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19 リーシアとの夜会話
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リーシアが来た事によってラミリアと一緒に寝る事が出来ないと判断した俺は、ラミリアに自室で寝るように伝え一人で寝ようとしたのだが……寝付けなかった。
ラミリアの温もりが恋しく思いながらも皆が寝静まった後、俺は薬屋の外にある小川のほとりに座り込む。
(……はぁ、こんなんじゃリーシアに言い訳できないな)
俺はそう思っていると、深夜になった今でも未だ作業を続けているドワーフ達に気付く。
「……こんな夜遅くまでよくやるよな」
作業をしてくれている手前、俺は作業員のドワーフたちにポーションを提供しているのだが、俺のポーションを服用すればどんな疲れも吹き飛んで”翼を授かる感覚”になるようで何時間も作業を行えるらしい。
(……絶対に体に負担かけているよな)
そんな事を考えていると、薬屋から寝間着のリーシアが出てくる。
「あら、アーノルド。起きていたの」
「……リーシアこそ。眠れないのか?」
「良い部屋だったけど慣れない部屋だからね。ちょっと寝つきが悪かったのよ。……隣、いいかしら?」
「ん? あぁ、構わない」
リーシアはニコッと笑顔を浮かべると、俺の隣に座り込む。
「えへへ……こんなにゆっくりするの、私が宮廷に行った時以来ね」
「そうだな。あの時はリーシアは仕事もあったしすぐ追い返したけど、今回はそうじゃないもんな」
「えぇ。……でもシャルロッテさんもいるなんて思わなかったわ」
「はは、お前の驚きっぷりは笑えた」
「うるさいわね。……あと、ラミリアさんだっけ。あの小動物のような可愛い子とはどういう繋がりなのよ?」
――ビクッ!
俺は寝付けなかった理由を思い出し、一人ビクついてしまう。
どうやら、リーシアもラミリアに興味深々の様子だ。
「あいつは俺がネルド村に来る時に傷だらけだったのを拾ったんだよ」
「……えっ!? そうだったの?」
「あぁ……ラミリアは魔法を使える体にする為に実験として体を弄られていたみたいで……かなりひどい目にあっていたようだ」
「そう……だったんだ」
俯くリーシアを横目に、俺は自身の右手を見ながら続ける。
「俺が拾った時は瀕死状態で……俺の力を使わなかったら、恐らく死んでいただろうな」
「……相変わらず、アーノルドの力ってすごいわよね」
「まぁ……な。俺もいつも助けられているよ」
リーシアは薬屋の方をチラっと見て話す。
「ねぇ、アーノルド。ポーションってもしかして……」
「あぁ、俺の右手の力を注いだ水を小さいビンに入れて売っているんだ」
「……なるほどね。いろいろ納得がいったわ。カレンさんからポーションの話を聞いたけど、あまりにも出来過ぎた効果だったから本当かどうか半信半疑だったのよ」
「普通はそう思うさ。俺もまさかこんな効果があるとは思わなかった。……いろいろ試してみるもんだな」
「そうね。それで今はあの店でポーションを売っているの?」
リーシアは薬屋の方を指差しながら問いかけてくる。
「あぁ、ラミリアとシャルロッテにも協力してもらっているんだ」
「……ちょっと! 一国のお嬢様に何させてんのよ!」
リーシアが至極当たり前の反応をする。
「リーシアもそう思うよな? いや、本人がやりたいって言うんだよ」
「そうなの? って。そもそも何でシャルロッテさんがネルド村にいるのよ」
「それが……シャルロッテのお父さんが心臓を弱めたらしくてな、亡くなりかけていたんだよ。……それでわざわざ宮廷からこのネルド村に尋ねてきたんだ」
「……そうだったのね。で、アーノルドがシャルロッテさんのお父さんを治したってわけ?」
