21 / 71
第1章 悪役令嬢の帰還
21、わたくし、お姉様になりました
しおりを挟む
「貴女が王太子だなんてアッカルド王国も人材不足なのね。何だか哀れね。しかも追放されたのに王太子の地位が欲しくてノコノコと戻ったのですって?よく恥ずかしくないわね。」
翌日の審査員との交流会に出席したクローディアを待っていたのはビクトル王子以上にマイナス地点から始めなくてはならない事が判明したマキオラ王国のシャルロッテ王女だった。
「まぁまぁ、シャルロッテ王女、クローディア殿下も色々辛い事もあったんですからそこは理解してあげてもいいじゃあありませんか?」
穏やかな声で仲裁に入ったのはセドア共和国王太子ベルンハルトだった。
そして、このやり取りを聞いているのかいないのか挨拶さえせずに黙ったままのシダール王国のビクトル王子は優雅にソファに座っていた。
三人をサラリと見てからクローディアはこの人達のご機嫌取りは自分には難易度が高すぎると既に印象をよくする事自体無理だと匙を投げようとしていた。
「兎に角クローディア王太子殿下、こちらにどうぞ。」
ベルンハルトはシャルロッテを宥め、クローディアをソファセットに誘った。
「ベルンハルト殿下、ありがとうございます。ですがわたくし、あまり歓迎されていなようですわね。これで失礼いたしますわ。」
クローディアは無理なものは無理ねと退散しようと提案した。すると今まで黙っていたビクトル王子が立ち上がりクローディアを見下ろした。
「す、座ったら、、いいだろう!」
ビクトル王子が取り敢えず許可を出すとその隣でシャルロッテも仕方がなさそうに頷いた。
「ビクトル王子がいいなら、わたくしもいいわ。座ったらどう?」
クローディアらまさか引き止められるとは思っても見なかったのでその場で固まっているとベルンハルトがササっと寄ってきてスッと手を取るとあっという間にソファまでエスコートをしてしまった。クローディアは目の前のソファを見下ろしてため息をつくと諦めたように腰を下ろした。
「アッカルド王国王太子クローディアですわ。よろしくお願いします。」
マナーに乗っ取りホスト国のクローディアから挨拶を始めた。
「シダールのビ、ビクトルだ。」
不機嫌そうにビクトル王子が口を開くと後を取るようにベルンハルトが話し始める。
「セドア共和国王太子ベルンハルトです。クローディア殿下、初めまして。」
「マキオラ王国のシャルロッテですわ。ねぇ、貴女本当に平民にローレンス王を奪われたの?噂で聞いたのよ?」
シャルロッテは興味津々に聞いてきた。
クローディアはこの不躾なシャルロッテを不思議そうに見つめた。どうも悪気があるようには見えないのだ。本当にただ単に知りたいから聞きたいらしい。
(成る程、この子は悪い子ではなく、ただのお嬢様なのね。甘やかされて、人に気を使ってもらってるけれど使った事がないタイプなのだ。そう、かつてのわたくしと同じ、、、。)
クローディアは下を向いてニヤリと笑うと今度はこのシャルロッテに向かって優しくにっこりと笑った。
「シャルロッテ様は色々聞きたいのね?」
「ええ、そうなの。知りたい事は我慢できないわ!」
「わかったわ。でも、ほら男性がいると話難い内容だもの。よければ後程わたくしの部屋にいらっしゃいな?」
「ええ!宜しいの?」
「もちろんよ?美味しいお菓子とお茶を用意して待っているわ。女同士お喋りしましょうね。」
するとシャルロッテら目を輝かせて頷いた。クローディアにとってシャルロッテはかつての自分、取り込むのは造作もない事だった。
要は対等のお友達が欲しいのだ。
クローディアもかつては取り巻きばかりで友人がいなかった経験があるからよくわかる。
資料によるとこのシャルロッテは今二十三歳で我儘で自分勝手な為中々縁談も決まらず少し周りから煙たがれているのだ。その為このすこし面倒な王太子お披露目パーティーへ出席させられた。
初めは既にマチルダとリカルドの味方になった様な発言だったから無理かと思ったが、あれは多分素直な感想なのだ。
(そうと分かればシャルロッテ様を取り込むのは本当に簡単ね。対等以上のお姉様になればいい。)
先ずは一人とクローディアはにっこりと笑った。
「じゃあ、クローディア様は嵌められてしまったの?!」
クローディアは出来るだけ真実をシャルロッテに話して聞かせた。自分もそうだったが、意外にお嬢様は嘘を見抜くのが上手かったりする。
(わたくしにとってはサオリは明らかに嘘つきだったから、ローレンスがそんな幼稚な嘘に騙されるはずがないと思ってしまったのよね。あの頃はローレンスやカーティスが自分よりも頭が良いと思っていたなんて本当にバカみたいね。)
クローディアは交流会の後シャルロッテとテラスでお茶を楽しんでいた。
今日の交流会はシャルロッテに纏わり付かれてベルンハルト王太子やビクトル王子とは話す機会がないまま時間になったのだ。クローディアは今日の所はシャルロッテを攻略する事に集中する事にした。
