
「はい。」
「今回はたまたま私が近くを通りかかったから難を逃れたが次はないぞ!」
「はい。心して取り組みます。ご無礼ですが、賊は何処のものでございましたか?」
「それはわからぬ。一言も話さなかったからな。」
「そうでございますか、、、、。」
「しかし、近いうちに判明するはずだ。」
「え?!」
「私の部下に後を追わせておる。明日にでもアジトはわかるであろう。もし、依頼主に会うようならそれも誰かわかるな。」
「何から何までありがとうございす。私はビクトル王子殿下を誤解しておりした。てっきりクローディア殿下を嫌っておいでだと思いました。」
「いや、嫌ってなどおらん。」
「はい、わかっております。女性があまり得意ではないのですね。よく分かりました。それでも、賊からお守りいただけるくらいはクローディア殿下をお認めいただけているようで嬉しく思います。」
「あ、いや、それも、違うのだ。」
「ご安心ください。クローディア殿下にはそれとなくお伝えしてご不快にならない距離を保つように致します。」
「いや、、そうではなく、、。」
「ああ、ご成婚後の世継ぎの事でしたらご養子の候補も探しておきます。」
「そうではなく、私は!」
「ああ、クローディア殿下もビクトル王子殿下との関係をお気になされておりましたので、本当に理由がわかってようございました。シダールの王子では、偽装とはいえご婚約くらいしないとなりませんから、、。ええ、よく分かりました。」
「お、おい!」
「ああ、それでは賊の事がわかりましたらご連絡いただけますか?よろしくお願い致します。それでは、失礼します。」
それだけ言うとバーナードはビクトル王子とアーベルの仲を盛大に誤解したままサッサと帰ってしまった。
呆然としたビクトル王子の後ろからアーベルの声がかかる。
「成る程これが一歩進んで二歩下がるってやつですね。勉強になります。」
ビクトル王子の肩がガックリと下がった事は言うまでもなかった。
暫くビクトル王子の胸に顔を埋めていたクローディアはバーナードの声に我に帰ったのか顔を上げビクトル王子から少し距離をとった。ビクトル王子の腕もスルリと解かれクローディアの目の前に真っ白なハンカチが差し出された。
クローディアは恐縮しながらもそのハンカチを受け取り、涙を拭う。
「ビクトル王子、、みっともない所をお見せ致しました。申し訳ございません。あの、その、、、、、、失礼いたします!!!」
居たたまれなくなったクローディアはそのまま慌てたようにビクトル王子にぴょこんと頭を下げるとハンカチを握りしめて走り去ったのだった。
クローディアはある程度の距離を走り抜けると立ち止まり後ろを振り返って今現実に起こった事を考える。
「わ、わたくしは、、、なんと、いう事を、、、。」
いくら安心したからと言って泣いてしまうとは、、、、、。恥ずかしくて顔から火が出そうだ。それにビクトル王子が何と思ったのか、、、考えたくもなかった。
「クローディア様?」
クローディアがブツブツ話しているとバーナードと護衛がやってきた。皆一様に目を見張ったが何も言わなかった。
目を真っ赤にしたクローディアはそれでも顔を上げて静かに話した。
「先程、黒尽くめの男達に襲われました。」
「え!!大丈夫でございますか?!」
「ええ、たまたま居合わせたシダールの王子に助けて頂きました。大事ありません。わたくしはわたくし自身を守る事を疎かにしました。反省します。皆にも、迷惑をかけました。」
そう言って多くは語らずクローディアは、目線だけで謝罪するとそのまま歩き出した。
バーナードは護衛とお互い顔を見合すと頷いた。すると護衛が慌ててクローディアの後を追ったのだった。
残されたバーナードはクローディアの発言を確認すべく薔薇園の奥へと入っていったのだった。
ビクトル王子は未だに手を少し掲げながらクローディアを抱きしめた格好のまま固まっていた。
「あの、ビクトル王子?もうクローディア様は行っちゃいましたよ?ビクトル王子?」