「あぁ。それからシャルロッテもポーションの事を知ってからはネルド村に移住してきたんだ。今は薬屋の一室を貸して生活しながら全世界にポーションを広める手伝いをしてくれているって訳だ」
「……へぇ、だからアラバスト王国にまでポーションが出回ってきたのね」
「そうだろうな。でも、俺もネルド村以外の活動はシャルロッテに任せていたが、まさかこんな事になるなんて思わなかったよ」
「そうよ。アラバスト王国の動向も気になるし……こんなゆっくりしていていいの?」
リーシアは少し不安そうな表情をする。
「俺も細かい事は分からんが、シャルロッテに任せておけば大丈夫だろ。シャルロッテは物凄く有能だからな」
「それは……確かに、シャルロッテさんなら何とかしてくれそうな気はするけど……頼ってばっかりじゃダメだと思うわよ?」
「だな。俺もこのネルド村で出来る限りの対策をしようとは思っている。村長だし」
「……へ?」
リーシアが気の抜けた声を上げる。
「……アーノルドって村長だったんだ」
「まぁ……驚くよな。俺がポーションを開発した事で村に貢献した名誉を称えて抜擢されたんだ。……嫌だったけどな、断れなかったんだ」
「ふふ、アーノルドらしいわね」
「それで村長になって初めの施策として――」
俺はドワーフが作業をしている内壁の方を指差す。
「――ほら、見えるだろ。村の周辺に壁を作って侵入できないようにする予定なんだ」
「……なるほどね。ってこんな時間まで作業させちゃって……ちゃんと休憩をさせてあげなさいよ」
「俺もそう言っているんだけどな、ドワーフの作業員もポーションの生産地を守るって言ってやる気なんだよ」
「そう。……ほんと、ポーションって人気なのね。ちょっと飲んでみたくなっちゃった」
「……なら一つ飲むか?」
「え、いいの?」
「構わないぞ」
「……なら、お願いしようかしら」
「わかった。待ってろ」
俺は立ち上がり薬屋にポーションを一つ取りに行く。
「ほら、これだ」
手に持つポーションをリーシアに手渡す。
「ありがと……頂くわね」
――ポンっ……ゴクッゴクッ
リーシアは受け取ると、何の躊躇もなくコルク栓を開けて飲み干す。
「……っ!?」
リーシアは飲んですぐ自身の両手を見て何かに驚いていた。
「凄いわね、これ。……長旅に大荷物で体が悲鳴を上げていたのに……キレイさっぱり無くなったわ」
「そりゃよかった」
もうお馴染みの反応で俺は聞き流す。
「これならカレンさんが話したくなるものわかるわ。……これにアーノルドの力を注いだ水を入れてるの?」
リーシアは空ビンを見ながら呟く。
「その通りだ。アラバスト王国だと劇薬っていう噂が出回っているらしいけどな」
「そんな噂が……はぁ、もったいない」
「はは……」
こんなにゆっくり話したのは数年ぶりだろう……心が安らぐのを感じる。
そんなことを考えていると、リーシアは背伸びをする。
「ん~……ちょっと長居しすぎちゃった。いい加減寝ないと明日に響くわね」
「そうだな。……よいしょっと」
俺はそう言いながら立ち上がると、薬屋の方から寝間着のラミリアが姿を現す。
「……アーノルド! 起きてタ!」
「ラミリアっ!? まだ起きていたのか?」
「ウン……」
(……俺がポーションを取りに行った時の物音で起きたのか?)
ラミリアは目を擦りながら答える。
「あらら……ラミリアさん、もう夜遅いですよ。寝なくていいんですか?」
「……アーノルドと一緒じゃないからぐっすり眠れないノ」
(……おいぃ! ラミリア、それをここで言うな!)
ラミリアの言葉を聞いたリーシアはゆっくりと俺に視線を向ける。
「……どういう事?」
リーシアは先ほど話していた声色とは違い、凄みのある声色で尋ねてくる。
「いやっ! あの……えっと……ラミリアは一体何をいっているんだろうな?」
(ラミリア、適当に誤魔化せ!)
