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第2章 クローディアとサオリ
28、わたくし、奔走致しました
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「ねえ!!ローレンス王はバカなの?カーティスも実は大馬鹿なの!?」
クローディアは大国シダールの王子捕縛という失態に各所への指示に追われていた。やっと話すべき者達に説明を終えて廊下を足早に歩いていた。
あの二人はこのアッカルドの地理的な弱さや国力の違いを全く理解していないと思われた。確かに同じくらいの国力であれば王が王子しかも第三王子に強く出る事も可能だろう。
しかし、このアッカルドとシダールでは国力が違いすぎる。言うなればアッカルドの王はシダールの伯爵程度とみられてるはずだ。それは遠い追放先でも学ぶことが出来ていた。
それなのにあの二人、いやサオリも入れて三人はとんでも無い事をしてくれたのた。シダールの王子を捕らえるなど自殺行為に他ならない。
そして何より問題なのはそれが自殺行為だと気付いていない事だった。
「このまま滅亡コースなの?私が運命を変えたから時間軸もずれて二年滅亡が早まったのかしら?」
もしそうならば計画を早めなければ、、、。焦土になる前に救い出さねばならないし、、、。でも制裁リストも救済リストも未だに未完成なのだ。クローディアはふと立ち止まって天を見上げた。
「なんとかしなければ、、。」
天を睨んでから取り敢えず今の状況を確認するためにローレンスの元に急いでいた。
「ローレンス王!!」
クローディアがローレンスの執務室にノックもせずに入るとローレンスとカーティスはのんびりお茶を飲んでいた。
「なんだ?クローディア。サオリならば未だに目を覚まさん。全くあの王子は初めから気に食わなかったんだ。そうだ!クローディア!何故あいつを牢に入れなかったのだ!!」
ローレンスのあまりの的外れな言動にクローディアは呆れた。
「全く!貴方達は一体何を考えているのですか!!」
「何をだ?お前は王太子のままなのだ。不満はないだろうが!」
ローレンスがクローディアを見もせずに言い放つ。
「何を言っているのかわかっているのですか?他国のしかもシダールの王子を捕らえたのですよ!」
「それは仕方がない。私の妃が手を挙げられたのだ。」
「でも、サオリ王妃はその前から様子がおかしかったではないですか!!」
「お前までサオリをバカにするのか!!王太子が王、王妃に対する不敬罪の対象ならば捕らえている所だ!!出て行け!!」
興奮して叫ぶローレンスを無視してクローディアはカーティスを見た。
「カーティス、お前はどうなのです!!」
カーティスは立ち上がって一礼すると信じられないことを言い始めた。
「ローレンス王のいう通りでございます。いくらシダールの王子だとしても一国の王や王妃に対する態度ではありません。捕縛が妥当でございます。」
クローディアは信じられないという顔で二人の顔を見比べた。とても冗談を言うようにも見えないのだ。
(駄目だわ、、、。)
クローディアは何を言っても無駄という結論を出して二人に言い放つ。
「兎に角シダールの王子の処遇はわたくしが指揮を取ります。」
「な!!」
「法律でも不敬罪においては当事者は関わってはならないのです。当然ご存知だと思いますが?」
ローレンスはカーティスが憎々しげに頷くのを確認するとクローディアを見た。
「わ、わかっておる!処遇はお前に任せてやるが軟禁を解く事だけは認めん!わかったな!!」
そうしてクローディアは正式にこの件を任されることになったのだった。
クローディアは自分の執務室に戻るとバーナードに取り敢えず安全な食事をビクトル王子達に運ぶように指示を出した。
「あとはダルトリー子爵に頼むしかないわね。」
クローディアはバーナードにダルトリーを呼ぶように話すと先程のローレンス達とのやりとり思い出していた。
ローレンス達は本当にわからないのだろうか?ビクトル王子の一言でこの国は滅んでしまう。
井の中の蛙とはなんと憐れなのか、、。
クローディアは落胆のため息をついたのだった。
トントン
「誰ですの?」
「ダルトリーです。」
「入りなさい。」
クローディアは執務室に表れたダルトリーに頷いた。
「クローディア王太子殿下にご報告いたします。
セドア共和国のベルンハルト様、マキオラ王国のシャルロッテ様、お二人とも問題なく帰路に着きました。」
「そう、ありがとう。お二人はビクトル王子の事に気付いていて?」
「いえ、今のところは気付いていないと思われます。
お二人ともかなり早く会場を後にされておりますし、その後は外交部の者がお帰りの支度等お手伝いしておりますので間違い無いかと、、。」
「よかったわ。お二人とも悪い方ではないとは思うけれど、流石にシダールに喧嘩を売ったアッカルドを如何するのかはわからないもの。
シダールに恩を売るためにビクトル王子奪還と称して攻めてくる可能性も高いわ。今はシダール以外と事を構える事は愚策だわ。」
「はい。その通りでございます。」
「ところがダルトリー子爵はビクトル王子と懇意にしていたのわね?」
「はい、彼の地に赴任していた時はかなりよくしていただきました。」
「では、ビクトル王子達への配慮をお願いするわ。お好きなものなど届けて差し上げて頂戴。お話相手をしてもいいわ。」
「はっ!承知しました。」
「兎に角、今はシダールの機嫌を損ねるわけにはいかないわ。わたくしはローレンス王に軟禁を解くように働きかけるからそれまでは快適にお部屋で過ごして頂けるようにして頂戴。」
そうして決まった内容を確認するとダルトリーは部屋を出て行った。
その後ろ姿を見送るとクローディアは天井を睨みつけてからその腕で瞳を覆った。
