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1章 王
16話 新設
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地下道に搬入される妙にセンスのいい家具や装飾品の類いを、遠目でぼんやりと眺める。アジトは完成間近のようで人の出入りが激しい。明るくなってから詳細に調査したところ、カルディアの屋敷からかなり近い位置に作られたらしい。
しかしそこで一つの疑問が生まれる。なぜこの時期にこんな場所に?
というのも、実はもう明日が候補者討論会本番なのだ。討論会を終えると一週間後には投票である。密会なら例の選対本部でやればいいし、思えばなぜこの時期に新しくアジトを作り始めたのだろうか。そして、場所。こんなカルディアの屋敷の近くに作る意味は何なのだろうか。投票日が近いから手荒な真似はしないだろうとテリエルは推測していたが、ここから屋敷まで走って十五分程度。カルディア陣営にちょっかいでも出すつもりなんじゃないかと疑いたくなる立地である。
が、これもテリエルが言っていたことだが、何かをされたわけでもないのにアジトを攻撃しようものならこちらが悪者である。というわけで、こうしてこっそり監視を続けるしかない。
だがそんな日々ももう終わりだ。さっきも言った通り、明日は候補者討論会なのだから。今まで俺とカルディアとテリエルが交代で24時間警戒していたが、特に変わったことは起きなかった。魔蛇教の工員達が出入りしたという、ただそれだけのことである。幹部やエフスロスは姿を現さなかった。
さて、時間だ。ここで監視をテリエルに交代して、彼女が8時間監視すればもうこの業務も終わる。今晩には屋敷を出て討論会が開催される王都へ向かわねばならない。
「――!?」
戻ろうかと立ち上がった瞬間、見覚えのある仕立てのよい服が風に靡く姿を視界に捉えた。完成間近のアジトに姿を現したのはエフスロス。カルディアの対立候補で、絶対に破らなければならない相手だ。
配下を連れて馬から下りると、なにやら工員から説明を受けているようだった。
この距離じゃ聞こえん。仕方ないので草むらを移動し、丸太などの資材が置いてある陰に隠れるとやっと聞こえるようになった。
「エフスロス様、ようこそいらっしゃいました。新アジトは間もなく完成です」
恭しく工員が述べると、それに便乗する形で配下が言う。
「どうでしょうエフスロス様、今夜は街の店に出前させてここでパーティーでも、」
「馬鹿、そんなことしてる暇はない。明日が何の日かわかっているのか」
「そ、そうでございました。討論会でございました」
「全く……討論前夜は一人にしてくれと言ったろ」
「仰せの通りに、エフスロス様」
そこで工員が口を挟んだ。
「しかしエフスロス様、せっかくいらしたんですから見ていってくださいませんか。さすれば、建設に参加した者らも喜びます」
「別にこのまま帰るとは言ってない。ねぎらいの言葉くらいはかけてやってもいい」
そう言うと地下へと姿を消した。
ふーむ、特にこの会話から得るものは無かったな。肝心の、この時期ここにアジトを作って目的には全く触れなかったし……
おや? 今度は向こうから馬車がやってくるが、重厚な作りで中に誰が乗っているのかわからないようカーテンが降ろされている。もしや……
「ここが新アジトか」
「前のが潰されたときはどうなるかと思ったが、案外早く再建できるものだな」
「エフスロスも来ているらしい、早く入ろう」
いつぞや見た魔蛇教幹部三人衆だった。
幹部三人とエフスロス。集まって重大な話をしないわけがない。仕方あるまい、ギリギリの綱渡りだが、やるしかない。
土魔法でちょっと離れた地点から穴を掘り進める。そしてアジトの近くまで行き盗聴する作戦だ。以前は成功したが、今回はこの辺りを色々掘っていたようなので変なところに辿り着いて地盤沈下したりしたら大変だ。
しかし焦らず落ち着いて削り進めると、やがて彼らの声が聞こえるところまで来た。再び土魔法で来た道を埋めバレないようにした後は、火魔法で暗い穴を照らし耳に意識を集中させる。
「よう、エフスロス」
「こ、これはこれは幹部殿。どうされました」
「見に来たんだよ。もう完成だな」
「はい、あとは内装だけで、」
「んなもんはどうでもいい。このアジトをなぜ作らせたか考えろ」
「はっ、もし選挙に……に……ためです」
何だ? よく聞こえない。もっと耳を凝らして……
「その通りだ。家具だの食器だの色気づくな」
「わかりました。家具の搬入を取りやめ、武器の運び込みを優先します」
ぶ、武器!? 武器って何だよ?
