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第2章 クローディアとサオリ
31、わたくし、婚約致します
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「本当か?アーベル!」
「はい、確かにクローディア様は三つ目の案を選択されました。ご婚約おめでとうございます。ビクトル王子。」
「私とクローディアが婚約、、、。」
ビクトル王子は突然の婚約に未だ頭がついていっていなかった。確かにクローディアの事は好みだし好ましいし、助けたいし、可愛いと思う。
でも、まだ10メートルの距離でしか話した事もないし、手を取ったこともない。
それが婚約、、、不安しかない、、、。
「ん?どうしました?ビクトル王子、嬉しくないんですか?」
アーベルの呑気な声にビクトル王子の声が重なる。
「う、嬉しいの前に不安しかない、、。お前は知っているだろう?私はクローディア殿とはまだまともには話したことさえないのだ。婚約したとしても近くで話せるかもわからない。もしくは暴言を吐く自分しか思い浮かばない。
婚約者に冷たくするなど、、、最悪だ。」
ビクトル王子にも一応は理想の婚約生活くらいはあるのだ。手に手を取って散歩して、ダンスを踊り、テラスでお茶を飲みながら談笑するのだ。そう、笑いながら談笑するのが理想だ。
「私に、、、出来るのか?」
「は?」
「アーベル、私にクローディア殿とテラスに座って談笑する事が出来ると思うか?」
ビクトル王子は真剣にアーベルに問いかけた。
「談笑ですか?あの、笑いながら和かにお話しする談笑ですよね?」
「他にあるのか?」
「いえ、、んーっと、はっきり言って無理でしょうね。詰問くらいならイケるかとは思いますが、、、。」
「詰問、、、。婚約者にか?そんな刺々しいものなら私は10メートル以内には近づかないぞ!」
「そうは言っても、シダールの王子の婚約ですよ?婚約式や披露パーティーもやると思いますよ?シダール王は。」
「父上か、、、。確かにな。もしかしてこの婚約が整ったら父上達はアッカルドに来ると思うか?」
「来るでしょうねぇ。もちろん王妃様もいらっしゃる思います。」
「母上もか、、、。ダンスは確実だな。」
「ですね、、。クローディア王太子殿下と仲睦まじくダンスを披露する事になります。」
ビクトル王子はアーベルの言葉に頭を抱えた。
「無理だ、、、。私には出来ない、、。クローディア殿を押しのけてしまいそうだ。
クローディア殿になんと説明すれば良いのだ。アーベル、何が策はないか?」
アーベルは腕を組んで指先でトントンとリズムを取って暫く考えるとゆっくりと目を開いてビクトル王子に提案した。
「ビクトル王子、提案が二つあります。」
「あ、ああ。それは?」
「一つ目はクローディア様に病気の事を全てお話になるです。好みの女性に近寄ると冷たく接してしまう。逃げたくなってしまう。と告白するのです。」
「ゔ、、。それはクローディア殿に好みだと告白するようなものではないか、、。」
「まあ、そうです。二つ目は本当はクローディア様の事は気に入らないが、今の状況を改善する為に仕方なく婚約したと話すのです。これならば冷たくしても当然だと思われますよ。先程もそのようにクローディア様に話されていましたよね?」
「あ、あれは王族の婚姻における一般論で、、。でも、、今はまだ好きだと告白できる程クローディア殿の事をよく知らないし、突然好みだと言われても今までが今までだ。信じては貰えんだろう。」
ビクトル王子はハァとため息をついた。
「兎に角クローディア様は非常に素早く状況を判断して婚約を選択されました。何処まで読んだのかはわかりませんが、あの一択のみが正解だったのにもかかわらずです。それは尊敬に値しますよ。私はクローディア様をビクトル王子の伴侶として歓迎したいと思います。」
「アーベル、、、お前が先に落ちたのか、、、。」
ビクトル王子は信じられないと言う風にアーベルを見つめた。
「ははは、なのでサッサと告白でも何でもして、周りから逃げられないように固めてください。」
「いや、今告白したら逃げられるぞ。王族だから、物理的には逃げられないかもしれないが精神的に逃げられる。私は婚約者とは仲睦まじくなりたいのだ。」
「じゃあ、しょうがないじゃないですか?二つ目の案の現状改善の為仕方なく婚約したから優しくなど出来ないという線で行くしかないですよ。追々病気が改善されるか、ビクトル王子が告白しても逃げられないくらいにクローディア様と懇意になるまでの辛抱です!」
そうしてビクトル王子の方針は確定した。
本当は嫌だが仕方なく婚約した婚約者という設定となったのだった。
勿論、なるべく早く関係を改善して理想の婚約者になるのだ。
「何!!!婚約だと!!そんなこと許すはずもないだろう!!」
クローディアはローレンスの元を訪れてシダールからの提案だと伝えた。
三つの提案は言わずに、捕縛したことに対する要求という事にしていた。
何故ならこの案以外を選んではいけないような気がするのだ。
そして、この目の前の馬鹿コンビは選びそうなのだ。
(もしかして、本来はこういう外交のもつれから滅亡するのかしら?)