折角王太子の地位が正式に認められたのに何もしないうちに滅亡の危機だ。
クローディアは今こそファティマに未来を教えて欲しいと思ったのだった。
クローディアは大国シダールの王子捕縛という失態に各所への指示に追われていた。やっと話すべき者達に説明を終えて廊下を足早に歩いていた。
あの二人はこのアッカルドの地理的な弱さや国力の違いを全く理解していないと思われた。確かに同じくらいの国力であれば王が王子しかも第三王子に強く出る事も可能だろう。
しかし、このアッカルドとシダールでは国力が違いすぎる。言うなればアッカルドの王はシダールの伯爵程度とみられてるはずだ。それは遠い追放先でも学ぶことが出来ていた。
それなのにあの二人、いやサオリも入れて三人はとんでも無い事をしてくれたのた。シダールの王子を捕らえるなど自殺行為に他ならない。
そして何より問題なのはそれが自殺行為だと気付いていない事だった。
「このまま滅亡コースなの?私が運命を変えたから時間軸もずれて二年滅亡が早まったのかしら?」
もしそうならば計画を早めなければ、、、。焦土になる前に救い出さねばならないし、、、。でも制裁リストも救済リストも未だに未完成なのだ。クローディアはふと立ち止まって天を見上げた。
「なんとかしなければ、、。」
天を睨んでから取り敢えず今の状況を確認するためにローレンスの元に急いでいた。
「ローレンス王!!」
クローディアがローレンスの執務室にノックもせずに入るとローレンスとカーティスはのんびりお茶を飲んでいた。
「なんだ?クローディア。サオリならば未だに目を覚まさん。全くあの王子は初めから気に食わなかったんだ。そうだ!クローディア!何故あいつを牢に入れなかったのだ!!」
ローレンスのあまりの的外れな言動にクローディアは呆れた。
「全く!貴方達は一体何を考えているのですか!!」
「何をだ?お前は王太子のままなのだ。不満はないだろうが!」
ローレンスがクローディアを見もせずに言い放つ。
「何を言っているのかわかっているのですか?他国のしかもシダールの王子を捕らえたのですよ!」
「それは仕方がない。私の妃が手を挙げられたのだ。」
「でも、サオリ王妃はその前から様子がおかしかったではないですか!!」
「お前までサオリをバカにするのか!!王太子が王、王妃に対する不敬罪の対象ならば捕らえている所だ!!出て行け!!」
興奮して叫ぶローレンスを無視してクローディアはカーティスを見た。
「カーティス、お前はどうなのです!!」
カーティスは立ち上がって一礼すると信じられないことを言い始めた。
「ローレンス王のいう通りでございます。いくらシダールの王子だとしても一国の王や王妃に対する態度ではありません。捕縛が妥当でございます。」
クローディアは信じられないという顔で二人の顔を見比べた。とても冗談を言うようにも見えないのだ。
(駄目だわ、、、。)
クローディアは何を言っても無駄という結論を出して二人に言い放つ。
「兎に角シダールの王子の処遇はわたくしが指揮を取ります。」
「な!!」
「法律でも不敬罪においては当事者は関わってはならないのです。当然ご存知だと思いますが?」
ローレンスはカーティスが憎々しげに頷くのを確認するとクローディアを見た。
「わ、わかっておる!処遇はお前に任せてやるが軟禁を解く事だけは認めん!わかったな!!」
そうしてクローディアは正式にこの件を任されることになったのだった。
クローディアは自分の執務室に戻るとバーナードに取り敢えず安全な食事をビクトル王子達に運ぶように指示を出した。
「あとはダルトリー子爵に頼むしかないわね。」
クローディアはバーナードにダルトリーを呼ぶように話すと先程のローレンス達とのやりとり思い出していた。
ローレンス達は本当にわからないのだろうか?ビクトル王子の一言でこの国は滅んでしまう。
井の中の蛙とはなんと憐れなのか、、。
クローディアは落胆のため息をついたのだった。
トントン
「誰ですの?」
「ダルトリーです。」
「入りなさい。」
クローディアは執務室に表れたダルトリーに頷いた。
「クローディア王太子殿下にご報告いたします。
セドア共和国のベルンハルト様、マキオラ王国のシャルロッテ様、お二人とも問題なく帰路に着きました。」
「そう、ありがとう。お二人はビクトル王子の事に気付いていて?」
「いえ、今のところは気付いていないと思われます。
お二人ともかなり早く会場を後にされておりますし、その後は外交部の者がお帰りの支度等お手伝いしておりますので間違い無いかと、、。」
「よかったわ。お二人とも悪い方ではないとは思うけれど、流石にシダールに喧嘩を売ったアッカルドを如何するのかはわからないもの。
シダールに恩を売るためにビクトル王子奪還と称して攻めてくる可能性も高いわ。今はシダール以外と事を構える事は愚策だわ。」
「はい。その通りでございます。」
「ところがダルトリー子爵はビクトル王子と懇意にしていたのわね?」
「はい、彼の地に赴任していた時はかなりよくしていただきました。」
「では、ビクトル王子達への配慮をお願いするわ。お好きなものなど届けて差し上げて頂戴。お話相手をしてもいいわ。」
「はっ!承知しました。」
「兎に角、今はシダールの機嫌を損ねるわけにはいかないわ。わたくしはローレンス王に軟禁を解くように働きかけるからそれまでは快適にお部屋で過ごして頂けるようにして頂戴。」
そうして決まった内容を確認するとダルトリーは部屋を出て行った。
その後ろ姿を見送るとクローディアは天井を睨みつけてからその腕で瞳を覆った。
折角王太子の地位が正式に認められたのに何もしないうちに滅亡の危機だ。
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