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第1章 悪役令嬢の帰還
16、カーティスの反撃
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「カーティス!」
ローレンスがバタバタと戻って来たのを見て謁見の準備をしていたカーティスが不思議そうに確認した。
「ローレンス王!ビクトル王子はどうしたんですか?」
「それがな、クローディアに挨拶があると行ってしまったのだ。」
「え?!それを引き止めて連れてくる計画だったはずだか?」
「わかっている!わかってはいるが、、、口を挟めなかったのだからしょうがないだろう?」
「ビクトル王子とローレンス王は歳だって二、三歳しか変わらないんですよ。しかも、貴方は王であちらは第三王子です。何を気にしているんですか?」
「いや、だから、その様に出迎えたのだが、、、、。」
「明日の作戦にはどうしても前もってあの三人に話を通す事が必要なんです。セドア共和国とマキオラ王国の二人には既に話して了承してもらっているですから後はシダール王国だけなんです。」
「ああ、わかってはいるのだが、、すまない。」
カーティスは準備の手を止めて、ハーッと肩を落とすとローレンスの肩をポンと叩いた。
「わかりました。私が行ってお連れします。ローレンスはここで待っていてください。」
「ああ!」
カーティスはしょうがないとやはりローレンスには自分がいないとダメなのだと頷くと部屋を出てクローディア主催の茶会会場に向かった。
「ビクトル王子、ご歓談中失礼します。ローレンス王が是非お話させて頂きたいと仰っております。こちらにお越しください。」
ビクトル王子は突然直接話しかけて来た男を胡乱げに眺めた。男の後ろではアーベルとダルトリーが顔色を悪くして立っていた。ビクトル王子はこの失礼な男が何者なのかと誰何しようとした時にその様子を見ていたクローディアが少し離れた席から立ち上がって近づいてきた。
「カーティス、失礼ですよ。こちらはシダール王国のビクトル王子です。礼を尽くしなさい。」
毅然とした声と態度にビクトル王子は感心してクローディアを見つめてから、このカーティスと呼ばれた男を見た。そして、その時この男の瞳に危険な影がさすのを見逃さなかった。そして、それがクローディアに向かっているのをしっかりと確認した。
(この男は危険だ。)
ビクトル王子はアーベルに目配せするとアーベルも直ぐに頷いてこの男についてを調べるよう数人に指示を出しているのを確認すると、更に言い募りそうなクローディアを制して立ち上がった。
「ク、ク、クローディア王太子、結構です。どうも彼は私に用がある様です。ここで失礼します。」
ビクトル王子は顔を下に向けたまま早口で答えるとクローディアから離れるように立ち上がった。その様子を見てカーティスは満足そうに頷いた。カーティスから見てクローディアは確実にビクトル王子から嫌われているように感じたのだ。
ビクトル王子は、そのままカーティスについて部屋を出て行った。
「やはり、わたくしはビクトル王子に嫌われているのかもしれないわね。」
クローディアはそう呟くとそのままバーナードとダルトリーを呼んでローレンス達が何かしてないか調べる様に指示を出したのだった。
「えっと君は、、?」
カーティスはビクトル王子の呟きに足を止めて振り返ると優雅な礼をとった。
「これは大変失礼致しました。私はローレンス王の補佐をしております。カーティスと申します。」
「カーティス、、ね。」
ビクトル王子はこの怪しい男の名前を頭に刻み込んだ。今はすっかり消えているがさっきクローディアに見せたあの瞳と気配は尋常ではなかった。カーティスはビクトル王子の要注意リストに載ったのだった。
「ところでローレンス王の用事はなんなんだ?」
「それは、王から直接お話しさせて頂きます。」
それだけ言うとカーティスはまた向きを変えてスタスタと歩き出した。
ビクトル王子とアーベルは顔を見合わせて肩をすくめるとその後を追ったのだった。
「王太子選抜審査?」
ビクトル王子は目の前に座るローレンス王の言葉を復唱した。
「ああ、そうなのだ。我が国の法律の特記事項として王太子に代わる人材が王位継承順位第三位までにいる場合かつアッカルド王国内と利害関係のない他国の王族が三人以上いる場合にのみ審査による王太子の交代が認められるのだ。なぁカーティス?」
ローレンスに確認されたカーティスが付け加えた。
「はい。その通りです。中々この三ヶ国の王族の方を集める事が現実的ではなく、今までの我が国の歴史上忘れ去られた様な法律ですが未だに効力はあるのです。」
「成る程、それで私はその三人の中に選ばれたというわけなのか?」
ビクトル王子が頷き、ローレンスに確認をとった。
「ああ、やはりシダール王国は外せないからな。この大陸一の大国だ。どうだ?やってはくれまいか?」
ローレンスが身を乗り出す様にビクトル王子に畳み掛ける。
「そうだなぁ。では一つ確認なのですが選抜審査されるのはクローディア王太子とどなたですか?」
「リカルドだ!私の従兄弟で現在王位継承権第三位となっておる。」
「ふむ、そのリカルド殿はおいくつですか?」
「確か今年十三になる。」
ビクトル王子は少し考えるとローレンスに向かって頷いた。
「まぁ、いいでしょう。その王太子選抜審査とやらに参加しますよ。」
「本当か!?」
「ええ、私の目でしっかり判断させて頂きます。」
「いやぁ。よかった。ありがとう!!ビクトル王子!!」
そう言って手を差し出してきたローレンスの事が見えなかったかの様にスルーして立ち上がると失礼と言ってビクトル王子は退出していった。
「ふん!何となく気にくわない奴だ。」
ローレンスは差し出した手を戻して不満そうな表情でドアの方を見たのだった。
ローレンスがバタバタと戻って来たのを見て謁見の準備をしていたカーティスが不思議そうに確認した。
「ローレンス王!ビクトル王子はどうしたんですか?」
「それがな、クローディアに挨拶があると行ってしまったのだ。」
「え?!それを引き止めて連れてくる計画だったはずだか?」
「わかっている!わかってはいるが、、、口を挟めなかったのだからしょうがないだろう?」
「ビクトル王子とローレンス王は歳だって二、三歳しか変わらないんですよ。しかも、貴方は王であちらは第三王子です。何を気にしているんですか?」
「いや、だから、その様に出迎えたのだが、、、、。」
「明日の作戦にはどうしても前もってあの三人に話を通す事が必要なんです。セドア共和国とマキオラ王国の二人には既に話して了承してもらっているですから後はシダール王国だけなんです。」
「ああ、わかってはいるのだが、、すまない。」
カーティスは準備の手を止めて、ハーッと肩を落とすとローレンスの肩をポンと叩いた。
「わかりました。私が行ってお連れします。ローレンスはここで待っていてください。」
「ああ!」
カーティスはしょうがないとやはりローレンスには自分がいないとダメなのだと頷くと部屋を出てクローディア主催の茶会会場に向かった。
「ビクトル王子、ご歓談中失礼します。ローレンス王が是非お話させて頂きたいと仰っております。こちらにお越しください。」
ビクトル王子は突然直接話しかけて来た男を胡乱げに眺めた。男の後ろではアーベルとダルトリーが顔色を悪くして立っていた。ビクトル王子はこの失礼な男が何者なのかと誰何しようとした時にその様子を見ていたクローディアが少し離れた席から立ち上がって近づいてきた。
「カーティス、失礼ですよ。こちらはシダール王国のビクトル王子です。礼を尽くしなさい。」
毅然とした声と態度にビクトル王子は感心してクローディアを見つめてから、このカーティスと呼ばれた男を見た。そして、その時この男の瞳に危険な影がさすのを見逃さなかった。そして、それがクローディアに向かっているのをしっかりと確認した。
(この男は危険だ。)
ビクトル王子はアーベルに目配せするとアーベルも直ぐに頷いてこの男についてを調べるよう数人に指示を出しているのを確認すると、更に言い募りそうなクローディアを制して立ち上がった。
「ク、ク、クローディア王太子、結構です。どうも彼は私に用がある様です。ここで失礼します。」
ビクトル王子は顔を下に向けたまま早口で答えるとクローディアから離れるように立ち上がった。その様子を見てカーティスは満足そうに頷いた。カーティスから見てクローディアは確実にビクトル王子から嫌われているように感じたのだ。
ビクトル王子は、そのままカーティスについて部屋を出て行った。
「やはり、わたくしはビクトル王子に嫌われているのかもしれないわね。」
クローディアはそう呟くとそのままバーナードとダルトリーを呼んでローレンス達が何かしてないか調べる様に指示を出したのだった。
「えっと君は、、?」
カーティスはビクトル王子の呟きに足を止めて振り返ると優雅な礼をとった。
「これは大変失礼致しました。私はローレンス王の補佐をしております。カーティスと申します。」
「カーティス、、ね。」
ビクトル王子はこの怪しい男の名前を頭に刻み込んだ。今はすっかり消えているがさっきクローディアに見せたあの瞳と気配は尋常ではなかった。カーティスはビクトル王子の要注意リストに載ったのだった。
「ところでローレンス王の用事はなんなんだ?」
「それは、王から直接お話しさせて頂きます。」
それだけ言うとカーティスはまた向きを変えてスタスタと歩き出した。
ビクトル王子とアーベルは顔を見合わせて肩をすくめるとその後を追ったのだった。
「王太子選抜審査?」
ビクトル王子は目の前に座るローレンス王の言葉を復唱した。
「ああ、そうなのだ。我が国の法律の特記事項として王太子に代わる人材が王位継承順位第三位までにいる場合かつアッカルド王国内と利害関係のない他国の王族が三人以上いる場合にのみ審査による王太子の交代が認められるのだ。なぁカーティス?」
ローレンスに確認されたカーティスが付け加えた。
「はい。その通りです。中々この三ヶ国の王族の方を集める事が現実的ではなく、今までの我が国の歴史上忘れ去られた様な法律ですが未だに効力はあるのです。」
「成る程、それで私はその三人の中に選ばれたというわけなのか?」
ビクトル王子が頷き、ローレンスに確認をとった。
「ああ、やはりシダール王国は外せないからな。この大陸一の大国だ。どうだ?やってはくれまいか?」
ローレンスが身を乗り出す様にビクトル王子に畳み掛ける。
「そうだなぁ。では一つ確認なのですが選抜審査されるのはクローディア王太子とどなたですか?」
「リカルドだ!私の従兄弟で現在王位継承権第三位となっておる。」
「ふむ、そのリカルド殿はおいくつですか?」
「確か今年十三になる。」
ビクトル王子は少し考えるとローレンスに向かって頷いた。
「まぁ、いいでしょう。その王太子選抜審査とやらに参加しますよ。」
「本当か!?」
「ええ、私の目でしっかり判断させて頂きます。」
「いやぁ。よかった。ありがとう!!ビクトル王子!!」
そう言って手を差し出してきたローレンスの事が見えなかったかの様にスルーして立ち上がると失礼と言ってビクトル王子は退出していった。
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