もし、そうならありえるなとクローディアは考えていた。
「兎に角ローレンス王の良し悪しでお断り出来ないものなのです。ご了承下さい。」
クローディアの冷めた言い方にローレンスは隣にいるカーティスを見た。するとカーティスがローレンスに耳打ちすると目を輝かせて頷いた。
「わかった。婚約を認めよう。但し、仮だ。王太子配となるのだ。ビクトル王子にはこのままこのアッカルドに滞在して貰って王太子配もしくは王配として相応しいかを判断させてもらう。そして、一年後に正式な婚約者として認めよう。」
「仮ですの?」
「ああ、そうだ。精々仲良くするのだな。仮とはいえ王太子の婚約者になるのだ。ビクトル王子の軟禁は終わりだ。許すわけではないが王太子の婚約者として恩赦を与える。いいな。」
クローディアはこれ以上の譲歩は難しいと判断して頷いた。
その顔を見てカーティスが内心ニタリと笑ったのだった。
(一年後に好きになった仮の婚約者と別れさせたら、、、クローディアはどんな顔で泣いてくれるのでしょう、、、。楽しみでたまりません。)
ゾクリ
クローディアは寒気を感じて早々に王の執務室から退出した。
「はい、確かにクローディア様は三つ目の案を選択されました。ご婚約おめでとうございます。ビクトル王子。」
「私とクローディアが婚約、、、。」
ビクトル王子は突然の婚約に未だ頭がついていっていなかった。確かにクローディアの事は好みだし好ましいし、助けたいし、可愛いと思う。
でも、まだ10メートルの距離でしか話した事もないし、手を取ったこともない。
それが婚約、、、不安しかない、、、。
「ん?どうしました?ビクトル王子、嬉しくないんですか?」
アーベルの呑気な声にビクトル王子の声が重なる。
「う、嬉しいの前に不安しかない、、。お前は知っているだろう?私はクローディア殿とはまだまともには話したことさえないのだ。婚約したとしても近くで話せるかもわからない。もしくは暴言を吐く自分しか思い浮かばない。
婚約者に冷たくするなど、、、最悪だ。」
ビクトル王子にも一応は理想の婚約生活くらいはあるのだ。手に手を取って散歩して、ダンスを踊り、テラスでお茶を飲みながら談笑するのだ。そう、笑いながら談笑するのが理想だ。
「私に、、、出来るのか?」
「は?」
「アーベル、私にクローディア殿とテラスに座って談笑する事が出来ると思うか?」
ビクトル王子は真剣にアーベルに問いかけた。
「談笑ですか?あの、笑いながら和かにお話しする談笑ですよね?」
「他にあるのか?」
「いえ、、んーっと、はっきり言って無理でしょうね。詰問くらいならイケるかとは思いますが、、、。」
「詰問、、、。婚約者にか?そんな刺々しいものなら私は10メートル以内には近づかないぞ!」
「そうは言っても、シダールの王子の婚約ですよ?婚約式や披露パーティーもやると思いますよ?シダール王は。」
「父上か、、、。確かにな。もしかしてこの婚約が整ったら父上達はアッカルドに来ると思うか?」
「来るでしょうねぇ。もちろん王妃様もいらっしゃる思います。」
「母上もか、、、。ダンスは確実だな。」
「ですね、、。クローディア王太子殿下と仲睦まじくダンスを披露する事になります。」
ビクトル王子はアーベルの言葉に頭を抱えた。
「無理だ、、、。私には出来ない、、。クローディア殿を押しのけてしまいそうだ。
クローディア殿になんと説明すれば良いのだ。アーベル、何が策はないか?」
アーベルは腕を組んで指先でトントンとリズムを取って暫く考えるとゆっくりと目を開いてビクトル王子に提案した。
「ビクトル王子、提案が二つあります。」
「あ、ああ。それは?」