アーベルが申し訳なさそうにビクトル王子の肩をポンポンと叩いた。
すると、ビクトル王子がガバリとアーベルの肩を掴むとユサユサと揺らした。
「み、見たか?私はクローディアをだ、抱きしめたぞ!!しかも、曲者から守ったし、こ、この胸で涙を受け止めた!!!これこそ婚約者との逢瀬だぞ!!」
「ああ、良かったですね?でも、なんというか吊り橋効果って奴なんじゃないですか?」
アーベルが淡々と答えるとビクトル王子は少しだけ背の低いアーベルの目を覗き込んで訴える。
「そんなわけあるか!俺は全身全霊で守ったんだ!!」
カサリ
「え!?」
「あ?!」
「は!し、失礼いたしました!!」
バーナードは襲撃現場を確認すべく歩いてきたのだ。ビクトル王子とアーベルは少し顔を赤らめているクローディアの側近を見つめてから自分達を見下ろした。
客観的に見ると、ビクトル王子は両腕をアーベルの肩において、少し屈んでアーベルの顔を覗き込んでいる。
その格好を自覚すると二人はパッと離れてからコホンと咳払いをしてクローディアの側近に話しかけた。
「いや、その、、なんでもないのだ!この男は私の側近のアーベルといって、、今、その、やましい事など何も無いのだ!」
バーナードは努めて落ち着いた声で答える。
「わかっております。決して口外致しません。私は口は硬い方でございます。成る程、ビクトル王子殿下は女性が苦手なのですね。やっと今までのすれ違いの理由がわかりました。そうか、そうだったのですね。」
一人納得してウンウンと頷いてからバーナードは焦るビクトル王子に向かって深々と頭を下げた。
「改めまして、私はアッカルド王国王太子クローディア殿下の側近をしております。バーナード・ブラウンでございます。先程はクローディア殿下をお守り頂き誠にありがとうございます。クローディア殿下の警護に不備がありました事、誠に申し訳ございませんでした。」
「あ、ああ、そうだな。クローディア殿は王太子なのだ。その自覚を持ってた守られるようせねばならん。」
「はい。」
「今回はたまたま私が近くを通りかかったから難を逃れたが次はないぞ!」
「はい。心して取り組みます。ご無礼ですが、賊は何処のものでございましたか?」
「それはわからぬ。一言も話さなかったからな。」
「そうでございますか、、、、。」
「しかし、近いうちに判明するはずだ。」
「え?!」
「私の部下に後を追わせておる。明日にでもアジトはわかるであろう。もし、依頼主に会うようならそれも誰かわかるな。」
「何から何までありがとうございす。私はビクトル王子殿下を誤解しておりした。てっきりクローディア殿下を嫌っておいでだと思いました。」
「いや、嫌ってなどおらん。」
「はい、わかっております。女性があまり得意ではないのですね。よく分かりました。それでも、賊からお守りいただけるくらいはクローディア殿下をお認めいただけているようで嬉しく思います。」
「あ、いや、それも、違うのだ。」
「ご安心ください。クローディア殿下にはそれとなくお伝えしてご不快にならない距離を保つように致します。」
「いや、、そうではなく、、。」
「ああ、ご成婚後の世継ぎの事でしたらご養子の候補も探しておきます。」
「そうではなく、私は!」
「ああ、クローディア殿下もビクトル王子殿下との関係をお気になされておりましたので、本当に理由がわかってようございました。シダールの王子では、偽装とはいえご婚約くらいしないとなりませんから、、。ええ、よく分かりました。」
「お、おい!」
「ああ、それでは賊の事がわかりましたらご連絡いただけますか?よろしくお願い致します。それでは、失礼します。」
それだけ言うとバーナードはビクトル王子とアーベルの仲を盛大に誤解したままサッサと帰ってしまった。
呆然としたビクトル王子の後ろからアーベルの声がかかる。
「成る程これが一歩進んで二歩下がるってやつですね。勉強になります。」
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