宮廷追放された医師の薬屋ハーレムライフ~宮廷で女神の祝福を授かった医者だったが、医療ミスで田舎に追放されたので薬屋として生きていきます~

笹塚シノン

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16 村長の役目とは

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俺は村長になる旨を現村長に伝えに行った。
すると――

「なんと!!!! それはすぐに皆に知らせなくては!」

――といった具合ですぐに村人を全員集めてくる。

「皆、今日からアーノルドがこのネルド村の村長になる。何かあればアーノルドに頼るように!」
「「「わぁぁ!!」」」
「アーノルドさ~ん!」

村人の反応はうるさいぐらいで、俺が村長になる事に賛同してくれているようだ。

「さ、アーノルド。何か一言頼めるか?」
「……えっ!」
(……そういうの苦手なんだが)

仕方なく、俺は一歩前に出て村人達に視線を向ける。

「え~~~……っと、今日からネルド村の村長を任してもらうアーノルド・エドワースです。まだどうしていいかわからない状態ですが、付いてきてくれると嬉しいです!」

俺は当たり障りない事でお茶を濁すと、村人から歓声が帰ってくる。

「アーノルドさんならこの村も安泰だ!」
「よろしくお願いします。アーノルドさん!」
「またポーション買いにいきますね」

各々が思い思いの事を俺に問いかけてくるが、軽くスルーをしていると元村長が話しかけてくる。

「アーノルド、このネルド村の事。任せるぞ!」
「……はぁ、わかりました」

こうして俺は晴れてネルド村の村長になったのだ。



薬屋に戻った俺は、ラミリアとオイドがせっせと働く薬屋が見える小川のほとりに座りこむ。

「……で、具体的に村長って何をすればいいんだ?」

俺は、講師役のシャルロッテに尋ねる。
当然ながら村長になった俺は何をすればいいのか全く分からない状態だったのだ。

「住民あっての長です。まずは民の生活を守る為の行いをするといいでしょう。……例えば衣・食・住をしっかりと整わせてあげる、などですね」

俺は村の周囲を見渡すと、服装はお世辞にもキレイとは言えず、住まいは殆どが木材ですぐに壊れてしまいそうなボロ家がほとんどだ。
食事に関しては以前に医療所に来ていた患者の数を考えると、あまりいい食事をしていなかった事は容易に分かった。

「……う~ん……この村、その衣・食・住のどれもダメな気がする」

俺は頭をかきながらどうするか考えていると、ふと以前ネルド村を襲ってきた兵士達の事を思い出す。

「……あと、シャルロッテ。前みたいに敵意むき出しの相手を安易に村に入れないようにしたいな。少しでも怪しい奴がいたら門前払いできるようにするんだ」
「確かに……とてもいい案だと思います。……あっ! それでしたら、このネルド村の近くに建築に長けているドワーフ族が住んでいる工業集落があります。そこの知人に頼めば村をへいで囲ったり住宅の改装などに協力をしてくれると思います!」

シャルロッテは思い出したかのように俺に話してくる。

「お! いいなそれ。シャルロッテ、その知人を是非紹介してくれ! 軍資金なら沢山あるからな」

俺は倉庫に有り余った金貨の事を思いながら話す。

「そうですね……わかりました!」

それからシャルロッテの紹介の元、ドワーフ族との交流が始まった。



◇◇◇



それからシャルロッテの協力もあり、ネルド村には数多くのドワーフ族の者が到着するとすぐにネルド村を囲うへいの作成に取り掛かり始めた。
そんなある日、ネルド村の薬屋をラミリアやシャルロッテに任せている中、俺は薬屋を抜け出して作業見学をしていた。

「……何をしているんだ?」

何かドロドロの液体を作っているドワーフ族のおじさんに近づく。

「ん? あぁ薬屋の兄ちゃんか。これは硬度の高い素材になるものだ。今はドロドロだが、乾いたら剣でも壊すことができない強度になる代物さ」
「へぇ……これで壁を作っていくのか」
「あぁ、ちと時間かかるから待っててくれ」

そうしてドワーフ族の作業員たちは、次々とネルド村を囲うようにドロドロの素材で作った壁を構築し始める。
ドワーフのおじちゃんが言っていた通り、時間がたつと壁はとても硬く殴っても逆に手が痛くなるぐらいの強度に変わっていた。

(……すごい技術だな。これだったら簡単に侵入される事もないだろう)

周りを見渡すと、数多くのドワーフ族が同様の作業を行っていた。
また、同じ技術でネルド村の数あるオンボロの家の改装も行うようになっている。

(……もちろん、塀や家の改装のすべての費用は俺持ちだがな)

使い道のない資金だったので、使える所が見つかって良かったと言えるだろう。

「あ、アーノルドさん! 村長になって早々私たちの家を作り変えて頂けるなんてとても嬉しいです」
「いえ、気にしないでください。これも村長としての職務ですので」
「アーノルドさ~ん! 私の家もすごく良い家にしてくださってありがとうございます!」
「いえ、気にしないでください。これも――」

そういった風に、俺は村人からお礼の声を掛けられては適当に返答を返しながら薬屋に戻るのだった。



薬屋に戻ると忙しく動き回るラミリアが俺に気付いて駆け寄ってくる。

「お帰り! アーノルド!」
「お疲れ。今日も薬屋を任せっきりで悪いな」
「ううん! 楽しいから全然良イ!」

元気よく話すラミリアの頭を撫でていると、シャルロッテも駆け寄ってくる。

「アーノルドさん、お帰りなさい」
「ただいま、シャルロッテが紹介してくれたドワーフの人達ってすごいな。知らない技術ばっかりで見てて楽しいよ」
「満足頂けたようでなによりです。建築関係だったらドワーフ族の方達にお願いすれば何でも作ってくれるでしょう」

シャルロッテと話しているとラミリアが小刻みにジャンプを繰り返す。

「私も! もっとアーノルドの力になりたいナ!」
「はは、もう十分ぐらい助けられているから安心しろ、ラミリア」

ぽんぽんとラミリアの頭に手を添える。
そんな話をしていると、シャルロッテの広報部の一人が近寄ってくる。

「シャルロッテ様、報告です! アラバスト王国で注文のあったポーションですが、急遽キャンセルをしたいとの連絡が入っております。如何いたしましょう?」
「……キャンセルか、珍しいな」

俺はシャルロッテの部下に問いかける。

「はい。出先の広報の者に確認したところ、一部でポーションに対しての良くない噂が出回っているようです」
「噂ですって? ……詳しく教えて頂けますか?」

シャルロッテは部下に尋ねる。

「はい。聞いたところ、ポーションは体に一時的に高揚感を与える劇薬だと言う声が上がり、体に害を与えるといった根も葉もない噂が出回っているようです」
「……何だよ、それ」
「困った方もいらっしゃるみたいですね。……更にアラバスト王国の詳しい調査をお願いできますか?」

俺が困惑していると、シャルロッテは部下に命じる。

「畏まりましたお嬢様。その旨、アラバスト王国にいる広報員の者へ詳しく調べるよう伝えておきます」

部下はそう言うと行動に移し薬屋を後にした。

「何か……嫌な予感がしますね」
「アーノルド……よくないコト?」

シャルロッテは神妙な表情を浮かべていたが、ラミリアはよくわかっていない様子だった。

「だな。……シャルロッテ、考えても仕方ないさ。とりあえず、目の前のお客さんに集中しよう」
「そ、そうですね。一先ず今日の業務を終えましょう」

俺は広まっている噂は今は置いておき、薬屋に来てくれているお客さんの対応に集中する事にした。
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