「一つ目はクローディア様に病気の事を全てお話になるです。好みの女性に近寄ると冷たく接してしまう。逃げたくなってしまう。と告白するのです。」
「ゔ、、。それはクローディア殿に好みだと告白するようなものではないか、、。」
「まあ、そうです。二つ目は本当はクローディア様の事は気に入らないが、今の状況を改善する為に仕方なく婚約したと話すのです。これならば冷たくしても当然だと思われますよ。先程もそのようにクローディア様に話されていましたよね?」
「あ、あれは王族の婚姻における一般論で、、。でも、、今はまだ好きだと告白できる程クローディア殿の事をよく知らないし、突然好みだと言われても今までが今までだ。信じては貰えんだろう。」
ビクトル王子はハァとため息をついた。
「兎に角クローディア様は非常に素早く状況を判断して婚約を選択されました。何処まで読んだのかはわかりませんが、あの一択のみが正解だったのにもかかわらずです。それは尊敬に値しますよ。私はクローディア様をビクトル王子の伴侶として歓迎したいと思います。」
「アーベル、、、お前が先に落ちたのか、、、。」
ビクトル王子は信じられないと言う風にアーベルを見つめた。
「ははは、なのでサッサと告白でも何でもして、周りから逃げられないように固めてください。」
「いや、今告白したら逃げられるぞ。王族だから、物理的には逃げられないかもしれないが精神的に逃げられる。私は婚約者とは仲睦まじくなりたいのだ。」
「じゃあ、しょうがないじゃないですか?二つ目の案の現状改善の為仕方なく婚約したから優しくなど出来ないという線で行くしかないですよ。追々病気が改善されるか、ビクトル王子が告白しても逃げられないくらいにクローディア様と懇意になるまでの辛抱です!」
そうしてビクトル王子の方針は確定した。
本当は嫌だが仕方なく婚約した婚約者という設定となったのだった。
勿論、なるべく早く関係を改善して理想の婚約者になるのだ。
「何!!!婚約だと!!そんなこと許すはずもないだろう!!」
クローディアはローレンスの元を訪れてシダールからの提案だと伝えた。
三つの提案は言わずに、捕縛したことに対する要求という事にしていた。
何故ならこの案以外を選んではいけないような気がするのだ。
そして、この目の前の馬鹿コンビは選びそうなのだ。
(もしかして、本来はこういう外交のもつれから滅亡するのかしら?)
もし、そうならありえるなとクローディアは考えていた。
「兎に角ローレンス王の良し悪しでお断り出来ないものなのです。ご了承下さい。」
クローディアの冷めた言い方にローレンスは隣にいるカーティスを見た。するとカーティスがローレンスに耳打ちすると目を輝かせて頷いた。
「わかった。婚約を認めよう。但し、仮だ。王太子配となるのだ。ビクトル王子にはこのままこのアッカルドに滞在して貰って王太子配もしくは王配として相応しいかを判断させてもらう。そして、一年後に正式な婚約者として認めよう。」
「仮ですの?」
「ああ、そうだ。精々仲良くするのだな。仮とはいえ王太子の婚約者になるのだ。ビクトル王子の軟禁は終わりだ。許すわけではないが王太子の婚約者として恩赦を与える。いいな。」
クローディアはこれ以上の譲歩は難しいと判断して頷いた。
その顔を見てカーティスが内心ニタリと笑ったのだった。
(一年後に好きになった仮の婚約者と別れさせたら、、、クローディアはどんな顔で泣いてくれるのでしょう、、、。楽しみでたまりません。)
ゾクリ
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