俺はラミリアにも目で意志を伝えようとしたが――
「……? アーノルドといっつも一緒に寝てるノ」
――純粋なラミリアはリーシアの質問に答える。
次第にリーシアが震えだす。
「……あ、あ……アーノルド!! どういう事か私にも分かるように説明して貰えるかしら!」
「あ~もう!! ちげぇよ! 絶対勘違いしているだろ、お前!」
「……あぁ……アーノルドがいたいけな少女に手を出す日が来るなんて」
リーシアは天に拝み、全く俺の話を聞こうしない。
「もう、だから俺の話を聞けって! ……さっきも話したけど、こいつは酷い目にあわされていて、体は俺の力で治したけど一人で寝る事が出来なかったんだよ! だから俺が仕方なく添い寝をしていたんだ! 仕方ないだろ?」
俺はそんなリーシアにラミリアと一緒に寝ていた経緯を懇切丁寧に説明をする。
「……あら、そうだったの。ラミリアさん、怖かったわね……よしよし」
(こいつ……本当に理解しているのか)
事情を知ったリーシアはラミリアを抱きしめながら頭をナデナデする。
「ん~……♪」
ラミリアは撫でられて気持ちよさそうだ。
「はぁ……変な勘違いをするなよな、全く……」
俺はそんな二人を眺めながら深いため息を吐く。
そんな中、リーシアはかがんでラミリアと顔の高さを合わせてラミリアに語り掛ける。
「ねぇ、ラミリアさん。一人で寝られないのなら私が添い寝してあげましょうか?」
「え……いいノ? リーシアお姉ちゃン!」
「えぇ、もちろんです」
リーシアは特大の笑顔をラミリアに向ける。
「さぁ、ラミリアさん。危ない野獣さんじゃなくて、私と一緒に寝ましょうね!」
「ウン!」
(……誰が野獣だ)
リーシアはラミリアと手をつなぎ、俺の方に視線を向ける。
「それじゃアーノルド。私たちは先に失礼するわ」
「アーノルド、おやすみなさイ!」
「……はぁ、わかったよ。おやすみ二人とも」
俺は深いため息を吐きながら、薬屋に消えていく二人を見守る。
「……さて、俺も寝るとしようかな。……ん?」
薬屋に戻ろうとしたその時、足元にあった萎れかけた花があったので俺はきまぐれでしゃがみ込み、花に右手の力を注いでみた。
すると、萎れかけの花は見る見る元気になり、再び花開く。
「……マジか。この力、植物にも使えるのかよ」
こうして俺は新たな力の使い道と、リーシアとの久しぶりの夜会話を終えた。
その後、ラミリアをリーシアに取られた俺の寝つきが悪かったのは言うまでもない。
ラミリアの温もりが恋しく思いながらも皆が寝静まった後、俺は薬屋の外にある小川のほとりに座り込む。
(……はぁ、こんなんじゃリーシアに言い訳できないな)
俺はそう思っていると、深夜になった今でも未だ作業を続けているドワーフ達に気付く。
「……こんな夜遅くまでよくやるよな」
作業をしてくれている手前、俺は作業員のドワーフたちにポーションを提供しているのだが、俺のポーションを服用すればどんな疲れも吹き飛んで”翼を授かる感覚”になるようで何時間も作業を行えるらしい。
(……絶対に体に負担かけているよな)
そんな事を考えていると、薬屋から寝間着のリーシアが出てくる。
「あら、アーノルド。起きていたの」
「……リーシアこそ。眠れないのか?」
「良い部屋だったけど慣れない部屋だからね。ちょっと寝つきが悪かったのよ。……隣、いいかしら?」
「ん? あぁ、構わない」
リーシアはニコッと笑顔を浮かべると、俺の隣に座り込む。
「えへへ……こんなにゆっくりするの、私が宮廷に行った時以来ね」
「そうだな。あの時はリーシアは仕事もあったしすぐ追い返したけど、今回はそうじゃないもんな」
「えぇ。……でもシャルロッテさんもいるなんて思わなかったわ」
「はは、お前の驚きっぷりは笑えた」
「うるさいわね。……あと、ラミリアさんだっけ。あの小動物のような可愛い子とはどういう繋がりなのよ?」
――ビクッ!
