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35 魔王のきまぐれ
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朝、俺は目が覚めると宿舎の外に出て大きく背伸びをする。
「ん~~……っ! ふぅ……」
新鮮な空気を体内に取り込む。
ここ最近で起きた様々な面倒な事も片付き、俺は平凡な日々を過ごすことが出来ていた。
(……薬屋も順調だし、このまま何も起きませんように)
≪そうですね~平和が一番です~≫
俺はエイルとやり取りをしていると、背後から声を掛けられる。
「あ! おはようなのだ! お前も早起きなのだなアーノルド!」
「アーノルド、おはよウ!」
「……よぉ、二人とも。朝早くからお出かけか?」
俺は振り返りながら尋ねると、宿舎から小さな鞄を持ちながらイブリスとラミリアが出てきたところだった。
「そうなのだ! 我の弟子になったラミリアにいろいろ修行を付けるのだ!」
「……待て待て。……なんだよ、弟子って?」
俺は聞き慣れない単語に反応してしまい、思わず聞き返す。
ここ最近、二人で行動している事が多いと思っていたが、いつの間にかラミリアはイブリスの弟子になっていたようだ。
「私もイブリスみたいにカッコよくなりたいノ!」
ラミリアは目を輝かせながら両手を握りしめて力説をする。
その視線の先はイブリスの角部分に向かっていた。
「カッコ……いいのか?」
俺はそう呟きながらイブリスに視線を移す。
今、目の前にいるイブリスは元々は魔王で、過去に世界を恐怖のどん底に落とそうとした魔族の一人。
(……そもそもなんでそんな奴が、この村に住んでいるのか謎でしかない)
≪それは私も同感です~。今のところ、特に問題は起きていないですが、未だに私は警戒中なんですよね~≫
イブリスは本来、大人の姿だったらしいが今は精神体から自身の魔力を使って人体を形成しているので子供サイズの見た目になっているらしい。
エイル曰く、本来の姿のイブリスは魔王と呼ぶに相応しい程、想像を絶するほどの力を持った存在だったそうだ。
「……ラミリア、念のため、俺も付き添っていいか?」
「ウン! アーノルドがいたらもっとやる気が出ル!」
鼻息荒く答えるラミリアに気押されしていると、宿舎からシャルロッテも出てきた。
「あっ! おはようございます! リーシアさんも台所で何か作っていましたが……皆さんも朝早いのですね!」
シャルロッテは薬屋の店頭に置いてある花に水やりをしながら俺達に話しかけてくる。
「シャルロッテもな。あ……そうだ。俺達、これからちょっと外に出てくるからその間、店の方を任せても大丈夫か?」
「……構いませんが、どこかに行かれるのですか?」
「あぁ、ちょっとこいつらの御守だ」
シャルロッテは二人に視線を移した後、俺に視線を戻す。
「わかりました、構いませんよ。それでは、店は私とリーリアちゃんで回しておきますね!」
「よろしく頼むよ、オイドにも伝えておいてくれ」
俺はそう言い残し、出かけようとすると薬屋からリーシアが駆けてくる。
「二人とも待ってください! お弁当を忘れていますよ!」
「あ! そうだったのだ! リーシアの弁当を忘れる所だったのだ!」
「ありがとう! リーシアお姉ちゃン!」
二人は無邪気にお弁当をリーシアから受け取ると小さな鞄に入れる。
「……マジか。……リーシア、俺のは?」
「え? そんなの無いに決まっているじゃない」
まぁ……急遽参加する事になった手前、用意していないのはしょうがないか。
「アーノルド! 私の半分分けてあげル!」
すると、ラミリアは俺を見上げてくる。
俺はそんなラミリアの頭を優しく撫でる。
「……優しいな、ラミリアは」
「ん~……♪」
すると、その光景を見ていたイブリスは先ほど弁当をしまった自分の鞄をぎゅっと抱きしめながら話してくる。
「わ、我の弁当は我の物なのだ!」
「……知ってる」
