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20 自給自足
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リーシアが訪れた次の朝、俺達は薬屋を臨時休業にして、急遽作った会議部屋でアラバスト王国に対しての対策案を話し合う事にした。
「さて、今回の議題だが。アラバスト王国の動向を予想しつつ、今後のネルド村の動きを考えていこうと思う」
「ふぉっふぉっふぉ、アーノルドが進行役かの。こりゃ頼もしいわい」
「そこ、茶化さない」
俺はオイドに注意を促す。
そんなやり取りを眺めていたシャルロッテは話し出す。
「まず、アラバスト王国の動向ですか、諜報部隊の方々が頑張ってくれたようで共有させて頂きます」
「教えてくれシャルロッテ」
「はい。お父様は既に動いてくれているようで、アラバスト王国に対して警告を出すとの事です」
「それは助かる。そうなると、すぐにこの村に攻め込んでくるってのは考えづらいって事か?」
「そう思って頂いて差支えないでしょう。……ですが、不測の事態も想定しておくべきです。今の内に私たちが出来る取り組みも行って参りましょう」
凛とした態度で意見を言うシャルロッテは、頼もしい以外の何ものでもない。
そんな中、俺は昨日新たに分かった力の使い道を思い出していた。
「シャルロッテの言う通りだ。それでちょっと思ったんだが……ネルド村にいる村人に新しい仕事を作りたいと思っている」
「仕事……ですか?」
「あぁ、オイドから聞いた話だが、ここ周辺で生きていくために子供を売って得た資金で飢えを耐えるような最悪な行いが蔓延っているらしい。……そこで、この村で食べる物を作って安く供給していけばいいと考えているんだ」
「……そういう話は聞いた事があります。私としても解決したい問題の一つですね」
俯き考え込むシャルロッテを横目に、俺はラミリアに視線を向ける。
「初めはラミリアもその一人だと思っていたが……そうじゃない事は分かった」
ラミリアがぽけーっとした表情で俺を見つめていた。
「だが、そういった問題は俺も解決したいと考えている。……そういえばラミリア、昨日はグッスリ眠れたのか?」
「ウン! とっても柔らかかっタ!」
(……何がだ)
「そりゃよかった。……で、話は戻るが、この食料の問題は解決しないといけない事だと俺は思っている」
俺はそう提案すると、リーシアが申し訳なさそうに呟く。
「昨日の夕食とさっきの朝食でいろいろ素材を使い切っちゃったし……悪かったわね」
「いや、美味い料理を作ってもらって嬉しいぐらいだよ。俺達はある程度の蓄えがあるから他の街から仕入れる事は出来るが、他の者が全員そうだとは言えない」
「確かにそうじゃの……して、アーノルド。食料を用意する言ってもどうするんじゃ、農業でも行うのかの?」
――パチンッ!
俺は指を鳴らし、オイドに向かって笑みを浮かべる。
「そう! 農業を村人にお願いしようと考えているんだ」
「じゃが、農業の経験がない村の者ができるじゃろうか……?」
「大丈夫だ。俺に考えがある」
俺は皆にそう伝えると、村人を集めて広場に集まって貰う事にした。
皆が広間に集まる中、俺は昨日の夜に気付いた力の使い道を共有する事にした。
「こんな朝から呼んで申し訳ない。今日はちょっと村の皆にお願いしたい事があるんだ」
俺が村人に語り掛けると――
「アーノルドさんのお願いなら是非協力させてください!」
「私たちに出来る事なら協力させて頂きます!」
「先生のお願いなら何でも聞きますぞ!」
――皆はすぐに聴く体制になってくれた。
「ありがとう皆、話を聞く前に……ちょっと見てくれるか?」
協力的な村人を横目に、俺は用意していた果物の種を取り出し近くにあった木の枝で地面を掘り起こす。
「……なんでもいいが、まずは種を植えるだろ?」