「それと……いよいよ明日だな、討論会」
「はい、準備は万端でございます」
「油断するなよ。それまで支持率で優位に立ってたとしても、討論会を機に潮目が変わって破れた奴なんざいくらでもいる」
「もちろん存じています。抜かりはありません」
「ふ……もし負けたら、……を……して、そのあと……も……だからな」
「も、も、もちろんわかってます。負けるはずがありません! お任せください!」
聞き取れなかったが、幹部の一人が何かを述べた瞬間エフスロスの声色が焦りに変わった。
「じゃあ、楽しみにしてるぞ。お前とカルディアの討論」
そうとだけ言い残すと、そそくさと出て行ってしまった幹部三人。取り残されたエフスロスに、配下がこんなことを言っているようだった。
「エフスロス様、大丈夫ですか? 何か息が切れているような……」
「なんでもない、気にするな。さて戻るぞ。今から選対本部に戻らないと、明朝までに都入りできないからな」
そう言って、二人もまた地上へと戻った。
そうだ、俺もそろそろ戻らないと。
「何してるの」
「うわっ!」
突如として耳元に可愛くも無機質な声が入ってきたので驚く。すぐ隣にテリエルがいた。
「いや、さっき魔蛇教の幹部が来てさ、エフスロスと話してたから盗聴しようと」
「そう。何か重要な話はしてた?」
「いや、特には……ただ、ところどころ聞きづらい場面があったからな」
「カズマサ、掘削が雑。もっと丁寧に掘ればもっと接近して聞けたのに」
「そんな器用じゃないんだよ」
そんな会話をしつつ交代する。
「残りはわたしが見張っておく。カズマサは屋敷に帰って、カルディア様と出発の準備を」
「ああ、わかってる。それと――」
「?」
「絶対カルディアを王にしような」
こくりと彼女は銀髪を揺らす。目には決意が宿っていた。
「カズマサ、ちょっとこっちへ来なさいな」
屋敷に帰るや否や、カルディアに呼び止められる。案内されるがまま階段を上り廊下を進むと、一つの角部屋の前に辿り着いた。
「前までテリエルの部屋で暮らしてたそうだけど、今日からあなたの部屋はここよ」
中は、ベッドと机との最低限しかない殺風景な部屋だった。
「本当なら南から輸入した高級家具を揃えたいんだけどね。今はばたついてるから、また今度」
「南?」
「南テトラフィロ王国よ。丈夫でセンスのいい家具職人がたくさん居るの」
「ほー、なるほどな。でも高級って、そんなの俺みたいなのに用意してくれなくていいよ」
「大昔はね、別に高くなかったらしいの」
「南テトラフィロの家具がか?」
「ええ。むしろ安いのに質がいいという評判だったらしいわ。でも国が四つに分断されてからは、輸入に高い関税が掛かってしまって」
「それで高級なのか」
「けどそれで南の人たちが潤うならいいわ。だけれど、その関税は全て魔蛇教の収入となっているの」
「税金がなぜ宗教団体の手に……」
「南は、西より魔蛇教が猛威を奮っていてね、大臣級に何人か教徒が混じってるという噂もあるわ」
「そこまで食い込んでるのか」
「もし今度の選挙で私が負ければ、ここもこうなるわ。大臣には強大な権限があるけれど、それを指名できるのは王。王の独断で決められるの」
「エフスロスが王になれば、大臣は……」
「魔蛇教徒で埋まるでしょうね」
「……なんとしてでも、食い止めないとな」
「ええ、そのための明日よ」
さて、いよいよ日付が変われば、西テトラフィロ王国王候補者討論会の始まりだ。
しかしそこで一つの疑問が生まれる。なぜこの時期にこんな場所に?
というのも、実はもう明日が候補者討論会本番なのだ。討論会を終えると一週間後には投票である。密会なら例の選対本部でやればいいし、思えばなぜこの時期に新しくアジトを作り始めたのだろうか。そして、場所。こんなカルディアの屋敷の近くに作る意味は何なのだろうか。投票日が近いから手荒な真似はしないだろうとテリエルは推測していたが、ここから屋敷まで走って十五分程度。カルディア陣営にちょっかいでも出すつもりなんじゃないかと疑いたくなる立地である。
が、これもテリエルが言っていたことだが、何かをされたわけでもないのにアジトを攻撃しようものならこちらが悪者である。というわけで、こうしてこっそり監視を続けるしかない。
だがそんな日々ももう終わりだ。さっきも言った通り、明日は候補者討論会なのだから。今まで俺とカルディアとテリエルが交代で24時間警戒していたが、特に変わったことは起きなかった。魔蛇教の工員達が出入りしたという、ただそれだけのことである。幹部やエフスロスは姿を現さなかった。
さて、時間だ。ここで監視をテリエルに交代して、彼女が8時間監視すればもうこの業務も終わる。今晩には屋敷を出て討論会が開催される王都へ向かわねばならない。
「――!?」
戻ろうかと立ち上がった瞬間、見覚えのある仕立てのよい服が風に靡く姿を視界に捉えた。完成間近のアジトに姿を現したのはエフスロス。カルディアの対立候補で、絶対に破らなければならない相手だ。
配下を連れて馬から下りると、なにやら工員から説明を受けているようだった。
この距離じゃ聞こえん。仕方ないので草むらを移動し、丸太などの資材が置いてある陰に隠れるとやっと聞こえるようになった。
「エフスロス様、ようこそいらっしゃいました。新アジトは間もなく完成です」
恭しく工員が述べると、それに便乗する形で配下が言う。
「どうでしょうエフスロス様、今夜は街の店に出前させてここでパーティーでも、」
「馬鹿、そんなことしてる暇はない。明日が何の日かわかっているのか」
「そ、そうでございました。討論会でございました」
「全く……討論前夜は一人にしてくれと言ったろ」
「仰せの通りに、エフスロス様」
そこで工員が口を挟んだ。
「しかしエフスロス様、せっかくいらしたんですから見ていってくださいませんか。さすれば、建設に参加した者らも喜びます」
「別にこのまま帰るとは言ってない。ねぎらいの言葉くらいはかけてやってもいい」
そう言うと地下へと姿を消した。
ふーむ、特にこの会話から得るものは無かったな。肝心の、この時期ここにアジトを作って目的には全く触れなかったし……
おや? 今度は向こうから馬車がやってくるが、重厚な作りで中に誰が乗っているのかわからないようカーテンが降ろされている。もしや……
「ここが新アジトか」
「前のが潰されたときはどうなるかと思ったが、案外早く再建できるものだな」
「エフスロスも来ているらしい、早く入ろう」
いつぞや見た魔蛇教幹部三人衆だった。
幹部三人とエフスロス。集まって重大な話をしないわけがない。仕方あるまい、ギリギリの綱渡りだが、やるしかない。
土魔法でちょっと離れた地点から穴を掘り進める。そしてアジトの近くまで行き盗聴する作戦だ。以前は成功したが、今回はこの辺りを色々掘っていたようなので変なところに辿り着いて地盤沈下したりしたら大変だ。
しかし焦らず落ち着いて削り進めると、やがて彼らの声が聞こえるところまで来た。再び土魔法で来た道を埋めバレないようにした後は、火魔法で暗い穴を照らし耳に意識を集中させる。
「よう、エフスロス」
「こ、これはこれは幹部殿。どうされました」
「見に来たんだよ。もう完成だな」
「はい、あとは内装だけで、」
「んなもんはどうでもいい。このアジトをなぜ作らせたか考えろ」
「はっ、もし選挙に……に……ためです」
何だ? よく聞こえない。もっと耳を凝らして……
「その通りだ。家具だの食器だの色気づくな」
「わかりました。家具の搬入を取りやめ、武器の運び込みを優先します」
ぶ、武器!? 武器って何だよ?
