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一章 魔女が存在する世界
魔法少女はサド趣味
しおりを挟むまだ、手札が残っていた。
今にも放たれそうな矢を見ながら、少女はニヤリと笑う。不敵に、横柄に。それを見て、男の表情が僅かに曇った。
次の、瞬間。
ガバン! と男の身体が宙に浮いた。
「あ、あ…………………………ッ!?」
な、にが、と男の顔が驚きで埋まる。矢は見当違いの方向に唸りをあげて飛んでいった。
正確には、男の身体が宙に浮いただけではない。男の周りの地面が爆発した。男はその衝撃で浮いたに過ぎない。
何秒間の滞空だろうか。どさっ、と背中から地面に落ちた男は、肺から空気がまとめて奪われた事を知覚できない程に驚ろいていた。
「ほう、四肢が残っただけでも儲けものだな。そういう風には設定しなかったのだが」
その腹に、何かがドスッ! と乗っかる。それも生半可な一撃ではない。男はそのせいで吐瀉した。胃が圧迫され、内容物が口から噴水のように吹き出す。
「おいおい、汚いな。我慢しろよ、男ならさ」
果たして乗っかったのは少女のローファーを纏った小さな足だった。黒いタイツを帯びた細い足はそのまま短めのジーンズショートパンツに吸い込まれている。
少女は先ほどまでとは打って代わり、ニヤニヤと笑いつつ、男を見下ろすと、
「どうだ? 完膚なきまでに負けた気分は。こんな小さな女の子に負けて、踏まれている気分は」
「どう、やっ…………て……」
「んー? 今の爆発か? ……わざわざ敵に技術を教える義務はないなぁ。だけど私は優しいからな。教えてやろう」
そう言うと少女は、近くにまだ刺さっていた紅色の剣を引っこ抜いてきた。そしてそれを男の眼前で振りながら、
「誰がこれに何の意味も無いと言った?」
「…………?」
「術は発動していたんだよ。半径三〇メートルくらい、誰でも狙える爆発術がな」
「ッ!」
それだけで男は全てを悟った。カウンターの為の罠に使った紅剣。しかし、誰がカウンターだけの為の剣と言ったのか。
つまりあのカウンターすら、この紅剣から意識を外すためのブラフ。紅剣に危険性は無いと勘違いさせる為の技。後は少女は、男が自ら爆破可能地点に踏み込んでくるのを待てば良かった。それだけで簡単に勝利出来るのだ。
「二重のブラフ。楽しいぞ? ある攻撃の為のブラフが、実はその『ある攻撃』をブラフとする本命だった」
そして少女は紅剣を放り投げると、
「まあ、何もかもお粗末なお前には何がブラフで何が本命だったかすら、何一つ判別出来ていなかったろうがな? さて、と。じゃあお待ちかねの交渉の時間だ」
少女はもう一度、軽く男を踏んづける。だが、今度踏んづけるのは腹ではなく股間だ。
そしてそのままぐりぐりぐり、と足を動かしてそこを刺激する。
「がっ! あっ、あっ!」
びくんっ! と震えた男に、少女は気にせず話し掛ける。
「私は最初に言った通り、道を案内して欲しくてな。何が言いたいかというと…………私を《地底》に連れていくか、それともこのまま玉を二つとも潰されるか、さっさとどちらか選べよロリコン
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