俺はそう呟きながら、植物の種を土の中に埋める。
そして、埋めた地面に右手を添えて力を注ぎこむ。
「……見てくれ」
俺が埋めた地面からすぐに芽が生えてくる。
そして見る見る育っていき、すぐに果実をつける程の大きさに成長する。
「「「オオォォォォォ!」」」
これを見た村人は大歓声に包まれる。
シャルロッテ達も同様で、すぐに問いかけてくる。
「アーノルド、これはどういった現象なのですか?」
「まぁ落ち着いてシャルロッテ。俺の力を注ぐと植物が急激に成長するみたいなんだ」
俺は右手を見ながら話す。
「……すさまじい現象ですね。もし、これを量産すれば、すぐに食物にあふれる状態になるでしょう!」
「シャルロッテもそう思うだろ? 皆には作物を作る農業をお願いしたいと思っているんだ。もちろん、今のように俺も協力する」
俺が村人に語り掛けると――
「……是非! 是非、協力させてください!!」
「これなら私でも出来そうです!」
「先生は不思議な力があるんじゃの!」
――村人は全員が賛同してくれるようだった。
「ありがとう。もちろん、皆にはきっちりと働いた分の資金を与えていきたい。是非この村の為にも頑張ってくれ!」
「「「「わかりました!」」」」
村人たちの元気な返事を聞いた後、すぐに俺達は行動に移し始めた。
それから俺達はネルド村の周辺の何もない土地を農業区域に作り替え、数多くの食べ物を作り始めたのだ。
◇◇◇
農業を始めてからいずれも俺の力を使って育てていき、すぐに実をつけて収穫した食物を他国に販売するようにシャルロッテも動いてくれた。
更に、作り上げた食物の出来はとても良く、ポーション同様に食べた者の体調を改善する効果もある事が分かった。
「……これほどまでに上手くいくとは思わなかったな」
販売を開始した食物は瞬く間に人気となり、今では多くの国から作った作物を求められる状態となっている。
俺達は会議部屋に集まり、農業の成功を祝う。
「アーノルド! 作物の評判も好評で発注が止まりません!」
「そうみたいだな、引き続き他国との交渉を頼むシャルロッテ!」
「わかりました!」
「ん~……♪ とても美味しいし、何時までも食べていられル!」
隣に座っているラミリアも取れたての果物を頬張りながら話している。
「……食べながら話すなよラミリア。ほか、頬に付いてるぞ」
俺はラミリアの頬に付いている果物の断片を取り、口にいれる。
(……うん。甘い。それにポーションと同様の効果があるってんだから驚きだな)
作物を食べる事で体内に栄養を蓄えてくれる他に体の不調も治してくれる為、瞬く間に売れまくり得た莫大な収益は全て村人に還元するようにしていた。
その結果、全ての村人はお金に困る事の無い生活を送る事が出来ていた。
「……ほんと、アーノルドの力ってすごいわね。他にも応用方法があるんじゃないの?」
「そうだな。まだ分からないが一先ず、食料の供給はこの村で完結できただろう」
俺がそう呟くとシャルロッテも頷く。
「本当にそうですね。ドワーフさん達の頑張りもあって壁の製作も終わり、守りも強化されました。備えも問題ないでしょう」
「……じゃがアーノルド。よかったのか? ドワーフ族の者をこのネルド村に住まわせて」
ドワーフ族は壁作りの作業を終えた後、作物やポーションが気に入りすぎて作業員の大半がネルド村に移り住んできていた。
「あぁ……それも考えがあっての事だ」
「それって何なのよ、アーノルド?」
俺が勿体ぶっているとリーシアが突っ込んでくる。
「簡単さ。敵兵がネルド村に万が一侵入して入ってきた時に対抗できる術を持っていた方がいいだろ?」
「確かに、それもそうね……」
俯くリーシアを横目に、俺はシャルロッテに尋ねる。
「ドワーフ族って武器とかも作れるんだよな?」
「えぇ、製造関係は網羅している者が多いでしょう。住宅から武器、あらゆるものを作り出す技術をお持ちになっております」
「……なるほどの。そうなるとドワーフ族に武器を作ってもらおうって魂胆かの?」