「それで?どうして追放なんて事になったのかしら?」
シャルロッテはまるで物語の主人公を見るようにクローディアを見つめている。
その瞳には尊敬と憧れが透けて見える。
シャルロッテにとってクローディアは只の王太子候補から波乱万丈な人生を歩んだ経験豊かな女性に変化したようだ。
「それはね。運命は変わらないと思ったからよ。」
「運命?」
「ええ、そうよ。でも追放されて、わたくしは運命に逆らう事を学んだのよ。だから、追放後は知識を身につけて爪を研いで待っていたの。」
「何をですの?」
「それは復讐のチャンスをよ?」
「復讐!!!!」
「しーっ。これはシャルロッテ様だけに教えてあげるわ。わたくし、この国には復讐の為に戻りましたの。」
クローディアがさも秘密を打ち明けるかのように小声で話すとシャルロッテは熱心に頷いて両手を胸の前に組んだ。
「凄いですわ。女性で王太子というので身の程知らずの方だも思いました。それが、、クローディア様のような志のある方だなんて!!かっこいいですわ!わたくし、クローディア様を応援させていただきますわ。何かわたくしに出来ることはございまして?」
クローディアはシャルロッテに向かって婉然と微笑んだ。
「そうね。わたくしの事はお姉様と呼んで貰えると嬉しいわ。わたくしも妹が出来たと思うともっと頑張れると思うわ!!」
シャルロッテの瞳が一層輝きクローディアの手を掴む。
「お、お姉様!!わたくし嬉しいですわ!!!」
「わたくしもよ?可愛いお方。」
こうしてシャルロッテはクローディアに落ちたのだった。
翌日の審査員との交流会に出席したクローディアを待っていたのはビクトル王子以上にマイナス地点から始めなくてはならない事が判明したマキオラ王国のシャルロッテ王女だった。
「まぁまぁ、シャルロッテ王女、クローディア殿下も色々辛い事もあったんですからそこは理解してあげてもいいじゃあありませんか?」
穏やかな声で仲裁に入ったのはセドア共和国王太子ベルンハルトだった。
そして、このやり取りを聞いているのかいないのか挨拶さえせずに黙ったままのシダール王国のビクトル王子は優雅にソファに座っていた。
三人をサラリと見てからクローディアはこの人達のご機嫌取りは自分には難易度が高すぎると既に印象をよくする事自体無理だと匙を投げようとしていた。
「兎に角クローディア王太子殿下、こちらにどうぞ。」
ベルンハルトはシャルロッテを宥め、クローディアをソファセットに誘った。
「ベルンハルト殿下、ありがとうございます。ですがわたくし、あまり歓迎されていなようですわね。これで失礼いたしますわ。」
クローディアは無理なものは無理ねと退散しようと提案した。すると今まで黙っていたビクトル王子が立ち上がりクローディアを見下ろした。
「す、座ったら、、いいだろう!」
ビクトル王子が取り敢えず許可を出すとその隣でシャルロッテも仕方がなさそうに頷いた。
「ビクトル王子がいいなら、わたくしもいいわ。座ったらどう?」
クローディアらまさか引き止められるとは思っても見なかったのでその場で固まっているとベルンハルトがササっと寄ってきてスッと手を取るとあっという間にソファまでエスコートをしてしまった。クローディアは目の前のソファを見下ろしてため息をつくと諦めたように腰を下ろした。
「アッカルド王国王太子クローディアですわ。よろしくお願いします。」
マナーに乗っ取りホスト国のクローディアから挨拶を始めた。
「シダールのビ、ビクトルだ。」
不機嫌そうにビクトル王子が口を開くと後を取るようにベルンハルトが話し始める。
「セドア共和国王太子ベルンハルトです。クローディア殿下、初めまして。」
「マキオラ王国のシャルロッテですわ。ねぇ、貴女本当に平民にローレンス王を奪われたの?噂で聞いたのよ?」
シャルロッテは興味津々に聞いてきた。
クローディアはこの不躾なシャルロッテを不思議そうに見つめた。どうも悪気があるようには見えないのだ。本当にただ単に知りたいから聞きたいらしい。
(成る程、この子は悪い子ではなく、ただのお嬢様なのね。甘やかされて、人に気を使ってもらってるけれど使った事がないタイプなのだ。そう、かつてのわたくしと同じ、、、。)
クローディアは下を向いてニヤリと笑うと今度はこのシャルロッテに向かって優しくにっこりと笑った。
「シャルロッテ様は色々聞きたいのね?」
「ええ、そうなの。知りたい事は我慢できないわ!」
「わかったわ。でも、ほら男性がいると話難い内容だもの。よければ後程わたくしの部屋にいらっしゃいな?」
「ええ!宜しいの?」
「もちろんよ?美味しいお菓子とお茶を用意して待っているわ。女同士お喋りしましょうね。」
するとシャルロッテら目を輝かせて頷いた。クローディアにとってシャルロッテはかつての自分、取り込むのは造作もない事だった。
要は対等のお友達が欲しいのだ。