俺は寝付けなかった理由を思い出し、一人ビクついてしまう。
どうやら、リーシアもラミリアに興味深々の様子だ。
「あいつは俺がネルド村に来る時に傷だらけだったのを拾ったんだよ」
「……えっ!? そうだったの?」
「あぁ……ラミリアは魔法を使える体にする為に実験として体を弄られていたみたいで……かなりひどい目にあっていたようだ」
「そう……だったんだ」
俯くリーシアを横目に、俺は自身の右手を見ながら続ける。
「俺が拾った時は瀕死状態で……俺の力を使わなかったら、恐らく死んでいただろうな」
「……相変わらず、アーノルドの力ってすごいわよね」
「まぁ……な。俺もいつも助けられているよ」
リーシアは薬屋の方をチラっと見て話す。
「ねぇ、アーノルド。ポーションってもしかして……」
「あぁ、俺の右手の力を注いだ水を小さいビンに入れて売っているんだ」
「……なるほどね。いろいろ納得がいったわ。カレンさんからポーションの話を聞いたけど、あまりにも出来過ぎた効果だったから本当かどうか半信半疑だったのよ」
「普通はそう思うさ。俺もまさかこんな効果があるとは思わなかった。……いろいろ試してみるもんだな」
「そうね。それで今はあの店でポーションを売っているの?」
リーシアは薬屋の方を指差しながら問いかけてくる。
「あぁ、ラミリアとシャルロッテにも協力してもらっているんだ」
「……ちょっと! 一国のお嬢様に何させてんのよ!」
リーシアが至極当たり前の反応をする。
「リーシアもそう思うよな? いや、本人がやりたいって言うんだよ」
「そうなの? って。そもそも何でシャルロッテさんがネルド村にいるのよ」
「それが……シャルロッテのお父さんが心臓を弱めたらしくてな、亡くなりかけていたんだよ。……それでわざわざ宮廷からこのネルド村に尋ねてきたんだ」
「……そうだったのね。で、アーノルドがシャルロッテさんのお父さんを治したってわけ?」
「あぁ。それからシャルロッテもポーションの事を知ってからはネルド村に移住してきたんだ。今は薬屋の一室を貸して生活しながら全世界にポーションを広める手伝いをしてくれているって訳だ」
「……へぇ、だからアラバスト王国にまでポーションが出回ってきたのね」
「そうだろうな。でも、俺もネルド村以外の活動はシャルロッテに任せていたが、まさかこんな事になるなんて思わなかったよ」
「そうよ。アラバスト王国の動向も気になるし……こんなゆっくりしていていいの?」
リーシアは少し不安そうな表情をする。
「俺も細かい事は分からんが、シャルロッテに任せておけば大丈夫だろ。シャルロッテは物凄く有能だからな」
「それは……確かに、シャルロッテさんなら何とかしてくれそうな気はするけど……頼ってばっかりじゃダメだと思うわよ?」
「だな。俺もこのネルド村で出来る限りの対策をしようとは思っている。村長だし」
「……へ?」
リーシアが気の抜けた声を上げる。
「……アーノルドって村長だったんだ」
「まぁ……驚くよな。俺がポーションを開発した事で村に貢献した名誉を称えて抜擢されたんだ。……嫌だったけどな、断れなかったんだ」
「ふふ、アーノルドらしいわね」
「それで村長になって初めの施策として――」
俺はドワーフが作業をしている内壁の方を指差す。
「――ほら、見えるだろ。村の周辺に壁を作って侵入できないようにする予定なんだ」
「……なるほどね。ってこんな時間まで作業させちゃって……ちゃんと休憩をさせてあげなさいよ」
「俺もそう言っているんだけどな、ドワーフの作業員もポーションの生産地を守るって言ってやる気なんだよ」
「そう。……ほんと、ポーションって人気なのね。ちょっと飲んでみたくなっちゃった」
「……なら一つ飲むか?」
「え、いいの?」
「構わないぞ」
「……なら、お願いしようかしら」
「わかった。待ってろ」
俺は立ち上がり薬屋にポーションを一つ取りに行く。
「ほら、これだ」
手に持つポーションをリーシアに手渡す。
「ありがと……頂くわね」
――ポンっ……ゴクッゴクッ
リーシアは受け取ると、何の躊躇もなくコルク栓を開けて飲み干す。
「……っ!?」
リーシアは飲んですぐ自身の両手を見て何かに驚いていた。
「凄いわね、これ。……長旅に大荷物で体が悲鳴を上げていたのに……キレイさっぱり無くなったわ」
「そりゃよかった」
もうお馴染みの反応で俺は聞き流す。
「これならカレンさんが話したくなるものわかるわ。……これにアーノルドの力を注いだ水を入れてるの?」
リーシアは空ビンを見ながら呟く。
「その通りだ。アラバスト王国だと劇薬っていう噂が出回っているらしいけどな」
「そんな噂が……はぁ、もったいない」
「はは……」
こんなにゆっくり話したのは数年ぶりだろう……心が安らぐのを感じる。
そんなことを考えていると、リーシアは背伸びをする。
「ん~……ちょっと長居しすぎちゃった。いい加減寝ないと明日に響くわね」
「そうだな。……よいしょっと」
俺はそう言いながら立ち上がると、薬屋の方から寝間着のラミリアが姿を現す。
「……アーノルド! 起きてタ!」
「ラミリアっ!? まだ起きていたのか?」
「ウン……」
(……俺がポーションを取りに行った時の物音で起きたのか?)