「その通りだオイド。次はこの村だけで侵入者と対抗できる術を用意するぞ!」
俺は新たな取り組みを皆に共有するのだった。
「さて、今回の議題だが。アラバスト王国の動向を予想しつつ、今後のネルド村の動きを考えていこうと思う」
「ふぉっふぉっふぉ、アーノルドが進行役かの。こりゃ頼もしいわい」
「そこ、茶化さない」
俺はオイドに注意を促す。
そんなやり取りを眺めていたシャルロッテは話し出す。
「まず、アラバスト王国の動向ですか、諜報部隊の方々が頑張ってくれたようで共有させて頂きます」
「教えてくれシャルロッテ」
「はい。お父様は既に動いてくれているようで、アラバスト王国に対して警告を出すとの事です」
「それは助かる。そうなると、すぐにこの村に攻め込んでくるってのは考えづらいって事か?」
「そう思って頂いて差支えないでしょう。……ですが、不測の事態も想定しておくべきです。今の内に私たちが出来る取り組みも行って参りましょう」
凛とした態度で意見を言うシャルロッテは、頼もしい以外の何ものでもない。
そんな中、俺は昨日新たに分かった力の使い道を思い出していた。
「シャルロッテの言う通りだ。それでちょっと思ったんだが……ネルド村にいる村人に新しい仕事を作りたいと思っている」
「仕事……ですか?」
「あぁ、オイドから聞いた話だが、ここ周辺で生きていくために子供を売って得た資金で飢えを耐えるような最悪な行いが蔓延っているらしい。……そこで、この村で食べる物を作って安く供給していけばいいと考えているんだ」
「……そういう話は聞いた事があります。私としても解決したい問題の一つですね」
俯き考え込むシャルロッテを横目に、俺はラミリアに視線を向ける。
「初めはラミリアもその一人だと思っていたが……そうじゃない事は分かった」
ラミリアがぽけーっとした表情で俺を見つめていた。
「だが、そういった問題は俺も解決したいと考えている。……そういえばラミリア、昨日はグッスリ眠れたのか?」
「ウン! とっても柔らかかっタ!」
(……何がだ)
「そりゃよかった。……で、話は戻るが、この食料の問題は解決しないといけない事だと俺は思っている」
俺はそう提案すると、リーシアが申し訳なさそうに呟く。
「昨日の夕食とさっきの朝食でいろいろ素材を使い切っちゃったし……悪かったわね」
「いや、美味い料理を作ってもらって嬉しいぐらいだよ。俺達はある程度の蓄えがあるから他の街から仕入れる事は出来るが、他の者が全員そうだとは言えない」
「確かにそうじゃの……して、アーノルド。食料を用意する言ってもどうするんじゃ、農業でも行うのかの?」
――パチンッ!
俺は指を鳴らし、オイドに向かって笑みを浮かべる。
「そう! 農業を村人にお願いしようと考えているんだ」
「じゃが、農業の経験がない村の者ができるじゃろうか……?」
「大丈夫だ。俺に考えがある」
俺は皆にそう伝えると、村人を集めて広場に集まって貰う事にした。
皆が広間に集まる中、俺は昨日の夜に気付いた力の使い道を共有する事にした。
「こんな朝から呼んで申し訳ない。今日はちょっと村の皆にお願いしたい事があるんだ」
俺が村人に語り掛けると――
「アーノルドさんのお願いなら是非協力させてください!」
「私たちに出来る事なら協力させて頂きます!」
「先生のお願いなら何でも聞きますぞ!」
――皆はすぐに聴く体制になってくれた。
「ありがとう皆、話を聞く前に……ちょっと見てくれるか?」
協力的な村人を横目に、俺は用意していた果物の種を取り出し近くにあった木の枝で地面を掘り起こす。
「……なんでもいいが、まずは種を植えるだろ?」
俺はそう呟きながら、植物の種を土の中に埋める。
そして、埋めた地面に右手を添えて力を注ぎこむ。
「……見てくれ」
俺が埋めた地面からすぐに芽が生えてくる。
そして見る見る育っていき、すぐに果実をつける程の大きさに成長する。
