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11 前線拠点へ出発
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私がポールの稽古を眺めていると、レイモンドが中庭に姿を現した。
「お待たせ致しました、お二人とも。お部屋のご用意が終わりましたので、付いてきていただけますか?」
「……あら、早いのね」
「あ、はい! レイモンドさん、ありがとうございます!」
それからレイモンドに部屋に案内されると、一つの大きな部屋の中央に仕切り壁が強固に設置されており、しっかり区切られた部屋が視界に広がる。
「いいじゃない。これでそれぞれの部屋での過ごす事が出来そうね」
「あわわ……仕切り壁はあるけど、アリエルお嬢様と同じ部屋っていうのは、何かドキドキしますね」
ポールは部屋を見渡しながら話す。
「……あらそう? まぁ、すぐ慣れるでしょう。……それよりも、ポールにお願いがあるの」
「何でしょう、アリエルお嬢様?」
私は前に二度起きた事が起きないようにポールにお願いをする。
「私達が魔物討伐に向かうまで、私が寝ている間は誰かに襲われないか護衛をお願いしたいの」
「それはもちろん! アリエルお嬢様が就寝される際は一声かけてくださいね。私が集中を研ぎ澄ましてお守り致します!」
とても頼もしく感じれるような表情を浮かべるポールに私は安堵感を感じる。
「……ありがとう! それじゃレイモンド。部屋の改装……ご苦労様だったわ」
「いえ、このぐらいお安い御用です。それでは今後は私がアリエルお嬢様の身の回りのお世話をさせて頂きたいと思いますので、何なりとお申し付けください」
「えぇ、よろしく頼むわね。レイモンド」
こうして私の第二の公爵家生活が始まった。
新しい部屋で過ごしていく過程でいろいろ分かった事がある。
――それはポールが非常に努力家だという事だ。
「……ホッ……ホッ」
私は自室で机に着き、今まであまりしてこなかった基礎的な学問の勉強をレイモンドから教わっていると、区切り壁の向こうでいつものポールの声が聞こえてきた事に気付く。
以前中庭で稽古をしていた時のように、ポールは時間を見つけては鍛錬に勤しむようにしているのだ。
――ガタッ
席を立った私は、入り口付近の区切り壁まで近寄る。
「アリエルお嬢様、まだ勉強中ですよ?」
「ちょっとした息抜きぐらい良いじゃない」
「……わかりました。それでは少しだけ休憩致しましょうか」
レイモンドはそういうと、室内の清掃を始める。
……レイモンドは非常に優秀で教育、掃除、洗濯、料理など何でも出来る万能な人だという事も分かっている。
さすがスフィンおじさんから配属された諜報員だけはあるな、と思ってしまう。
――コンコンッ
レイモンドから視線を外し、ポールがいる空間に顔を覗かせながら壁をノックする。
「ポール、また私も手伝いましょうか?」
「……あ、いえ! 今はお勉強中ですので、お気になさらずに」
ポールは体に重量が重い金属を数多く乗せながら鍛錬をしている。
「……そう、でも無理はしないでね?」
「あはは……お気遣い頂きありがとうございます! 魔物討伐には私も出向かせて頂きたいと思っているので、アリエルお嬢様をお守りできるよう、出来る限り体を鍛えておきたいのです!」
ポールは物凄い重量の重りを体にぶら下げながら健やかな表情を浮かべている。
私はそんな事ができるポールが素直にすごいと思ってしまう。
「ふふ、ありがとうポール。私も守られてばかりじゃいられないから、ポールの身に危険が襲ってきた時は、私も魔法でポールを守るわね」
「ありがとうございます、アリエルお嬢様!」
私とポールの間に、徐々に絆が深まっていくのを感じる。
そんな事を想いながら、私はレイモンドとの基礎的な学問の学習へと戻っていった。
◇◇◇
それから数日が経ったある日、義父から魔物討伐に向かう日が決まり、私とソフィアは前線へと向かう事となった。
「……ソフィア、くれぐれも危ない場所にはいかずに後方で対応するのだぞ?」
「わかっているわ、お父様! 私に任せてくださいませ」
義父とソフィアは二人の世界を堪能しているようなので、放っておきながら私とポールは大きな馬車に乗り込む。
「おいアリエル! お前もせいぜい役に立つことだ。公爵家の名に恥じぬ働きをするのだぞ!」
「……えぇ、わかっているわよ」
横を通りすぎる私に向かってそう吐き捨ててくる義父に私は適当に返答しておく。
「ふん、本当に分かっているのでしょうかお姉様は……お父様。お姉様の事は私にお任せください。公爵家の名に恥じぬように監視しておりますわ」
「あぁ……ソフィア。なんて頼もしい娘なんだ……アリエルが公爵家の名を汚さないように見張っておくのだぞ!」
既に公爵家の名を汚している二人が何を言っているんだろう?
