宮廷追放された医師の薬屋ハーレムライフ~宮廷で女神の祝福を授かった医者だったが、医療ミスで田舎に追放されたので薬屋として生きていきます~

笹塚シノン

文字の大きさ
上 下
26 / 35

26 ネルド村防衛戦:ラミリア視点

しおりを挟む
アーノルドがネルド村を旅立ってから私は、アーノルドにお願いされた通りリーシアお姉ちゃんやネルド村を守る為に気合を入れていた。

「リーシアお姉ちゃんは私が守ル!」

――ぷにゅんっ
傍にいたリーシアお姉ちゃんの柔らかい体に抱き着く。

「ふふ、頼もしいですね。ラミリアさん」

リーシアお姉ちゃんは優しくほほ笑みかけ、頭を優しく撫でてくれる。
とても気持ちよく、頬が緩んでしまう。

「ん~……♪」

リーシアお姉ちゃんは私と一緒に寝るようになってから沢山話をしてくれた。
それはリーシアお姉ちゃんの故郷の話だったり、アーノルドが子供の頃の話だったり……アーノルドの事が大好きな事だったり、思い出すと少しムっとした気持ちになってしまうぐらいの想いが伝わってくる程だった。

(……ん~!!)

何度か私の方がアーノルドの事が大好きな気持ちは負けないと対抗したりもするけど、いつも今向けられている笑顔を浮かべて頭を撫でられるので気持ちよさであやふやになる状態を繰り返している。

「でもラミリアさん。私もラミリアさんを守らせてください。一緒にネルド村を守りましょう!」
「ウン!」

私は笑顔を向けてくるリーシアお姉ちゃんに元気よく返事をかえした。
すると、ドワーフの鍛冶師のおじちゃんが話しかけてくる。

「はは、威勢がいいお嬢ちゃん達だな。……さ、アーノルドさんから念のため村人全員に武器を配るように言われているんだ。二人はこの短剣でいいだろう」

そう言うと、ドワーフのおじちゃんはさやに入っている短剣を私とリーシアお姉ちゃんに手渡す。

「まぁ、どうせ使う事はないと思うけどな、アーノルドさんが戻ってくるまで持っていてくれ」
「わかりました。ありがとうございます」

リーシアお姉ちゃんは礼儀正しくお礼を言っていたので――

「ありがとうございまス! おじちゃン!」

――私もリーシアお姉ちゃんに習ってお礼を伝え、受け取った短剣をしまい込む。

「どうってことないさ。それに、ネルド村の正門と裏門には見張り台に人を待機させているからな。何かあってもすぐに分かるさ!」

私がお礼を伝えると、ドワーフのおじさんは正門と裏門を指差しながら説明してくれた。

「私がネルド村に来た時にはまだ作っている途中でしたが……とても立派な外壁になりましたね。門を開かない限りネルド村に入りづらいですから、とても安心です」
「ウン!  とっても安心すル!」
「そうだろう、そうだろう。俺達の自信作だからな!」

ドワーフのおじちゃんは気さくな笑顔で照れながら答える。
こうして私たちはアーノルドがいないネルド村でしばらくの時間を過ごすのだった。



◇◇◇



アーノルドがネルド村を旅立って瞬く立った頃、それは唐突に起きた。

――カンカンカンカンッ!
突然、村中に鋭い音が鳴り響く。

「な、なに!?」

リーシアお姉ちゃんはそう言って薬屋の外へ駆けだし、私も後に続く。

「大変だ皆! 裏門前方から大量の軍がネルド村に接近中!!!」

先ほどの音を鳴らしたのは見張り台にいた人らしく、大声が村中に響き渡る。

「そ、そんな……っ! アラバスト軍はアーノルド達が向かったんじゃ……ん? でも、裏門ってアラバスト王国の方向と逆方向のはず……確かめなきゃ!」

リーシアお姉ちゃんはそう呟きながら、裏門の方へと駆け出していった。

「待っテ! リーシアお姉ちゃん!」
「ま、待つんじゃ二人とも!」

オイドの静止の声を振り切って、駆け出したリーシアお姉ちゃんにつられて私も裏門へと駆け出した。



裏門付近に到着すると、リーシアお姉ちゃんに向かって見張り台の人が声を掛けてくる。

「リーシアさん、敵軍の中から単騎で近づいて来る者がいます! ここは危ないですよ。下がっていてください!」
「いえ、この外壁があれば大丈夫だと思いますので、お気になさらずに! 敵軍はアラバスト王国の軍でしょうか?」

リーシアお姉ちゃんは見張りの人に尋ねる。

「……いえ、多くの旗が掲げられているのですが……あれは、エラルド公国の旗だと思われます」
「……え!? なんで、エラルド公国がこの村に!?」

私はエラルド公国という国名を聞いた瞬間、昔の記憶がフラッシュバックする。
それは怖い大人たちに囲まれて多くの同胞や家族が酷い実験の末に捨てられ、私も同様に殺されかけた事……ありとあらゆることが一度に脳裏に蘇ってくる。

「……うぅっ!」

私は頭を抱えて、その場にしゃがみ込む。

「ラミリアさんっ!? 大丈夫ですか!」

すると、リーシアお姉ちゃんはしゃがみ込む私を優しく包み込んでくれた。
…………そうだ……私はもう一人じゃない、守るべき大切なモノが増えたんだ!

「……だいじょうブ。……ありがとう、リーシアお姉ちゃン!」

私は体に気合を入れて、以前アーノルドに言われた言葉――

『……俺がネルド村にいない間、リーシアやこの村を守ってくれないか?』

――私に託された言葉を思い出す。

「……っ!!」

歯を食いしばりながら私は立ち上がると、裏門の前から聞き覚えのある声が鳴り響く。

「我はエラルド王国の次期国王であるイスラ・エラルドである!!! このネルド村は、我らエラルド公国とまもなく到着するカンク帝国によって滅ぼされるだろう! 観念して門を開放し、我らに投降するのだ!!」

イスラは門越しでも村中に響き渡るような大声で叫ぶ。

「……そんなっ」

リーシアお姉ちゃんはそう小さく呟きながら後ずさりをする。
私はそんなリーシアお姉ちゃんを背にして震える足に鞭を打ちながら、裏門に向かって声を上げる。

「絶対に開けなイ!!! ネルド村は私が守るんダ!!!」

私の叫びにも似た声を聞いたイスラは反応する。

「……ほう、その声はラミリアだな。……ふふ、本来ならアーノルドの前で使おうと思っていたが……丁度いい。以前はお前が生きているとは思わずに用意していなかったが……今回はこれを使わせて貰うとしよう」
「……な、なニ!?」

私はイスラが何を言っているのか理解できなかった。

「……我に従え、ラミリアよ!」

イスラが声を上げた瞬間――

「……っ!?」

――私の全身を鎖で拘束されるような感覚が襲い、私の体は完全に制御を失った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

処理中です...