「「「オオォォォォォ!」」」
これを見た村人は大歓声に包まれる。
シャルロッテ達も同様で、すぐに問いかけてくる。
「アーノルド、これはどういった現象なのですか?」
「まぁ落ち着いてシャルロッテ。俺の力を注ぐと植物が急激に成長するみたいなんだ」
俺は右手を見ながら話す。
「……すさまじい現象ですね。もし、これを量産すれば、すぐに食物にあふれる状態になるでしょう!」
「シャルロッテもそう思うだろ? 皆には作物を作る農業をお願いしたいと思っているんだ。もちろん、今のように俺も協力する」
俺が村人に語り掛けると――
「……是非! 是非、協力させてください!!」
「これなら私でも出来そうです!」
「先生は不思議な力があるんじゃの!」
――村人は全員が賛同してくれるようだった。
「ありがとう。もちろん、皆にはきっちりと働いた分の資金を与えていきたい。是非この村の為にも頑張ってくれ!」
「「「「わかりました!」」」」
村人たちの元気な返事を聞いた後、すぐに俺達は行動に移し始めた。
それから俺達はネルド村の周辺の何もない土地を農業区域に作り替え、数多くの食べ物を作り始めたのだ。
◇◇◇
農業を始めてからいずれも俺の力を使って育てていき、すぐに実をつけて収穫した食物を他国に販売するようにシャルロッテも動いてくれた。
更に、作り上げた食物の出来はとても良く、ポーション同様に食べた者の体調を改善する効果もある事が分かった。
「……これほどまでに上手くいくとは思わなかったな」
販売を開始した食物は瞬く間に人気となり、今では多くの国から作った作物を求められる状態となっている。
俺達は会議部屋に集まり、農業の成功を祝う。
「アーノルド! 作物の評判も好評で発注が止まりません!」
「そうみたいだな、引き続き他国との交渉を頼むシャルロッテ!」
「わかりました!」
「ん~……♪ とても美味しいし、何時までも食べていられル!」
隣に座っているラミリアも取れたての果物を頬張りながら話している。
「……食べながら話すなよラミリア。ほか、頬に付いてるぞ」
俺はラミリアの頬に付いている果物の断片を取り、口にいれる。
(……うん。甘い。それにポーションと同様の効果があるってんだから驚きだな)
作物を食べる事で体内に栄養を蓄えてくれる他に体の不調も治してくれる為、瞬く間に売れまくり得た莫大な収益は全て村人に還元するようにしていた。
その結果、全ての村人はお金に困る事の無い生活を送る事が出来ていた。
「……ほんと、アーノルドの力ってすごいわね。他にも応用方法があるんじゃないの?」
「そうだな。まだ分からないが一先ず、食料の供給はこの村で完結できただろう」
俺がそう呟くとシャルロッテも頷く。
「本当にそうですね。ドワーフさん達の頑張りもあって壁の製作も終わり、守りも強化されました。備えも問題ないでしょう」
「……じゃがアーノルド。よかったのか? ドワーフ族の者をこのネルド村に住まわせて」
ドワーフ族は壁作りの作業を終えた後、作物やポーションが気に入りすぎて作業員の大半がネルド村に移り住んできていた。
「あぁ……それも考えがあっての事だ」
「それって何なのよ、アーノルド?」
俺が勿体ぶっているとリーシアが突っ込んでくる。
「簡単さ。敵兵がネルド村に万が一侵入して入ってきた時に対抗できる術を持っていた方がいいだろ?」
「確かに、それもそうね……」
俯くリーシアを横目に、俺はシャルロッテに尋ねる。
「ドワーフ族って武器とかも作れるんだよな?」
「えぇ、製造関係は網羅している者が多いでしょう。住宅から武器、あらゆるものを作り出す技術をお持ちになっております」
「……なるほどの。そうなるとドワーフ族に武器を作ってもらおうって魂胆かの?」
「その通りだオイド。次はこの村だけで侵入者と対抗できる術を用意するぞ!」
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