ラミリアは目を擦りながら答える。
「あらら……ラミリアさん、もう夜遅いですよ。寝なくていいんですか?」
「……アーノルドと一緒じゃないからぐっすり眠れないノ」
(……おいぃ! ラミリア、それをここで言うな!)
ラミリアの言葉を聞いたリーシアはゆっくりと俺に視線を向ける。
「……どういう事?」
リーシアは先ほど話していた声色とは違い、凄みのある声色で尋ねてくる。
「いやっ! あの……えっと……ラミリアは一体何をいっているんだろうな?」
(ラミリア、適当に誤魔化せ!)
俺はラミリアにも目で意志を伝えようとしたが――
「……? アーノルドといっつも一緒に寝てるノ」
――純粋なラミリアはリーシアの質問に答える。
次第にリーシアが震えだす。
「……あ、あ……アーノルド!! どういう事か私にも分かるように説明して貰えるかしら!」
「あ~もう!! ちげぇよ! 絶対勘違いしているだろ、お前!」
「……あぁ……アーノルドがいたいけな少女に手を出す日が来るなんて」
リーシアは天に拝み、全く俺の話を聞こうしない。
「もう、だから俺の話を聞けって! ……さっきも話したけど、こいつは酷い目にあわされていて、体は俺の力で治したけど一人で寝る事が出来なかったんだよ! だから俺が仕方なく添い寝をしていたんだ! 仕方ないだろ?」
俺はそんなリーシアにラミリアと一緒に寝ていた経緯を懇切丁寧に説明をする。
「……あら、そうだったの。ラミリアさん、怖かったわね……よしよし」
(こいつ……本当に理解しているのか)
事情を知ったリーシアはラミリアを抱きしめながら頭をナデナデする。
「ん~……♪」
ラミリアは撫でられて気持ちよさそうだ。
「はぁ……変な勘違いをするなよな、全く……」
俺はそんな二人を眺めながら深いため息を吐く。
そんな中、リーシアはかがんでラミリアと顔の高さを合わせてラミリアに語り掛ける。
「ねぇ、ラミリアさん。一人で寝られないのなら私が添い寝してあげましょうか?」
「え……いいノ? リーシアお姉ちゃン!」
「えぇ、もちろんです」
リーシアは特大の笑顔をラミリアに向ける。
「さぁ、ラミリアさん。危ない野獣さんじゃなくて、私と一緒に寝ましょうね!」
「ウン!」
(……誰が野獣だ)
リーシアはラミリアと手をつなぎ、俺の方に視線を向ける。
「それじゃアーノルド。私たちは先に失礼するわ」
「アーノルド、おやすみなさイ!」
「……はぁ、わかったよ。おやすみ二人とも」
俺は深いため息を吐きながら、薬屋に消えていく二人を見守る。
「……さて、俺も寝るとしようかな。……ん?」
薬屋に戻ろうとしたその時、足元にあった萎れかけた花があったので俺はきまぐれでしゃがみ込み、花に右手の力を注いでみた。
すると、萎れかけの花は見る見る元気になり、再び花開く。
「……マジか。この力、植物にも使えるのかよ」
こうして俺は新たな力の使い道と、リーシアとの久しぶりの夜会話を終えた。
その後、ラミリアをリーシアに取られた俺の寝つきが悪かったのは言うまでもない。
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