「それと……いよいよ明日だな、討論会」
「はい、準備は万端でございます」
「油断するなよ。それまで支持率で優位に立ってたとしても、討論会を機に潮目が変わって破れた奴なんざいくらでもいる」
「もちろん存じています。抜かりはありません」
「ふ……もし負けたら、……を……して、そのあと……も……だからな」
「も、も、もちろんわかってます。負けるはずがありません! お任せください!」
聞き取れなかったが、幹部の一人が何かを述べた瞬間エフスロスの声色が焦りに変わった。
「じゃあ、楽しみにしてるぞ。お前とカルディアの討論」
そうとだけ言い残すと、そそくさと出て行ってしまった幹部三人。取り残されたエフスロスに、配下がこんなことを言っているようだった。
「エフスロス様、大丈夫ですか? 何か息が切れているような……」
「なんでもない、気にするな。さて戻るぞ。今から選対本部に戻らないと、明朝までに都入りできないからな」
そう言って、二人もまた地上へと戻った。
そうだ、俺もそろそろ戻らないと。
「何してるの」
「うわっ!」
突如として耳元に可愛くも無機質な声が入ってきたので驚く。すぐ隣にテリエルがいた。
「いや、さっき魔蛇教の幹部が来てさ、エフスロスと話してたから盗聴しようと」
「そう。何か重要な話はしてた?」
「いや、特には……ただ、ところどころ聞きづらい場面があったからな」
「カズマサ、掘削が雑。もっと丁寧に掘ればもっと接近して聞けたのに」
「そんな器用じゃないんだよ」
そんな会話をしつつ交代する。
「残りはわたしが見張っておく。カズマサは屋敷に帰って、カルディア様と出発の準備を」
「ああ、わかってる。それと――」
「?」
「絶対カルディアを王にしような」
こくりと彼女は銀髪を揺らす。目には決意が宿っていた。
「カズマサ、ちょっとこっちへ来なさいな」
屋敷に帰るや否や、カルディアに呼び止められる。案内されるがまま階段を上り廊下を進むと、一つの角部屋の前に辿り着いた。
「前までテリエルの部屋で暮らしてたそうだけど、今日からあなたの部屋はここよ」
中は、ベッドと机との最低限しかない殺風景な部屋だった。
「本当なら南から輸入した高級家具を揃えたいんだけどね。今はばたついてるから、また今度」
「南?」
「南テトラフィロ王国よ。丈夫でセンスのいい家具職人がたくさん居るの」
「ほー、なるほどな。でも高級って、そんなの俺みたいなのに用意してくれなくていいよ」
「大昔はね、別に高くなかったらしいの」
「南テトラフィロの家具がか?」
「ええ。むしろ安いのに質がいいという評判だったらしいわ。でも国が四つに分断されてからは、輸入に高い関税が掛かってしまって」
「それで高級なのか」
「けどそれで南の人たちが潤うならいいわ。だけれど、その関税は全て魔蛇教の収入となっているの」
「税金がなぜ宗教団体の手に……」
「南は、西より魔蛇教が猛威を奮っていてね、大臣級に何人か教徒が混じってるという噂もあるわ」
「そこまで食い込んでるのか」
「もし今度の選挙で私が負ければ、ここもこうなるわ。大臣には強大な権限があるけれど、それを指名できるのは王。王の独断で決められるの」
「エフスロスが王になれば、大臣は……」
「魔蛇教徒で埋まるでしょうね」
「……なんとしてでも、食い止めないとな」
「ええ、そのための明日よ」
さて、いよいよ日付が変われば、西テトラフィロ王国王候補者討論会の始まりだ。
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