……と、心底嫌悪感を抱きながら二人から視線を逸らしてポールに視線を向ける。
「……ポールは魔物討伐ってしたことあるのかしら?」
「はい。私が騎士隊に配属されていた時に何度かございます。なので、アリエルお嬢様は私の背後で見守って頂ければ問題ありません」
「そう……何かあれば魔法で後方支援をさせて頂くわね」
「はい、とても心強いです!」
私がポールとやり取りをしていると、屋敷からレイモンドも姿を現す。
すると、レイモンドも馬車に乗り込んでくる。
「……え? レイモンドも来るの?」
「えぇ、もちろんでございます。アリエルお嬢様とソフィアお嬢様の両名が向かわれるのですから、身の回りのお世話をしなくてはなりません」
レイモンドの背後には数多くのメイドも控えており、大所帯での出発になりそうだった。
それから全員が乗り込んだ後、私達が乗り込んだ大きな馬車は騎士隊が待機している前線拠点へと馬車を走らせるのだった。
「お待たせ致しました、お二人とも。お部屋のご用意が終わりましたので、付いてきていただけますか?」
「……あら、早いのね」
「あ、はい! レイモンドさん、ありがとうございます!」
それからレイモンドに部屋に案内されると、一つの大きな部屋の中央に仕切り壁が強固に設置されており、しっかり区切られた部屋が視界に広がる。
「いいじゃない。これでそれぞれの部屋での過ごす事が出来そうね」
「あわわ……仕切り壁はあるけど、アリエルお嬢様と同じ部屋っていうのは、何かドキドキしますね」
ポールは部屋を見渡しながら話す。
「……あらそう? まぁ、すぐ慣れるでしょう。……それよりも、ポールにお願いがあるの」
「何でしょう、アリエルお嬢様?」
私は前に二度起きた事が起きないようにポールにお願いをする。
「私達が魔物討伐に向かうまで、私が寝ている間は誰かに襲われないか護衛をお願いしたいの」
「それはもちろん! アリエルお嬢様が就寝される際は一声かけてくださいね。私が集中を研ぎ澄ましてお守り致します!」
とても頼もしく感じれるような表情を浮かべるポールに私は安堵感を感じる。
「……ありがとう! それじゃレイモンド。部屋の改装……ご苦労様だったわ」
「いえ、このぐらいお安い御用です。それでは今後は私がアリエルお嬢様の身の回りのお世話をさせて頂きたいと思いますので、何なりとお申し付けください」
「えぇ、よろしく頼むわね。レイモンド」
こうして私の第二の公爵家生活が始まった。
新しい部屋で過ごしていく過程でいろいろ分かった事がある。
――それはポールが非常に努力家だという事だ。
「……ホッ……ホッ」
私は自室で机に着き、今まであまりしてこなかった基礎的な学問の勉強をレイモンドから教わっていると、区切り壁の向こうでいつものポールの声が聞こえてきた事に気付く。
以前中庭で稽古をしていた時のように、ポールは時間を見つけては鍛錬に勤しむようにしているのだ。
――ガタッ
席を立った私は、入り口付近の区切り壁まで近寄る。
「アリエルお嬢様、まだ勉強中ですよ?」
「ちょっとした息抜きぐらい良いじゃない」
「……わかりました。それでは少しだけ休憩致しましょうか」
レイモンドはそういうと、室内の清掃を始める。
……レイモンドは非常に優秀で教育、掃除、洗濯、料理など何でも出来る万能な人だという事も分かっている。
さすがスフィンおじさんから配属された諜報員だけはあるな、と思ってしまう。
――コンコンッ
レイモンドから視線を外し、ポールがいる空間に顔を覗かせながら壁をノックする。
「ポール、また私も手伝いましょうか?」
「……あ、いえ! 今はお勉強中ですので、お気になさらずに」
ポールは体に重量が重い金属を数多く乗せながら鍛錬をしている。
「……そう、でも無理はしないでね?」
「あはは……お気遣い頂きありがとうございます! 魔物討伐には私も出向かせて頂きたいと思っているので、アリエルお嬢様をお守りできるよう、出来る限り体を鍛えておきたいのです!」
ポールは物凄い重量の重りを体にぶら下げながら健やかな表情を浮かべている。
私はそんな事ができるポールが素直にすごいと思ってしまう。
「ふふ、ありがとうポール。私も守られてばかりじゃいられないから、ポールの身に危険が襲ってきた時は、私も魔法でポールを守るわね」
「ありがとうございます、アリエルお嬢様!」
私とポールの間に、徐々に絆が深まっていくのを感じる。
そんな事を想いながら、私はレイモンドとの基礎的な学問の学習へと戻っていった。
◇◇◇
それから数日が経ったある日、義父から魔物討伐に向かう日が決まり、私とソフィアは前線へと向かう事となった。
「……ソフィア、くれぐれも危ない場所にはいかずに後方で対応するのだぞ?」
「わかっているわ、お父様! 私に任せてくださいませ」
義父とソフィアは二人の世界を堪能しているようなので、放っておきながら私とポールは大きな馬車に乗り込む。
「おいアリエル! お前もせいぜい役に立つことだ。公爵家の名に恥じぬ働きをするのだぞ!」
「……えぇ、わかっているわよ」
横を通りすぎる私に向かってそう吐き捨ててくる義父に私は適当に返答しておく。
「ふん、本当に分かっているのでしょうかお姉様は……お父様。お姉様の事は私にお任せください。公爵家の名に恥じぬように監視しておりますわ」
「あぁ……ソフィア。なんて頼もしい娘なんだ……アリエルが公爵家の名を汚さないように見張っておくのだぞ!」
既に公爵家の名を汚している二人が何を言っているんだろう?
……と、心底嫌悪感を抱きながら二人から視線を逸らしてポールに視線を向ける。
「……ポールは魔物討伐ってしたことあるのかしら?」
「はい。私が騎士隊に配属されていた時に何度かございます。なので、アリエルお嬢様は私の背後で見守って頂ければ問題ありません」
「そう……何かあれば魔法で後方支援をさせて頂くわね」
「はい、とても心強いです!」
私がポールとやり取りをしていると、屋敷からレイモンドも姿を現す。
すると、レイモンドも馬車に乗り込んでくる。
「……え? レイモンドも来るの?」
「えぇ、もちろんでございます。アリエルお嬢様とソフィアお嬢様の両名が向かわれるのですから、身の回りのお世話をしなくてはなりません」
レイモンドの背後には数多くのメイドも控えており、大所帯での出発になりそうだった。
それから全員が乗り込んだ後、私達が乗り込んだ大きな馬車は騎士隊が待機している前線拠点へと馬車を走らせるのだった。
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