クローディアもかつては取り巻きばかりで友人がいなかった経験があるからよくわかる。
資料によるとこのシャルロッテは今二十三歳で我儘で自分勝手な為中々縁談も決まらず少し周りから煙たがれているのだ。その為このすこし面倒な王太子お披露目パーティーへ出席させられた。
初めは既にマチルダとリカルドの味方になった様な発言だったから無理かと思ったが、あれは多分素直な感想なのだ。
(そうと分かればシャルロッテ様を取り込むのは本当に簡単ね。対等以上のお姉様になればいい。)
先ずは一人とクローディアはにっこりと笑った。
「じゃあ、クローディア様は嵌められてしまったの?!」
クローディアは出来るだけ真実をシャルロッテに話して聞かせた。自分もそうだったが、意外にお嬢様は嘘を見抜くのが上手かったりする。
(わたくしにとってはサオリは明らかに嘘つきだったから、ローレンスがそんな幼稚な嘘に騙されるはずがないと思ってしまったのよね。あの頃はローレンスやカーティスが自分よりも頭が良いと思っていたなんて本当にバカみたいね。)
クローディアは交流会の後シャルロッテとテラスでお茶を楽しんでいた。
今日の交流会はシャルロッテに纏わり付かれてベルンハルト王太子やビクトル王子とは話す機会がないまま時間になったのだ。クローディアは今日の所はシャルロッテを攻略する事に集中する事にした。
「それで?どうして追放なんて事になったのかしら?」
シャルロッテはまるで物語の主人公を見るようにクローディアを見つめている。
その瞳には尊敬と憧れが透けて見える。
シャルロッテにとってクローディアは只の王太子候補から波乱万丈な人生を歩んだ経験豊かな女性に変化したようだ。
「それはね。運命は変わらないと思ったからよ。」
「運命?」
「ええ、そうよ。でも追放されて、わたくしは運命に逆らう事を学んだのよ。だから、追放後は知識を身につけて爪を研いで待っていたの。」
「何をですの?」
「それは復讐のチャンスをよ?」
「復讐!!!!」
「しーっ。これはシャルロッテ様だけに教えてあげるわ。わたくし、この国には復讐の為に戻りましたの。」
クローディアがさも秘密を打ち明けるかのように小声で話すとシャルロッテは熱心に頷いて両手を胸の前に組んだ。
「凄いですわ。女性で王太子というので身の程知らずの方だも思いました。それが、、クローディア様のような志のある方だなんて!!かっこいいですわ!わたくし、クローディア様を応援させていただきますわ。何かわたくしに出来ることはございまして?」
クローディアはシャルロッテに向かって婉然と微笑んだ。
「そうね。わたくしの事はお姉様と呼んで貰えると嬉しいわ。わたくしも妹が出来たと思うともっと頑張れると思うわ!!」
シャルロッテの瞳が一層輝きクローディアの手を掴む。
「お、お姉様!!わたくし嬉しいですわ!!!」
「わたくしもよ?可愛いお方。」
こうしてシャルロッテはクローディアに落ちたのだった。
11
お気に入りに追加
2,424
あなたにおすすめの小説
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
異世界召喚された俺は余分な子でした
KeyBow
ファンタジー
異世界召喚を行うも本来の人数よりも1人多かった。召喚時にエラーが発生し余分な1人とは召喚に巻き込まれたおっさんだ。そして何故か若返った!また、理由が分からぬまま冤罪で捕らえられ、余分な異分子として処刑の為に危険な場所への放逐を実行される。果たしてその流刑された所から生きて出られるか?己の身に起こったエラーに苦しむ事になる。
サブタイトル
〜異世界召喚されたおっさんにはエラーがあり処刑の為放逐された!しかし真の勇者だった〜
完結 喪失の花嫁 見知らぬ家族に囲まれて
音爽(ネソウ)
恋愛
ある日、目を覚ますと見知らぬ部屋にいて見覚えがない家族がいた。彼らは「貴女は記憶を失った」と言う。
しかし、本人はしっかり己の事を把握していたし本当の家族のことも覚えていた。
一体どういうことかと彼女は震える……
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····
藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」
……これは一体、どういう事でしょう?
いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。
ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した……
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全6話で完結になります。
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる