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17 噂の出所
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仕事を終えた俺達は、広まっている噂について話し合っていた。
「……にしても、可笑しなことを言う輩もいるもんじゃのう」
オイドは出回っている噂に対してご立腹な様子だ。
「だな。まぁ……俺としては別にどの国でどんな噂が出ていようが関係ないけどな。気にしなくていいと思うぞ」
「そうは言いますが……」
困惑した表情を浮かべるシャルロットを横目に俺は続ける。
「それに確か、その噂が出回っているのがアラバスト王国って言っていたよな?」
「はい。そうおっしゃっていましたね。今は更に詳しく噂話の出所を調べて頂いております」
「……俺としてはアラバスト王国とはあまり関わり合いになりたくないんだよな。注文をしてこないなら……それで丁度良かったと思っているぐらいだ」
俺がツンとした態度をしていると、シャルロッテが尋ねてくる。
「……確か、アラバスト王国はアーノルドが元々いた国でしたよね?」
「そうだ。……でも、俺は元々はアラバスト王国に侵略されたフカミィ村っていう村出身だったんだよ。そこにアラバスト王国が攻めてきて俺は捕虜として捕まったんだ」
「……そうだったのですか!?」
「アーノルド……怖い思いしなかっタ?」
「何と……アーノルドも苦労しておったんじゃな」
皆は心配した表情で尋ねてくる。
「皆はもう知っていると思うけど、俺の体には女神の祝福による力がある。これは俺がフカミィ村にいた時に宿ったものだ。その影響で魔法も使えるようになった」
俺は自分の右手を見ながら話す。
「捕まった理由も、魔法が使える俺の体を調べ尽くしたかったからだ。逃げる事も出来たが、逃げられない理由もあったからな、実験にずっと耐え続けるしかなかった」
――ぽん
俺は隣で座って見上げているラミリアの頭に手を乗せる。
「だから、ラミリアの事を知った時も他人事じゃないとおもったんだよ」
「ん……。でも、逃げられない理由ってなんだったノ?」
ラミリアはほんわかした表情をしながら尋ねてくる。
「あぁ、俺には幼馴染にリーシアっていうやつがいてな。一緒に捕まったんだけど、俺は実験とリーシアの命と天秤にかけられ実験に従うしかなかったのさ」
「……確か、リーシアさんって一度宮廷にお越しになった方ですよね」
シャルロッテは思い出しながら話す。
「あぁ、あいつだ」
「……アーノルドはリーシアさんを守る為に実験に協力していたのですね」
シャルロッテは俺の手を掴み、心配そうな表情をする。
「まぁでも……妙な実験が数年続いたある日、とある事がキッカケでその実験もなくなったんだけどな」
「キッカケですか?」
「確か……アラバスト王国の王妃が倒れてな、俺が治したら周りの見る目が変わったんだよ」
「はは……アーノルドはアラバスト王国でも他者を救っていたのですね」
「あれは完全にきまぐれだけどな。それから王様に気に入られた俺は息子の付き人になって過ごすようになり、俺は医師として、リーシアは城内の調理場で飯を作る仕事に割り振られて普通の暮らしが出来るようになったんだ」
「そうだったのですね……やはり、あの時にアーノルドと一緒にいらっしゃったのはアラバスト王国の王子だったのですか……あの時は仲違いの原因を作ってしまい、申し訳ありませんでした」
シャルロッテは昔の事を思い出しながら謝罪をしてくる。
「あ~……気にしないでくれ。俺も我儘な王子の相手をするのに嫌気がさしていたし、抜け出す為に丁度いい口実だったさ」
そんな事を放していると、薬屋の外から――
「薬屋の兄ちゃん! 兄ちゃんに用があるって子が来たぞ。ちょっと来てくれるか!」
――と、昼間塀を作っていたドワーフの声が聞こえた。
外は日が沈みかけており、間もなく夜になりそうな時だった。
(……なんだよ。こんな時間に)
「すまん。ちょっと行ってくる」
俺は皆にそう伝えると、一人薬屋の外まで向かった。
薬屋の外に出ると、昼間に俺の相手をしてくれたドワーフ族のおじさんと結構な荷物を持った女性が立っていた。
「……は?」
「久しぶりね。アーノルド」
そこには、髪は栗色で肩まで伸びて手入れが行き届いており、瞳は透き通る空色をした女性……見間違える事は決してないリーシア・ラリエットが立っていた。
「……はぁ!? ……いやいや、なんでお前がここにいるんだよ!」
「うるさいわね。話があってきたのよ! ……あ、おじさん。ここまでご案内頂き、ありがとうございます」
リーシアは俺に突っかかってくるや否や、案内してくれたドワーフのおじさんに丁寧にお辞儀をしてお礼を伝えていた。
(……こいつ、俺以外には礼儀正しいんだよな)
「二人とも仲良くな。それじゃ作業に戻るとするよ」
「あ、夜遅くまですみません。よろしくお願い致します」
俺もしっかりとお礼を伝えた後、リーシアに視線を戻す。
「……えっと、立ち話もアレだ。中に入れよ」
「わかったわ。お邪魔させて貰おうかしら」
俺は一先ず、リーシアを皆がいる部屋まで連れていく事にした。
リーシアを部屋に案内すると、初めにオイドが目の色を変えて尋ねてくる。
「お、おいアーノルド! そのベッピンさんはどこの誰じゃ!!」
オイドはやや興奮気味である。
「えっと……さっき話していたリーシアだ。リーシア、自己紹介を頼む」
「分かっているわ。……突然お邪魔して申し訳ありません。私はリーシア・ラリエットと申します。アーノルドとは子供頃からの付き合いで、料理が得意です。よろしくお願い致します」
「これはご丁寧に……わしはオイド・ロールじゃ」
すると、シャルロッテは両手を合わせリーシアに挨拶をする。
「お久しぶりですね、リーシアさん! 元気にしていましたか?」
「……え!? シャルロッテさん!? 何でここに!?」
リーシアはさっき俺がリーシアを見た時と同じような反応をする。
「はは……ちょっといろいろありまして」
シャルロッテとリーシアは俺が宮廷に住み着いて間もない頃、身辺調査とか言って訪れてきた時から仲良くなっている間柄だ。
「……とてもキレイ!」
――ぱふっ
そんな中、ラミリアはリーシアに駆け寄り抱き着く。
「私、ラミリア。ラミリア・スーザ―!」
「ありがとうございます、ラミリアさん。……ってアーノルド。こんな幼くて可愛い子を傍に置いているなんて……ここでどういう生活をしていたのよ!」
リーシアは凄みのある声色に変えて俺を睨みつけてくる。
「……そんな目で睨むな。それにお前、何か勘違いをしているからな」
「本当かしら……ラミリアさん、こいつに変な事されなかった?」
「ううん! アーノルド、とっても優しくしてくれタ!」
「……アーノルド」
「いやいやラミリア、変な言い方するな! 誤解だぞリーシア。俺はラミリアの保護者的立ち位置なだけで、お前が思っているような関係じゃない。……って細かい事はいいだろ!」
「ふん、どうだか……」
リーシアの疑いの目はまだ晴れていない様子だった。
「はぁ……で、お前の用ってなんだよ」
リーシアは思い出したかのように、俺に語り掛ける。
「……あ……そうよっ! こんなまったりしている暇じゃないわ。アーノルド。すぐにこのネルド村から逃げて! アラバスト王国がこの村を攻めようと画策しているのよ!」
リーシアの言葉でノホホンとした部屋の空気は一瞬で凍り付く。
「な、なんじゃと!?」
オイドが驚きを示す中、周囲の者も表情を曇らせる。
「……それは穏やかじゃありませんね」
「アーノルド……よくないコト?」
「まぁな。……リーシア、詳しく教えてくれないか?」
こうして、リーシアはとんでもない情報と共にネルド村に訪れたのであった。
「……にしても、可笑しなことを言う輩もいるもんじゃのう」
オイドは出回っている噂に対してご立腹な様子だ。
「だな。まぁ……俺としては別にどの国でどんな噂が出ていようが関係ないけどな。気にしなくていいと思うぞ」
「そうは言いますが……」
困惑した表情を浮かべるシャルロットを横目に俺は続ける。
「それに確か、その噂が出回っているのがアラバスト王国って言っていたよな?」
「はい。そうおっしゃっていましたね。今は更に詳しく噂話の出所を調べて頂いております」
「……俺としてはアラバスト王国とはあまり関わり合いになりたくないんだよな。注文をしてこないなら……それで丁度良かったと思っているぐらいだ」
俺がツンとした態度をしていると、シャルロッテが尋ねてくる。
「……確か、アラバスト王国はアーノルドが元々いた国でしたよね?」
「そうだ。……でも、俺は元々はアラバスト王国に侵略されたフカミィ村っていう村出身だったんだよ。そこにアラバスト王国が攻めてきて俺は捕虜として捕まったんだ」
「……そうだったのですか!?」
「アーノルド……怖い思いしなかっタ?」
「何と……アーノルドも苦労しておったんじゃな」
皆は心配した表情で尋ねてくる。
「皆はもう知っていると思うけど、俺の体には女神の祝福による力がある。これは俺がフカミィ村にいた時に宿ったものだ。その影響で魔法も使えるようになった」
俺は自分の右手を見ながら話す。
「捕まった理由も、魔法が使える俺の体を調べ尽くしたかったからだ。逃げる事も出来たが、逃げられない理由もあったからな、実験にずっと耐え続けるしかなかった」
――ぽん
俺は隣で座って見上げているラミリアの頭に手を乗せる。
「だから、ラミリアの事を知った時も他人事じゃないとおもったんだよ」
「ん……。でも、逃げられない理由ってなんだったノ?」
ラミリアはほんわかした表情をしながら尋ねてくる。
「あぁ、俺には幼馴染にリーシアっていうやつがいてな。一緒に捕まったんだけど、俺は実験とリーシアの命と天秤にかけられ実験に従うしかなかったのさ」
「……確か、リーシアさんって一度宮廷にお越しになった方ですよね」
シャルロッテは思い出しながら話す。
「あぁ、あいつだ」
「……アーノルドはリーシアさんを守る為に実験に協力していたのですね」
シャルロッテは俺の手を掴み、心配そうな表情をする。
「まぁでも……妙な実験が数年続いたある日、とある事がキッカケでその実験もなくなったんだけどな」
「キッカケですか?」
「確か……アラバスト王国の王妃が倒れてな、俺が治したら周りの見る目が変わったんだよ」
「はは……アーノルドはアラバスト王国でも他者を救っていたのですね」
「あれは完全にきまぐれだけどな。それから王様に気に入られた俺は息子の付き人になって過ごすようになり、俺は医師として、リーシアは城内の調理場で飯を作る仕事に割り振られて普通の暮らしが出来るようになったんだ」
「そうだったのですね……やはり、あの時にアーノルドと一緒にいらっしゃったのはアラバスト王国の王子だったのですか……あの時は仲違いの原因を作ってしまい、申し訳ありませんでした」
シャルロッテは昔の事を思い出しながら謝罪をしてくる。
「あ~……気にしないでくれ。俺も我儘な王子の相手をするのに嫌気がさしていたし、抜け出す為に丁度いい口実だったさ」
そんな事を放していると、薬屋の外から――
「薬屋の兄ちゃん! 兄ちゃんに用があるって子が来たぞ。ちょっと来てくれるか!」
――と、昼間塀を作っていたドワーフの声が聞こえた。
外は日が沈みかけており、間もなく夜になりそうな時だった。
(……なんだよ。こんな時間に)
「すまん。ちょっと行ってくる」
俺は皆にそう伝えると、一人薬屋の外まで向かった。
薬屋の外に出ると、昼間に俺の相手をしてくれたドワーフ族のおじさんと結構な荷物を持った女性が立っていた。
「……は?」
「久しぶりね。アーノルド」
そこには、髪は栗色で肩まで伸びて手入れが行き届いており、瞳は透き通る空色をした女性……見間違える事は決してないリーシア・ラリエットが立っていた。
「……はぁ!? ……いやいや、なんでお前がここにいるんだよ!」
「うるさいわね。話があってきたのよ! ……あ、おじさん。ここまでご案内頂き、ありがとうございます」
リーシアは俺に突っかかってくるや否や、案内してくれたドワーフのおじさんに丁寧にお辞儀をしてお礼を伝えていた。
(……こいつ、俺以外には礼儀正しいんだよな)
「二人とも仲良くな。それじゃ作業に戻るとするよ」
「あ、夜遅くまですみません。よろしくお願い致します」
俺もしっかりとお礼を伝えた後、リーシアに視線を戻す。
「……えっと、立ち話もアレだ。中に入れよ」
「わかったわ。お邪魔させて貰おうかしら」
俺は一先ず、リーシアを皆がいる部屋まで連れていく事にした。
リーシアを部屋に案内すると、初めにオイドが目の色を変えて尋ねてくる。
「お、おいアーノルド! そのベッピンさんはどこの誰じゃ!!」
オイドはやや興奮気味である。
「えっと……さっき話していたリーシアだ。リーシア、自己紹介を頼む」
「分かっているわ。……突然お邪魔して申し訳ありません。私はリーシア・ラリエットと申します。アーノルドとは子供頃からの付き合いで、料理が得意です。よろしくお願い致します」
「これはご丁寧に……わしはオイド・ロールじゃ」
すると、シャルロッテは両手を合わせリーシアに挨拶をする。
「お久しぶりですね、リーシアさん! 元気にしていましたか?」
「……え!? シャルロッテさん!? 何でここに!?」
リーシアはさっき俺がリーシアを見た時と同じような反応をする。
「はは……ちょっといろいろありまして」
シャルロッテとリーシアは俺が宮廷に住み着いて間もない頃、身辺調査とか言って訪れてきた時から仲良くなっている間柄だ。
「……とてもキレイ!」
――ぱふっ
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「ありがとうございます、ラミリアさん。……ってアーノルド。こんな幼くて可愛い子を傍に置いているなんて……ここでどういう生活をしていたのよ!」
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「……そんな目で睨むな。それにお前、何か勘違いをしているからな」
「本当かしら……ラミリアさん、こいつに変な事されなかった?」
「ううん! アーノルド、とっても優しくしてくれタ!」
「……アーノルド」
「いやいやラミリア、変な言い方するな! 誤解だぞリーシア。俺はラミリアの保護者的立ち位置なだけで、お前が思っているような関係じゃない。……って細かい事はいいだろ!」
「ふん、どうだか……」
リーシアの疑いの目はまだ晴れていない様子だった。
「はぁ……で、お前の用ってなんだよ」
リーシアは思い出したかのように、俺に語り掛ける。
「……あ……そうよっ! こんなまったりしている暇じゃないわ。アーノルド。すぐにこのネルド村から逃げて! アラバスト王国がこの村を攻めようと画策しているのよ!」
リーシアの言葉でノホホンとした部屋の空気は一瞬で凍り付く。
「な、なんじゃと!?」
オイドが驚きを示す中、周囲の者も表情を曇らせる。
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