こいつは食い意地が激しい……というかネルド村に住み着いた原因がリーシアの料理、と言っても良いほどリーシアの作った食べ物が超好きなので初めから期待していない。
「まぁ……でもラミリア、気持ちだけで十分だよ、どうせ何か木の実や果物でも拾って食うさ」
俺はラミリアからシャルロッテ達に視線を戻す。
「それじゃ、ちょっとこいつらの御守に出かけてくるよ。店の方を頼むぞ、二人とも」
「はい! 行ってらっしゃいです!」
「わかっているわ。暗くなるまでに帰ってくるのよ?」
俺はシャルロッテ達とお別れを済まして、イブリスとラミリアと共にネルド村を後にした。
◇◇◇
ネルド村を出て少し歩いている中、修行と言っても具体的に何をするか全く聞いていなかった俺はラミリアに尋ねる事にした。
「ラミリア、それで修行って何をするつもりなんだ?」
「え~っト……イブリスから戦闘での立ち回りや魔法の使い方を教わっているノ! 私も以前みたいに村を襲ってくる相手を追い返せるようになりたいかラ!」
「へぇ……結構ちゃんとした修行なんだな」
俺はてっきり修行と称した遠足だと思っていたが、俺の予想していた以上に実戦的な内容に驚いてしまう。
「イブリスってその状態でも魔法って使えたんだな」
「ふっふっふ、そうなのだアーノルド! 我はこの体を維持したまま、魔法を使う事ができるのだ!」
俺はイブリスが魔法を使っている場面を見たことがない。
バッカスの中にいる時にバッカスを通じて魔法を使っているのは見たことがあるが、あれは魔力を得たバッカスが魔法を行使していただけだろうし、イブリスの意志ではないだろう。
(……たしかあいつ、自軍のカンク帝国軍を一瞬で消滅させたんだよな)
≪私とアーノルドさんと同じような状態だったでしょうが、魔法は使用者の意志で正義にも悪にもなりますからね~≫
(……だな)
今更になって、あの糞野郎を始末できて本当によかったと思える。
そんな事を思考している中、イブリスとラミリアは向かい合う。
「それでは、いくのだラミリア!」
「ウン! いつでもいイ!」
こうして、魔王のきまぐれでラミリアとの修行が始まるのだった。
「ん~~……っ! ふぅ……」
新鮮な空気を体内に取り込む。
ここ最近で起きた様々な面倒な事も片付き、俺は平凡な日々を過ごすことが出来ていた。
(……薬屋も順調だし、このまま何も起きませんように)
≪そうですね~平和が一番です~≫
俺はエイルとやり取りをしていると、背後から声を掛けられる。
「あ! おはようなのだ! お前も早起きなのだなアーノルド!」
「アーノルド、おはよウ!」
「……よぉ、二人とも。朝早くからお出かけか?」
俺は振り返りながら尋ねると、宿舎から小さな鞄を持ちながらイブリスとラミリアが出てきたところだった。
「そうなのだ! 我の弟子になったラミリアにいろいろ修行を付けるのだ!」
「……待て待て。……なんだよ、弟子って?」
俺は聞き慣れない単語に反応してしまい、思わず聞き返す。
ここ最近、二人で行動している事が多いと思っていたが、いつの間にかラミリアはイブリスの弟子になっていたようだ。
「私もイブリスみたいにカッコよくなりたいノ!」
ラミリアは目を輝かせながら両手を握りしめて力説をする。
その視線の先はイブリスの角部分に向かっていた。
「カッコ……いいのか?」
俺はそう呟きながらイブリスに視線を移す。
今、目の前にいるイブリスは元々は魔王で、過去に世界を恐怖のどん底に落とそうとした魔族の一人。
(……そもそもなんでそんな奴が、この村に住んでいるのか謎でしかない)
≪それは私も同感です~。今のところ、特に問題は起きていないですが、未だに私は警戒中なんですよね~≫
イブリスは本来、大人の姿だったらしいが今は精神体から自身の魔力を使って人体を形成しているので子供サイズの見た目になっているらしい。
エイル曰く、本来の姿のイブリスは魔王と呼ぶに相応しい程、想像を絶するほどの力を持った存在だったそうだ。
「……ラミリア、念のため、俺も付き添っていいか?」
