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第1章 悪役令嬢の帰還

21、わたくし、お姉様になりました

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「貴女が王太子だなんてアッカルド王国も人材不足なのね。何だか哀れね。しかも追放されたのに王太子の地位が欲しくてノコノコと戻ったのですって?よく恥ずかしくないわね。」

翌日の審査員との交流会に出席したクローディアを待っていたのはビクトル王子以上にマイナス地点から始めなくてはならない事が判明したマキオラ王国のシャルロッテ王女だった。

「まぁまぁ、シャルロッテ王女、クローディア殿下も色々辛い事もあったんですからそこは理解してあげてもいいじゃあありませんか?」

穏やかな声で仲裁に入ったのはセドア共和国王太子ベルンハルトだった。
そして、このやり取りを聞いているのかいないのか挨拶さえせずに黙ったままのシダール王国のビクトル王子は優雅にソファに座っていた。
三人をサラリと見てからクローディアはこの人達のご機嫌取りは自分には難易度が高すぎると既に印象をよくする事自体無理だと匙を投げようとしていた。

「兎に角クローディア王太子殿下、こちらにどうぞ。」

ベルンハルトはシャルロッテを宥め、クローディアをソファセットに誘った。

「ベルンハルト殿下、ありがとうございます。ですがわたくし、あまり歓迎されていなようですわね。これで失礼いたしますわ。」

クローディアは無理なものは無理ねと退散しようと提案した。すると今まで黙っていたビクトル王子が立ち上がりクローディアを見下ろした。

「す、座ったら、、いいだろう!」

ビクトル王子が取り敢えず許可を出すとその隣でシャルロッテも仕方がなさそうに頷いた。

「ビクトル王子がいいなら、わたくしもいいわ。座ったらどう?」

クローディアらまさか引き止められるとは思っても見なかったのでその場で固まっているとベルンハルトがササっと寄ってきてスッと手を取るとあっという間にソファまでエスコートをしてしまった。クローディアは目の前のソファを見下ろしてため息をつくと諦めたように腰を下ろした。

「アッカルド王国王太子クローディアですわ。よろしくお願いします。」

マナーに乗っ取りホスト国のクローディアから挨拶を始めた。

「シダールのビ、ビクトルだ。」

不機嫌そうにビクトル王子が口を開くと後を取るようにベルンハルトが話し始める。

「セドア共和国王太子ベルンハルトです。クローディア殿下、初めまして。」

「マキオラ王国のシャルロッテですわ。ねぇ、貴女本当に平民にローレンス王を奪われたの?噂で聞いたのよ?」

シャルロッテは興味津々に聞いてきた。
クローディアはこの不躾なシャルロッテを不思議そうに見つめた。どうも悪気があるようには見えないのだ。本当にただ単に知りたいから聞きたいらしい。

(成る程、この子は悪い子ではなく、ただのお嬢様なのね。甘やかされて、人に気を使ってもらってるけれど使った事がないタイプなのだ。そう、かつてのわたくしと同じ、、、。)

クローディアは下を向いてニヤリと笑うと今度はこのシャルロッテに向かって優しくにっこりと笑った。

「シャルロッテ様は色々聞きたいのね?」

「ええ、そうなの。知りたい事は我慢できないわ!」

「わかったわ。でも、ほら男性がいると話難い内容だもの。よければ後程わたくしの部屋にいらっしゃいな?」

「ええ!宜しいの?」

「もちろんよ?美味しいお菓子とお茶を用意して待っているわ。女同士お喋りしましょうね。」

するとシャルロッテら目を輝かせて頷いた。クローディアにとってシャルロッテはかつての自分、取り込むのは造作もない事だった。
要は対等のお友達が欲しいのだ。
クローディアもかつては取り巻きばかりで友人がいなかった経験があるからよくわかる。
資料によるとこのシャルロッテは今二十三歳で我儘で自分勝手な為中々縁談も決まらず少し周りから煙たがれているのだ。その為このすこし面倒な王太子お披露目パーティーへ出席させられた。
初めは既にマチルダとリカルドの味方になった様な発言だったから無理かと思ったが、あれは多分素直な感想なのだ。

(そうと分かればシャルロッテ様を取り込むのは本当に簡単ね。のお姉様になればいい。)

先ずは一人とクローディアはにっこりと笑った。



「じゃあ、クローディア様は嵌められてしまったの?!」

クローディアは出来るだけ真実をシャルロッテに話して聞かせた。自分もそうだったが、意外にお嬢様は嘘を見抜くのが上手かったりする。

(わたくしにとってはサオリは明らかに嘘つきだったから、ローレンスがそんな幼稚な嘘に騙されるはずがないと思ってしまったのよね。あの頃はローレンスやカーティスが自分よりも頭が良いと思っていたなんて本当にバカみたいね。)

クローディアは交流会の後シャルロッテとテラスでお茶を楽しんでいた。
今日の交流会はシャルロッテに纏わり付かれてベルンハルト王太子やビクトル王子とは話す機会がないまま時間になったのだ。クローディアは今日の所はシャルロッテを攻略する事に集中する事にした。

「それで?どうして追放なんて事になったのかしら?」

シャルロッテはまるで物語の主人公を見るようにクローディアを見つめている。
その瞳には尊敬と憧れが透けて見える。
シャルロッテにとってクローディアは只の王太子候補から波乱万丈な人生を歩んだ経験豊かな女性に変化したようだ。

「それはね。運命は変わらないと思ったからよ。」

「運命?」

「ええ、そうよ。でも追放されて、わたくしは運命に逆らう事を学んだのよ。だから、追放後は知識を身につけて爪を研いで待っていたの。」

「何をですの?」

「それは復讐のチャンスをよ?」

「復讐!!!!」

「しーっ。これはシャルロッテ様だけに教えてあげるわ。わたくし、この国には復讐の為に戻りましたの。」

クローディアがさも秘密を打ち明けるかのように小声で話すとシャルロッテは熱心に頷いて両手を胸の前に組んだ。

「凄いですわ。女性で王太子というので身の程知らずの方だも思いました。それが、、クローディア様のような志のある方だなんて!!かっこいいですわ!わたくし、クローディア様を応援させていただきますわ。何かわたくしに出来ることはございまして?」

クローディアはシャルロッテに向かって婉然と微笑んだ。

「そうね。わたくしの事はお姉様と呼んで貰えると嬉しいわ。わたくしも妹が出来たと思うともっと頑張れると思うわ!!」

シャルロッテの瞳が一層輝きクローディアの手を掴む。

「お、お姉様!!わたくし嬉しいですわ!!!」

「わたくしもよ?可愛いお方。」

こうしてシャルロッテはクローディアに落ちたのだった。

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