「ウン! アーノルドがいたらもっとやる気が出ル!」
鼻息荒く答えるラミリアに気押されしていると、宿舎からシャルロッテも出てきた。
「あっ! おはようございます! リーシアさんも台所で何か作っていましたが……皆さんも朝早いのですね!」
シャルロッテは薬屋の店頭に置いてある花に水やりをしながら俺達に話しかけてくる。
「シャルロッテもな。あ……そうだ。俺達、これからちょっと外に出てくるからその間、店の方を任せても大丈夫か?」
「……構いませんが、どこかに行かれるのですか?」
「あぁ、ちょっとこいつらの御守だ」
シャルロッテは二人に視線を移した後、俺に視線を戻す。
「わかりました、構いませんよ。それでは、店は私とリーリアちゃんで回しておきますね!」
「よろしく頼むよ、オイドにも伝えておいてくれ」
俺はそう言い残し、出かけようとすると薬屋からリーシアが駆けてくる。
「二人とも待ってください! お弁当を忘れていますよ!」
「あ! そうだったのだ! リーシアの弁当を忘れる所だったのだ!」
「ありがとう! リーシアお姉ちゃン!」
二人は無邪気にお弁当をリーシアから受け取ると小さな鞄に入れる。
「……マジか。……リーシア、俺のは?」
「え? そんなの無いに決まっているじゃない」
まぁ……急遽参加する事になった手前、用意していないのはしょうがないか。
「アーノルド! 私の半分分けてあげル!」
すると、ラミリアは俺を見上げてくる。
俺はそんなラミリアの頭を優しく撫でる。
「……優しいな、ラミリアは」
「ん~……♪」
すると、その光景を見ていたイブリスは先ほど弁当をしまった自分の鞄をぎゅっと抱きしめながら話してくる。
「わ、我の弁当は我の物なのだ!」
「……知ってる」
こいつは食い意地が激しい……というかネルド村に住み着いた原因がリーシアの料理、と言っても良いほどリーシアの作った食べ物が超好きなので初めから期待していない。
「まぁ……でもラミリア、気持ちだけで十分だよ、どうせ何か木の実や果物でも拾って食うさ」
俺はラミリアからシャルロッテ達に視線を戻す。
「それじゃ、ちょっとこいつらの御守に出かけてくるよ。店の方を頼むぞ、二人とも」
「はい! 行ってらっしゃいです!」
「わかっているわ。暗くなるまでに帰ってくるのよ?」
俺はシャルロッテ達とお別れを済まして、イブリスとラミリアと共にネルド村を後にした。
◇◇◇
ネルド村を出て少し歩いている中、修行と言っても具体的に何をするか全く聞いていなかった俺はラミリアに尋ねる事にした。
「ラミリア、それで修行って何をするつもりなんだ?」
「え~っト……イブリスから戦闘での立ち回りや魔法の使い方を教わっているノ! 私も以前みたいに村を襲ってくる相手を追い返せるようになりたいかラ!」
「へぇ……結構ちゃんとした修行なんだな」
俺はてっきり修行と称した遠足だと思っていたが、俺の予想していた以上に実戦的な内容に驚いてしまう。
「イブリスってその状態でも魔法って使えたんだな」
「ふっふっふ、そうなのだアーノルド! 我はこの体を維持したまま、魔法を使う事ができるのだ!」
俺はイブリスが魔法を使っている場面を見たことがない。
バッカスの中にいる時にバッカスを通じて魔法を使っているのは見たことがあるが、あれは魔力を得たバッカスが魔法を行使していただけだろうし、イブリスの意志ではないだろう。
(……たしかあいつ、自軍のカンク帝国軍を一瞬で消滅させたんだよな)
≪私とアーノルドさんと同じような状態だったでしょうが、魔法は使用者の意志で正義にも悪にもなりますからね~≫
(……だな)
今更になって、あの糞野郎を始末できて本当によかったと思える。
そんな事を思考している中、イブリスとラミリアは向かい合う。
「それでは、いくのだラミリア!」
「ウン! いつでもいイ!」
こうして、魔王のきまぐれでラミリアとの修行が始まるのだった。
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